フルーツグラノーラの朝食で5感のうち
2つが満たされ幸せホルモン分泌に効果
オキシトシン研究の第一人者・山口創教授に聞く
【食と健康 ホントの話】
幸せの形は人それぞれだが、脳科学の視点で考えると、
幸福物質とも呼ばれる3種のホルモンが脳から十分に分泌されることで生じるという。
そのホルモンとは、セロトニン、オキシトシン、ドーパミンの3種。
セロトニンは心身が健やかな状態、心が安定している状態で、ベースの幸福感ともいえる。
オキシトシンは、人との温かい関係、愛情、つながりを感じるときの幸福感だ。
ドーパミンは、何かを獲得しようとしているときに感じるドキドキするなどの高揚感だ。
「恋愛で例えると、付き合い始めのドキドキ感は、ドーパミン的幸福を感じている状態です。
長く付き合っているうちに、あるいは結婚したりして信頼関係を深めていったとき感じるのが、
オキシトシン的幸福です」 こう説明するのは、オキシトシン研究の第一人者、
山口教授は、日常生活の中で、ストレスなく穏やかな幸せを感じ続けるためには、
セロトニンとオキシトシンが大切だと話す。
2種類のホルモンを十分に分泌するための方法は、いくつかわかっている。
セロトニンは、朝日を浴びる、朝食を取る、リズミカルな運動をする、などが知られている。
研究が進んでいるのがオキシトシンで、
「5感を楽しませることが大切」であることがわかっているという。
たとえば触覚であれば、人とのふれあい、スキンシップがよいことがよく知られている。
山口教授によると、ハグやキスを毎日している人は免疫能が高いという
米国の研究もあるそうだ。
ただし、コロナ禍では家族以外とのスキンシップはとりづらいので、
ビデオ通話や電話などで心のスキンシップをとることでも効果はあるという。
ペットをなでることもよいことで、
とくに飼い主との絆を築く犬とのスキンシップはより効果的。
ペットを飼っていない一人暮らしの人でも、
自分で自分を触ることでオキシトシンが増えることもわかっている。
スキンケアをするときやハンドクリームを塗るときにやさしく触ってみたり、
セルフマッサージをすることもよいという。
その他、美術館に出かけてみたり美しい夕日を見たりして視覚を楽しませたり、
好きな音楽、落ち着く音を聞いたり、コンサートに出かけたりして、
好きなアーティストなどの「推し活」をするのもおすすめだ。
味覚、嗅覚については、山口教授がヒトでの研究結果を発表している。
朝食の主食摂取によって、オキシトシンが分泌されるかどうかを検証。
主食としての試験食は、ごはん、パン、オートミール、
フルーツグラノーラの4種類と、非摂取の5パターンを用意。
「朝食で実験をした理由は、オキシトシンは1日のうち朝に最も多く分泌されるからです。
主食は日本人がよく食べているものを用意。主食のみにしたのは、忙しい朝でも食べやすく、
かつ1日の活動に必要なエネルギーをしっかり得られるからです」
その結果、オキシトシンの値が最も多かったのがフルーツグラノーラという結果に。
「ほどよい甘みと香ばしい香りという、5感のうちの2つが満たされていることが
この結果につながったと考えられます」
セロトニンの分泌も考えると朝食は楽しんで取ることがよいようだ。
来週はオキシトシンのダイエット効果について。
(医療ジャーナリスト・石井悦子)