虹色オリハルコン

命にエネルギーを与えるパワーの力

命からエネルギーを奪うフォースの力

どちらを選ぶかは自分次第

自然と経済の幸福な共存・バイオミミクリー

2010年10月06日 | 期待の技術
サイエンスライター ジャニン・ベニュス


プレミアム8<人物> 未来への提言「サイエンスライター ジャニン・ベニュス」を見た。
最近、何かとヘタレなので(笑)、暗いニュースやドキュメンタリーはなるたけ見たくない。そんな私が、新しい扉が開かれたような、久々にとても心躍るような気持ちになれた番組である。

日本語の古語である「まねぶ」という言葉が語源で、「まねる」と「まなぶ」という二つの言葉が派生したという。やっぱり、「真似る」ことと「学ぶ」ことは表裏一体なんだなあ・・・と、この番組を見ながらつくづくそう思った。

「バイオミミクリー」とは、ジャニン・ベニュス氏が考えた新しい造語であり、私たちには聞き慣れない言葉だけれど、日本語だと「生物模倣」と訳す。
つまり、バイオミミクリーとは、生物や自然のシステムを真似して、新しい技術に生かすという取り組み。



たとえば、ハスの葉の水をはじくシステムをまねた、布地の撥水加工。



電子顕微鏡で見たハスの葉の表面と、水をはじく仕組み


布地の表面に、ハスの葉と同じ加工をすることによって、化学薬品を使わずに撥水加工をすることに成功した。シンプルにして、エコである。



また、最先端の技術では、バックライトを使用しない液晶画面の開発がある。
青い光を反射し青く輝いて見えるモルフォ蝶の鱗粉(りんぷん)の溝をヒントにして、バックライトなしで使える新しい液晶画面を開発することができた。
バックライトがないから、消費電力も半分ですむうえ、太陽の下でも画面がよく見えるという利点がある。

その他にも、

● しぶきを上げずに水に潜るカワセミの姿から、時速300キロを誇る新幹線。
● サメの肌から、メダル続出の競泳用水着。
● 大群で泳いでもお互いが絶対にぶつからない魚群の動きから、ぶつからない車。

など、バイオミミクリーが基本になった、新しい技術は枚挙にいとまがない。

昆虫や植物など、自然の造形は、まさに、神の手によったとも言える、生きるための戦略的で示唆に富んだ機能を持っている。そこに気づき、学ぶこと、真似ることで、低コストで思いがけない新しい技術が生まれてくるのである。

べニュス氏は、バイオミミクリーには、3つの段階があるという。それは、

 1 形(構造)の模倣
 2 行動(製造過程)の模倣
 3 生態系(システム全体)の模倣


私がとりわけ心を奪われたのは、3段階目の生態系の模倣である。

トトロの家の記事に書いたように、私にとって、「発展・開発」は必ずしもよい言葉とも思えず、むしろ環境にとっては害悪とまで思っていた。
経済と環境の両立がどこまでできるのか、どこに着地点を持っていくのかわからない・・・わかっていることは、今までのようなやり方は限界がある、ということだけ。
落ち着く先は、どこなんだろうと常々疑問ではあったのだけれど、このべニュス氏の提唱した、生態系の模倣は、ものすごくブレークスルーしたというか、もう素晴らしいなと、個人的には、拍手喝さいだったのだ。(と、思わず太文字で決めてしまいたくなるのだった・笑)

番組では、タイルカーペットの全世界シェア6割を誇る「インターフェイスフロア社」という会社を紹介していた。この会社は、「自社製品による環境の負荷をゼロにする」という目標を掲げており、ゴミを出さないように自社製品は徹底的にリサイクルする、また在庫の無駄を抱えないように、フレキシブルな対応のできるデザインにする、などの工夫をしていた。



このデザインにしても、バイオミミクリーの考え方を使った。森一面に広がる落ち葉をヒントに、アイデアが生まれた。つまり、落ち葉は、どれ一つ同じように落ちてはいないのに、どこを見ても違和感なく、一つのデザインに見えるということ。
ゆえに、どこのパーツが損なわれたとしても、デザインの違和感なく在庫のパーツで補充がきき、在庫の無駄がなくなった。

