貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

オージェライト(アウゲル石)

2021-11-30 21:35:52 | ややレア

アルミニウム単独塩基の続き。

Augelite。
さてどう読む。
アウゲライト、アウゲル石、オージェライト。
ずいぶん印象が違う。アウゲルだと石頭のドイツ人が出てきそう。
名前の由来はギリシャ語の「輝く」からだそうで。原音を尊重するならアウゲル石にならざるを得ないのかも。しかし古ギリシャ語の本当の発音なんて誰も知らないのだから、どうでもいいと言えば言える。アウゲルと読むのなら「石」の「ite」を「アイト」と読むのはおかしい。他の例と同じようにローマ字を英語風に読むのならオージェライト。(うざいな)
いっそ意訳して燦光石とか付ければよかっただろうに。

Al2(PO4)(OH)3。アルミニウムの燐酸塩鉱物。割合組成は単純。
バリッシャー石(Variscite、バリサイト、バリスシア石、バリスサイト、ヴァ[もういい])が Al(PO4)・2H2O だから、とても近い。水が付くか水酸基が付くかの違い。この違いはどうやって生まれるのか。(こまけえな)
ワーベライト(Wavellite 銀星石) Al3(PO4)2(OH,F)3・5H2O なんてのもある。なんかちょこちょこ変わり身をしているみたい。
そう言えば、前項のアルミ鉱物の記事でバリサイトは落っことしていた。何かちょっとわかりにくい石。
うちのバリスちゃんはちょっとミニサイズ。拡大写真だときらきらだけど、普通の光で普通に見ると緑色の紙やすりみたい。(ひどいな)大きい美結晶品は高い。


燐酸塩鉱物というのは結構いっぱいあって、有名どころでもアパタイト、トルコ石、ビビアナイト、フォスフォフィライトなどがある。
リンは地殻の構成元素としては第10位、0.1%。銅やニッケルなんかよりはるかに多い。へえ。
カルシウムと共に生物の骨格を作るし、植物の生育には燐酸肥料は欠かせない。生命体の超重要構成物。とはいえ、何となく身近に感じない。なぜだろう。マッチ棒はもう死滅したし。墓場で燃える火の玉が一番身近か。(そんなもん身近じゃねえw)

肥料を始め様々な用途を持つ燐鉱石(フォスフェイト)は、大部分が化石鉱床から採れる。つまり生物由来ということ。けれども石好きの対象となる美稀石は熱水作用で生まれる。このあたりはカルサイト・アラゴナイトに似ているかな。

このオージェライト、またまたエヌズミネラルさんのバーゲン。(また血迷ったのか)それほど高くなかった。
前々から欲しかった、というわけではなく、ついふらふらと。緑がきれいそうだったし、水晶に取り囲まれている姿も美しそうだったので。
というか、これ、少しばかりレア。素直に言うと、そういうものも持ってみたかった。

レアストーンというのは、マニアでなくても、心動くもの。
地球の総重量は6×10の24乗キログラム。そのうちせいぜい数百キロくらいしかない鉱物だとしたら、やはり「何じゃろ」となる。これはどういう心の欲求だろう。探究欲?
けれど、ほとんど名前を聞いたこともないレアストーンは、母岩にゴミのように(失礼)こびりついていて、あまり美的でないことが多い。よほどマニアックな収集家でないと、食指は動かない。あの熱烈な収集欲というのは、どういう心の欲求だろう。(今回は心理学者かね)
このオージェライトは、そこそこレアで、そこそこ大きくてきれいで、そこそこ安かった。で、食指が動いたというわけです。(少し中途半端じゃないのか?)
少しピンクがかった水晶に祝福されて浮かび上がる淡い小さな緑は、いかにもレアストーンの雰囲気。緑の石は多いけれど、この淡い緑はやはり独特のような感じがする。たくさんの石を見たわけではないから確かではないけど。

しかし、「レアストーン」というのは、何ですかね。
厳密な定義があるわけではない。普通に言えばあまり産出されず、流通もされないもの。とはいえ、時々は出る。鉱物学者や特権的収集家だけで収まっていたら一般コレクターの話題にはならない。
けれど、「見かけたら買っておけ」と言われていたような石、たとえばユークレースとかジェジェ何たらとか(こら)は、けっこう見かける。バイヤーさんたちの努力というか、商人魂のおかげかな。心理学的分析はしない。

