貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

スケルタル・スぺサルティン

2023-04-30 12:12:46 | 単品

なんかこう書くと変ですなあ。骸晶満礬柘榴石。これも変。
マンガン・ガーネットの階段格子状結晶。



こういう幾何学模様は、ビスマスの人工結晶なんかだともっと派手。ほかには、水晶、フローライトとかが有名なのかな。不思議で美しいものです。

前にも書いたけど、ガーネットというのは、超巨大グループで、鉱物名も商品名も乱立してもうわけわからん状態。自分でまとめ直してみたら覚えるかと思ったけど、さっぱり。
ただしですね、どうも大きく分けると2つあるらしい。
スぺサルティン(マンガン)とグロシュラー(カルシウム)は「水成鉱物」系。前者はマンガン鉱床から、後者はスカルン鉱床から主に出る。ちなみにアンドラダイト(灰鉄柘榴石)やウヴァロバイト(灰クロム柘榴石)はグロシュラーの変種。アンドラダイトにはデマントイドやレインボーガーネットがある。
それに対してアルマンディン(鉄)とパイロープ(マグネシウム)は、いろいろな環境で出ることは出るけれども、主要なのは「地殻関連」。特に海洋地殻を構成する玄武岩が高圧変成すると、「エクロジャイト」(柘榴石と輝石)「ガーネタイト」となり、ガーネットはその主要構成鉱物となる。このエクロジャイト・ガーネタイトは重いので沈み込んで上部マントルと下部マントルの境界に層を作っているとも言われている。こちら。つまり非常に基盤的な鉱物なのですね。
要するに大雑把に捉えると、「地殻上部」的な派手なガーネット(スぺサルティンとグロシュラー)と、「地球深部」的な地味なガーネット(アルマンディンとパイロープ、苦鉄質ガーネット)があるということ。らしい。そういうふうに考えるとカオスなガーネットの世界も少し目鼻がついてくるのではないでしょうか。

で、これは「水成鉱物」系ガーネットのスぺサルティン。水が媒介しなければこんな「骸晶」はできないでしょう。
ただ、骸晶というのもややこしい。こういう急速結晶化による幾何学形態のことを言う場合もあるし、一度結晶したものが溶けて、あるいはさらに結晶して不規則な形になったものを言う場合もある。「蝕像」と混用されたりもする。わけわからん。
これはフローライトとゴシェナイト。骸晶? 蝕像?



こっちは水晶の骸晶? 蝕像? 「アイスクリスタル」と名前がついている。



     *     *     *

ところでこれ、エヌズミネラルさんのヤフオク版で買ったもの。ただしオークション形式ではない。
エヌズさんは時々買ってるけど、今までヤフオク版があることは知らなかった。ぽかん。
本サイトより少し安めのものが多いみたい。あれこれ欲しくなる。これも前から欲しかったけど二の足を踏んでいたものがお安めで出ていたのでポチっ。
けどヤフオクというのは登録だの評価だのと手続がめんどくさい。登録したらヤフーからがんがんメールが来て鬱陶しいし。素直にネットショップで買ったほうがオジジとしては楽。
クリワ御徒町さんなんかもやっぱりbase とヤフオクを両方やってる。販路が広がるからでしょうかね。
余計なお話でした。


ガーデンクォーツ

2023-04-23 11:27:52 | 単品

ちょっとお遊び細工物という感じもあるけど。
ガーデンクォーツ。

ぱっと見では「何やねんこれは」みたいな。
横から見るとはっきりするんだけど、これはつまり、岩石の上に水晶が積もったものを、岩石と水晶とが半々になるように切断して、それを丸玉にしたもの。ということでしょう。




岩石部分は、元になる熱水から水晶より早く沈積した鉱物群なのか、たまたま石英が流れ込んだ隙間にあっただけで直接関係ないものなのかはわからない。赤いのは鉄系の鉱物かな。緑は緑泥石? 鑑別能力がないから何とも言えない。
高級品ではないので、あんまり変化に富んだ景色とは言えない。
けれどこれ、強い光を方向を変えて照らすと、なかなかびっくりのショーが展開するのです。