経済にとって、自然は、破壊したり搾取する対象であった。しかし、バイオミミクリーの考え方を突き詰つめてゆくと、すべてのバランスがとれた自然の生態系を模倣それぞれが助け合いながら、お互いに利益を得る・不要なものは何一つない(ゴミを出さない)という、未来の経済の姿が見えてくる。それが非常に素晴らしいと思う。

また、べニュス氏は、バイオミミクリー研究所を設立、情報を世界に発信するとともに、さらに踏み込んで、名古屋で開かれるCOP10を前に

企業が、利益の一部をアイデアを利用した生物の生息環境を守るために還元する、国際的なルール作りや、現在アメリカで行われている自然を開発した企業は、同じ規模の広さ、自然を再生することの義務化、これを全世界のルールとすることを、提唱している。
これこそ、経済と環境をつなぐ橋渡し役である。

べニュス氏は、いつか、人間社会全体が、自然の生態系にどんどん近付いてゆき、街も、森のように空気や水を浄化する機能を持つことを夢見ているという。そこでは、人類が、将来もずっとこの地球上に生き残ってゆけるはずだ、と。
私もそんな未来に、ちょっこし希望が見えてきた。



★参考サイト
フォトレポート:自然をまねるバイオミミクリーを使った工業デザイン 

★関連記事
「リンゴが教えてくれたこと」自然は何一つ無駄なものはない
・・・木村さんのりんご畑は、3段階目の自然の生態系の模倣そのものになっていますね
2100年、未来への旅
・・・循環型社会へ、未来へのたたき台のような本を紹介してます
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ロボットジャパン

2010年09月20日 | 期待の技術


写真:読売新聞

ガンダムへ!100キロ運べる二足歩行ロボット(読売新聞) - goo ニュース
千葉工大、可搬重量100kgの大型2足歩行ロボット「core」を開発 (マイコミジャーナル) - goo ニュース



スリムで軽快、人型ロボット=家庭や職場への導入実験台―産総研と川田工業が開発(時事通信) - goo ニュース


くしくも同じ時期に発表された2種類のロボット。日本のロボット技術は、着々と進んでいるのですね。
上の100キロ運べるという、二足歩行ロボット。「最終的には、人が乗れるようになって高齢者などが行きたいところに行ける未来の乗り物を作りたい」と、未来ロボット技術研究センターの古田貴之所長は言われています。
個人的には、道路を作らなくても重たい物が運べることから、林業などにも活躍してくれるんじゃないかと期待してしまいます。

最先端の技術はえてして、武器や兵器とも隣り合わせでもあります。
技術を、すべてのものの幸福につなげる。技術者には、そういう確固たる信念が望まれます。



★関連記事
 生き方をもって遺言とする・・・上の写真の古田さんが影響を受けた本について。

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太陽エネルギーのもう一つの選択・太陽熱発電

2010年01月31日 | 期待の技術

   「私だったら太陽と
   太陽エネルギーに
   賭けるね。ものすごい
   動力源じゃないか!」
 トマス・エジソン  


トップの写真は、「私たちの選択」より、スペインのセビリア近郊にあるパワータワーのまわりに規則正しく置かれた鏡です。
これらの鏡が、高さ90メートルの塔に太陽のエネルギーを集め、このエネルギーで水を熱して蒸気に変え、電気タービンを回転させます。




アル・ゴアの「私たちの選択」の中では、いの一番に太陽エネルギーの可能性について述べられています。太陽光発電、太陽熱発電、さらに宇宙太陽光発電まで・・・まあ、宇宙の方はまだまだ先の話のようですが。
そして、世界が決意するならば、太陽エネルギーが世界の電力の大半を占めるとまで言っています。それだけ、実現の可能性の高いエネルギーなのです。
太陽は、地球とともにすべての命の源でもあるのですから、枯渇することはありません。

