駒澤大学「情報言語学研究室」

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かなづなゐ【桔槹】はねつるべ

2022-12-17 15:09:51 | 古辞書研究

 かなづなゐ【桔槹】
                                                                          萩原義雄識

  『倭名類聚抄』廿巻本と十卷本「かなづなゐ【桔槹】」

【翻刻】
廿卷本『倭名類聚抄』卷一水部第三水泉類第9
桔槹  辨色立成桔槹鉄索井也結高二音[和名加奈豆奈爲
十卷本『和名類聚抄』卷一水部第三水泉類[井附出]第9
桔槹 辨色立成桔槹加奈豆奈為吉高二音]䥫索井也

【訓読】
井[桔槹付]『四声字苑』に云はく、井[子郢反、和名は為(ゐ)]は地を鑿(ほ)りて泉を取るなりといふ。『弁色立成』に云はく、「桔槹[加奈豆奈為(かなつなゐ)」、吉高の二音]は鉄索の井なりといふ。
【語解】
    「桔皐(キツカウ)ケツカウ」は、『淮南子』〔新釈漢文大系第55卷六八八頁・明治書院刊〕
    小学館『日本国語大辞典』第二版
はねーつるべ【撥釣瓶】〔名〕支点でささえられた横木の一方に重し、一方に釣瓶を取りつけて、重しの助けによってはね上げ、水をくむもの。桔槹(けっこう)。*色葉字類抄〔一一七七(治承元)~八一〕「桔槹 ケッカウ カナツナヰハネツルヘ*太平記〔一四C後〕三九・自太元攻日本事「敵の舩の舳前(へさき)に、桔槹(ハネツルベ)の如くなる柱を数十丈高く立て」*俳諧・犬子集〔一六三三(寛永一〇)〕六・水鳥「水鳥のたぐひか是もはねつるべ〈宗恕〉」*田舎教師〔一九〇九(明治四二)〕〈田山花袋〉一二「桔槹(ハネツルベ)のギイと鳴る音がして」【発音】〈標ア〉[ツ]〈京ア〉[ツ]【辞書】色葉・和玉・天正・易林・日葡・書言・ヘボン・言海【表記】【桔槹】色葉・天正・易林・書言・ヘボン【槹】和玉【機械】書言【撥釣瓶】言海【図版】撥釣瓶〈和泉名所図会〉

かなづなーい[‥ゐ]【金綱井・鉄綱井】〔名〕(「かなつない」とも)鉄の鎖を綱に用いたはねつるべ。かなつなのい。*十巻本和名類聚抄〔九三四(承平四)頃〕一「井 桔槹附 四声字苑云井〈子郢反 和名〉鑿地而聚泉者也、弁色立成云桔槹〈加奈都奈為 吉高二音〉䥫索井也」*観智院本類聚名義抄〔一二四一(仁治二)〕「 カナヅナヰ」*改正増補和英語林集成〔一八八六(明治一九)〕「Kanatsunai カナツナイ(ハネツルベ)」【辞書】和名・色葉・名義・言海【表記】【桔槹】和名・色葉【桔槹・㮮槹】名義【鐵綱井】言海

    三巻本『色葉字類抄』〔前田本〕
    桔槹(ケ[キ]ツカウ)  カナツナヰ ハ子ツルヘ 搆機汲水具 〔卷上加部地儀門九二オ(一八七頁)2〕

として、字音の付訓は「ケ(キ)ツカウ」とし、「キツカウ」と「ケツカウ」両用の訓みを添え訓みとして示し、此の点を現行索引では見落としていることになる。そして注記和訓「ハ子ツルヘ」の語だが、次の観智院本『名義抄』には未収載になっていることから、より通俗性の高い和訓ということになる。このあとの内容注記説明の「機を搆へ水を汲む具」が何に依拠するかは今後の課題としたい。

    観智院本『類聚名義抄』〔正宗敦夫編・風間書房刊、色彩版・八木書店刊〕
    桔梗槹  結高二音/カナツナヰ上濁]〔佛下本一〇三3〕

とあって、『名義抄』標記語の中文字は「桔梗」の「梗」字であって、茲は「桔槹」にすべき衍字記載と見ている。



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