貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

高知県産ベルチエライト

2024-05-31 09:15:53 | 国産鉱物

硫化鉱物のついでに。

過日、エヌズさんの本店を見てたら、その他標本の中にベルチエライトがけっこうなお値段で出ていた。あれ、これうちになかったかな、と探したら、国産標本セットの中の小片があった。
何せ40点ほどで3000円ほどのごちゃまぜセット。しかも小片。忘れていても仕方がない。(そうかあ?)
高知県高岡郡津野町倉川鉱山産。

ベルチエライト(Berthierite、ベルチエ鉱)。FeSb2S4。
デュモルチエライトもそうだけど、「チェ」じゃなくて「チエ」です。(うざいなこいつ)
もちろん値段も100分の1以下なのだから、エヌズさんの立派な結晶集合とは比べものにはならない。ルーペサイズの結晶です。

しかしキラキラと輝いている。
組成的にはスティブナイト Sb2S3 に鉄が加わっただけ。見た目も似ているからベテランでも間違うらしい。
スティブナイトは針状結晶集合の美しいものがいっぱいある。
わざわざベルチエ鉱を買う人は少ないでしょう。でもベルチエ鉱はベルチエ鉱、ということで。(意味わからん。持ってるぜと自慢したいだけか?)

金属プラス硫黄という硫化鉱物はなかなか個性ある面々がいる。日本新発見のものもあるし。
こやつも、マグマの中でいち早く珪酸塩体制から逃亡して、鉄とアンチモンとで強固な固体を作り上げたのだ、と考えると、なかなか面白いですよね。(面白いかあ?)


硫黄鉱物:硫黄と珪素は仲が悪い

2024-05-30 19:59:21 | おべんきょノート

自然硫黄。インドネシア産。


硫黄を含む鉱物は1304で、硫酸塩、亜硫酸塩を除いても683。めちゃくちゃ多い。
硫化鉱物で超有名なものだけでも、黄鉄鉱、白鉄鉱、黄銅鉱、斑銅鉱、閃亜鉛鉱、輝安鉱、辰砂、鶏冠石、雄黄などがある。もちょい広げると、硫化鉄鉱、磁硫鉄鉱、硫砒鉄鉱、ベルチエ鉱、輝銅鉱、銅藍、硫砒銅鉱、安四面銅鉱、砒四面銅鉱、輝銀鉱、淡紅銀鉱、濃紅銀鉱、針銀鉱、輝コバルト鉱、輝水鉛鉱、輝蒼鉛鉱、針ニッケル鉱、ゲルマン鉱、車骨鉱、毛鉱などなど。
切りがない。これに硫酸塩・亜硫酸塩鉱物が加わるわけで、巨大勢力ですな。

硫黄、S、原子番号16。酸素属でセレン、テルルと同族。は? 酸素はガスでテルルは金属じゃなかったかよ。わけわからん。
地殻中の存在度は意外と少なく、ストロンチウムと同じくらい。けれど大気にも海水にも生命体内にも存在する。火山と温泉には付きもの。なんでも地球最初の生命は酸素ではなく硫化水素で呼吸をしていたらしいとか。にゃ。
よく知ってるけどよくわからんやつですな。

なんで火山に硫黄が付きものなのかも、調べたけど難しくてわからない。硫黄はガスになりやすくて吹き出てくるからというのはあるだろうけど、なんで硫黄だけあんなに目立つ?
様々な金属の硫化鉱物があるのは、どうもマグマの中で珪酸塩メルトと硫化物メルトが混和しにくく分離するかららしい。これも難しくてよくわからん。
珪酸塩メルトと硫化物メルトの分離? このあたり、どうもアヤシイ。
で、mindat の Search Minerals By Chemistry で調べてみた。SとSiを両方含む鉱物はなんと61しかない。さらにそこからSO4、SO3を除くとなんと11。面白いから末尾に付けておく。知ってるのはヘルヴィンしかない。

つまりですねえ、「硫黄と珪素は仲が悪い」ようなのですね。なぜかは知らない。
「不適合元素」という概念があって、造岩鉱物の結晶からはじき出されてしまう元素がある。バリウムとかストロンチウムとか。別項メモ。しかしそういうののリストに硫黄は入っていない。マグマの状態で「分離」するから?

硫黄は珪素たくさんのマグマからはじき出されて火山で噴き出す。またマグマの中で早々に珪素と袂を分かって、金属を取り込んで硫化鉱物を造る。ということらしい。
つまり硫化鉱物は珪酸塩鉱物の対極、与党の超対極の存在ということになる。過激派だあ。
石作りの精霊たちは、精妙多様な珪酸塩や諸酸素酸塩の世界を作るために、早々にこの暴れ者を追放したのかもしれない。(ねえよ)
しかし「硫黄と珪素は仲が悪い」なんて、どこかに書いてありますか? そう説明してくれるといろいろわかりやすいのに。

