
ステージⅣからステージⅠに?腫瘍内科医が語る「原発がん」の意味
1/23(木) 17:01配信
現代ビジネス
ステージⅣからステージⅠに?腫瘍内科医が語る「原発がん」の意味
写真:現代ビジネス
がんの専門医である腫瘍内科医の診療現場を舞台に描かれるドラマ『アライブ・がん専門医のカルテ』。先週は、男性の乳がんや20代の乳がん患者などがSNSでも話題をさらった。
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「私自身ががんの経験者で、普段から多くのがん仲間と過ごすことが多いからでしょうか。登場する人物のこれまでの人生や、今抱えているであろう不安、または心情に胸が熱くなるシーンが多い。そしてなにより、治療場面や会話には、がん医療を知るうえで重要なヒントが随所に散りばめられていると感じます」というのは、乳がんサバイバーでこの記事の筆者でもある美容ジャーナリストの山崎多賀子さんだ。
今まで、2回(「腫瘍内科医とは」/「男性乳がん」)の記事をお伝えしたが、今回は、1話から頻繁に出てきている、がんでよく使われる「ステージ」「原発」「転移」について、ドラマの企画協力医でもあり、がんの最前線で腫瘍内科医として活躍する日本医科大学付属武蔵小杉病院腫瘍内科の勝俣範之医師に、山崎さんが聞いた。
ステージⅣからステージⅠに?腫瘍内科医が語る「原発がん」の意味
写真提供/日本医科大学
いざというとき、これだけは必須ながんの基本知識
1話にこんな場面があった。胃がんの「肝転移」で「ステージⅣ」と診断された男性患者が登場する。彼は、ステージⅣであることに絶望している。しかし、肝臓への転移は「画像のみ」での診断で「肝臓生検」を行っていなかった。主人公の腫瘍内科医はその患者のカルテを診て疑問を持っていた。結局、肝臓生検の検査結果が出てみると、肝臓にできたがんは、胃がんの転移ではなく、「原発」だとわかり、肝臓がんも胃がんもともに、「ステージⅠ」であることが判明し、医師たちが安堵して喜ぶ、というシーンだ。
ドラマ内では細かい解説までは描かれてなかったが、実はこのやりとりの内容は、患者や家族にとって天と地を分けるほど大きなキーワードが詰まっている。
ここに出てくる「ステージ」「原発」「転移」という言葉。がんの場面では、比較的よく出てきて罹患経験がなくても聞いたことがあると思うが、意味を正しく認識している人は少ないかもしれない。今回は、まずこの言葉について勝俣医師に解説していただこう。
「がんの“ステージ”は、がんの種類によって条件が異なりますが、がんの病期、つまり進行度合いを示し、早期のステージⅠからステージⅣまであります。ちなみにステージ0期は超早期のがんです。ステージⅣは、他の臓器へがんが転移している状態で、根治が難しいとされています。
“原発(原発巣:げんぱつそう)”とは、最初にがんが発生した臓器の病変のことです。もし胃にがんが発生すれば、原発は胃がんです。その胃がんが他の臓器で増殖し目に見えるレベルになることを、“転移”といいます」(勝俣医師)
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勝俣範之医師
国立がん研究センターに20年勤務した後、日本医科大学武蔵小杉病院に腫瘍内科を開設。抗がん剤治療の第一人者であり、緩和療法に精通。誤解されがちながん情報をわかりやすく解説する。
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前の記事にも触れたが、増殖能力が旺盛ながん細胞は、原発巣から血液やリンパにのって全身をめぐり、他の臓器にも転移しようとする。転移先の臓器で増殖し臓器障害を起こせば命にかかわる。患者にとって不気味なのは、がん細胞の得体の知れなさだ。正常な細胞には寿命があってつねに新しい細胞と入れ替わるのに、一部を除くがん細胞は休眠することはあっても自然死せずに増殖し続けるというのだから、なんとも憎たらしい。
「原発」か「転移」かで、治療方針も薬も大きく変わる!
では、胃にがんの病変が見つかったとして、それが「原発」か、多臓器からの「転移」かでは、一体何が大きく違うのだろうか?
