事実は、東京近郊の私鉄沿線にある、とある小駅だ。そこは広域にわたる「丘陵」の一角にあったので、駅を挟んで、決して高くも険しくもないが、丘か、または樹木が茂っているところから山と呼べなくもないこんもりした土地が迫っていた。
沿線では駅が特定されると、で、線路のどちら側ですか? というのがおきまりの質問で、ああそうですか、と言えばお互い知らないし、えっそうなんですか、と言えば同じ側というのもきっと同じなんだろう。
私にとっての「同じ側」は、駅の東にあった。駅前の、いまだに細いバス通りを抜けて少し坂を上り、続いて長く下ると、駅前とはまた違った雰囲気の住宅地が現れてくる。その中央を、曲がりくねった川が流れていて、太い支流とYの字に出会う。
そのあたりの子供たちが通う小学校には、体育館とプールがあり、桜の木が4本あった。
「校門のところがスロープになっていました」
「そうそう、そこで『かがくとがくしゅう』を売っていたんです」
「あ、そうでした」
「裏門も広くて、百葉箱がありました」
「そういえばそうでしたね」
「ねえねえヒビキくん、ママと先生は同じ校舎で、同じ遊具で遊んでたんだよ」
とバイオリンの先生は言った。そうなのだ、私とヒビキのバイオリンの先生は、驚いたことに、なんと同じ小学校の卒業生だったのである。
ローカルな話はまだまだつづく。
とある小駅のむかしばなし
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沿線では駅が特定されると、で、線路のどちら側ですか? というのがおきまりの質問で、ああそうですか、と言えばお互い知らないし、えっそうなんですか、と言えば同じ側というのもきっと同じなんだろう。
私にとっての「同じ側」は、駅の東にあった。駅前の、いまだに細いバス通りを抜けて少し坂を上り、続いて長く下ると、駅前とはまた違った雰囲気の住宅地が現れてくる。その中央を、曲がりくねった川が流れていて、太い支流とYの字に出会う。
そのあたりの子供たちが通う小学校には、体育館とプールがあり、桜の木が4本あった。
「校門のところがスロープになっていました」
「そうそう、そこで『かがくとがくしゅう』を売っていたんです」
「あ、そうでした」
「裏門も広くて、百葉箱がありました」
「そういえばそうでしたね」
「ねえねえヒビキくん、ママと先生は同じ校舎で、同じ遊具で遊んでたんだよ」
とバイオリンの先生は言った。そうなのだ、私とヒビキのバイオリンの先生は、驚いたことに、なんと同じ小学校の卒業生だったのである。
ローカルな話はまだまだつづく。
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