貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

ジルコン

2023-02-27 22:16:55 | 単品

東洋ルース産の続きでもう一つ。
ブルージルコン。よくない写真だけどあちきの腕ではどだい無理。

何と500円。は? ほんとですか?

こっちはゴールデン。別のお店でもっと高い。きらきらなんだけど写らないねえ。

ジルコンというのも、スピネルと同様、あちきには何となく捉えどころのない感じのする石でして。前は二つをよく混同した。赤っぽいし。(ずさん頭w)
けどスピネルはマグネシウムとアルミニウムの酸化鉱物、ジルコンは ZrSiO4 で希元素ジルコニウムの珪酸塩鉱物。じぇんじぇん違う。
ジルコニウムとは何ぞや。まあチタンの兄弟みたいなもので、原子炉なんかに盛んに使われるらしい。チタンと違って生活していて直接触れることはあんまりないでしょう。
ジルコンの和名は風信子鉱。これ何と読むんですかね。ふうしんしこう? ひやしんすこう? 何でヒヤシンスなのかはネットで調べてもわからない。そもそもヒヤシンスってどんな花? いろんな色があってわからないよ。

ジルコンが一番活躍するのは、岩石の年代測定。壊れにくく、ウランなどの放射性元素を含みやすいのでそれをよくわからん方法で計測すると、何十億年単位の時間が計れる。らしい。まあ放射性物質の半減期が常に一定だったらという話。もしかしたら違うかもしれないぜ。(また奇説をw)
西オーストラリア州のジャック・ヒルズで発見されたジルコンは44億400万±800万年前、地球誕生と同じくらい古いと計測されている。日本では黒部市宇奈月で採取された2.5億年前くらいの花崗岩から37.5億年前のジルコンが出て「日本最古の鉱物」になっている。
偉い石なのですね。

けど、原石の見た目はあまりぱっとしない。mindat のフォトギャラリーでも、ううむという感じ。大きな結晶はめったに出ない。羽毛状結晶も稀にある。色は様々で、赤いのはスピネルに似ていなくもない。晶系が違うけど。
これは前にもちらっと出した原石。アフガンブラザーズさんで200円。

けどジルコンの屈折率は2前後で、ダイヤモンドの2.42には及ばないものの、1.8前後のガーネットや 1.7後半のコランダムより高い。うまくカットするとキラキラになる。うちの二人も、肉眼だとかなりきらきらして美しいのですよ。

けど(おい、けどばっかだぞ)悲劇的なことに、だから「ダイヤモンドのまがい物」みたいなイメージができてしまった。さらには酸化ジルコン ZrO2 から人工合成される「キュービック・ジルコニア」というのがやっぱりダイヤモンドの代替品として広まって、ジルコンというと「模造ダイヤですか」みたいな勘違いをする人も多くなってしまった。可哀相。
そういう悲劇的な運命もスピネルとちょっと似ている。

まあ、「地球最古の(と証明される)鉱物」という勲章に敬意を払いながら、ルースのきらきらを味わうのがいいのでしょうね。


コーネルピン・ルースの透過光変色

2023-02-26 10:16:48 | ややレア

東洋ルース産の続き。(それは産とは言わん)
あちきの大好きなコーネルピンのルースが出ていて、おっとびっくり。
いろいろな所でたまに出るけど、だいたいはミントグリーンのものか、キャッツアイ。
それも美しそうだけれど、コーネルピンの魅力はやっぱり「透過光変色」。前にも書きました。こちらこちら
「まあルースじゃ無理だよねえ」と思いつつ見ていたら、ちょっと濃いめの色のものがある。カットのせいかどうかはわからないけど、いくつもの色が見える。コーネルピン・ファンとしては買わざるを得ない。
で、家に帰ってじっくりと眺めた。
ルースとして普通に上から見てると、不思議な色だな、くらい。むしろこんな変な色のルース、普通の人は買わんだろうなあ、とさえ。インクルもあるし。



ところが、透過光で見ると色が変わる。そう、かの有名な「プレオクロイック・コーネルピン」なのです。(全然有名じゃない、つかそんな言い方誰もしてないだろw)





写真じゃなかなか捉えられないけど。
ううむ。こりゃもったいない。けど仕方がない。光を透過させてしげしげと眺めるなんて、ちょっと無理。
プレオクロイック・コーネルピンの魅力は知る人ぞ知るで諦めるしかないか。


アンブリゴナイトとトリプライト

2023-02-25 20:44:22 | ややレア

東洋ルースさんで買ったレアストーンのルース。

アンブリゴナイト。LiAl(PO4)F。リチウムがミソのリン酸塩。
主に花崗岩ペグマタイトでできる。同グループにモンテブラサイト、LiAl(PO4)(OH) があって区別が困難なのでだいたい併記される。モンテブラサイトは例の「モンブラ石」ね。腹立つ名前。
つまりはアンブリゴナイト/モンテブラサイト=LiAl(PO4)(F,OH)。

