日本の国語・漢字行政ははっきり言ってなっていないなと常々感じております。
それは当用漢字から始まっています。当用漢字は当座の用に足りる漢字のその名の通りいい加減に作られた漢字の集合です。「国語の民主化」の名の下に、理のない簡略化、漢字の利用の制限を行い、日本語の変質を招き、国語の断絶と混乱を作ってしまいました。理のない簡略化は漢字の古代字形との繋(繫)がりを失い漢字の体系を学びにくくしています。漢字利用の制限のため無意味な言い換えや漢字の入れ替えを行い、結果戦前の文章が読みにくく感じられるようになってしまいました。
コンピューター上のJIS漢字の混乱も戦後の漢字行政が悪影響を与えています。日本には長らく常用漢字以外に正式な漢字の字形がありませんでした。実際に日本語で文章を書くには常用漢字だけでは足りませんから、常用外の漢字もJIS漢字に収録されています。しかし常用外の漢字には標準字形が無かったため字形に揺れや間違いがありました。読書家の方なら、印刷物で使われている漢字とコンピューターで出てくる漢字が違うことに気が付いていたかもしれません。この混乱が規格上是正されたのはなんと2004年のことです。
しかし、一度世の中に流通したものは完全に元に戻すことができません。女の子の名前として人気の「凛」は多くの辞書では「凜」ですが、コンピューターでは、「凛」が優先的に表示されます。
現在では、戦後の略字も旧漢字もすべて使えるようになっていますが、戦後の無駄を背負った分コンピューターで取り扱う漢字は、結果的に増えてしまっています。(中国ではもっと酷いことになっています。)
またコンピューターでは、「差別語」の自主規制も行われています。例えば、は多くの辞書にも収録されている日本語ですが、コンピューターでは変換表示されません。インフラというものは、何事にも中立的であるべきなのですが。。。
草々