「よくあることですが、胃がんになった患者さんに肝臓へ転移したとお伝えすると、肝臓がんになったと誤解されがちです。ですが、そうではありません。肝臓にがんが見つかっても、原発の胃がんが転移してきたものであれば胃がんなので、胃がんに効果的な治療を行わなければ効き目はありません。原発と転移では、使う抗がん剤も全く異なるわけです。
ところが、原発の胃がんとは関係なく、肝臓にも新たながんができたのなら、原発は肝臓がんですから、肝臓がんに効果的な治療でなければ効き目がありません。臓器に悪性の腫瘍(がん)を発見して、そこが原発なのかはとても重要で、この初期判断を誤ると治療をやっても意味がないだけでなく、からだに大きな負担を与えることになります。それくらい原発か転移かを診断することは慎重でなくてはならないのです」(勝俣医師)
実は私も乳がんにかかり、がんのことを詳しく知るまでは、乳がんが肺に転移したら肺がんの治療をするものだと思っていた。ところがそうではなく、他の臓器に転移してもそこにいるのは乳がん。だから、「再発」っていうのか! と後になって理解した。
問題はそれだけではない。
「“原発”と“転移”では使う薬の種類が違うだけではありません。“ステージ”が変わってきます。他の臓器への転移であればステージⅣと診断され、ご本人と相談しながら、がんと長く共存するための緩急をつけた治療方針を考えて行きます。ところが原発なら、新たながんとしてステージを診断し、根治を目指すためにがんをしっかりたたく治療を行います。最初の診断を間違ってしまうと治療方針まで変わってしまい、治るがんが治せなくなるのです」(勝俣先生)
ドラマでは、投与した胃がんの抗がん剤が胃には効果があったのに、肝臓には効果がみられなかったことから、転移ではなく原発がんではないかと主人公の腫瘍内科医が疑った。そして検査の結果、新たにできた肝臓がんと判明。しかも胃がんも肝臓がんもステージⅠの早期がんということが分かり、ステージⅣと知らされていた患者や家族が「奇跡だ!」と大喜びするという展開だったのだ。もし転移がんとして治療を続けたら、あの患者はどうなっていただろうか。
原発不明がんって何?
さらに第1話では、「原発不明がん」の患者さんが紹介されてくる。前の病院で“余命3か月”と言われ、ホスピスを勧められたという設定だった。松下奈緒演じる腫瘍内科医は、腫瘍マーカーであるCEAが増加しておらず、CA125が増加していることを発見し、そこから、「原発不明がん」ではなく、「腹膜がん」と診断し、化学療法(抗がん剤)を開始する。
「原発不明がんとは、原発がなくて転移がんだけで見つかるがんのことです。必ずどこかに原発があるはずだと思ってどんなに医師が探しても、見つけられません。実際は“どこに出てくるか分からない”というのが原発不明がんです。日本ではあまり認識されていませんが、海外では30年以上前から治療体系ができています。
原発不明がんは、転移がんであるがゆえに、多くは根治が難しいことが多いのですが、原発不明がんの中でも、5人に1人、約20%に、根治が可能な特別な原発不明がんが存在することはあまり知られていません。原発不明がんの診断は、臓器を横断的に診るがんの専門医でなければ難しく、これは腫瘍内科医の腕の見せどころといっていいでしょう。実際には、根治可能な原発不明がんであるのにもかかわらず、第1話の患者さんのように、実際に、余命告知までされ、ホスピスを紹介される場合も少なくありません」(勝俣医師)
第1話のケースでは、「原発不明がん」ではなく、「腹膜がん」と診断を下したが、この「腹膜がん」とは何なのだろうか?
