貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

ショッキング・ピンク! コバルト・カルサイト

2024-09-29 09:38:53 | 単品

どうです、この色。

コバルト・カルサイト。
まあすごい。写真だとショッキングさはうまく表わせないんだけど。
つか、この色、光源や角度によってけっこう濃くなったり薄くなったりして捉えにくい。写真撮ってもばんらばんら。


カルサイトはいろんな色があって楽しいけど中でも派手なのがコバルト・カルサイトでしょう。
以前からちょこちょことは買っていたけどプチプラものなので色や大きさはちょと不満。
で先日、パーフェクトストーンさんでこれが出た。貧石価格オーバーだけど、色がすごそうなのでえいっとゲット。
ピンクが入った紫で、色そのものとしてはちょと好みをはみ出すけれど、この鮮やかさは唖然。
うちにいる石たちの中で一番派手な色。なんでこんな色が出るのか。
「あるかなきかの淡い色が好み」とか前に書きましたけど、確かにそれはそうなのだけど、たまにこういう強い色の石でびりびり痺れるのもいいものです。


カルサイト六角柱クラスター

2024-09-27 08:28:40 | ややレア

カルサイトというのは、色が多彩だし、安いしで、初心者には魅力的。ずいぶんいろいろと買いました。古い記事で同じこと書いてる。忘れてたw
ブルー、イエロー、レッド、オレンジ、ピンク(コバルト)、グリーン、透明(オプティカル)、ゴールデン、ハニー。なかなか楽しい。

けれど、カルサイトというと、何となく「どこにでもある海洋生物由来の堆積岩」というイメージが強くて、美石・貴石という範疇には入らないような感じを持っていた。組成も単純だし。
ところがどっこい。カルサイトでもなかなか美しい結晶ものがある。

中国浙江省金華市産。
六角柱の結晶が集まってひっついている。
この産地の特色らしい。こんなんあり?と思ってmindat のフォトギャラリーを見てみたけど、六角柱結晶のものは載っていない。案外珍しいものなのかも。
よくあるのは「犬牙状」結晶クラスター。それも美しいものがあるけど、これは形がキリッとしていて、透明度も照りもあって、ごくわずかだけど表面にイリデッセンスが出たりして、なかなか美しい。まあカルサイトなので質感は軽いけれども。



で、気がついた。これ、「水成鉱物」じゃん、と。
カルサイトは深成岩や変成岩でも出る。何せ「おっしゃって軽そうかマグ(O,Si.Al,Fe,Ca,Na,K,Mg)」で地殻中にカルシウムはものすごくある。さらに海水沈殿や海洋生物遺骸堆積による大規模堆積岩もある。
そういうのは、岩石中や堆積層の中にあるカルサイト。
けれどこれは違う。熱水に融けたカルサイトが自由空間で結晶したもの。
そういう意味では、石沼民を魅了するたくさんの美石・貴石と同じく、「水成鉱物」結晶なんですな。
犬牙状カルサイトもこの六角柱カルサイトも、そういう特別なカルサイトと言えるのではないでしょうか。

そんなふうに考えると、「火成岩・変成岩・堆積岩」由来鉱物とは別に、やっぱり「水成鉱物」「熱水性鉱物」という概念を立ててもいいような気がするんですねえ。まあそんなのは地学的には意味ないか。


雑記:日本列島って何だよ

2024-09-25 18:49:53 | おべんきょノート

変成帯の話を齧っていたら、日本には大きな変成帯が2つあるということを知った。
「領家〔りょうけ〕変成帯」と「三波川〔さんばがわ〕変成帯」。変成帯は他にもたくさんあるけれど、大きいのはこの2つ。
この2つは間に「中央構造線」をはさんでいて、上=北が領家、下=南が三波川。
都城秋穂博士はこれを「対の変成帯」として、北米大陸西側にも同じものがあると指摘、その後他の地域でも見つかって、有名な概念になった。
で、これは何か。両方とも大陸地殻の下に海洋プレートが沈み込む「プレート・テクトニクス」によって造られたもので、下の三波川は沈み込み部分の深部でできたもので「低温高圧」変成、上の領家は沈み込みで生まれたマグマが上昇して地殻浅部で造られたもので「高温低圧」変成。都城博士は同時にできたとしたが、最近の研究では少し時間的ずれがあるとのこと。まあ大勢に影響はないらしい。
間に挟まってる中央構造線って何だよ、という話になるけど、まあこれは「断層」。
上の領家と下の三波川は本来かなり離れているのにどうしてくっついたのか、中央構造線の断層とは何か、というのはまだはっきりと解明されたわけではない。