レアものの中でもあまり見栄えのしないものは、さすがにごく一部のショップでしか扱っていない。そういうところを覗くと、聞いたこともない石がごろごろしていて、頭がくらくらする。
そういうレアものを揃えているところを、あちきが出会った範囲で挙げておくと、
・エヌズミネラル
・Vec Stone Club
がとにかくすごいかな。ないものはないみたいな感じ。エヌズさんの「新着標本」のページを見ると、聞いたこともないものばかりで唖然とする。
ほかに、
・セルフクリエーションの「ごちゃごちゃ標本箱」
・ミネラルストリート
・タケダ鉱物標本
といったところも面白いですね。
まあしかし、「レア」価値というのは社会的な概念であって、あまりそれに捉われ過ぎてはいけませんね。自戒。
それに、本当のレアものは、博物館か何かに収めるのがいいのでしょう。あちきのような世捨て貧老が持ってたりするのはいくない。ま、持てるわけもないけど。

おまけ。つか自分のためのノート。(一部追記)

◆リン酸塩鉱物
オージェライト(Augelite アウゲル石) Al2(PO4)(OH)3
モナザイト(Monazite モナズ石) CePO4
アパタイト(Apatite 燐灰石)(グループ)
パイロモルファイト(Pyromorphite 緑鉛鉱) Pb5(PO4)3Cl
ビビアナイト(Vivianite 藍鉄鉱) Fe3(PO4)2・8H2O
ラドラマイト(Ludlamite ラドラム鉄鉱 (Fe,Mg,Mn)3(PO4)2・4H2O)
ターコイズ(Tturquoise トルコ石) CuAl6(PO4)4(OH)8・4H2O
アンブリゴナイト/モンテブラサイト(Amblygonite/Montebrassite) (Li,Na)Al(PO4)(F,OH)
バリサイト(Variscite バリッシャー石) Al(PO4)・2H2O
フォスフォシデライト(Phosphosidelite 斜燐鉄鉱)Fe3PO4・2H2O
オートゥナイト(Autunite 燐灰ウラン石) Ca(UO2)2(PO4)2・10-12H2O
ベゼリアイト(Veszelyite ベゼリ石) (Cu,Zn)3(PO4)(OH)3・2H2O
ワーベライト(Wavellite 銀星石) Al3(PO4)2(OH,F)3・5H2O
カコクセナイト(Cacoxenite カコクセン石) AlFe3+24O6(OH)12(PO4)17・~75H2O
フォスフォフィライト(Phosphophyllite、燐葉石) Zn2Fe(PO4)2・4H2O
トリフィライト(グループ)(Triphylite) (Li,Fe,Mn)PO4(パープライトなど)
ラズライトL(Lazulite 天藍石) MgAl2(PO4)2(OH)2
スコルザライト(Scorzalite 鉄天藍石) FeAl2(PO4)2(OH)2
トロレアイト(Toroleite トローレ石) Al4(PO4)3(OH)3


アルミ鉱物ってすごい

2021-11-29 21:08:07 | 単品

アルミニウムというと、最近では飲料の缶。
昔は鍋や薬罐。軽くて便利だと人気になった。今はなぜかあまり。
日本の家の外観をぶち壊したアルミサッシ。気密性がよくて便利だけど、ほんとに味気ない。
そして一円玉。
という具合で、アルミニウムの印象はあまりよくない。
アルミニウムは、地殻構成元素としては第3位。上にいるのは酸素と珪素だけで、金属のトップ。8.1%で鉄の5.0%より多い。これは意外ですねえ。つまりは凡庸であるということ。けれども精錬が難しい。電力をたくさん使う。

《有用元素が鉱物中に含まれていても工業的に分離・抽出できない場合は鉱石にならない。例えばアルミニウムは下表にあるように地殻中では非常に一般的な元素で、花崗岩中の長石や粘土鉱物カオリナイトにも大量に含まれているが、これらの鉱物からアルミニウムを工業的に単離する技術は確立していないため鉱石に相当せず、ボーキサイトのみが鉱石とされる。》
《アルミニウムの鉱石であるボーキサイトは、ケイ酸成分やカリウムなどを含んだ元の岩石(例えば長石の一般式は(Na,K,Ca,Ba)(Si,Al)4O8)から、他の成分が水に溶解した結果Al2O3が濃集した物で、産地は雨水による風化力の強い熱帯雨林地域に多い。》ウィキペディア「鉱床学

アルミニウムと他の金属とくっついたものだと、有名どころでは、
ガーネット、スピネル、ベリル、スポデューメン(クンツァイト)、などがある。
そしてもちろん、塩基がアルミニウム単独のものもある。で、これが結構すごい。

