貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

鉄が透き通る、だと?

2021-09-30 20:30:44 | 単品

ビビアナイトという石があります。
ネットで見て、ああ鉄の石ね、とんがってるね、と素通りしていました。
ところがある時、別のネットショップに載っていた拡大写真を見て、びっくり。
一部透き通っているではないか。
鉄が透き通るだとお?(いきるな)
で、意外と高くなかったので買ってみて、改めてびっくり。
透き通ってますねえ。しかも、深い、実に美しい緑。

ビビアナイト(Vivianite 藍鉄鉱 Fe3(PO4)2・8H2O)
どうも vi をビと書くのは気持ち悪いけれど、ヴィヴィアナイトだとうるさい。
ヴィヴィアンというのは女性の名前だと思っていたけど(スーさんは美しかったねえ)、名字でもあるんですね。
まあ余計なことは置いておいて。
燐酸塩鉱物。水を含んでますねえ。この結晶間に水を含む石というのが時々あるけど、どういうことなのか今いちわからん。
何でも、掘り出した時は透明で、すぐに青くなり、やがて緑になる。そして最後は黒ずんでしまう、とのこと。光で酸化するらしい。いや、これちょっとおかしい。光では酸化しない。酸化が促進される、が正しい。(うるさいね)しかし、なぜ?
フェデリコ・フェリーニの名作『ローマ』に、工事で掘り出された古代の壁画が、すぐに空気と光で消え去ってしまうというシーンがあって、強く記憶に残ってますけど、それをちょっと思い出した。(いろいろ横道それすぎ)
え、まずいじゃん、と最初はケースに入れて黒い紙を被せておいたけど、それじゃ何も見えない。(当たり前だ)買った意味ないじゃん(いや、たまにね……って不精者には無理か)
まあ黒ずむったって何年も掛かってのことでしょ。それまでにあちきのほうが黒ずんで(何だよそれ)、死んでしまうから、もういいや、と紙は取った。ルースケースには入れてある。透き通った色の輝きを見るために時々ケースから取り出して眺めるのだけど、面倒くせえなあ。(やっぱね)

しかし、鉄が透き通るって、おかしくね? あの屈強で重たい鉄が。
いや、イオンになった鉄は、二価鉄は淡緑色、三価鉄は黄褐色を示すと書いてある。ふうん、イオンでは透き通って色を発するのか。(お前高校行ってる?)いや酸に溶けて液体になったら透き通ってもいいけど(何でお前の許可が要る?)、それが固体になっても透き通るっておかしくね?
ちなみに、ラドラマイト(Ludlamite ラドラム鉄鉱 (Fe,Mg,Mn)3(PO4)2・4H2O)というマグネシウム、マンガンを含んだ兄弟分もあって(同形かな)、それも同じような色に透き通る。

金属の鉱物も、透き通ることはあるんですねえ。
化学を知っている人には当たり前のことかもしれないけれど、やっぱ「鉄が透き通る」というのは、奇想天外のことじゃないでしょうかねえ。ううむ、鉄が透き通る……(しつこい)
そしてこの緑、すごく美しいです。不思議でいい石だ。


石が絵を描く

2021-09-29 20:13:54 | 漫筆

(昔そんな本があったな。)

これ、「アズライト」という名前で買ったペンダントトップ。安いものです。
真正アズライトの部分はほんのちょぴっとで、アズライトとしてはC級品かもしれないけれど、模様と色合いがきれいで、あちきとしては満足していました。
で、ある時、ふとこれを横にしてみた。すると……

なんか秋の公園をセザンヌが描いたような感じ。落ち葉と木の幹と向こうの森。見ていると本当に秋の夕暮れの涼しさと澄明さともの悲しさを感じるのです。
で、この石の名前はセザンヌとなりました。C級品でもあちきにはお宝です。

これはその名も名だたる(何だそれは)「ピカソストーン」。そういう石があるらしいと知って、探していたら千葉の老舗石屋さんに一つ残っていたので、あわててぽちっと。ほんの少し安くはなかった。
ピカソというより、ブリューゲルの冬景色を思い出させます。無彩色に近いけれども、すごくいい色で、これもあちきにはお宝です。