この (F,OH) というのはけっこう見かける。何なんですかね。
 クリーダイト Ca3Al2F4(OH,F)6(SO4)・2H2O
 トパーズ Al2SiO4(F,OH)2 (OH のものがインペリアルトパーズ)
 アパタイト Ca5(PO4)3(F,OH)
 ベスビアナイト Ca19(Fe,Mn)(Al,Mg,Fe)8Al4(F,OH)2(OH,F,O)8(SiO4)10(Si2O7)4
 チャロアイト K(Ca,Na)2SiO10(OH,F)・nH2O
 カールトナイト KNa4Ca4Si8O18(CO3)4(OH,F)・8H2O
 アポフィライト KCa4Si8O20(F,OH)・8H2O
 ズニアイト Al13Si5O20(OH,F)18Cl

ペグマタイト晶洞から出るのは主にモンテブラサイトで、大きな結晶になることもあるけど、アンブリゴナイトは希少とのこと。
つか、もう名前一つにしちゃったらどうだい? トパーズだって分けてないじゃん。(暴論w)
主に無色透明だけれど、含有物によって微妙な色に染まる。薄青は人気らしい。

前からちらほら見掛けていたけど、高いし、無色透明だとちょっと詰まらないし、と思っていた。
こやつはなかなかいい色合いをしている。で、お手頃値段なのであわあわとゲット。(別にあわあわせんでもいい)
で、家に帰ってよくよく見ると、これ、方向変色する。「多色性」「光学的異方性」ね。
この写真は緑になっちゃってるけど、淡ーいブルーグリーンが基本色で緑、黄色、そしてラベンダーっぽい色も揺れる。コーネルピンほどではないけど、なかなかの「プレオクロイズム」なのです。素晴らしい。
こういうのはネット写真はもとより、店頭でちらりと見るだけではわからない。原石だとさらにわかりにくいかも。意外な発見で、買ってよかった。
写真は、あちきには無理。小さいし、ころころ転がるし、ピンセットではさむとすっぽーんと宇宙飛行するし。微妙な角度での色を捉えるなんて不可能。
コーネルピンと同じように回転台に乗せて動画を取ろうとしたら回転台が壊れていた。さすが破格値中国製、1年も持たなかった。爆発しないだけましか。

     *     *     *

もう一つはトリプライト。mindat には「Mn2(PO4)F」とあるけど、「(Mn,Fe,Mg)2PO4(F,OH)」という説もある。
あれ? アンブリゴナイトのリチウム+アルミをマンガンにしただけじゃない。
知らなかった。つか、買う時は名前はおぼろげに知っていたけどどんな素姓の石かは知らなかった。
要するに、共にリン酸塩含水鉱物、ただし水酸基はハロゲンと互換、ということ。
リン酸塩鉱物は多くが含水で、美しいものが多い。こちら

こちらはいかにもマンガンらしく少しオレンジっぽいピンク。見た目は写真よりもう少しピンク。

方向変色は見られない。単斜晶系だけど。
けどなかなか独特の色で美しい。
トリプライトはアンブリゴナイトより稀産みたい。美しい結晶はほとんど出ない。これも0.15ctとちーさーい。

こういう珍しい石をお手頃価格で楽しませてくれるのだから、プチプラ・ルースはありがたいものです。


ルースはブレーキ掛けてるんだけど

2023-02-24 19:09:09 | 漫筆

いやあ、まいりましたねえ。(ま、いつものことだろ)
浅草橋ミネラルマルシェへ行ったのです。いや、もう石禁はやめ。そういう言葉はなし。

11時ごろ着いて、もう行列ははけただろうと思っていたら、まだある。こんなに石好きがいるんだねえと感心。
15分くらい並んで、入ろうとしたら、みんな2階へ入っていき、3階へ直接行く人は少ない。
じゃあまず3階から行くことにした。で、3階には東洋ルースさんの部屋がある。ブースじゃなくて部屋一室。
言わずと知れたルースの人気店。どっかのアリーナとかで単独展示即売会をやったとか。
いつもマルシェなんかで広いスペースで出ているけど、人がいっぱいで、意気地なしのあちきは尻込みしていたのです。まあルースは一応守備範囲外ということにしているし。(全然意味ない規則)
ところが、今回は混み混みではない。「そういえばベニトアイトを出しているというツイートを見たな」などと思って、勇気を出して突進。(大げさなw)
いやあ、いけませんでした。
「ありゃ、こんな石が出てるじゃない。しかもこんな値段で」となって、気が付いたら買い物籠の中にいくつものケースが。
財布死滅。