・コランダム (Corundum 鋼玉)  Al2O3 ルビー、サファイア。
・カオリナイト(Kaolinite カオリン石、高陵石) Al4Si4O10(OH)8 粘土鉱物。
・ギブサイト(Gibbsite ギブス石) Al(OH)3 (ボーキサイトを構成する主要鉱物。
・ダイアスポア(Diaspore) AlO(OH)
・オージェライト(アウゲライト)(Augelite、アウゲル石) Al2(PO4)(OH)3
・ジェレメジェバイト(Jeremejevite) Al6[(F,OH)3|(BO3)5]
・トパーズ(Topaz、黄玉) Al2SiO4(F,OH)2 (OH のものがインペリアルトパーズ)
・カイヤナイト(Kyanite 藍晶石) Al2SiO5
・アンダルサイト(Andalusite 紅柱石) Al2SiO5
・シリマナイト(Sillimanite 珪線石) Al2SiO5

ルビーやサファイアが成分的には「酸化アルミニウム」だというのは、やっぱり驚き。
酸化アルミニウムというのは、すべてのアルミ製品の皮膜部分。酸素と触れてすぐに皮膜ができてしまう。つまりアルミ缶だって酸化アルミニウムで「コーティング」されている。
四大宝石のうちの二つなのにただの酸化アルミ。
アルミだし、単純な組成だし、だから、人工合成も進んでいる。つまらなくもあるけれど、いろいろな精密機器などに使われていて恩恵もたくさんなので仕方ない。昔はレコード針というのもありましたな。レーザーを発生させるのにもルビー、サファイヤが使われるし。

ルビーというと、うちではルビーインフックサイトのタンブル「フクベエ」君が出てくる。ルビーそのものなんて持ってないから。
かわいい。

何度か書いたような記憶がおぼろげにあるけれど(健忘症か?)、ルビーはどんな光の下でも赤く光る。やってくる光を透過しているのではなく、いったんエネルギーにして、赤として再生産しているらしい。つまりは紫外線及び可視光線蛍光する。わけわからん。では真っ暗な中だったらルビーは何色か。うむ、哲学的命題。(んなわきゃない)
とにかく、ルビーというのは変な鉱物です。
サファイアというのは、ルビー以外のコランダムに対して広く使われるそうです。不透明なものもあれば、緑のものもある。
これは東京サイエンスさんで売っていたお安いミニ標本のサファイア。これはこれで美しい。

カオリナイトというのは知らなかった。要するに陶磁器の粘土の主成分らしい。長石だと思っていたら違う。長石は釉薬の方。このアルミニウム鉱物が融けて、いろんなものを結合させて、あの硬い陶磁器を作るらしい。ふうん。カオリナイトの原石なんてあんまり見ないですね。

ギブサイトはあまり出ないけど、純粋結晶は美しい青。少し前にどこかで見たけど、もうない。

トパーズとカイヤナイト三姉妹は美石。けれど皆、どこか捉えどころのない感じがある。
トパーズは透明だと水晶と間違われる。日本で最初に採掘された時は水晶扱いだったと言う。シャンパン色や赤褐色や水色も見せるけれど、どことなく弱々しい。もっともトパーズは水晶より硬いけど。
インペリアルトパーズは、赤みを帯びた黄金色もいいし、結晶の筋筋もきれい。こういうのをそのままペンダントトップにしたものが時々あるけれど、とてもいいと思う。ジジイは付けられないけど。うちのは高品質でないし写真もよくないけど。

ブルートパーズは、そのままだとあまりにはかなすぎる。放射線処理されるのも仕方ない。

カイヤナイト三姉妹はすでに書いた。これは覚えているぞ。

アルミニウムの水酸塩鉱物、燐酸塩鉱物、硼酸塩鉱物という珍しいものもある。それは別に。

アルミニウムは単体では詰まらないけれど、化合した鉱物となると俄然面白い。陶磁器だってアルミ化合物のおかげ。考えを改めなくてはいけませんね。


エンスタタイト

2021-11-28 18:10:39 | 単品

エンスタタイト(頑火輝石、(Mg,Fe)2Si2O6 で Fe が0~10%のもの)。苦鉄質鉱物。
じみ~だけど、とても基本的な鉱物らしい。
《超塩基性岩の主構成鉱物。橄欖石,普通輝石,スピネルとともに産する。マントルを構成する主要鉱物と考えられている。》ブリタニカ国際大百科事典
《頑火輝石という名称は、もともと非常に限られた化学成分のものに対して使われていたが、1988年以降の定義では、鉄よりマグネシウムの多い斜方輝石全体をさす用語に改められた。したがって従来、古銅輝石[ブロンザイト]や紫蘇(しそ)輝石[ハイパースシーン]とよばれていたものの多くは頑火輝石に統一された。吹管で炎を吹き付けても耐火性が強いところから、英名は、対抗するという意味のギリシア語に由来する。》日本大百科全書

