貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

変成作用における熱水の発生

2024-09-01 23:06:41 | 岩石生成論

この前のタンザナイトのところで
《多くの美麗鉱物は、例の「玄武岩→安山岩→花崗岩」の王道ルートをたどって花崗岩から発生する熱水でできる。しかし一方、変成作用の中で生じた熱水でできる鉱物もあるのではないか。岩石進化の最先端たる「水成鉱物」にも、マグマ熱水由来のものと、マグマは直接関係ない変成作用由来のものがあるのではないか。》
と書きまして、「素人の妄想」と言いましたけど、どうもあながちそうでもないらしいです。
かの有名な都城秋穂さんの『変成作用』という本(1994年、岩波書店)をぱらぱらとめくっておりましたら、こんな記述がありました。
《変成作用を受けつつある岩石のなかにはH2OやCO2を主成分とする粒間流体がある場合が多いらしいが、そういう流体が移動すればそのなかに溶解している物質が移動する。これは、場合によってはかなり大きな量に達しうるであろう。……そういう水は他の場所へ流れて行って、温度や圧力が下がると岩石のなかに石英を沈殿させたり、石英脈をつくることになる。》
石英はもちろん、融点が比較的低い珪酸塩鉱物なら熱水に溶け、亀裂・空洞で結晶化するということも十分ありうるようです。タンザナイトがそれかどうかはわかりませんけど。

カイヤナイトなんかも典型的な変成岩由来鉱物。こういう美しい晶面の結晶も、おそらくそういうプロセスでできたのではないかな、などと。

また、ヒマラヤやアルプスのような大陸衝突帯でできる水晶なんかも、ぶつかり合う地殻の中で高熱・高圧となった岩石の変成作用から派生した熱水でできるのではないかな、などとも。
違っているかもしれませんけど。


岩石進化論

2023-04-09 21:43:22 | 岩石生成論

「なんで石集めなんかしてるの?」
と石民はしばしば尋ねられる。
まあいろいろな答え方があるでしょう。答えないというのも含めて。

こういう答えもありかなと。
「地球の岩石も進化しているのである。われらが集めている美稀石はその最進化形である。それを生物の最進化形である人間が愛でるというのは、最進化形同士の出会いという奇跡なのである。」

そう、「岩石・鉱物も進化する」。
それをこれから辿ってみる。おおむね現在の主流説に乗っている。そこから生まれた「構図」(妄想?)が果たして正しいかどうかは、知らない。
ちなみに進化したものが価値があるというわけではない。大樹の頂上の枝穂が幹より偉いということはない。

晶洞の中に水が作った繊細な石、エレメエファイト。



①始まり――マグマ・オーシャンと橄欖岩

太古の地球は、星雲ガスの凝縮、隕石・彗星・微惑星の衝突によって、「マグマの球体」であった。
大気はあったけれど酸素はまだない。大気中の水は雨となって降ったがすぐに蒸発してしまい、地表は「マグマの海」であった。
次第に重い元素が中心に凝縮し始めるが、まだ「核」もできていなかった。
やがて美しい石を生み出す諸元素はマグマの中に溶け込んでいた。
それがやや冷えていき、マントルの「橄欖岩」が形成される。橄欖石と輝石。

美しい緑の宝石ペリドットは橄欖石がひょんな具合で地上に露出したもの。



②海洋地殻の形成――玄武岩のステージ

やがて「マグマ球」は冷え始め、表面に「殻」ができた。コマチアイトあるいは玄武岩。さらに冷えると雨が蒸発しなくなり、地球は「海」に覆われた。原始「海洋地殻」の誕生である。
この時にただ「殻」ができ、冷えるに従ってどんどん厚くなる、という形にはならなかった。恐らく殻の偏りなどによって、亀裂、沈み込みが起こった。
沈み込む殻に引っ張られるようにして新たな亀裂が生まれ、マグマ(溶解橄欖岩)が噴き出して新たな地殻が造られる。これによって「海洋地殻の循環」が生まれた。
また海洋では生物が繁殖し、生物性堆積岩が作られた。さらに大気にもたらされた酸素によって海水の鉄分が酸化沈殿し大規模鉄鉱脈が形成された。