何せ、アンブリゴナイト、トリプライト、コーネルピンなんて、けっこうなレアものが安い。
ほかに、シリマナイト、ブルーサイト、ブルージルコン、スファレライト、アンデシン、そしてダイヤモンド。ダイヤモンドはちびいけどキラッキラなのが2000円。あちきはお初ものです。ブルーサイトなんて、他の店で3000円で売ってたのが500円。こりゃみんな買うわ。いや、まいりました。
さすがにベニトアイトやヴェイリネナイトはちょっとあちきには無理でしたけど。

     *     *     *

しかし常々不思議に思うことは、「ルースってどうして安いの?」ということ。
少し珍しい石だと、原石はけっこう高い。けど、いい部分を選んで、削って磨いて、と手間を掛けたルースだと「え?」つうくらい安く出ていることがある。
なんでなのか、さっぱりわからない。
だから、そういう石を手元に置きたいと思ったら、ルースで買う以外にない。ルース禁止は無理なのです。(また弁解かよw)

あちきの腕でルースの写真なんて撮っても無意味だけど、文字だけじゃ詰まらないから。
これはブルーサイト。前にも書いたけど珍しい黄色の石。肉眼ではもっと鮮やかな黄色で、ちょっとシラーっぽいきらきらも揺れて、なかなか美しいのです。

アンブリゴナイトとトリプライトはまた改めて。

しかしこれはちょっとまずい展開だなあ。(はいブレーキブレーキ)

あ、四川食堂さんの麻婆豆腐、辛くておいしかったです。


パイライト・サン

2023-02-19 09:43:44 | 単品



オーパーツ? 
あるいは未知の生物の化石?
なんてね。
「パイライト・サン」。
前から欲しいなと思っていたけど、高くて手が出なかった。それがハッピーギフトさんでお手頃で出たので、石禁破りでポチっ。(もう石禁なんて言葉やめなよw)
有名なイリノイ州スパルタ産。アメリカというのはこういうパクリ地名がよくあるのですね。これ、“文化盗用”じゃねw?

不思議な形で、きらきらで、とてもいい。全面ギンギラではなくて、方向によって光の帯が移動するのが味わい。しかしこういうの、写真には写らないんだなあ。



動画はこちら

脆そうに見えるけど、しっかりしている。落っことしたけど(おいおい)壊れなかった。
放射円盤状の結晶というのはウェイヴェライト(銀星石)などいろいろあるけど、これだけ厚く立派なものはあんまりないでしょう。

     *     *     *

パイライト(黄鉄鉱 FeS2)は、堆積岩、熱水脈、変成岩など様々な環境で生成される一般的な鉱物で、しばしば立方体の結晶として産出するが、円盤状の結晶も各地の有機頁岩(海洋堆積岩)で見られる。金ぴかの円盤は古来珍重されてきたという。
アメリカ・イリノイ州のスパルタ地域は、5~6センチ、さらには十数センチに達する大きな円盤を産出することで知られている。
3億年前に形成されたヘリン泥炭層の上に有機物に富んだ泥が堆積し、バクテリアの働きによって無酸素環境が作られ、硫酸塩が還元されることによって、泥炭層と堆積頁岩(アンナ頁岩)層の間に硫化鉄が結晶したと考えられている。詳しくはイリノイ州地質調査所のサイト参照。
生物が生成に大きく関わっている石なのですね。遺骸が石になるのではなくて。こういうのって珍しいんじゃないかな。

     *     *     *

しかしサンに限らず、パイライトというのは問題のある石のようで。
「FeS2」つうのは見ればわかるように、酸素や水が加われば「酸化鉄+硫酸」になる。
パイライトと同質異形のマーカサイト(白鉄鉱)というのがあって、これは特に水に弱く、気を付けないとすぐに分解してしまうらしい。パイライトは比較的安定のようだけど基本的には同様。しかもマーカサイトを含んでいる標本だとあっけなく「逝ってしまう」らしい。おまけに分解の際に硫酸を出すからやばい。
ネットを見ると、「白い粉になりました」みたいな報告はちょぼちょぼある。イリノイ産のパイライト・サンも時折そうなるものがあるらしい。虹色光沢のものがやばいという風評もあるけれど真実のほどは定かではない。
さあ、どうでしょう。そのうち気が付いたら白い粉になっているか。持ちこたえるか。今のところは変な臭いはしませんけど。
その前にあちきの方が白い粉になるかもしれませんけどね。(君はずいぶん毒物を摂取しているから白くはならんのじゃないかね?)
ともあれケースに入れて密閉だけはしておくかな。

地上に出すと変わってしまう、あるいは壊れてしまうという石はけっこうあるようで。
ヴィヴィアナイト、コキンバイト、カルカンサイト、岩塩……
石は確固不変といったイメージがあるけど、必ずしもそうではない。
まあそういう「儚さ」もまた味わいと受け止めるしかないでしょうね。