水晶の半球がレンズになるので、拡大されたり光が集まったりして、面白い効果が生まれるようですね。
これはなかなか頭がいい。水晶だけでは形とか透明度がいまいちのものを、基盤岩石と合わせることで面白い作品にしたということでしょうか。
これで基盤岩石のほうにもっと凸凹があったり多彩な色があったりすると、もっと魅力的な作品になるのでしょう。カケラが水晶の中に遊離していたりすれば、「インクルージョン・ガーデンクォーツ」になってさらに面白い。実際、金針が泳いでいる「ルチル・ガーデンクォーツ」なんてのもあるみたいだし。
最初はなんかゲテモノみたいだなと手を伸ばさなかったのだけど、ちょっと面白いかなと思ってお安めのものを買ったら、現物は思いのほか楽しく美しいものでした。
この手のものは基盤岩石の多彩さと水晶の透明度がポイントかな。写真で見てもなかなかわからないので実物を見て買うのがよろしいかと。

こちらは前に「インクルージョン・クォーツ」の中で取り上げたガーデンクォーツ六角柱。むしろ「水晶・岩石ミックスジェリー」ですけど、そのわちゃわちゃもまた趣があってあちきは好きです。

加工ゆえに生まれる面白さ・美しさ。ガーデンクォーツ、なかなかいいですよ。ゲテモノと思うなかれ。


新宿でプチプラざんまー、あれ?

2023-04-16 15:24:41 | 漫筆

株式会社東京サイエンス紀伊国屋書店新宿本店店、ってこれ長すぎ。何とかなりませんかね。(ならんと思うよw)
さんでツーソン新着フェア2023というのをやっておられていたので、「見るだけ」という意味のない言葉を発しながら参上。
ツイッターで書きましたけど、あれこれ安い。ツーソン戦利品の高額品ばかりかと思っていたら違った。
で、ついあれこれと。
自然銅880円、アポフィライト1100円、ベラクルスアメジスト・ミニクラスター2200円、オハイオ産セレスタイン1980円、ピンクアメジスト2200円、カクタスアメジスト2750円、などなどと買い込みまして。
プチプラざんまーいなどといい気になっていたらレジでお会計になって卒倒しかかりました。(おおげさなw)
お財布は死にましたけど、こういうものをお安く出してくれるのは実にありがたい。

これは高さ15ミリくらいの小さくてお安いアポフィライト。しかし、ジェレメジェバイトやユークレースも真っ青になるくらい(は?もともと青いわ)美しいのですわ。あちきにとっては。



幼稚園卒業などと妄言を吐いてしゅんとしておりましたが、それはあちこちで高級な美石を見てばかりいたから。まあそんなんは無理だわいな。変な欲を湧かすでない。
ちゃんと初心の「貧石」に戻って、お手頃なもので面白く美しいものを探していくのが我が道。
1000円の石でも、本当に美しいのですわ。


お恵み

2023-04-12 21:23:05 | 漫筆

思いも寄らぬ僥倖。(同語反復だぜ)
なんとエヌズミネラルさんのツイッター・プレゼントキャンペーンで、タンザナイトが当たりました。
いやあ、嬉しいですねえ。メレラニ産。
大きくはないけど澄んだ青が美しい。ごくかすかだけど多色性:方向変色もあって、幻のようなピンクが揺れる。







いやあ有難い。タンザナイトの透明な単晶は持っていなかったので。

ツイッターにも書きましたし、このブログでも前に書いてますけど、エヌズミネラルさんは、鉱物標本ショップとしてはおそらく日本一ではないかと。そのプレキャンですから、応募者も多いはず。当たるなんて夢みたいな話ですわ。

ツイッターというのも、最初は「まあブログの更新告知ね」みたいな感じでいたのですけど、いろいろ見ていると、こんな石があるのか、こんな姿があるのか、と勉強になることしきり。さらにはこうやってプレゼントがもらえたり。非社交的人間でSNSなんてとても、と思っておりましたけど、なかなかいいものです。社交はしてませんけど。