粗粒玄武岩のプレセリ・ブルーストーン。ストーンヘンジの石。



③「陸」の形成――安山岩・角閃石のステージ

沈み込んだ地殻とそれに含まれていた水によって、「安山岩マグマ」が形成された。そしてこれが地表に噴き出して、「陸の元」が作られた。
はっきりしたプロセスはわかっていないが、この「陸の元」が大きくなって、「大陸地殻」が形成された。「島」が徐々に集まったという説があるが、突然の大変動があって一挙にできた可能性もある。人間は、特に地質学は、変化が徐々に蓄積されるという「斉一説 uniformitarianism」を取りがちだが、生物進化プロセスは突然大変化が起こることを示唆している。大陸地殻も突然できたのかもしれない。25億年前には大規模な大陸地殻の増殖があったとされている。
この「大陸地殻」はそれ以前の地殻とは全く異なるもの。軽い。だから浮く。沈み込まない。つまり溜まる一方。(ただし大陸衝突によって沈み込むことはあるらしい。)
こうして「陸地」が生まれ、その上で地上生命が大繁殖を遂げた。人類を含む地上生命は言うまでもなく大陸地殻の支えによって生まれたのである。
このプロセスの中ですでに花崗岩が生まれている可能性もあるが、そのあたりは不明。
安山岩の中で広く見られるのが角閃石で、膨大な種類があり、有力な造岩鉱物になっている。
また玄武岩が変成した緑色片岩・緑泥岩もステージ的にはこの部類に属し、これも有力な造岩鉱物になっている。

高マグネシウム安山岩、サヌカイト。



④「プレートテクトニクス」の発生――花崗岩と変成岩のステージ

大きく形成された大陸地殻の下に循環移動する海洋地殻が斜めに沈み込んでいくという、現在形の「プレート沈み込み」現象が生まれる。
水を大量に含んだ海洋地殻は大陸地殻深部安山岩の溶融温度を下げ、花崗岩マグマを作り出す。ここには海洋地殻の上に堆積した物質・元素も含まれる。
この花崗岩マグマは高粘性ゆえにゆっくりと上昇する。その過程で周囲の岩石から元素を吸収したり、それらを混合したりしつつ、鉱物の大きな結晶を作り出す。「ペグマタイト」の美石はこうして作られる。
またプレートテクトニクスによる大陸衝突域や沈み込み帯(変動帯)では低温高圧変成岩が作られる。特に沈み込み帯では海洋性・地上性の堆積岩から様々な元素が供給され、多彩な変成岩が形成される。たとえば翡翠は玄武岩→低温高圧加水変成→曹長石→低温高圧脱水変成ででき、そこに多様な元素が加わってあの多彩な色が生まれる。

球顆流紋岩。花崗岩マグマの流出物。



⑤熱水の活動――「水成鉱物」のステージ

花崗岩マグマは冷却していくプロセスで大量に含んでいた水を吐き出す。
この熱水が様々な場所で新たな岩石・鉱物を産み出す。これを「水成鉱物」と呼ぶことにする。
熱水が石灰岩などの堆積岩にぶつかると「スカルン」が形成され、多様な鉱物が作られる。また亀裂・空洞に入り込んで冷却すると「晶洞」や「熱水鉱脈」が作られる。多くの金属鉱床がこれによって作られ、また美しい純粋鉱物の結晶が生まれる。ペグマタイトの中心部も同じ。
これが現在時点での最進化形。
つまり現人類が鉱物資源として利用するものや、鑑賞石として愛玩するものは、多くが熱水によって作られた「水成鉱物」である。

緑水晶。



⑥次の進化?

さて、この進化の先はどうなるのか。
そんなことはわからない。
最進化鉱物と最進化生物が出会ってできた人工鉱物、半導体とかセラミックスとかが次の最進化形鉱物になるかもしれない。それらを利用した情報知能新人類が生まれるかもしれない。
現人類は人工知能に駆逐されるかもしれない。美稀石はコンクリートとアスファルトの下に埋もれるかもしれない。
それとも予期せぬ大変動――シリカ・マグマや水素のキンバーライト級大爆発とか?――が起こって、地表は一変するかもしれない。
地球科学者の中には「地表の水はやがてマントルに回収され生命世界は終わる」と説く人もいる。
進化とは創造が絶え間なく続いていくことである。それがどこへ向かっているかを人は知ることができない。
一つの創造の大樹は潰え、またあらたな芽が芽生える。地球や太陽系という大樹もまた。


岩石も「進化」する?

