よりみち散歩。

日々の暮らしのなかで心に浮かぶよしなしごとを、こじんまりとつぶやいています。お役立ち情報はありません。

東京新聞「筆洗」より。日本は老化していくのか?

2020年09月07日 | コラム
新聞のコラムを時々ノートに書き写している。
文字を想起する、文章構成力が上がる、時流に敏感になる…などなど恩恵はさまざまにある。
そしてリズム感のある文章と、そうでない文章もある。
コラム担当の方は新聞社でもトップクラスの人ばかりだというが、東大卒を集めても優劣の差があるように、やはり各紙を並べてみると差があることに気づく。書くと、文字のリズムが伝わってくるのだ。

さて、昨日の東京新聞の筆洗

電車の中での失敗はどなたにでもあるだろう。作家の絲山秋子(いとやまあきこ)さんは電車の中でうとうとしていたそうだ。寝ぼけて、はっと顔を上げるなり、すぐ前に立っている会社員らしき方にこう力強く言ってしまったそうだ。「平沼さんなら大丈夫ですよ!」
突然、そう報告された会社員は驚いただろう。不思議なことに、絲山さんには平沼さんという知り合いはいないそうだ。どの時間帯の電車だったか、お書きになっていないが、平日の終電に似合いそうな話か。帰路についた安心感に加え、日ごろの疲労。深夜の電車にはそんな珍事が起こりそうである。
その終電。JR東日本は山手線や中央線など東京近郊の各路線で終電を三十分程度早めると発表した。
コロナの影響などで深夜の電車利用は減少している。在宅勤務も増え、働き方改革で昔に比べれば、残業もしにくい時代である。JRとしては収束後も利用者回復は見込めないと判断し、終電を早め、その分、保守点検の作業効率を上げたいらしい。
こういう動きは全国に広まっていくのだろう。健全な方向ともいえるが、なにやら、日本の老いを少々感じる話でもある。
終電を気にしながら夜遅くまで働き、あるいは遊び、電車の中ではクタクタ。ほめられたことではないが、それが苦にならぬ時代はとうに過ぎ去ったか。三十分の繰り上げに、日本が急に年をとった気がする。


書き写しながら「多分筆者は50代後半くらいの男性だろうな」と推測した。
若い人が「力の限り働き遊びクタクタになる」ことを懐かしむようなことは書くまい。
かなり企業戦士として活躍した方だろう。

私は逆に終電が早まることでダラダラした時間の使い方が見直され、いい意味で活性化するのではないかと期待しているので、「終電が繰り上がり、日本が急に年を取った」と憂える感性にやや違和を感じた。

それを言ったら「人生は楽しむためにある」と主張し、早々に店じまいするラテン系の人たちは、老化していることになる。
今はいろいろ錯綜しているが、良い方向に向かっているように感じているので、ちょっとこのコラムは不思議に感じた。

細かいことだが、書き写しながら「そう報告された会社員」が引っかかった。
私なら断言を使うとか、そんなことを考えるのが、結構脳トレになるのだと思う。