     *     *     *

(終わるんじゃないのかよ)
石集めもよちよち歩きの幼稚園をそろそろ卒業かな、などと思っておりました。
まあ一通りの入門的な石は、美麗品ではないですけど味わいまして。
さて、これからどうするか。小学校へと進学するには学費がない。美しい結晶標本やレア・ストーンなどを追求するのは無理。ツイッターなんかには、すんごいコレクターさんたちがいて、その経験や知識や経済力には唖然とするばかり。ああいう大学生クラスになるのは無理。
かと言って鉱物学や地質学は歯が立たない。ああいう記述・分類・羅列型知識は超苦手。
もうおしまいかなあ、などと少ししゅんとしておりました。
そんなところへこの僥倖。「まあ元気出しなさい」と神様に言われているような。
あるいはひょっとすると「岩石進化論」へ辿り着いたことへの神様のご褒美かななどとも思ったりして。まあそれは私的妄想です。

まあ無理に卒業する必要もないわけで。面白そうな石はまだまだたくさんある。ぽつりぽつりと探りながら、このブログも、少し間隔は空くかもしれませんが、ぽつりぽつりと続けていこうと思っております。
(そんなこと言ってすぐ何か買って書くぜw)


岩石進化論

2023-04-09 21:43:22 | 岩石生成論

「なんで石集めなんかしてるの?」
と石民はしばしば尋ねられる。
まあいろいろな答え方があるでしょう。答えないというのも含めて。

こういう答えもありかなと。
「地球の岩石も進化しているのである。われらが集めている美稀石はその最進化形である。それを生物の最進化形である人間が愛でるというのは、最進化形同士の出会いという奇跡なのである。」

そう、「岩石・鉱物も進化する」。
それをこれから辿ってみる。おおむね現在の主流説に乗っている。そこから生まれた「構図」(妄想?)が果たして正しいかどうかは、知らない。
ちなみに進化したものが価値があるというわけではない。大樹の頂上の枝穂が幹より偉いということはない。

晶洞の中に水が作った繊細な石、エレメエファイト。



①始まり――マグマ・オーシャンと橄欖岩

太古の地球は、星雲ガスの凝縮、隕石・彗星・微惑星の衝突によって、「マグマの球体」であった。
大気はあったけれど酸素はまだない。大気中の水は雨となって降ったがすぐに蒸発してしまい、地表は「マグマの海」であった。
次第に重い元素が中心に凝縮し始めるが、まだ「核」もできていなかった。
やがて美しい石を生み出す諸元素はマグマの中に溶け込んでいた。
それがやや冷えていき、マントルの「橄欖岩」が形成される。橄欖石と輝石。

美しい緑の宝石ペリドットは橄欖石がひょんな具合で地上に露出したもの。



②海洋地殻の形成――玄武岩のステージ

やがて「マグマ球」は冷え始め、表面に「殻」ができた。コマチアイトあるいは玄武岩。さらに冷えると雨が蒸発しなくなり、地球は「海」に覆われた。原始「海洋地殻」の誕生である。
この時にただ「殻」ができ、冷えるに従ってどんどん厚くなる、という形にはならなかった。恐らく殻の偏りなどによって、亀裂、沈み込みが起こった。
沈み込む殻に引っ張られるようにして新たな亀裂が生まれ、マグマ(溶解橄欖岩)が噴き出して新たな地殻が造られる。これによって「海洋地殻の循環」が生まれた。
また海洋では生物が繁殖し、生物性堆積岩が作られた。さらに大気にもたらされた酸素によって海水の鉄分が酸化沈殿し大規模鉄鉱脈が形成された。

