<武漢発肺炎ウイルス蔓延中、マスク増産中か>
<武漢発肺炎ウイルス被災はオンライン事業の成長の飛躍となるか>
2020/03/17 5:30
「巣ごもり消費」が広がる中国の寒すぎる現状
1~2月の経済急悪化に中国の記者も仰天
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西村 豪太(にしむら ごうた) Gota Nishimura
東洋経済 記者
1992年に東洋経済新報社入社。小売業、総合商社などの担当記者、名古屋支社勤務などを経て2016年10月から2018年末まで『週刊東洋経済』編集長。2004年から2005年まで北京で中国社会科学院日本研究所客員研究員。著書に『米中経済戦争』(東洋経済新報社)。
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中国政府が3月16日午前11時(日本時間)に発表した1~2月の主要経済指標は、そろって歴史的な悪化を示した。工業生産が前年同月比13.5%減、消費動向を示す「社会消費品小売総額」が同20.5%減、
中国の消費が極めて低調なのは社会消費品小売総額の数字からも明らかだ。分野別にみると、営業が大きく制限されたレストランは43.1%減とさんたんたる状況。自動車が37.0%減、家電販売が30.0%減、家具類が33.5%減と厳しい数字が並ぶ。変わったところでは金銀宝石も41.1%落ちこんでいる。
固定資産投資が24.5%減――。いずれも統計開始以来最悪の数字だ。記者会見で最初に質問した中国国営テレビの記者が、「世間の予想を超える悪化だった」とコメントしたほどである。
各種イベントや外食に強烈な規制導入
春節(旧正月)の長期休暇の時期が毎年変わるため、中国では1月と2月の経済指標をまとめて集計することが慣例となっている。今年は1月24日から1月30日までが春節休暇と定められていた。ところが1月20日に中国政府が新型コロナウイルスへの対策を本格化。さらに同23日には、中国中部の中心都市である湖北省武漢市を封鎖するという思い切った手段をとった。
春節休暇は2月2日まで延長され、2月3日以降も多くの地方で再延長された。感染拡大を防止するため、習近平国家主席による「人民戦争」という号令のもとで各種のイベントや集団での外食にも強烈な規制が導入された。
例えば北京市では3人以上での会食は禁止。カラオケ店や映画館など生活に必要不可欠とは認められない施設の営業も停止された。こうした措置の多くは春節休暇明けも続いている。
国を挙げての対策によって新規感染者は減少し、2月10日からは湖北省以外での経済活動が再開された。しかし1~2月の60日のうち、20日前後は稼働をストップしていた分野が多く、経済への影響が深刻なのは火を見るより明らかだ。
こうした状況が長期化すれば、中国経済のみならず世界経済にも大きな打撃となる。中国はグローバル・サプライチェーンの中核であるのみならず、巨大な市場でもあるからだ。SARS(重症急性呼吸器症候群)が流行した2003年に比べ、中国経済の規模は8倍以上になっている。
毛氏は中国の生産力が健在であることの例として「マスクの1~2月の生産量は前年同期の2.9倍となり、2月29日時点での1日あたり生産量は1億1600万枚に達した」と語った。湖北省以外では、2月29日の段階で売り上げ2000万元以上の製造業の95%以上が操業を再開したという。
デジタル関連は好調だが・・・
この状況で、中国政府が期待するのはデジタル分野だ。ネット経由での物品販売は前年同期より3.0%伸び、社会消費品小売総額の21.5%(前年同期より5%ポイント上昇)を占めるに至った。国家統計局の毛氏も「インターネット経済の勢いは変わらない」と強調する。
アリババ、京東集団(JDドットコム)といった中国の電子商取引(eコマース)大手が飛躍したのも、SARS流行によって自宅にこもった人々がネットで買い物をした「巣ごもり消費」がきっかけだ。今回も、さまざまなオンラインサービスが成長のチャンスをつかんだ。
例えばアリババ傘下のリモートワークのプラットフォームである釘釘(Ding Talk)は、オンライン授業に採用されることで企業のみならず教育機関にも一気に普及した。現在では中国全土の14万校、1億2000万人の学生に使われているという。こうした現象はeコマース、医療、ゲームなどさまざまな分野で起きている。
デジタル関連の好調は生産にも表れており、1~2月には3Dプリンターやスマートウォッチなどの電子製品の生産量が2倍以上となった。太陽電池や半導体の原料となる単結晶シリコンの生産量、多結晶シリコンの生産量はそれぞれ45%、35%増加したという。
新型コロナがもたらした「巣ごもり消費」は中国のデジタル経済をいっそう加速させるかもしれない。しかし、1~2月の数字を見る限り、上半期の成長率は非常に厳しいものになるのは間違いない。今後のV字回復を演出する思惑があるのかもしれないが、この状況で5%を超える成長を実現するには、そうとう大規模な景気刺激策が必要となるだろう。
はたして現在の中国にそれが可能か。新型コロナ制圧をうたう中国政府の宣伝とは異なり、経済の内実は相当に厳しい。
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