国土交通省は、ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)、燃料電池車の存在を人工音で知らせる「車両接近通報装置」の搭載を、自動車メーカーに義務づけることを決めた。モーターで走るため走行音が静かすぎて、視覚障害者らが接近に気づかず、危険との声が強まっているため。2018年3月以降に国の認証をとって発売される新型車が対象になる。

 音が出る装置自体は、国交省が10年にガイドラインをつくり、普及を促してきた。現行の新車には全てのメーカーで全車標準装備されているという。だが、手動で音を止められるため、作動させていない車も多く、視覚障害者らから「いきなり脇を通過するのでヒヤッとすることがある」との声が出ていた。

 18年3月以降の新型車を対象とする新規定では、手動で音を消せなくなるうえ、音量も現在のものより大きなものを義務づける。今月中に、道路運送車両法に基づく車の保安基準を改正する方針だ。

 ログイン前の続き国交省は09年、HVなどの接近に気づくかどうか、視覚障害者15人を含む40人を対象に実験。すぐ横を通過した場合、時速25キロでは大半の人が気づいたが、10キロ以下になるとHVは気づかない人が多くなり、EVには誰も気づかなかった。低速のときほど音が小さく危険なため、新基準は、発進時から時速20キロまで音を出させるようにする。

 音量は、これまでのガイドラインでは「エンジンで時速20キロで走行する程度」を目安としてきたが、新基準は10キロで走行時は50デシベル以上、20キロでは56デシベル以上と細かく規定。56デシベルはエアコンの室外機の音量に近く、現在搭載の装置より大きな音になるという。周波数(音の高さ)も、聞こえやすい値を規定する。

 日本自動車工業会の推計値(15年度)では、HVは約573・9万台(全体の約7%)、EVは約8・4万台(同0・1%)、燃料電池車は約900台普及している。

 視覚障害者は義務化を歓迎する。全盲の浜田登美さん(61)は11年12月、自宅がある神奈川県藤沢市の路地でHVに気づかず、ぶつかって転倒、気を失って頭を7針縫うけがをした。「音を鳴らしていない電気自動車が近づいても全く気づけない。命に関わる問題。聞こえやすくなり、運転手が勝手に音を切れなくなるのは本当にありがたい」と話している