昨日の毎日新聞に、こんなニュースを見つけました。

<太陽熱発電>30年ぶり復活 東工大、低コスト方式開発 山梨に実験施設
2010年1月30日(土)18:00
 太陽熱でタービンを回し発電する「太陽熱発電」計画が、国内では約30年ぶりに復活する。石油ショック後の81年、香川県で試みられたが、採算面などの理由で中止。その後、東京工業大を中心に技術改良が進み、低コストの新方式を開発した。国内有数の日照時間を確保できる山梨県北杜市に、実験プラントを建設する計画が進んでいる。【田中泰義】

 計画を主導するのは玉浦裕・東工大教授(エネルギー転換)らのチーム。「温室効果ガス排出ゼロ」を掲げて開発が進むアラブ首長国連邦のアブダビで試験を重ね、実用化が期待できる出力が得られる見通しが立った。

 太陽熱発電は発電中に温室効果ガスを出さないうえ、「太陽光発電」と違い、蓄熱することで曇天や夜間でも発電が可能だ。欧州の業界団体などによると、世界の推定総発電規模は現在、原発4基分と少ないが、50年には世界の総発電量の最大12%を占めるまでに成長すると予想している。

 アブダビでは、地上に設置した1386枚の鏡で太陽光を受け、高さ20メートルのタワーの先端に集めた後、再び鏡で地面に下ろし、その熱で特殊な溶液を500~1000度まで加熱。これを熱源にタービンを回して発電する。時々刻々と動く太陽を追尾できる独自の反射鏡を開発し、集熱効率を高めている。最大出力は100キロワットと電子レンジ200台分だが、山梨の実験プラントは約3倍の規模にし、将来的には実用に堪える100倍の出力を目指すという。

 チームによると、すでに商業化されている各国の発電コスト(トラフ型)は、1キロワット時当たりで火力発電の4倍程度とされる。

 玉浦教授は「新型はその半分を目指す。環境税が導入されれば、温室効果ガスを出す火力発電に課税されて発電コストが上がるので、両者の差はさらに縮まるだろう。エネルギーの安全保障上も重要な発電手段になるはずだ」と話す。


-----------------------

   

今まで、自然エネルギーを利用した発電方法は、何度も俎上に上がっては、コストがかかることと、その発電量の少なさから、主流にのることができませんでした。
この太陽「熱」発電も、採算が合わないなどの理由で、開発中止となってはや、30年近くたってしまいました。

それが、このたびこの太陽熱発電、「温室効果ガス排出ゼロ」を目指して東工大の研究チームがまさに石油と切っても切れない中東のアラブ首長国連邦のアブダビで試験を重ね、以前より低コストで、かつ実用に堪える見通しが立ってきたとのこと。
よかったですねえ。


★関連ニュース
 砂漠緑化計画:集光型太陽熱発電(ナショナルジオグラフィックニュース)

★関連記事
 アル・ゴア著「私たちの選択」

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奇跡の杉

2009年12月03日 | 期待の技術

奇跡の杉―「金のなる木」を作った男 船瀬俊介(著)


前の記事で少し紹介した「奇跡の杉」という本。リンゴの木に起こった奇跡は、杉の木にも、起こっていたのです。
このところ、こういうことがどんどんわかってきて、やっぱり21世紀だなあと単純にうれしい私です。
どういうことなのかと言いますと。

本の帯には、杉の学名「クリプトメリア・ジャポニカ」は、”隠された日本の財産”という意味。すなわち「杉は宝だ」と、書かれています。

中小企業「愛工房」の社長・伊藤好則さんが、杉の奇跡的な乾燥技術を作ったのです。
もともと伊藤さんは、化学物質過敏症の人たちの問題から、防腐剤など薬剤にまみれた輸入材の使用をやめて、日本自前の安全な木材の必要を痛感し、門外漢ながらこの取り組みを始めたものでした。