いや、すごいんですよ。エンスタタイト。
これ、右は緑の透明。左は赤茶?の一応透明。緑は2000円ちょっと。赤茶は新宿の例のお店で何と550円。
どちらもそのままで美しい。地球の基礎をなす石らしい、どっしりとした味わいがある。



ところが、この左のやつ、後ろから光を透過させると変化(へんげ)る。



普通は見えない青まで見える。実物はもっと繊細で多彩です。

何ですかね、これ。方向変色はほとんどない。「透過光変色」とでも言うのか。

これもとてもいい石です。


アイオライト変身

2021-11-28 10:33:11 | 漫筆

日曜は石屋さんのサイトの更新が少ないから面白くない。(ビョーキだね)
風邪ひいた。コロナかと思ったけど違うみたい。マスク手洗いでコロナは何とか回避しているのに風邪を引くって何か変じゃね? ウイルス、体の中にいるのか?

以前書いた700円のアイオライトブレスレット。餡子のような冴えない石。それがなぜか段々色が薄くなってきたまでは書いた。
そしたら先日、「今日はどのブレスをしようかな」と迷っていて(ジジイの行動とはとても思えないね)ひょいとそれを窓辺に置いてみたら、唖然。



朝陽を浴びて、とんでもなく美しい色になっちょる。
「お前誰?」の世界。
前はこんなもの。これ途中段階で、来た時はもっと濁っていた。



はいやいや。(何だよその掛け声)何ですかこれ。
まったくアイオライトというのは正体不明、捉えにくいやつです。


ベスビアナイト

2021-11-27 18:23:13 | ややレア

ベスビアナイト。これいやだねえ。けどヴェスヴィアナイトと書くとうざい。
和名はベスブ石。ってこれおかしい。ベスビオス火山(現地発音ではヴェズヴィーオスらしい)で見つかったからヴェスヴィアナイト。ベスブなんて山はない。どうして、なんでこんな名前にした?(怒るな)
緑だったり赤~紫だったりして、けっこうきれいな石。透明なものは宝石になって「アイドクレース」という格好いい名前が付く。このアイドクレースは例のアユイ先生の命名らしい。「アイドクレース=壊れやすい」という性質のせいか、宝石としてはあまり高くない。
「スカルン中に含まれる代表的鉱物で、共生する柘榴石に似ている」(ウィキペディア)。スカルンというのは、主に堆積石灰岩とマグマがぶつかってできる熱水鉱床。やっぱり水が作った鉱物。
化学式は、ウィキペディアによると、じゃじゃーん。

Ca19(Fe,Mn)(Al,Mg,Fe)8Al4(F,OH)2(OH,F,O)8(SiO4)10(Si2O7)4

思わず笑いが出る。
今はコピーアンドペーストができるからいいですね。これ書き直せと言われたら10回くらい間違えそう。(Ca10(Mg,Fe)2Al4(SiO4)5(Si2O7)2 と記しているところもある。何かいろいろみたい。まあ個体差というものもあるし。
しかしもうこれ、寄せ鍋なんてものじゃないですね。何でもかんでもぶちこんだ闇雑炊みたい。
お、お前、フッ、フッ素まで入れるか?!とか、誰だよ水酸基入れたやつは!とか。
ほんとにこれで一つの鉱物なのかな。どういう結晶構造をしているのか興味が湧く。
で、エヌズミネラルさんのバーゲンで手の届く価格になっていたので、買ってみた。
化学式もさることながら、少し沈んだ薄緑も美しそうだったので。

カナダ、ジェフリー産。名産地らしい。
写真では出ないけれど、結晶面がきらっきら。クリスマスツリーみたい。
淡めの緑が美しい。クロムによるものとのこと。マンガンが入ると紫になるらしい。
ただね、あちきの目の偏りらしくて、少し暗いところだと、黄色がフェイドアウトして、ブルーグレイっぽく見える。どうも黄色が認知しにくいのかな。
まあ、自眼性カラーチェンジとして(そんなもんあるか)、それも楽しみましょうか。

日本でも秩父とかで出るようで、けっこうきれいなものがウェブでいくつもありました。
あまり知名度はないけれど、いい石です。ちょっと紫のもほしいな。