貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

オイル・イン・クォーツ

2024-09-06 09:29:05 | 単品

この頃あちこちで見ますね。産地もいろいろ。割合安い。
初めて見た時はちょっとびっくり。はあ? 石油入りだと?
まあ水入りもあるから油入りもありか。
けど、「石油が入ってます」「蛍光します」と言われても「まあな」みたいな感じでした。
たまたま在りし日の五反田さんで10個入り900円というのがあったのでゲット。(安けりゃ買うんかいw)

立派に蛍光します。ちなみに「蛍光する」という動詞は正しい日本語ではないらしい。でもまあいいでしょ。

面白いですね、と。
ところが先日、立川のお店に行ったら、何か雰囲気のある水晶がある。見るとオイル・イン・クォーツ。へえ、と思って。安かったし。(そればっかや)

これ、ちょっと「ガーデン・クォーツ」っぽい。この頃は何でも混じり物があればガーデンと言うみたいだけど。クラックとインクルージョンがあいまって、赤や青や虹がきらめく。
やや薄いけど蛍光もする。

いいではないですか。油入り云々はなくても、美しい水晶として通る。
ちなみにこれはお手頃品のガーデンクォーツ。中の「庭」が美しいのはなかなかないし、高い。

     *     *     *

しかしですね(まだ続くのかよw)
油や水が入るというのはどういうこと?
小さな鉱物片が入るというのはまだわかる。かけらがへっついてしまって「なんか邪魔だなあ」と思いつつそれを呑み込んで結晶がえっさほいさと発達するというのはあるでしょう。
しかし水や油だったら、結晶形成は簡単に排除できるでしょうに。
つまりは、前記事に書いたように、結晶は案外ささっとできるのでは? 急に濃い熱水が来たので水や油お構いなしにシリカが手を繋いでしまったのではない? 違いますかねえ。
ツイッターでリポストしましたけど、今インドでは人工ダイヤモンドの生産が盛んで、ダイヤ市場が揺らぐほどになっているとか。そこでは8週間でダイヤはできるらしい。
結晶が整うように慎重にやって8週間。地中の特殊な環境だったら、あっという間に結晶ができてしまうかもしれない。
本当のところはわかりません。
けど水入り・油入り水晶というのは実に謎めいているように感じます。


ガネーシュヒマール産水晶

2024-09-04 20:33:36 | 単品

前々記事と同じくガネーシュヒマール産の水晶。同じくパフェさんから。
「ゴールデン・ヒーラー」。Hindung, Dhading Dist. Bagmati Pradesh産。

《ネパールとチベットの国境にある7000メートル級の連峰、ガネーシュヒマールの麓で採掘された有名なガネーシュヒマール水晶の中でダーディン郡ヒンドゥン産の水晶です。
本品は褐鉄鉱に染まったゴールデンヒーラー型の水晶でマイカなどの影響で美しい照りがあります。また、水のように透き通った透明度が素晴らしいポイントです。
ネパール産水晶は同国の輸出管理が厳しく採掘コストも上がっているため最近では高騰し流通量も激減しています。》

「ゴ……」の定義というのはよくわからない。赤系のキラキラした皮膜があるものっぽい。まあ「パワーストーン」系の言葉のようですね。
名前はともかく、魅力的な色と輝きです。


もう一つ、同産地の無色水晶。おまけにいただいたもの。

なんか姿がとても美しい。取り立ててすごいというものではないけれど、それなりに味があっていいですねえ。
兄弟水晶なのに片方は横の条線がくっきりでもう一方はつるつる。どうしてこういう違いができるのでしょうかね。(細けえなw)




産地のガネーシュ・ヒマールというのは、カトマンズのすぐ北側に位置するヒマラヤ連峰の一部。あまり有名な峰はないみたい。行ったことはないけどネパールには若干思い入れがあるので、ネパール産水晶をゲットできたのはほのぼのと嬉しい。

