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山下吹(26) 真吹における炭の役割

2021-01-17 08:43:07 | 趣味歴史推論
 銅製錬の炭には、①燃料 ②還元剤 の二つの作用がある。
① 燃料としては、C+O2→CO2 +発熱 の熱で、鉑、鈹、鍰、銅を反応温度や、融液状態に保つ。
② 還元剤としては、Cや(C+O2→COで生成した)COにより、(C, CO) + (Cu2O,CuO)→Cu+CO2 の反応を起こし、酸化銅を還元して銅Cuとする。

 真吹法にしても還元法にしても、反応は、1100℃付近の高温状態にする必要があり、そのため、先ず炭は燃料として作用するする必要がある。
高温になった後、真吹では、炭は放熱分を補う燃料として作用すればよい。鈹(Cu2S)が酸素(O2)と反応し Cu2S+O2 →Cu+ SO2 銅が生成する。しかもこの反応は発熱なので熱の補給に役立つ。
一方、還元法(奥州吹)では、鈹(Cu2S)を焙焼して酸化銅(CuO,Cu2O)とした後、炭はこの酸化銅に還元剤として作用し銅を生成させる
   
 二つの製法を分かりにくくしているのは、 炭が燃料と還元剤の二つの作用をするからである。どちらも炭を使うのであるが、炭の作用としては違うのである。ただ炭を大量に使うのは、前段の素吹である。素吹で得られる床尻銅も、還元が起きて生成したのであろう。
古代、中世の製煉では、銅鉱石として酸化銅鉱(孔雀石(Cu2(CO3)(OH)2)、藍銅鉱(Cu3(CO3)2(OH)2)など)が用いられ、還元法で銅としていた。

 真吹法は、江戸初期に山下町(下財屋敷)の吹大工が発明したと推定される。なんともすごいことである。ドイツなど欧州では、ベッセマー法が発明される約250年後まで、還元法をしていたのである。そして、約270年後の明治人が、真吹は日本の大発明であると再発見したのである。明治の技術者、学者は、欧州に比べ約250年も前に日本人が真吹を発明し、多量の銅生産に寄与していたことに、驚きと誇りを持ったと思う。しかし同時に、これを近代的な大量製造方法に進化できなかったのを残念に思ったであろう。

注 
 まふき(まぶき)の漢字表記は当ブログでは、現在、住友史料館はじめ一般的に使われている表記をしている。
真吹-----鈹(Cu2S)を吹いて荒銅(Cu)を得る工程を指す
間吹-----荒銅(Cu)を吹いて精銅(Cu)を得る工程を指す
住友史料叢書の年々帳や別子銅山公用帳の古文書でも、江戸期には、間吹と書いて真吹をさす場合がしばしばあり、その指す意味を内容から判断する必要がある。ま吹というのもあり、これで、真吹を指したり、間吹を指したりしている。
また各地の銅山でも統一されていない。


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