中国は16日、4～6月の国内総生産（GDP）を発表する。前年同期と比べた実質成長率は2四半期ぶりにプラスに転換しそうだ。新型コロナウイルスの感染拡大を抑えこみ、先進国に先駆けて成長軌道に戻りつつあるが、肝心の雇用の回復は遅れている。1～3月の成長率は新型コロナの影響でマイナス6.8%と四半期の成長率をさかのぼれる1992年以降で初のマイナスだったが、4～6月はプラス成長に戻るとの見方が多い。
回復を先導したのは生産だ。工業生産の前年同月比増減率は4月にプラス転換し、5月は4.4%増となった。製造業の景況感も改善しており、6月の工業生産も堅調だったようだ。政府が操業再開を後押しし、鉄鋼、半導体、自動車などの生産量が増えた。投資も回復に向かっている。インフラ投資の前年同期比減少幅は1～3月の20%から1～5月は6%まで縮んだ。建設業の景況感は良好で、5月のショベルカーの販売台数は前年同月比68%も増えた。全国人民代表大会（全人代、国会に相当）が終わり、6月から公共工事の執行が加速した。
見逃せないのは不動産販売の好調ぶりだ。5月は面積で前年同月比15%増、金額は同20%増と過熱気味だ。バブルを警戒した売買規制を地方政府がこっそりと緩め、中央も黙認したようだ。家電、家具、建材の5月の販売額もそろってプラスに転じた。新型コロナで非接触を求める流れに乗り、インターネット産業も上向きだ。1～5月の小売売上高（社会消費品小売総額）は前年同期比14%減ったが、商品のインターネット販売は12%も増えた。「生産、消費、投資いずれの指標も着実に戻りつつある」との声も。
気がかりなのは経済の回復が雇用に波及していないことだ。5月の都市部の新規雇用者は106万人と前年同月より23%減った。経済指標が軒並み改善するなかで減少幅が4月（7%減）より拡大した。北京市に住む斐雪さんは最近、SNS（交流サイト）で食品を売り始めた。3月に勤めていた旅行会社がつぶれ、外資系企業の事務職を探すが見つかっていないからだ。夫も2月に勤め先が倒産した。特に厳しいのは旅行、外食、小売りだ。（＊ 日経 記事より）写真：街中ではテナント撤退で「部屋貸します」の貼り紙が目立つ（6月、北京市内） . . . 本文を読む