「腹膜がんとは、腹膜を原発巣として発生するがんです。以前は、原発不明がんの一つとして、扱われていましたが、2014年にWHO分類で定義され、現在では、原発不明がんではなく、腹膜がんとして、独立した診断名で治療が行われるようになっています。
腹膜がんは、卵巣がんと同様の性質をもち、卵巣がんのように化学療法(抗がん剤)が非常によく効くため、化学療法と手術で、根治も可能ながんです。女性で、腹水や腹膜転移のみで見つかり、原発巣が見つからないがんは、腹膜がんを疑うべきなのです。が、腹膜がんは希少がんであり、医科大学の講義でも取り上げられないことが多いため、ドラマの患者さんのように、診断がつかず、原発不明がん、末期がん、などと言われてしまうことが、実際にあるのです」(勝俣医師)
日本には腫瘍内科医はわずか1329名(2019年のデータ)しかいない。そのなかでも勝俣医師やドラマで描かれる医師たちのように臓器を横断的に診ている腫瘍内科医はまだ少ないのが現状だ。患者数が多い消化器がんや肺がんを専門に診る腫瘍内科医は多いのに対して、希少がんや乳がん、婦人科がん、肉腫、原発不明がんなど、多岐にわたるがんを幅広く診られる腫瘍内科医は稀少的な存在という。
「腫瘍内科医が、“がんの総合内科医”と呼ばれるように、100種以上もあるすべてのがんの知識・経験をもち、総合的にがんの予防・診断から、治療、緩和ケアまで、幅広くがん患者を診られる腫瘍内科医がもっと増えてほしい」と勝俣医師はいう。
患者さんの“人生”に伴走するのが、腫瘍内科医の役目
少しがんの“ステージ”について話を戻そう。多くの人は、ステージという言葉はがんになった有名人のニュースなどで、他人事として見聞きすることが多いだろう。ところが自分や大切な人ががんの当事者となった瞬間、脅威の言葉に変貌する。ステージの詳細を調べていくと5年後10年後の「生存率」にたどりつくからだ。死を連想させる生存率が自分ごとになることだけでも恐ろしいものだ。
当然ステージが上がるごとに生存率は下がっていくのだが、たとえ5年生存率90%だったとしても、残りの10%に入ったらどうしようと思ってしまう。その数値が低ければ低いほど、シビアな現実を突きつけられる。根治が難しいといわれるステージⅣとなれば、一度は崩れ落ちそうになるだろう。
「現在は、ステージⅣに使える新薬の登場によって、治療を続けながら長く病気と共存し、今まで通りに社会とつながりを持って仕事を続ける人も増えていますよ」という勝俣医師はいつも診察室で患者さんに3つの「あ」を伝えているという。
それは、「あせらない」「あわてない」「あきらめない」。
ドラマにも出てきた言葉だ。
「『あきらめない』とは、積極的な治療をあきらめないという意味ではなく、『人生』をあきらめない、という意味です。たとえ根治が難しくとも、積極治療ができなくなったとしても、医師も患者を見捨てることは絶対にしてはいけないと思っています。そして患者さんの人生に伴走するのが腫瘍内科の役目だと思っています」という。3つの「あ」は、勝俣医師が自身に言い聞かせてきた言葉なのかもしれない。
私の周りにも、再発した友人知人がたくさんいて、取材をさせてもらうこともある。そして知るのは、再発が分かって一時はひどく落ち込んでも、ずっとそこで立ち止まっているわけではないこと。いく度も葛藤があるだろうけど、その時々の現状をベースに、以前よりもさらに日々を大切に思い、それぞれの人生を力強く歩いているようにみえるのだ。そこから教えてもらうことはとても大きい。
ドラマの中で、主人公の腫瘍内科医が再発した患者さんに「長い付き合いになりましたね」と言ったように、そのときそばで伴走してくれる医療者がいることを覚えておきたい。
今回のドラマは、実際にがんの現場で働く医療者からも治療の場面の描き方は、リアルだという声も多い。ドラマをきっかけに、むやみにがんを怖がるだけでなく、知識や患者の思いが広ることを願いたい。
『アライブ がん専門医のカルテ』
出演:松下奈緒 木村佳乃 清原翔 岡崎紗絵・中村俊介/三浦翔平・田辺誠一 藤井隆 木下ほうか 高畑淳子・北大路欣也
フジテレビ系毎週木曜22:00~23:09(初回15分拡大)
https://www.fujitv.co.jp/alive/
山崎 多賀子(美容ジャーナリスト)

t****** | 44分前
なぜ
一旦、検診などで、ある部位に がんが発見されて治療した場合、
次々と がんが発生するのでしょう。
全然 検診などもしない人は、なぜ、なかなか がんにならないのでしょう。
耐え難い症状も出ないのでしょうか。
それなのに、無症状の人が治療と処して医療に かかった場合、
なぜ 耐え難い、苦痛になるのでしょうか。
この矛盾 早く気付こうよ。
2人に一人が がんになると言われる時代で、60歳過ぎれば ほとんどの人にがんがあるらしい。
2人に一人ががんになると言うのだからそうなんでしょ。
でも、なぜ 何らかの方法で がんを見つけられた人のみが
がん治療を受けなければならないのでしょうか。
そして一番がんに対して知識のある医師は、がん検診もしないし、抗がん剤も拒否するのが現状。
返信0
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cxz***** | 1時間前
ガンになっても頑張って耐えたいと思う
病院なんていかない
ひたすら耐える
返信2
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サンタ | 2時間前
癌の話し多いね!
楽しいのかな?
毎日健康、
先生、かぁちゃん、ばあちゃん
みんなありがとう(^-^)/
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