キンバーライトおよびその噴火についてはわからないことが多いが、おおむね次のようなことが言われている。
・kimberlite、キンバリー岩。鉱物名ではなく岩石名。
・特異な「キンバーライト噴火」によってできる火成岩で、ダイヤモンドを含有することで有名。
・名前は南アフリカのダイヤモンド鉱山がある町「キンバリー」から。(1867年発見、1869年に83.5カラットのダイヤモンド「スター・オブ・サウス・アフリカ」が発見され、ダイヤモンドラッシュが起こった。)
・マントル物質にきわめて近い「超塩基性岩石」で、12%以上のMgOを含む。他にカリウム、ニッケル、クロム、コバルト、レアアースも多く含まれる。
・主に橄欖石と雲母からなり、しばしば発達した金雲母の結晶を伴う。他にパイロープ、クロムダイオプサイド、イルメナイト、サーペンティン、カルサイト、ルチル、ペロブスカイト、マグネタイトなどを含むことがある。
・基本的には青みがかった「ブルーグラウンド」と呼ばれる岩石だが、風化すると黄褐色になり「イエローグランド」となる。(主要なダイヤモンド鉱山はイエローが多い。)
・キンバーライト・マグマはCO2や水を大量に含んでいるため、上昇減圧によって急激に膨張し、周囲の岩石を破壊しながら上昇する。さらに含まれている炭酸塩が周囲岩石の珪酸塩と反応して、大量のCO2が発生するとも言われている。
・周囲の岩石に大きな熱変成が見られないことから、比較的低温の結晶混合マグマではないかという説もある。
・マントル内の鉱物や上昇経路にあった鉱物を「捕獲」していることがある。マグマ内で結晶した「斑晶」も見られるが急激な上昇・冷却のため大きな斑晶はない。
・キンバーライトの構成鉱物は周囲の岩石を含み込んだり、岩石から溶出した成分との化学作用によって形成された鉱物もあるので、「純粋なマントル鉱物」ではない。「純粋なマントル鉱物」を探し出すには複雑な分析をしなければならない。
・主にキンバーライト噴火口(キンバーライト・パイプ)に産する。アフリカ、ロシア、中国、アメリカなど古い大陸内部にあり、現在6500ほど発見されている。特定の地域に同じ年代のものがまとまって存在することがある。
・パイプは上部ほど太くなるニンジン型で、地上口の径は数十~数百メートル、深さは500~3000メートル。その深部には水平板状岩体などがある。さらに深い部分ではマグマは垂直板状に上昇してきたらしい。通常の火山噴火に見られるようなマグマ溜まりはない。
(参考:磯崎2002より。)
・キンバーライト噴火の際のマグマ上昇速度はきわめて速く、時速100kmとも300kmとも音速(1224km)以上とも言われている。(速くないとダイヤモンドが変質してしまうから)
・主に白亜紀(1億4600万年前から約6550万年前)に起こり、最後は2500万年以上前か。
・2億5000万年前ごろ地球のあちこちで起こり、超大陸パンゲアの分裂や古生代・中生代の境界となる生物大絶滅を引き起こしたのではないかという説もある。(磯崎2002)
・キンバーライト噴火を起こすマグマの由来ははっきりしていない。ダイヤモンド形成条件(5万気圧以上)を考えると150km以上(マントル上部の流動性部分)の深さで生まれると言われるが、そのダイヤモンドに稀に含まれる「マグネシオウスタイト」は660kmの下部マントル上部でできたものなので、より深い可能性がある。さらに、核とマントルの境界部分からの「スーパープルーム」に由来するという説もある。ただしスーパープルームがそのままキンバーライト噴火になるのか、スーパープルームが原因となってキンバーライト・マグマが生まれるのかは不明。
・なお、キンバーライト岩体でダイヤモンドが見つかる確率はかなり低く、砕いた岩石数千個に一つくらいではないかと言われる。ダイヤモンドは大陸衝突の超高圧変成帯でも出るがきわめて微小なものである。
・キンバーライトに含まれている鉱物、さらにキンバーライト・ダイヤモンドに内包されている鉱物は、マントルの実像を探る貴重な資料であり、地球科学上、重要な意味を持つ。
参考資料
兼岡一郎「キンバーライト:地球深部の化学的環境を探るための鍵」『地球化学』48、2014年
英語版ブリタニカ「キンバーライト噴火」
英語版ウィキペディア「キンバーライト」
磯崎行雄「分裂する超大陸と生物大量絶滅」『プルームテクトニクスと全地球史解読』岩波書店、2002年
ネットサイト「iStone」キンバーライト
ボネウィッツ『岩石と宝石の大図鑑』誠文堂新光社、2007年