今現在の主流の乾燥方法は、100℃の高温の蒸気で短期間に乾燥させる方法です。
そしてその方法以外の方法はないものと、誰もが疑うことはありませんでした。(戦前は自然乾燥だったが)
ところが、伊藤さんは、今まで、無理だ、信じられないと思われてきた杉の赤身の乾燥を、自然界の魔法の温度45℃で成し遂げたのです。
その結果、今までの杉の概念を覆すことが起きました。

高温乾燥の杉は、表面は乾くけれど、内部はパサパサで、粘りがないので耐久性能もなくなる。水分といっしょに、木本来が持っている、防虫・防菌成分もぬけてしまい、カビがはえ、ダニがわく。それで業者はひそかに、防腐剤・防カビ剤・防蟻剤などを注入、これがシックハウスの原因ともなってしまう。
45℃の乾燥だと、中心から水分がぬけていって全体が均一に乾燥する。防腐効果のある芳香な精油成分は、全体に行き渡り、材木の表面のつやまで出来上がる。
色・艶・香りが高温乾燥の杉とまったく違うものになるという。
しかも、この方法だと、乾燥スピードは今までの20倍も速く、超低コスト、全体に精油成分が行き渡っているため、乾燥後水分を再吸収することが少なく、加工後の変形(反り)が出ないなど、良いことばかり。

・・そして、今までの乾燥方法では、「草」とまで言われ捨てられていた杉の間伐材すら、銘木に変わってしまったのです。まさに信じられない、奇跡の杉。

漢方の世界では、45℃は魔法の温度と言われ、「薬草が変色しない」「薬効が生きている」乾燥温度なのだということです。
同様に、杉も薬草の一種と思えば、杉の木本来が持っている薬効をも生かしている温度なのでしょう。
私達は、今まで、杉が持っている本当の力を知らずに、もったいない使い方をしていたのかもしれません。
詳しくは、本書をぜひ読んで欲しいと思います。
でね、この愛工房の杉で建てられた家に住みたい、と思いましたよ。
なんたって、家の中で、本当に森林浴ができるんですもの。

伊藤さんの「木だって生き物。地球上に存在しない高温はかわいそうだ」という言葉が、心に残りました。
こういう気持ちが、奇跡のような発見、発明を成し遂げる原点になるんだと、思いました。



鳩山首相は先日、「日本は資源がない国だから科学技術は大切である」といっていましたが、日本の先人が残してくれた杉の木という資源が、十分に有効活用されずに眠ったままです。
もちろん、「奇跡のリンゴ」の木村秋則さんや「森は海の恋人」の畠山重篤さん、この「奇跡の杉」の伊藤好則さんなど、そしてこれからまだまだ現れてきてくれるだろうパワーの「人」という資源も、日本にはあります。

 奇跡の杉 「金のなる木」を作った男 
    目次 
      第1章 「乾かない」から、使わない?
      第2章 木が微笑んだ発明
      第3章 「杉おこし」に挑んだ男
      第4章 “山の草”がお宝になった
      第5章 この木材を使いたい!
      第6章 「杉の国」の夜明け


★関連サイト
 愛工房 http://www7a.biglobe.ne.jp/~ishikou/
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海に鉄をまく・再び

2009年04月04日 | 期待の技術
以前、「海に鉄をまいてCO2を吸収する藻を増やし、藻は最終的に海底に沈むのでCO2を隔離できる」という温暖化対策の取り組みを紹介しました。
ところが、その実験が失敗に終わった…なんていうナショナルジオグラフィックの記事が出ていました。あらららのら~。

どういうことなのかと言いますと、期待していた藻ではなくて、エビに似た生き物が好む別の種類の藻が増殖して、300平方キロメートルに成長した藻を、食べつくしてしまった…ということなのです。

 
これが、藻を食べ尽くしたというカイアシという甲殻類 


まあ、自然は、そうたやすく人間の思惑通りにいくはずがありません。
でも、記事をよく読めば、成功した例もあり、早急に失望する必要はなさそうです。
第一に、CO2を固定化するということには失敗したとしても、魚資源の減少が心配されている昨今ですから、食物連鎖の一端を作り、生き物が増えるならそれもまた、ありがたいことじゃないかと、個人的には思ってしまいました。

