『レッド Red 1969-1972 3』(山本直樹著 講談社イブニングKCDX 2009年刊)
闘争資金を作るための銀行襲撃や給与強奪、武器を獲得するための銃砲店襲撃やダイナマイト奪取。人民のための革命実践という大義を振りかざしているが、大義が成立しなくなれば、やっていることはただの犯罪。
彼らは、どのように理論的な根拠として、武装蜂起によって現実の権力を奪取できると考えたのか。それも本気で!左翼に典型的な主観的願望と客観的状況との倒錯状態にあったことは容易に理解できるが、1970年代前半のこの国でなぜ、どの様にして革命を実行しようとしたのか。
おそらく、闘いの突破口を開けば、あとは中国(毛沢東)が支援してくれる、という期待が彼らにはあったのであろう。しかし、まもなく米中が手を結び彼らは驚愕することになる。
組織内では、後の「総括」につながるような事案が発生している。男女問題、ささいと思われることを巡っての批判、自己批判。ついに仲間の脱走、組織に歪が出始め、仲間に対する疑心暗鬼も生まれる。
『レッド Red 1969-1972 4』(山本直樹著 講談社イブニングKCDX 2010年刊)
この巻では、京浜安保共闘と共産主義者同盟赤軍派が統一し、連合赤軍が結成される。しかし、彼らの主観的願望と現実は大きく異なり、国際情勢においてはキッシンジャー米大統領補佐官が中国を訪問し、周恩来首相と会談、そこでニクソン米大統領の訪中が決まった。
彼らが発する言葉は、蜂起、革命、奪取と大言壮語が並ぶが、実態は数十人たらずの学生サークルレベルの組織。それで世界革命ができると考えた根拠は何か。仲間の逮捕と相次ぐ脱走で組織には閉塞感が漂い、利敵行為から組織を防衛するという名目でついに最初の処刑が実行される。組織の仲間内には動揺が走る。疑心暗鬼に陥る。
これらことは、連赤に固有のことではなく、会社、組織、チーム、仲間・・など、人間が集まり、共同で何事かを進める場合、多かれ少なかれ普遍的に生じている状態ではないか。