で、この2つの変成帯と真ん中の断層、これ、「日本列島がまだ大陸のへりだった時にできたもの」だという。
え? そうだったの? 恥ずかしながら、そんな話、知らなかった。沈み込み帯の火山からできた島、いわゆる「島弧」だと漠然と思っていた。
で、ちょいとそんな関係の啓蒙書を見てみた。割合最近の学説らしい。オジジの「最近」は全然最近ではなくて「生まれる前だぜ」と言われるだろうけど、何せ地球のテクトニクス研究が始まったのが1970年代で、オジジにしてみればちょっと前の話なのだわ。日本列島の「大陸からの分離説」なんかはもっと後だから最近。ついこないだ。(オジジを自慢しなくてよろしい)
この分離説、ものすごく雑に言うと、ユーラシア大陸の東のへりが突然割れて、日本列島の主要部分にあたる小陸塊が海へと進撃、間に日本海ができたということらしい。今も列島は東へ進み、日本海は拡大している。はあ、大陸から逃げたいのね。意味深。(おいw)
この分離の原因もはっきりわかっていない。都城博士は「マントルからのマグマの上昇」つまり「ホットプルーム」説を唱えた。例の「プルーム・テクトニクス」の先駆けの一つ。
マントル最深部から上昇してくる「ホットプルーム」は確かにあるらしい。ハワイ諸島とか、アフリカ東部の大地溝帯とかはそれによってできていると考えられている。ただ、「なぜ」「どこに」発生するのかは不明。神のみぞ知る。つか、これちょっと何でも説明できちゃう「デウス・エクス・マキナ」みたいな感じがしないでもない。マグマが上がってきているのに凹んでいるというのも素人にはよくわからない。

で、ともあれ、日本列島は大陸から分離してどんどん遠ざかっていく。その時に、細長い陸塊が二つに折れ、あの「フォッサマグナ」ができた。この「フォッサマグナ」もいろいろ複雑で、諏訪湖あたりで北部と南部に分かれていて、南部は「丹沢―伊豆半島―伊豆諸島……」と続く「フィリピン・プレート」上の「島弧」の衝突によって大きく影響を受けているらしい。難解。
つまり、中央構造線は列島がまだ大陸のへりだったかなり古い時代のもの、フォッサマグナはかなり最近のもの、ということなんですね。へえ。
ただ、「なんで二つに折れたのか」とか、「フォッサマグナの東の崖はなんでぐちゃぐちゃではっきりしないのか」など、はっきり解明されていない部分もある。
まあ「地べた」のことはまだまだわからないことだらけ。「プルーム・テクトニクス」ってほんとなのか、「プレート・テクトニクス」はどこまで適用できるのか」とかも、いろいろ異論があるようで。
でも面白いですねえ。

しかし、「大陸のへりが割れて海へ進撃した」とか「世界に類を見ない、海溝に直角で巨大な溝がある」とか「すぐ海側には3つのプレートがぶつかる珍しい三重合点がある」とか、日本列島はきわめて特殊な地形らしい。世界の活火山の1割が集中するとか、地震が頻繁に起こるとか、災難も多いけれど、とても面白い地質のようです。そんな上に住んでる人間もちょっと特殊かもしれない。

参考資料
都城秋穂『変成岩と変成帯』岩波書店、1965年
大鹿村中央構造線博物館サイト「対の変成帯
藤岡換太郎『フォッサマグナ』2018年、講談社ブルーバックス


「変成」に関して 3.変成と「水」

2024-09-22 09:41:20 | おべんきょノート

もう一つ、変成作用において熱や圧力と共に重要な役割を担うのが、水や二酸化炭素などの揮発性成分であるという。

《変成作用を受けつつある岩石のなかにはH2OやCO2を主成分とする粒間流体がある場合が多いらしいが、そういう流体が移動すればそのなかに溶解している物質が移動する。これは、場合によってはかなり大きな量に達しうるであろう。……そういう水は他の場所へ流れて行って、温度や圧力が下がると岩石のなかに石英を沈殿させたり、石英脈をつくることになる。》