粗粒玄武岩のプレセリ・ブルーストーン。ストーンヘンジの石。



③「陸」の形成――安山岩・角閃石のステージ

沈み込んだ地殻とそれに含まれていた水によって、「安山岩マグマ」が形成された。そしてこれが地表に噴き出して、「陸の元」が作られた。
はっきりしたプロセスはわかっていないが、この「陸の元」が大きくなって、「大陸地殻」が形成された。「島」が徐々に集まったという説があるが、突然の大変動があって一挙にできた可能性もある。人間は、特に地質学は、変化が徐々に蓄積されるという「斉一説 uniformitarianism」を取りがちだが、生物進化プロセスは突然大変化が起こることを示唆している。大陸地殻も突然できたのかもしれない。25億年前には大規模な大陸地殻の増殖があったとされている。
この「大陸地殻」はそれ以前の地殻とは全く異なるもの。軽い。だから浮く。沈み込まない。つまり溜まる一方。(ただし大陸衝突によって沈み込むことはあるらしい。)
こうして「陸地」が生まれ、その上で地上生命が大繁殖を遂げた。人類を含む地上生命は言うまでもなく大陸地殻の支えによって生まれたのである。
このプロセスの中ですでに花崗岩が生まれている可能性もあるが、そのあたりは不明。
安山岩の中で広く見られるのが角閃石で、膨大な種類があり、有力な造岩鉱物になっている。
また玄武岩が変成した緑色片岩・緑泥岩もステージ的にはこの部類に属し、これも有力な造岩鉱物になっている。

高マグネシウム安山岩、サヌカイト。



④「プレートテクトニクス」の発生――花崗岩と変成岩のステージ

大きく形成された大陸地殻の下に循環移動する海洋地殻が斜めに沈み込んでいくという、現在形の「プレート沈み込み」現象が生まれる。
水を大量に含んだ海洋地殻は大陸地殻深部安山岩の溶融温度を下げ、花崗岩マグマを作り出す。ここには海洋地殻の上に堆積した物質・元素も含まれる。
この花崗岩マグマは高粘性ゆえにゆっくりと上昇する。その過程で周囲の岩石から元素を吸収したり、それらを混合したりしつつ、鉱物の大きな結晶を作り出す。「ペグマタイト」の美石はこうして作られる。
またプレートテクトニクスによる大陸衝突域や沈み込み帯(変動帯)では低温高圧変成岩が作られる。特に沈み込み帯では海洋性・地上性の堆積岩から様々な元素が供給され、多彩な変成岩が形成される。たとえば翡翠は玄武岩→低温高圧加水変成→曹長石→低温高圧脱水変成ででき、そこに多様な元素が加わってあの多彩な色が生まれる。

球顆流紋岩。花崗岩マグマの流出物。



⑤熱水の活動――「水成鉱物」のステージ

花崗岩マグマは冷却していくプロセスで大量に含んでいた水を吐き出す。
この熱水が様々な場所で新たな岩石・鉱物を産み出す。これを「水成鉱物」と呼ぶことにする。
熱水が石灰岩などの堆積岩にぶつかると「スカルン」が形成され、多様な鉱物が作られる。また亀裂・空洞に入り込んで冷却すると「晶洞」や「熱水鉱脈」が作られる。多くの金属鉱床がこれによって作られ、また美しい純粋鉱物の結晶が生まれる。ペグマタイトの中心部も同じ。
これが現在時点での最進化形。
つまり現人類が鉱物資源として利用するものや、鑑賞石として愛玩するものは、多くが熱水によって作られた「水成鉱物」である。

緑水晶。



⑥次の進化?

さて、この進化の先はどうなるのか。
そんなことはわからない。
最進化鉱物と最進化生物が出会ってできた人工鉱物、半導体とかセラミックスとかが次の最進化形鉱物になるかもしれない。それらを利用した情報知能新人類が生まれるかもしれない。
現人類は人工知能に駆逐されるかもしれない。美稀石はコンクリートとアスファルトの下に埋もれるかもしれない。
それとも予期せぬ大変動――シリカ・マグマや水素のキンバーライト級大爆発とか?――が起こって、地表は一変するかもしれない。
地球科学者の中には「地表の水はやがてマントルに回収され生命世界は終わる」と説く人もいる。
進化とは創造が絶え間なく続いていくことである。それがどこへ向かっているかを人は知ることができない。
一つの創造の大樹は潰え、またあらたな芽が芽生える。地球や太陽系という大樹もまた。