これはすごく安かったアゲートのペンダントトップ。黒と柿色の対比が面白く、柿色の中には複雑な渦模様がある。加山又造? クリムト?
湧き起こる情念の姿かな。

ムーカイト(モッカイトと書かれることもある)。マダガスカル産。これ、五反田のクリスタルワールドさんで見た時はショックでした。この模様。現代芸術かよ、と。もっと大きい、20センチを越えるものも売られていて、すごい迫力があったのですが、値段も張るし、そもそもそんなド派手なものをボロ屋に持ち込んだら、うるさくて仕方がない。で、この6センチほどのものにしたのです。これでもものすごい主張ぶり。
夢幻界での思念の流れ、といったイメージ。

これはブラウン・オパール。これも五反田産マダガスカル産。たぶん色の濃いほうがオパール(コモンオパール)なんだと思うけれどよくわからない。なんとなく、天界の闘争、というイメージ。

もっとすごいものはいっぱいあるでしょうけれども、ちょっとした石に、不思議な絵が宿る。いいです。
こういうの見てると、人間の描く絵はやはり人間臭いなあ、と。もう人間臭いのはいい。石の描く絵はもっと超越的・神秘的な気がしてくるのです。


お手頃「ミニ標本」

2021-09-28 19:43:48 | 漫筆

東京サイエンスという会社の「ミニ標本」。
新米で、あまりお金のないあちきにとっては、とてもありがたいシリーズ。

サファイア、アポフィライト、カバンサイト、オプティカルカルサイト(アイスランドスパー)。
レピドライト、エンスタタイト、ウバロバイト。

普通の原石を買うとけっこうするものを、おおむね数百円から1000円台前半くらいで売ってくれている。
カバンサイトやアポフィライトなんて、時々目玉が飛び出るほどの値段で売っていることがある(もちろん高級品ね)。ウバロバイトは「ミニ標本」シリーズではなかったかもしれないけど、これもけっこうレアな石を安く売ってくれている。
「ミニ標本」だから、小さい。けど鉱物ファンというのは2ミリのアウインだのネプチュナイトだのを涎を垂らして(失礼)愛玩するわけだから、小さいというのは致命的なものではない。もう少し大きなものが欲しくなることもあるでしょうけど、それは買い直せばいいわけで。

基本的には中学生や高校生向けの「学習」用材という主旨なのでしょうけど、「あの石はやっぱり手元に持って眺めたい」という時、気軽に買える。
新宿紀伊国屋に出店があって、そこは少年少女たちが真剣に石を眺めて買っている。あちきのようなジジイがそれに混じるのは、あんまりいい図ではないかもしれないけれども、まあそこは勘弁していただきたい。あのお店は立地条件もあって、日本で一番客足が多い石屋さんなのではないかな。

この前はインディゴライトを何と1980円で売っていた。思わずのけぞって、購入いたしました。小さいけれど、なかなかいい色。貧老の身でインディゴライトなんて買えるとは思っていなかった。

いろいろな石を手に入れて玩味したい、と思うビギナーにとって、ありがたいシリーズです。


丸玉は小さめで

2021-09-27 19:54:54 | 漫筆


プレナイト、アメシスト、ゴールデンカルサイト。うちの透明丸玉三銃士。(何だよその命名)
いずれも35ミリ。2000円以下。
普通でもきれいですが、強い光を当てるととてつもない美しさになる。
球体というのは魅力的です。まあ自然の完全形の一つだし。
ゴールデンカルサイトというのはいいですね。豪奢。あまり言われないみたいだけど。
このプレナイトはエピドートの針状結晶(?)入り。うちのカミさんのお気に入りなんですけど、「淀んだ水溜まりにボウフラがわいているみたい」なのが好きなんだそうで。なんだよその形容。
アメジストはクラックが複雑に入っていて虹に輝いたり、色のむらが見る角度でゆらゆらと揺れたりして、実に魅力的。

某安売王さん(今さら伏せ字にしても無駄だと思う)で売っている丸玉は安いけれど、
で か い。
70ミリとか100ミリ越えとか。時にはキログラム表示だものね。
実はあちきも安さに惹かれて一つ買いました。(安いからって買うなよ)1700円。
並べてみると。

このブルーカルサイト、写真では出ないけど(へただね)きれいです。
でも  で か い。
貧乏人の家ではちょっともてあます。コレクションケースに入らない。
某大陸国の産品らしいですけど、大陸人はどうも「大きいことはいいことだ」と思っているらしい。何もこんなにでかくしなくても、と思うのは島国根性か。
枕草子以来、小さきものの美をめでるのが日本人の美意識なのでしょうから、どうかもう少し小さいものを売ってもらいたいと願っているのですが。(ビーズじゃだめなんか?)