ヒマラヤ水晶というのは、なかなか難しい。どこまでがヒマラヤだよ、とか、産地の特色というのはあるのかないのか、とか、産地偽装は心配ないのか、とか。詳しい記事はこちら
ややこしそうだし、無色水晶には足を踏み入れるつもりがなかったので、集めてはいない。

前記事でちらりと書きましたけど、ヒマラヤ山脈というのは、よく知られているように、インド亜大陸とユーラシア大陸が衝突して盛り上がったもの。割合新しい時代の形成で、今もかなりの勢いでガンガンとせめぎ合っているらしい。
で、途中にあったテチス海が消滅、その海底にあった上部地殻が盛り上がったので、ヒマラヤの高峰には貝の化石が埋まっている。奇妙ですね。
で、なんでそんなところで水晶が出る? その水晶たちを作った熱水はどこから来た?
あちきら日本人は沈み込み帯の上に暮らしているから、マグマから派生した熱水が割れ目や空洞に入り込んで、そこで水晶ができるというイメージを持ってしまう。
しかし、大陸が衝突しているヒマラヤにはプレート沈み込みやそれに伴う火山活動はない。
とすると、この熱水は、大陸衝突の高圧条件でできた変成岩から生まれたということになるのだろうか。前に書いた「変成性熱水鉱物」ですね。
マグマ主体の「玄武岩→安山岩→花崗岩」というルートではない、変成岩由来の「水成鉱物」もある。ヒマラヤ水晶はその象徴と言えるかもしれません。


変成作用における熱水の発生

2024-09-01 23:06:41 | 岩石生成論

この前のタンザナイトのところで
《多くの美麗鉱物は、例の「玄武岩→安山岩→花崗岩」の王道ルートをたどって花崗岩から発生する熱水でできる。しかし一方、変成作用の中で生じた熱水でできる鉱物もあるのではないか。岩石進化の最先端たる「水成鉱物」にも、マグマ熱水由来のものと、マグマは直接関係ない変成作用由来のものがあるのではないか。》
と書きまして、「素人の妄想」と言いましたけど、どうもあながちそうでもないらしいです。
かの有名な都城秋穂さんの『変成作用』という本(1994年、岩波書店)をぱらぱらとめくっておりましたら、こんな記述がありました。
《変成作用を受けつつある岩石のなかにはH2OやCO2を主成分とする粒間流体がある場合が多いらしいが、そういう流体が移動すればそのなかに溶解している物質が移動する。これは、場合によってはかなり大きな量に達しうるであろう。……そういう水は他の場所へ流れて行って、温度や圧力が下がると岩石のなかに石英を沈殿させたり、石英脈をつくることになる。》
石英はもちろん、融点が比較的低い珪酸塩鉱物なら熱水に溶け、亀裂・空洞で結晶化するということも十分ありうるようです。タンザナイトがそれかどうかはわかりませんけど。

カイヤナイトなんかも典型的な変成岩由来鉱物。こういう美しい晶面の結晶も、おそらくそういうプロセスでできたのではないかな、などと。

また、ヒマラヤやアルプスのような大陸衝突帯でできる水晶なんかも、ぶつかり合う地殻の中で高熱・高圧となった岩石の変成作用から派生した熱水でできるのではないかな、などとも。
違っているかもしれませんけど。


かき揚げ水晶

2024-09-01 09:47:49 | 単品

これまたパフェさんから、「ニードルソリューション」水晶。そんな形容があるんだあ。
《ガネーシュヒマール山連峰の東にあるラスワ(Rasuwa)郡産の水晶クラスターです。昔から「かき揚げ」状水晶として散見されましたが最近では入手が非常に困難になっています。クローライトが内包しリモナイト(褐鉄鉱)の皮膜が特徴で、鋭い針のようなDT水晶の群晶です。形成された状況を推察すると、晶洞の中で束縛のない(ソリューション)状況で水晶が成長しました。採掘は繊細な形状のため非常に困難で運搬も然りです。》