2023-03-19 10:05:32 | 岩石生成論

「岩石」というのは、様々な「鉱物」の混ざったもの。
鉱物は様々あってそれがまた様々に混ざるから、もう訳わからん状態。
図鑑なんかを見ても、色がどうで成分がどうでどういう場所で見られるといった現象的記述の羅列で、分類も見た目だったり成分だったり生成環境だったりとばらばら。読んだ先から忘れていく。(それは老化じゃないのかね)
鉱物学者・地質学者の方々はこれ全部覚えているんだから大したもんです。(そりゃプロだ)
まあ、ただ石を眺めて楽しんでいるあちきのような者にはほとんど無縁。しかしあんまりにも知らないというのはよろしくない。
そこで、半分遊びで、自分が把握できるようにと、火成岩とその派生類に限って、「どうやって生まれてきたか」をメインにして、大雑把な“岩石系統図”を描いてみたのです。全然厳密ではなく、あくまで大まかなイメージ。

こうやってみると単純なものだ。(いや君が無理やり単純にしてるだけだw)
専門の方々からすれば噴飯ものだろうけど、こういう大見取り図を作って説明してくれないとあちきのような非感覚タイプの人間はわからんのですよ。(タイプの問題じゃないんじゃない?)

ついでに主要火成岩の主成分推移をわかりやすく並べてみる。多い順ではない。図に入れようと思ったけど入らんかった。

・橄欖岩 橄欖石・輝石
・玄武岩 橄欖石・輝石・斜長石・磁鉄鉱
・安山岩     輝石・斜長石・角閃石
・花崗岩        斜長石・角閃石・石英・正長石・雲母

橄欖石は次第になくなって、角閃石・石英・正長石が加わってくるという大まかな流れ。角閃石と雲母は含水鉱物。水が増えていくわけですな。

こうすると主要な美石鉱物の生成背景が漠然とイメージできる。のではないでしょうかね。一番華々しいのは右上のあたり。左のあたりはちょっといい加減だけど、造岩鉱物っぽい感じの集まり。上に行けばシリカと水が増え、下は苦鉄質。

     *     *     *

で、ここで「ん?」と思った。
「これ、系統樹っぽくない?」
「岩石も進化している?」

生物の分野では「進化系統樹」というものが考えられている。原始的な生物からいろいろ枝分かれして、複雑な――高等と言ってはいかんらしい――生物になっていく。て、それを見るとあちきら人類は末端の最進化形。偉いかどうかはまた別。
岩石・鉱物もまた進化系統樹みたいな構造があって、マントル・マグマから生まれる原始的な形態のものが、だんだん変化して、複雑に、軽やかに、そして美しく――これは主観かな――なっていく。橄欖岩と玄武岩だけの始原的世界が続いていたら、安山岩・花崗岩の大陸地殻がなかったら、花崗岩マグマの生み出す熱水がなかったら、多くの美石は生まれなかった。
とすると、あちきらが愛玩する美石たちは、やはりあちきらと同様、末端の最進化形だと言えるのではなかろうか。地球の神は、生物と同様岩石も、始原的なものからより多様・複雑で美しいものへと進化させてきたのではないか。

「進化」という概念はいろいろと議論を呼ぶものですけど、まあ価値判断は保留して、単純な構造が複雑な構造へと進化していくということはある。特異な色や姿といったものもあるでしょう。「階層性」すらあるかもしれない。
たとえば、オパールやラブラドライトの変幻する光。
熱水が生み出す結晶の複雑精妙な姿。多彩で鮮やかな色。
あるいはヴェスヴィアナイトの「Ca19(Fe,Mn)(Al,Mg,Fe)8Al4(F,OH)2(OH,F,O)8(SiO4)10(Si2O7)4」といったとんでもない構造。
こういうのは、宇宙広しといえども地球にしか、原始の地球ではなく進化した地球にしか存在しないものかもしれない。ホモ・サピエンスが進化した地球にしか存在しないように。
いや、「最も高度だ」と言っているわけではありませんよ。宇宙にはたぶんもっと高度な別種の物質があり、高度な生命的知的存在がいるでしょうし。(は?)
そして、少なくとも地球上で、生命進化の先端であるホモ・サピエンスと、地球物質進化の先端である美石とが出会う。それが「石集め」という奇跡的出来事ではないか。そこに何かしら「この世ならぬもの」を感じるのは、進化という神秘を感得するからではないか。(おいおい石沼民の自画自賛かよ)

夢想はこのくらいにして。
ここにはもちろん堆積岩や変成岩は入っていません。
まあ堆積岩は「積もってますねえ」「ああ、積もってるね」でいいんだろうけど(よくはないだろうよw)、変成岩はまたまた訳わからん状態。また別のお話としましょう。


母岩は必ずしも母ではない?