この実験の結果を受けて、鉄理論に関して学者の間では意見は分かれているそうですが、それであきらめたらそこでお終いになります。
さらに研究を重ねて、ぜひ、継続していただきたいと、地球人類の一人として切に思います。 


★関連記事
 山に木を植え、海に鉄をまく人


以下、記事全文

温暖化に有効?鉄分の投入と藻の増殖
2009年3月30日20時55分

3月、海で行われた大規模な実験が失敗に終わった。地球温暖化と戦わせるため、人工的に藻の成長を促進したところ、エビに似た生物に300平方キロの広さにわたって食い尽くされてしまったのだ。これにより、藻を増殖させて気候をコントロールするという計画に重大な疑問が投げ掛けられた。

 長年、科学者は大量の鉄を海に投入し、藻の成長を促すことを提案してきた。藻は光合成の際に大気中から温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)を吸収する。そして最終的には、たいてい海底に沈み込むため、CO2を永久に隔離する働きをもつ。しかし、藻が光合成を行う際に必要とする鉄分は、海にはあまり含まれていない。そこで、海に“鉄の肥料”を与えることが提唱されてきた。

 こうした実験は既に10回以上行われており、中には成功例もある。しかし、生態系に予測不能な反応が起きるといった予期せぬ結果について警告する専門家もいる。

 ドイツ北部の湾岸都市ブレーマーハーフェンにあるアルフレッド・ウエゲナー極地海洋研究所(AWI)が23日に行った発表によると、南大西洋で最近行われた大規模な硫酸鉄の投下で、まさに予期せぬ結果が生じた。

 硫酸鉄とは粉々になったフロントガラスを思わせる緑がかった結晶で、鉄分が不足した人によく与えられる。そして、藻の成長を促進するために選ばれるのもこの硫酸鉄だ。

 ドイツとインドの共同研究チームは数週間にわたり、ドイツの調査船「ポーラースターン」号で、海水に硫酸鉄10トンを混ぜる作業を行った。人工的に鉄分を増やしたこの海水は、アルゼンチンの沿岸水域を出た大西洋に戻された。

 実験では予想通り、CO2を吸収する藻が大量に発生した。ただし、望んでいたものとは違う藻であった。研究チームは珪藻を期待していたが、ほとんどが小さなハプト藻だった。ハプト藻は通常、沿岸の海のみに生息し、カイアシという小さいエビに似た甲殻類の好物となる。

 南大西洋にハプト藻が大発生すると、すぐさまカイアシがむさぼりついた。こうして、地球温暖化の対抗手段となり得る藻はあっという間に消えてしまった。「すぐに海洋生物に食べられたことは、炭素固定の観点からいうとうれしいことではない」と、AWIで生物科学の責任者を務め、今回の実験にかかわっているウルリッヒ・バスマン氏は言う。

 今回の結果に関して専門家の間で意見は割れている。アメリカのインディアナ大学パデュー大学インディアナポリス校で地球科学の教授を務めるガブリエル・M・フィリッペリ氏は、「新たにわかったのは、“投入した鉄の重さ=減少する炭素の量”という一般的な計算はおそらく成り立たないということだ」と言う。同氏は、「地球温暖化の解決策として、鉄の肥料の有効性が疑われる結果だ」と指摘する。

 それでも、鉄の肥料の支持者たちは希望を失っていない。「鉄の肥料が炭素を隔離する戦略として有効・無効の判断を下すにはまだ材料が足りない」とアメリカ、カリフォルニア州にあるモスランディング海洋研究所の所長ケネス・コール氏は言う。同研究所も2002年、規模こそ小さいものの、南極の水域に藻を大発生させている。

 コール氏は今回の実験の成果として、鉄が藻の大規模な成長を促進できると示されたことを挙げる。「炭素を吸収する植物が必ず生物に食べ尽くされるとは限らない」
と同氏は言う。Kelly Hearn for National Geographic News
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