福島原発事故の責任を東電が一義的に負うべきとしている論説が多い。しかし、これは政府見解と同じである。東電の現場における必死の対応とは違い、あの本社のえらいさん達の他人事のような姿勢を見ていると許せない気持ちになることから当然であるが。
「続・経済学からみた原子力発電」(SEKAI2011.11)で老経済学者の伊東光晴氏は、電力事業の真の経営者は誰かと問う。
電力事業においては企業運営の細部まで資源エネルギー庁の考える基本方針に沿った電気事業法によることになっており、形式上は電力会社の申請に対する資源エネルギー庁の認可となる。
東電の社長・会長、また経済同友会の代表幹事だった木川田一隆氏は、原爆の被害を受けた日本では、核を利用する原発は設置すべきではないと言っていたが、のちに原子力発電を受け入れた。
ここから東電本社の被害者面した幹部の心根がわかる。「俺達好きで原発やっているんじゃないよ。国がやれっていうからやったまでさ。」
「経済学からみた原子力発電」(SEKAI2011.8)においては、日本の原子力発電に対する保険制度では、民間保険は300億円まで、「危険担保特約」が別記され、「地震を原因とする津波によって生じた損害は除く」として保険会社を免責としている。
また、政府保障は、「原子力損害賠償に関する法律」第16条で損害が上記の限度額を超えたときは、事業者に対して政府が「必要な援助を行なうものとする」となっている。(援助という抽象的な条文になっている。)
同法第3条は、「原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる」として、事業者は無過失責任であり、無限責任とされているが、「ただし、その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によって生じたものであるときはこの限りではない」としており、事業者は免責となっている。(ただし、政府は今回の地震はそれにあたらないとしている。)
なお、同法第4条は、責任集中制といわれ、事業者のみが責任を負うとなっている。すなわち、メーカーの東芝、日立、GEは責任を負わない。
しかし、現在の政府の考え方は東電のみに責任があるとしている。会社更生法(100%減資による株主責任、東電債、銀行借入は債権放棄、資産売却、給与引き下げなど)は適用しない。また、政府が保障することはないというものである。
事故を起こした東電が主犯だと思う。しかし、共犯者もいる。いわゆる原子力ムラの構成員である。資源エネルギー庁(経済産業省、原子力安全委員会、原子力安全保安院)、原発メーカー、自由民主党、誘致した地元政治家、それを選んだ選挙民、事故が起きてから騒いでいる国民、反対の持続力を欠いた私も・・一億総懺悔だ!