2023-03-17 10:51:04 | 岩石生成論

雑感の雑文です。(どれもそうだろw)

今でも無知ですけど、もっと無知だった頃、母岩に生えた結晶を見て、
「ううむ、これは母岩の成分が浸み出して結晶になったのだろうか」
などと思ったものです。

けど、これ、必ずしもそういうことではない。
もちろん、マグマから生まれた超高熱の熱水が接触して、あるいは大陸変動のものすごい力が加わって、元の岩石を溶かし、その岩石に含まれていた成分を改めて純粋結晶として結晶させるということはある。
そういった場合は、岩石は確かに結晶の「母」であるかもしれない。
でも、そういうことばかりとは限らない。
岩塊内に亀裂や空洞があって、そこにはるか彼方から特定成分を含んだ熱水が侵入し、そこでとどまってゆっくりと冷えて、大きな美しい結晶を作る。そういうことも多々ある。その場合、たまたまその空洞の周りにある種の岩石があったというだけで、岩石と結晶はほとんど無関係ということもある。
ペグマタイトなんかでは、融点が高いものから結晶ができる。で、後から固まったものは先の結晶を包むように固まる。包んでるほうの鉱物は母ではなくて兄弟というべきか。「共生」ですね。
「母岩を見なきゃその鉱物のことはわからない」という見解がありますけど、それは多くの場合正しいかもしれないけど、そうでない場合もある。

このチタナイトだと、いかにも母岩とその子である結晶みたいな感じ。

このアストロフィライトはどうかな。むしろ共生かな。



まあ経験と知識が豊富な人は、母岩や共生結晶を見て、その鉱物がどこでどうやってできたのかわかるのでしょうけど。

いや、だからどうだということではありません。
ただ、鉱物のでき方というのは、ほんとに様々だなあ、と感心しているわけです。
素朴なイメージだと、石はマグマが固まってできる。マグマにもいろいろバラエティはあるだろうけど、固まったらそこでおしまい、と。ところがとんでもない。とりわけ水が関与すると、あれを引っ張り出して、これと混ぜ合わせて、あっちへ運んで、とやりたい放題。(それは言い過ぎだろ)
いやあ、けっこう自由奔放な世界なんですねえ。知らなかった。

     *     *     *

物質はそれ自体で特異構造を作るのか、という大問題がありまして。
宇宙の星間物質からたまたま惑星が生まれて、たまたまそこに生命が生まれて、たまたまそこに人類が生まれた。唯物論はそう考えるわけです。
このたまたまってのは何じゃい。大鍋に手当たり次第に何かをぶち込んで長い間煮ていれば絶品のブイヤベースがたまたまできるかもしれない。サルにキーボードを打たせたら途方もない長い時間を掛ければシェイクスピアができるかもしれない。んなあほな。
いや、そうではなく、物質には何か特異な構造を生み出す仕組みが隠されているはずだ。とプリゴジンを始めいろいろな人があれこれ考えてきた。けどわかってない。
物質はほっておくだけで、特異な構造、もっと言えば「高次な構造」を生み出すのか。

石を見ていると、「こりゃやっぱ特異なもの、高次なものだよねえ」と思ってしまう。で、どうやったらこんなものができてくるのか。「たまたま」が重なった奇跡中の奇跡なのか。それとも何か別の作用因があるのか。それは物質内にあるのか、「外に」あるのか。
まあそれは永遠の謎でしょうけど。


水が石を作る ②熱水鉱床など

2023-02-05 12:02:53 | 岩石生成論

プレート沈み込みによって地殻深部にもたらされた水が花崗岩を造る。そして花崗岩ができる際に放出された水が熱水鉱脈や晶洞鉱物を造る。というのが前回。
この熱水、どんなもんなんでしょうか。

《熱水の温度は水の臨界温度である374℃以下とされている(それ以上の温度では水は気体(ガス)と液体の区別があいまいな流体であるが,一般にガスと呼ばれている)。一般的に約250℃以下は低温の熱水とされ,約350℃以上は高温の熱水とされる。低温の熱水は地表近くの熱水であり,それから生成した熱水鉱床は浅熱水鉱床といい,高温の熱水は地下深部の熱水で,それから生成した熱水鉱床は深熱水鉱床という。また,その中間的な熱水鉱床は中熱水鉱床ということがある。》倉敷市立自然史博物館 「熱水鉱床」