丸玉というのは、それなりに大きな石が必要だし、あちこち削るので歩留まりが悪いしで、石が高騰しつつある(某大陸国のせいという噂もある)昨今ではあまり作られなくなっているとか。(しかし某国産はでかいのがぼんぼん出てきてるぜ。何だいあれは)
コアな鉱物マニアなんかからは「へっ」とか言われそうですけど、石の美しさが引き立つことも多いので、丸玉はもっと出回ってほしい。

小さめの丸玉、いいです。


石って何じゃい

2021-09-26 21:03:09 | 漫筆

石好き、と自称する。その石とは何ぞや。

「鉱物」じゃね? しかし鉱物というのは純粋体のこと。複数鉱物の集合体は鉱物ではなく岩石。それに鉱物好きというのはちょっと堅い。白衣を着ていそう。
じゃあ「岩石」。うーん、岩石だと大きくてごつい感じがある。重機がいるね。
なら単に「石」。それだと砂利とか建築用材も含まれるぜ。それに、もともと日本には「観賞石」の伝統があって、床の間にどーんと置いたものを愛でる。それが正統日本の「石好き」だろ。
「貴石」は? いやそれ宝石の別名。
「ミネラル」とか。それ、鉱物あるいは無機物という意味の英語だけど、どうしても栄養素のほうに行ってしまうなあ。ミネラル好きだと、サプリの錠剤をいつも飲んでいる感じ。
「天然石」。まあそれが順当かな。でも、人工石を排除しているわけじゃない。
「パワーストーン」。ううむ。パワーって何だよ。どうやって決めるのさ。(ところでパワーがない石ってあるんですかね。河原の石?)

驚くべきことに、「一定の美しさと希少性を持つ観賞用の鉱物岩石類」を表す言葉はないのですね。
そういうものを扱う業界を、「天然石業界」とか「天然石・パワーストーン業界」とか言っているけど、何となくおさまりが悪い。
言葉というのは、あるところでは変に細かくこだわってみたり、あるところではごそっと抜け落ちていたり、変なものです。
何か新しい言葉を作ればいいのに。美稀石とか、じゃ変か。(誰が作るんだよ)

ちなみに、「鉱物」の定義も微妙に曖昧で、「結晶」が必要条件だとするとオパールは除外されてしまう。「固体」が必要条件だとすると水銀が排除されてしまう(固体って、温度に左右されるものだし)。一義的に定義できない概念を基礎に据えているなんて、ちょっと科学としてはみっともないと言えないこともない。
それに、「花崗岩は鉱物の集合体だけど鉱物ではない」なんて、ちょっと変じゃね? え? 花崗岩って鉱物じゃないの?

これは花崗岩にアズライト(と言われている)が混入した「K2ストーン」。カラコルム山脈にある世界第二の高峰K2のふもとで採れるからこう呼ぶ。K2というのは恐ろしい山で、登山者がたくさん死んでいる。
石英の代わりにアズライトが入ったみたいな感じ。白と青の取り合わせがきれい。ただこれだと墓石にはならないような感じ。(なんで墓石にする)
で、これは岩石です、鉱物ではありません。んなわけない。あちきは日本人だけど、日本人が三人集まるとそれは日本人ではない、そんなことあるかい?(変な難癖のつけ方はやめなさい)

集めたものをつらつら眺めてみると、まあこれは石ですね。石っころ。
けど、これは石じゃないですねえ。石っころではない、何か不思議なもの。
石でありつつ、石でない。そこに石好きが石を好きになる何かがある。
それは結局、言葉にならないものかもしれません。(それにしちゃよくしゃべるな)
「造化の妙」という言葉があるけど、しいて言えばそれかな。