「かき揚げ」とはよく言ったものですな。ごぼう、にんじん、たまねぎなんかの天ぷらはおいしいですよねえ。平凡な野菜だけでも天下の珍味になる。通ぶるわけではないけどやっぱり塩で(いいよそういう話は)

しかしですね、水晶だけじゃなくて、結晶がアクロバチックな姿でくっついている標本というのはよくある。時々はぶっささっていたり。そういうの見るたびに、不思議な気持ちになる。ああいうのってどうやってできるの?
熱水の中で別々に育った結晶がひょんな具合で接合した?
でも接合には時間が掛かるのではないかい? その間、熱水はじっとしていたの?
結晶が育つには途方もない時間が掛かる、とよく言われているけど、本当にそうなのかね。もしかしたら結晶はとんでもなく早い時間でできたりするなんてことはない?
「斉一説」というのがあって、人間は現在起こっている緩慢な変化が、昔も将来も続いていくというふうに考えがちだけれども、実は自然の変化の多くは、突然、劇的に起こることも多い。生物の進化だって、あれこれ悪戦苦闘してわずかずつ変化が蓄積して、というふうに考えがちだけれど、どうも進化は、突然、爆発的に起こるらしい。カンブリア紀のエビとカニとシャコの混ざったようなのがあるけど、あんなの徐々にできたなんて思えないですわな。大陸地殻の生成だって、小さな島弧がぼちぼちと集まってできたのではなくて、いまだ想像されたこともない爆発的な変動で作られたのではないか。
鉱物の生成もまた、「何千年にわたって育った結晶」というのは嘘で、ごく短い時間で成長したりするのではないか。
なんていうのは妄想です。(何だよw)
しかしねえ、このエジリンの勝手放題な結合を見ても、なんか結晶ってそんなにゆっくりじっくりしたものではないような気がしてくるんですねえ。

 


イェンバイのアメジスト

2024-08-30 09:20:16 | 単品

前記事でベトナム産シンギング・クォーツを上げたけど、パーフェクトストーンさんはけっこうベトナムが得意みたいで、どっか相当山の奥まで行ったという報告ツイートを見たことがある。
インドシナ半島はユーラシア・プレートの南東端にあって南中国サブプレート、インドシナ・サブプレート、スンダ・サブプレートがぶつかる地域。半島東側のベトナムは南中国(揚子)地塊とインドシナ(コントム)地塊の衝突域で、北部には後期古生代に生まれたバリスカン造山地域がある。とのこと。要するにけっこう複雑な地質ということだ。(結論がものすごくいい加減w)
メコン・デルタや稲作で平地の印象があるけど、実は日本と同じく山だらけ。南北に異常に長く、南と北では言語も文化もやや異なるというのも日本に似ている。

でパフェさんはそのベトナムからいろんな石を掘って来る。(掘っては来んて)
あちきもアクアマリン、サファイアなんかを買っている。
でこれはイェンバイ産のアメジスト&クォーツ。

長辺9センチとけっこうでかくて、えらく迫力がある。何というのかな、エネルギーの強さのようなものを感じる。
最初わからなかったのだけど、これ白クォーツがアメジストにぶっ刺さっている。つか白を包むように紫が形成されたというのが正しいか。
一見無粋な塊のようだけれど、表面は繊細。



こういうの、何と言うのですかね。エレスチャルとかジャカレーとかスケルタルとか、定義がはっきりしない形容詞が多くてよくわからん。素直に言えば「階段状晶面」ですかね。それがあちこちにあって、眺め回していると楽しい。
淡く澄んだアメジストが突き出ている姿もいい。



室内だと色が鈍いのだけど太陽光だと変身シンデレラ。



ベトナムというのは石の産地としてはあんまり有名ではない感じ。インドシナにはモゴックを擁するミャンマーがあるし。でもこれからいろいろと出てくるのかもしれませんね。

おまけ。ベトナムの石たち。スピネル、アクアマリン、サファイア。