液体とも気体とも言えない曖昧な流体。ふうん。「気成鉱物」という概念があるようですけど、温度の高い水からできる場合、気成なのですかね。いずれにしても普通の頭ではなかなか想像できないですね。

この「熱水鉱脈」というのは、金や銀といった金属の鉱床を作り出す、人類にとってはきわめてありがたいもののようで。

一方、空から降って来た雨が大地に浸み込んで、地下のマグマによって熱せられることもある。で、それが周囲の岩石を溶かして、新たに石を造ることもある。低温度の「浅熱水鉱床」。こうした水は酸素を含んでいるので、硫酸塩鉱物を造ることが多いとのこと。バーライト(重晶石)、セレスタイン(天青石)、ジプサム(硬石膏)など。セレスタインなんかはそういう熱水が空洞に流れ込んでああいうジオードができたんですかね。

     *     *     *

もう一つ、石好き民にとって重要なのが「スカルン」というやつ。
これはマグマが石灰岩・苦灰岩などの堆積岩とぶつかってできる鉱床。
そこにやっぱり水が関与する。マグマにも堆積岩にも水は含まれていて、その中に様々な元素も溶けているし、さらに溶かし込む。それが複雑に作用しあって、多彩な鉱物が生まれる。
ガーネット、ベスビアナイト、エピドート、ダイオプサイド、トレモライト、サーペンティン、タルク、ウォラストナイト、斜長石、角閃石、その他もろもろ。

スカルンの代表的鉱物、ベスビアナイト。いやヴェスヴィアナイト。(うざい)
既出記事ではブルーグリーンの結晶のを載せたけど、これは別の、ちょっと変な色をしたやつ。キラキラして美しい。

組成は Ca19(Fe,Mn)(Al,Mg,Fe)8Al4(F,OH)2(OH,F,O)8(SiO4)10(Si2O7)4。ははは。
マグマ+熱水が岩とぶつかった混沌の中でこんな複雑な結晶が組み立てられるなんて、面白いですね。

金属鉱床もこのスカルン付随の熱水によってできるものが多いらしい。熱水鉱床と同じになるけど。
まあスカルンは複雑で難し過ぎてわけわからない。こちら、あるいはこちらでどうぞ。

     *     *     *

水が生成に直接関わるわけではないけれど、鉱物が水によって集められるというものもある。
「漂砂鉱床」と呼ばれるもので、重い鉱物が流水の作用で特定の場所に集まった鉱床。
金・白金・錫石・ジルコン・サファイア・ダイヤモンドなどは重いため、深い河底や海底に溜まる。その土砂を「水簸(すいひ)」して鉱物を取り出す。「川流れサファイア」なんていうのが典型ですかね。
中には、南アフリカの世界最大の金鉱床ウィットウォーターズランドのように、漂砂鉱床として集まった金が再び固まって堆積岩となったものもある。

水は集めるだけではないですね。岩石を削り砕く役割もある。火成岩を砕いて中にある鉱物結晶を取り出すといった芸当もやっているわけで、水は自然の鉱夫とも言えるかもしれません。


海の水も意外なところで石を造っているようです。
《太古代の末に、初めて光合成による酸素が放出されると、酸素と海水中に溶けていた還元鉄イオンが結合して、大量の酸化鉄として海底に堆積した。私たちが使う鉄製品は、ほとんど太古代最末期から原生代初頭(約25~20億年前)の間に集中的に堆積した縞状鉄鉱層(BIF)から採掘・加工されたものである。》『三つの石で地球がわかる』
鉄というのはふんだんにあってあちこちで化合物を作っているけど、それをまとめて鉄を取るというのは案外難しい。大昔に水がまとめておいてくれたわけですな。とても親切。(そういうことじゃないと思うよ)
また、海水中のカルシウムは自然沈殿してカルサイト・アラゴナイトを作る。多くの石灰石は生物由来ですけど、自然沈殿というのもあるそうで。

まあ水がかくも多彩な鉱物・岩石世界を作り上げているのは確かなこと。
水のない火星の地表写真を見ると、おんなじような岩と砂が続いていて、なんとも殺風景です。
つか、水がなければ地球型の生命は生まれなかったわけですしね。地球もわれわれも、水によって生まれ水と共にある。そう言ってしまうと平凡ですけど。

改めてこういう水の役割というのを見てみると、驚嘆しますね。
昔あった「水成岩」という概念は「堆積岩」に統合されて廃止されたようですけど、「水成鉱物」という概念があってもいいんじゃないかと思うのです。(素人の妄想乙) 多すぎて意味ないかな。