米IT、日本で直接納税 アマゾンが法人税150億円納付
- 2019/12/29 23:00
米IT(情報技術)大手が日本で納税を増やし始めた。アマゾン・ドット・コムの日本法人が2018年12月期に約150億円の法人税を納めていたことが分かった。4年前の10倍超とみられる。以前は日本事業の収益を米国などで計上して納税額を抑えたが、事業を日本法人中心に改めた。グーグルやフェイスブックも世界各地で対応を進める。デジタル経済に合わせた課税ルールの議論が進むなかで、IT大手自身も対応を急いでいる。
関係者によると、アマゾンの日本法人は17年12月期と18年12月期に、それぞれ約150億円の法人税を納付した。日本法人は情報開示が少ない合同会社に移行したため納税額の推移は分からないが、株式会社だった14年12月期の決算公告によると当時の日本法人2社合計で約11億円だった。
アマゾンの日本事業の売上高は14年の約79億ドル(約8600億円)から18年に138億ドルと7割増えた一方、納税額は10倍超になった。日本企業の納税額と比べるとローソン(19年2月期で143億円)などが近い。
アマゾンの納税額が急増したのは、日本のネット通販事業の契約主体を米本社から日本法人に変更したためだ。以前は日本法人は米本社の補助的な業務を担当しているとされ、計上する収益も小さかった。日本事業を日本法人が直接担当することで、課税対象の収益が増えたとみられる。
アマゾンジャパン(東京・目黒)は日本経済新聞の取材に対し、「以前から、すべての国で支払う義務がある税金を納めている」と回答した。一方、関係者によると、日本の国税当局はアマゾン側にビジネスの実態に即した納税手法に改めるよう要望していたという。
グーグルとフェイスブックも同様の動きを見せる。グーグルは19年4月から、主力の広告事業で日本法人が日本国内の契約を結ぶことにした。以前は日本の事業の大半はシンガポール法人が契約し、日本以外で売り上げも計上していた。今後は日本法人の収益や納税額が増える可能性が高い。
フェイスブックの日本法人は納税方針について「見直しを検討している」と話す。日本など米国以外での売り上げを税率が低いアイルランド法人に一括計上してきたが、米本社は17年12月に「今後は各国で税金を支払う」との考えを示した。
ネット事業は各国に工場などを構えなくても海外展開でき、低税率国に利益を集めやすい面もある。税引き前利益に対する税負担の割合は、日本の上場企業が19年3月期で平均28%なのに対し、米ITは10%台だ。
一方、国境を越えた節税に積極的な米ITには「税逃れ」との批判も強い。経済協力開発機構(OECD)と20カ国・地域(G20)は多国籍企業の税逃れを問題視し、国際的な課税ルール整備の報告書を示した。G20は20年までに「デジタル課税」に関するルール作りを進め、仏など独自に課税を強化する国もある。
米IT大手は日本で納税を増やすだけでなく、各国で対応を進めている。アマゾンは19年9月に英国で納税額を自主的に公表した。英国の事業規模は日本と近く、18年の納税額は2億2千万ポンド(約310億円)だった。国際的なルールが厳しくなり過ぎないように、協力的な姿勢をアピールする狙いもありそうだ。
ただ、今後も日本での納税額が増えるかは不透明だ。国税庁出身の山川博樹税理士は「データ分析技術の使用料などで米本社への支払いがかさめば、利益の多くが移され、納税額も限られる可能性がある」と話す。トランプ政権の減税策で米国の法人税の実効税率は大半の州で30%を切り、海外子会社からの利益移転もしやすくなっている。
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