晴走雨読

晴耕雨読ではないが、晴れたらランニング、雨が降れば読書、きままな毎日

藤井道人監督 『新聞記者』

2019-07-24 09:14:43 | Weblog

若者の投票を促すに期日前投票所が大学内に設置された。何ゆえ学生だけが機会を優遇されなければならないのだろうか。普段は関係者以外立ち入ることの無い大学、限られた年齢層しかいない大学に置くのは、統計学的に果たして選挙の公平性を保てるものなのだろうか。学生も社会との関わりが見えてくるに従いそのうち投票するか、選挙では世の中が変わらないと気付くと思う。

 

『新聞記者』(藤井道人監督 2019年作品)

このブログとリンクしている「オータムリーフの部屋」(2019.7.15)で紹介されていた『新聞記者』を7.19にユナテッドシネマ札幌で観る。1日たったの2回(11:30~、19:19~)上映という扱われ方(今は1回になった。)あまり見る人がいないからなのだろうと想像していた。しかし、平日の午前中にもかかわらず100人を超える観客。僕の観る映画は偏っているのでこんなに観客が多いことはあまりない。60歳代から70歳代くらいが中心だが、若い人も結構いた。帰路、原案になった東京新聞記者の望月衣塑子氏の『新聞記者』(角川新書)を買おうとジュンク堂へ行くが売り切れ!それで紀伊國屋で購入。見ると8版を重ねている。映画の入りと本の売れ行きに何かしら「希望」が湧く。

東都新聞記者・エリカ役のシム・ウンギョンは、真実に対しての迫り方に凄みがある素晴らしい女優。一方内閣情報調査室の官僚に松坂桃李、チャラい感じかと思いきや非情な職務命令と良心の葛藤を渋く演じていた。

15日に札幌でアへ首相が参議候補の応援演説をした際、反対と声を上げた人、プラカードを掲げた人が道警によって排除されたという記事が18日になって北海道新聞で報道された。この3日間のタイムラグから何を読み取ったらいいのだろうか。以前、道新が道警裏金疑惑を追いかけたことがあった。しかし、現場の記者たちが頑張っていたにも拘らず上層部が道警に屈服し、以来道警批判は鳴りを潜めた。当時、記者の中には辞めた方もいる。今回の報道に至るまで、道新の中で相当の逡巡があったのではないかと推察する。この映画を多くの人に、特に新聞記者には観てもらいたい。

この映画では官僚の腐敗が描かれている。かつて民主党も唱えていた「政治主導」なるものがこれほどひどい結果をもたらすとは想像できなかった。従来は、政治家がアホでも政治をサボっていても、この国は官僚が優秀だから心配はいらないといわれていた。しかし、内閣人事局がつくられ、政府が官僚の人事権を握った途端に、官邸主導政治、官僚たち、各省庁は政権の意向を伺い、意見することがない情況になってしまった。誰が見ても政治家より優秀な人材集団である官僚の知恵と情報が活かされない状態が続いている。この国にとっては大きな損失だ。

真実を報道できない新聞(マスコミ)、能力を活かせない官僚の中にあって、少数だがキラリと光る人材がいる。絶望の中に少しの「希望」が湧く映画だった。

 

追記(2019.7.27)

本作品は大ヒットなのですね。既に6月28日から上映していていることもわかりました。また、シアターキノで8月3日から続映されるとのこと。僕の認識不足でした。

 

 

 

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『東山魁夷 唐招提寺御影堂障壁画展』

2019-07-14 15:21:54 | Weblog

新元号になった日に「令和の誓い」を立てた。それは、「昼食に菓子パンを食べないこと!」。体重が増えてしまった身体が重く感じていたのでランニングのために。今も何とか続いている。

 

『東山魁夷 唐招提寺御影堂障壁画展』 北海道立近代美術館 

この緑青色はどのようにして作りだしたのだろうか。空の色にもない、海にもない、湖の色か、小学生の頃行ったオンネト―がこんな色だったかな。昔見た記憶の中の色。

部屋の壁面はふすまや壁はシネマスコープのようにワイドな横長キャンバス。強風にしなる木々、波に洗われる岩々、なんと荒々しく寂しい絵なのだろうか。波も風も右の方から左に向かって押し寄せ吹き付ける。左利きの人は少し違和を感じるのではないか。

東山魁夷が想いを至らせたのは、鑑真のこころ。中国からの渡航に何度も失敗した鑑真、鑑真は自らの視力を失ってまでこの苦難を乗り越えて唐招提寺を開いた。こんな試練を描いた部屋に入ると、希望を抱くより何かに押しつぶされそうになる。

長野県信濃美術館東山魁夷館から持ってきた下図、割出図、試作も展示してあり、それらからは建物の設計図のように緻密な計算のうえに障壁画が描かれたことが見て取れる。ふすまに向かって一気に書き上げたのではない。御影堂内の部屋の配置を考慮に入れ、その一部屋ごとの構造、壁面の形状、寸法、それらをメッシュに切った図面上に落とし、そこに下絵を書き、それを壁面に正確に等倍率で拡大して描いている。

展示方法も唐招提寺の各部屋の柱や床の間などを再現してあって、照明の効果もありとてもリアリティを感じる。

 

唐招提寺御影堂障壁画は東山魁夷による渾身の一作だ。一見の価値あり!北海道立近代美術館で7月28日(日)まで。

 

 

 

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