皆様ごきげんよう。ディズニーランドに一人で行き、数人で来ていた知り合いと鉢合わせないように逃げ回る夢を見た黒猫でございますよ。・・・ど、どんだけ・・・。結構虚しく、且つ心臓に悪い夢でした。
本当にそんなにもディズニー好きだったら、わたしは世間の目など構わず一人で行った挙句ナントカマウンテンで悟りきったキメ笑顔を写真に収めてもらっちゃうと思いますが(笑)、別に嫌いじゃないけど好きというほどでもない、という感じなので・・・ラジニーランドなら一人で行くどころか年間パスポート取るけどさ。(どこにあんのそれ)
さて、そんなことはさておき、久々に本の感想を。
『流れ行く者』(上橋菜穂子著、偕成社)
『精霊の守り人』シリーズ番外編の短編集です。少女時代のバルサを描く四編を収録。
・・・とにかくタンダの少年期の描写が異様に可愛くてもう。今回出番は少ないんですが、個人的にはおいしいところはタンダがいただきました、という感じです。恐ろしい子!(笑)
カンバル王に追われる身のため、ジグロとともに各地を放浪せざるをえなかったバルサの少女時代、断続的とはいえ、関係を絶たずに会い続けることができるタンダの存在がバルサにとってどれほど貴重だったかがよくわかりました。
タンダのほうもまだ家族と暮らしてはいますが、どうも里の暮らしよりトロガイ師やバルサたちと居るほうが性に合っていると感じている、という段階。ふたりともまだ子どもですが、のちの性格の片鱗がすでにこの頃から窺えます。この子たちがああなってこうなってこういう大人になるんだなあ、と思うと感慨深いものがあります。
今回、4編の短編が入っていますが、ストーリー自体は大人向けかもと思いました。
一番最初に収録されていた「浮き籾」は、農民こそがまっとうな暮らしとされるタンダの村で、街に出て一旗あげると豪語したものの果たせず、毎年祭りの時期にだけ村に戻ってきたという放蕩者の老人の淋しい死を中心に描かれ、お世辞にも子供向けじゃないと思いました。
でもそこに子どものタンダとバルサが絡み、たとえ周囲にはいい顔をされないとしても、やりたいこと、自分が正しいと思うことをやり通すタンダと、それに引きずられて手を貸すバルサがほほえましいです。
しかしこのラストにはしんみりしたなあ。
次に「ラフラ 賭事師」。長い間好敵手とお互いを認め合ってきた勝負の相手に、「勝て」と言われた賭事師は・・・というような話なんですが。この賭け事師が老婆だというのがまた渋い設定です。そこに至るまでどんな人生を送ってきたのでしょう。いろいろ深い。
もう一編、隊商を護衛する旅を描いた表題作「流れ行く者」も、老いた用心棒の「寄る辺ない暮らしを送ってきた者はこういう末路をたどる」というような台詞はわたしにもグサリと刺さったんですが気のせいですか。うう。
それにしてもこの話のジグロがかっこいい。シリーズ読者ならご存知でしょうが、バルサと共に用心棒稼業をしつつ放浪する彼はバルサの本当の父親ではありません。親友だったバルサの父の頼みを聞いて、カンバル王に命を狙われているバルサを死なせないために連れ歩いているのです。この人が詳しく描写されるのは初めてですが、やはり一本筋の通った武人という感じでまさに好みのタイプでした(笑)。次はジグロが主役でぜひもう一本書いて頂きたいものです。
そして一番最後、「寒のふるまい」はラストを締めるにふさわしい短編。追われる身ゆえの旅暮らしで、どこにも留まることができないバルサとジグロが、短くない期間留まれる数少ない場所が、タンダのところ(正確にはトロガイの庵)なのです。表には出さないけれど、タンダに会いたいなあと思うバルサと、会いたさ全開のタンダ。・・・もう、可愛らしいったら。
なんか読後感としては人情ものの時代小説を読んだあとのような感じがしました。どこかで本当にあった出来事のような。人々が生き生きと描かれているからなんでしょうね。
読者が子供なら、もうすこし大きくなってからもう一度読むとまた違った感想を抱くんじゃないでしょうか。
とても面白かったです。おすすめ。