前にもあげたシャーレンブレンド。硫黄ベースの諸金属塊。珪酸マグマからはじき出された硫化物メルトの固まったやつということなんでしょうね。アヤシイ過激派集団。

ううむ。硫黄というやつ、なかなか曲者。なんかダイヤモンドの生成に硫黄が関与しているという新研究もあるらしい。うむむ。

*11の異色鉱物
Abenakiite-(Ce) Na26Ce6(Si6O18)(PO4)6(CO3)6(SO2)O
Anandite (Ba,K)(Fe,Mg)3((Si,Al,Fe)4O10)(S,OH)2
Bobmeyerite Pb4(Al3Cu)(Si4O12)(S0.5Si0.5O4)(OH)7Cl(H2O)3
Bystrite (Na,K)7Ca(Al6Si6O24)(S5)Cl
Danalite Be3Fe4(SiO4)3S
Genthelvite Be3Zn4(SiO4)3S
Helvine Be3Mn4(SiO4)3S
Jasmundite Ca11(SiO4)4O2S
Krugerite BaCa6(SiO4)2[(P0.5S0.5)O4]2F
Sapozhnikovite Na8(Al6Si6O24)(HS)2
Sulfhydrylbystrite Na5K2Ca[Al6Si6O24](S5)2(SH)
自民党の中に革マルが紛れ込んでいるようなものか。(何だそれ)


不適合元素[メモ]

2024-05-30 19:56:47 | お便利メモ

造岩鉱物から「はじき出されてしまう」元素。
どうも確かな「リスト」というのが出てこない。ウィキペディアなどで挙げられているものは以下。

◆イオン半径が大きすぎるもの(LILE)
 ルビジウム
 セシウム
 ストロンチウム
 バリウム
 ランタン
◆酸化数が大きすぎるもの(HFSE)
 ジルコニウム
 ニオブ
 ハフニウム
 タンタル
 ランタン
 ウラン
 トリウム

以下のものを挙げている記述もある。
 カリウム
 ナトリウム
 チタン

厳密な定義はないのかな。

硫黄は酸化数が大きいようだけどここには含まれていない。
とりあえずのメモ。


コヴェライト(銅藍、コベリン)

2024-05-29 19:33:00 | 単品

銅の鉱物はけっこういろいろと集めてきました。まあ厖大な数があるので一部だけど。
でもこれ、ちょっと盲点だったですな。
銅藍。藍銅鉱というのはアズライト。それをひっくり返したような変な名前。ドーランという化粧品がありましたが全然関係はない。
コベリンという表記も見る。しかし正式鉱物名は Covellite。コヴェリというイタリア人名由来だけど、発見命名者がフランス人だったので当初はフランス式に「リン」だったのがどういうわけか英語式の「ライト」に変わったらしい。アウインなんかはインのままなのにね。IMAでも国間での勢力争いがあるのか。アユイさんは偉大だったからフランス語風を残したのか。(いいよどうでもw) で、どういうわけか日本の鉱物関係者は古いフランス式の名前を使っている。かっこいいからかな。(いいよどうでもw) なんかポケモンの名前みたいでかわいいね。(ポケモンなんて君知らんだろ?)
組成は CuS。いたって単純。銅の硫化物。硫化物というのは見過ごしていました。
あんまり出ない。大きな結晶は特にレア。表面が虹色に輝くのは珍重され、高い。
これはエヌズさんからのお手頃価格ミニ標本。こういうの有り難い。
Leonard Mine, Butte, Butte District, Silver Bow Co., Montana, USA.
《立派なコベリンを産した有名産地ですが入手困難な品になりつつあります。》とのこと。左右12ミリ。

アズライトよりさらに深い紺色。重厚でいいですねえ。そして表面には虹色ではないけど青銀色の輝きが揺れる。素晴らしい石ではないですか。

ただねえ、銅も硫黄も酸化しやすい。空気にさらしていたら割と早く分解してしまうかもしれない。まああちきの方が早く分解するでしょうけど。

うーん、硫化鉱物かあ。実は巨大勢力らしい。ちょっとおべんきょしてみるか。


人造青水晶

2024-05-26 09:08:31 | 人工鉱物

青水晶を求めて右往左往したことは前に書きました。
その時、セルフクリエイションさんでロシア産の人造青水晶が出ていたのは横目で見ていた。大きくて、えらく高くて、ちょっと人工っぽい色だったのでスルー。
で、先日、ヤフオクに小さなカボッションがお安く出ていたのでゲット。CZに始まる人造石魔境の余波ではある。



水熱法=ハイドロサーマル法。ロシア産。
かなり濃いしっかりした色。
この色は自然鉱物ではない色でしょうねえ。独特の美しさ。
「じゃあガラスでいいじゃん」という見方もあるけれど、ガラスと水晶はやはり質感が違う。ガラスはいろいろと美しい色や輝きのものがあるけれど、どうしても質感が軽い。するっと「美しい」だけで終わってしまう。(ほんとにわかってるの?w)
これは一応水晶なので、光の進み方が変。角度によって濃くなったり薄くなったり。それが鉱物の美しさなのではないかなと思います。




いい色です。
外道ですw