沈み込み帯におけるマグマの生成の場合と同様、水は鉱物の結晶構造を切り、融点を下げる作用がある。原岩がどれだけ水やCO2を含むかによって変成作用の起こり方は変わる。
脱水反応の例としては、
  パイロフィライト=カイヤナイト+3石英+H2O
  白雲母+石英=珪線石+カリ長石+H2O
脱CO2の例としては
  方解石+石英=珪灰石+CO2
水とCO2両方の例としては
  トレモライト+3方解石+2石英=5ダイオプサイド+H2+3CO2
  2エピドート+CO2=3アノーサイト+方解石+H2O
  5ドロマイト+8石英+H2O=トレモライト+3方解石+7CO2
などがある(都城1996)。
おやおや、変幻自在ですね。

さらに、変成作用の中で発生した「水」は、火成岩で発生した水と同様に、熱水鉱脈やペグマタイトのようなものを形成するかもしれない。つまり、何度か書いてきたように、「火成岩系水成鉱物」と同様、「変成岩系水成鉱物」というものもあるのかもしれない。

     *     *     *

非常に面白いのは、変成作用においても、「花崗岩」が生成するということ。
ヒマラヤやアルプスなどの「大陸が衝突して盛り上がった変成帯」で、花崗岩が出る。これはプレート衝突の超高圧状態で岩石が融け、花崗岩マグマが生まれた可能性がある。

「K2ストーン」というのがあります。「K2アズライト」とも言われる。前は青いのは何じゃいという感じだったのが、どうもアズライトだということになったらしい。

カラコルム山脈にある世界第二の高峰、K2の麓で採れたという触れ込みの石。大陸衝突の造山運動の中で生まれてきたわけですね。解明されたわけではないけれど、これも超高圧変成で岩石が融けて生まれた花崗岩かもしれない。普通の花崗岩にはアズライトなんてあんまり入らない。そういう特殊な石が入っているということは、ちょっと特殊な生成なのかもしれない。

で、花崗岩が生まれれば、当然のことながらそこから派生する熱水も存在する。前も書いたけど、ヒマラヤやアルプスの水晶なんかは、変成岩由来のマグマ熱水から生まれてきたのかもしれない。

これはチベット産のショール、ブラックトルマリン。九角柱という不思議な形。

トルマリンというのはペグマタイトでしか出ないと言われる。しかしチベットなんかに火山マグマ由来のペグマタイトなんかあるでしょうかね。これはひょっとしたら、変成岩由来の花崗岩ペグマタイトでできたのではないだろうか。まあ空想ですけど。

石集めをしているだけの素人にとって、ちょっと興味があるのは、マグマ由来のペグマタイト・熱水鉱脈の「水成鉱物」と、変成岩由来のペグマタイト・熱水鉱脈の「水成鉱物」は、同じなのか違うのかということ。ある種の石はマグマ熱水からだけでき、ある種の石は変成作用熱水からだけできる。そんなことがわかると、なかなか面白いのではないでしょうか。ん? 面白くない? そうですか。

まあこんなところで、変成岩・変成作用のごくごく大雑把なアウトラインは浮かび上がってきたのではないかなと。いや、わかんないか。とりあえず、今回はこんなところで。ああ疲れた。


「変成」に関して 2.「変成岩」って何じゃい

2024-09-20 10:24:26 | おべんきょノート

変成岩が特徴的に見られる場所がある。
・接触変成帯
・広域変成帯

接触変成帯というのは、マグマ及び付随する熱水が上がってきて、岩石が変成されるもの。スカルンなんかはこれですな。しかし広域にわたったら広域変成帯になる。
広域変成帯というのは、いろいろ。最初この言葉を聞いた時、「これ、何も言っていないじゃない」と思ったものでした。「広い地域で岩石が変成している」。ただ情景を述べただけ。こんな学術用語ってあり?と。
で、もちろんちゃんとした説明がある。広域変成帯の中には次の二大派閥がある。
・プレート沈み込み帯の広域変成帯。いろんな温度・圧力あり。
・大陸衝突帯およびそれに伴う造山帯の広域変成帯。主に高圧変成。
ほかにも「厚い地殻内の放射性崩壊熱による変成帯」「大陸伸展に伴うマントル上昇の熱による変成帯」などがあるようですけど、ちょっと棚上げ。
で、変成岩を調べていけば、そこがプレート沈み込み帯だったとか、プレート衝突による造山帯だったとかがわかる。
といってもそんなに単純な話じゃなさそう。
たとえば日本には領家変成帯とか三波川変成帯という大きくて有名な変成帯がある。領家は低圧変成で、沈み込み帯で生まれた花崗岩マグマが貫入したもの、三波川は高圧変成で、沈み込み帯の深部で変成したものとされている。両方とも列島がユーラシア大陸の縁にへっついていた時にできたらしいけれど、詳しいことはまだわかっていないらしい。
あるいはヒマラヤ山系で見られる花崗岩は大陸衝突の高圧でできたものなのか、下部からのマグマの上昇があったのか、なかなかはっきりとは言えない。
まあほんとに難しい世界です。岩石は様々だし温度や圧力も様々。どんな石がどんなことを示すのかはそう簡単にわからない。とっても素人には歯が立たない。

     *     *     *

変成岩にはどんなものがあるか。
代表的なものには次のようなものがあるらしい。ただし他の環境でも出たりするからあくまで参考。

・泥質堆積岩起源のもの
  雲母、藍晶石・紅柱石・珪線石、クロリトイド(硬緑泥石)、十字石、菫青石
・石灰質堆積岩起源のもの
  方解石・アラゴナイト、ドロマイト、珪灰岩、角閃石、輝石、斜長石
・塩基性火成岩起源のもの
  角閃石、斜長石、輝石、緑簾石、ローソン石、パンペリー石、葡萄石

カイヤナイト三姉妹、アイオライト、タンザナイト、プレナイト、翡翠なんかはもっぱら変成岩由来ということのようですね。ガーネットなんかは変成岩・変成帯で多く出るけど、マグマ由来のペグマタイトなんかでも出る。
翡翠というのはわからないことが多いみたいだけど、だいたい次のような感じらしい。
 橄欖岩/玄武岩 → 蛇紋岩 → 角閃岩 → 曹長石/曹沸石 → 翡翠
ずいぶん長い道のりですね。しかも低温・高圧環境でできるらしい。6億年以上前では地殻温度が高すぎて翡翠はできないとも言われる。不思議な石です。
ヴェスヴィアナイト(ベスブ石)なんかは接触変成のスカルンなんかでもっぱら出るらしい。これは甲武信鉱山産のもの。甲武信ヶ岳を作った花崗岩マグマ上昇によってできたスカルン鉱物ですかね。


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変成岩の形状には以下のようなものがある。形状というのは見た目の姿のことらしいけどよくわからん。一応メモ。
1.スレート(板岩、Slate) 主に泥質性堆積岩から。
2.千枚岩(phyllite) 主に泥質性堆積岩から。
3.片岩(schist) 主に泥質岩起源、低温の火成岩起源は緑色片岩。
4.片麻岩(gneiss) 中・粗粒で平行組織を持つ
5.角閃岩(amphibolite) 主に火成岩から。低温では緑色片岩。
6.グラニュライト(granulite) 白粒岩とも言われる結晶の目立つ白っぽい岩石。高温でできる。
7.エクロジャイト(eclogite) 柘榴石とオンファス輝石を主とする超高圧変成岩。大陸衝突帯や沈み込み帯深部でできる。
8.ホルンフェルス (hornfels) 細粒・無方向性、主に接触変成でできる。
9.マイロナイト (展砕岩、mylonite) 破砕細粒・縞状の変成岩。
10.ミグマタイト(migmatalite) 混合岩。

ホルンフェルスってよく聞くけど、何度説明読んでもすっきりとわかった試しがない。しかしこれ「ホーンフェルス」じゃね? マグマに近い所から遠い所へと帯状の模様ができるから面白いみたいだけど、本来は粒も筋筋もない姿の形容らしい。ミグマタイトなんてのもよくわからない。マイロナイトに至っては聞いたこともなかった。どうも形状のことを言っているのか生成過程のことを言っているのか、ごちゃごちゃしているような気がしないでもない。

それとは別に「変成相」というのがあって、「温度・圧力による(化学平衡状態の)相」ということらしいけれど、これも素人にはよくわかりません。温度・圧力がだいたいわかって、そうすればその領域の構造運動の歴史がわかるということなのでしょう。
Eskola という人が8つを提案、それに新たに2つ加わって10種ある。都城1965より。

1.緑色片岩相
2.角閃岩相
3.エクロジャイト相
4.ホルンフェルス相
5.サニディナイト相
6.緑簾石角閃岩相
7.藍閃石片岩相
8.グラニュライト相
9.沸石相
10.葡萄石-パンペリ石変成グレイワッケ相

大まかな図はこんな感じ。あくまで大まか。


 10の変成相の概念図(都城1965、307頁を簡略化したもの)


難しいですねえ。
この石はこういう石に変わる、この石はこういう石がどうなった時に生まれる、というようなことがわかればいいのでしょうけど、そう簡単に問屋は卸さない。鉱物なんかも、変成作用で出たりマグマ関連で出たりするから、なかなかはっきりは言えないようです。ううむ。