貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

イルヴァアイト

2023-03-29 21:52:42 | ややレア

クリスタルワールド御徒町さんで知らない石を見つけた。
イルヴァアイト。は? エルバアイトと違うの? 面白そうでお安めだったのでゲット。

Ilvaite。CaFe3+Fe2+2(Si2O7)O(OH)。珪灰鉄鉱。
名前は発見地エルバ島の古代ローマ名「Ilva」から。エルバ島の名を冠した鉱物はエルバアイト(Elbaite、エルバイト、リチア電気石、ピンクやグリーンやウォーターメロンのやつ)があってややこしい。
カルシウムと鉄の含水ケイ酸塩鉱物。珪灰鉄鉱という和名はそのものでいいですね。主にスカルン鉱床でできる。「水成鉱物」ね。あちこちで見られ、日本でも採取されている。
ローソナイト・グループに属する。ローソナイトは CaAl2Si2O7(OH)2・H2O。イトイガワアイト SrAl2(Si2O7)(OH)2・H2O も同グループ。でも水の部分がちょっと違うぜ。いいのかい。(素人は黙っていなさい)
鉄のケイ酸塩にはエジリン(エジリン輝石 NaFeSi2O6)やアルマンディン(鉄礬石榴石 Fe3Al2(SiO4)3)がある。これらから熱水変成の交代作用によってできたものか……どうかは知らない。(知ったかはよしなさい)
こちらはうちの「不羈奔放」エジリン君。

イルヴァはエジリンよりも縦の条線がくっきりしている。同じ鉄鉱物のヴィヴィアナイトが近いか。ヴィヴィアンは緑に透けるけどこちらは透明性はなし。色合いはエピドートやショールにも近い感じだけどもっと真っ黒黒で金属っぽい。
お店の説明書には「先がくさび形になった斜方柱状結晶で産する」とある。

地味だからかあんまりネットなんかでは流れない。わざわざこの石を求めて買う人は……研究者じゃない限りいないかなあ。だからややレア。
でも、黒くてぴっかぴかでずっしりしていて、とてもいい石です。大きな結晶とかクラスターとかあったら迫力あるでしょうね。


ローマングラス未加工【写真差し替え再投稿】

2023-03-26 13:12:30 | 単品

ローマングラスは前に書いたので、あれこれ書くことはないのですけど、あんまりにもきれいで嬉しくなったので急遽アップ。【写真があんまりにもしょぼかったので差し替えました。やっぱ新しい機械は違うw】
前のはアクセサリーになっているもの。これはかけらそのまま。
パーフェクトストーンさんより。これ事前のツイッターで一目惚れして、9時になるのをじりじりと待って、あたふたとスナイプしたもの。買えてよかった。
三つ半の面があって、それぞれに色が変わってとても面白い。









まあきらきらは写真に写らないので、肉眼はもっときらっきらです。

ツイッターでも書きましたけど、このパフェさん(その略称はちとまずいんちゃう?)、知られていないものを求めて世界各地へ突進されているすごい方です。先日はこれまで日本では紹介されていないベトナム産のアメジストなんかを出しておられました。それでいて決して高価格ではない。
更新も365日欠かさず。
偉い。皆さん起立してください。敬礼。(百閒をぱくるなw)


ペリステライト/ホワイトラブラドライト/アルバイト/オリゴクレース/プラジオクレース/ホワイトムーンストーン

2023-03-26 10:00:05 | 単品

(また長いタイトルをw) やけくそです。要するに長石です。(またですかw)
クリスタルワールド御徒町さん産。五反田時代に「ペリステライト」は一つ買ったのだけどそれはちょっとベージュで濁っていた。今度のは白くて透明度がある。とても美しい。

わずかだけどブルーシラーというかラブラドレッセンスというか、青い燦光が浮かぶ。かろうじてムーンストーンだけど、まあそれはおまけのようなもので、主眼は長石の質感。

透過光でもなかなかいい光。

お店の説明では「一般的にホワイトラブラドライトで出回っているが、正確にはアルバイトとオリゴクレースが層状に重なっており、それぞれの屈折率の違いがブルーシラーが派生する原因になっています」とある。
以下の文章は読まなくていいです。(は?) アルバイトはナトリウム長石=曹長石。ペリステライトやオリゴクレースやアンデシンやラブラドライトはナトリウム・カルシウム長石=斜長石=プラジオクレース。正式鉱物名はプラジオクレースのみでペやオやアやラは(さぼるな)通称扱い。いちいちナトリウム・カルシウムの比率なんて計ってられないってか?
長石の分類は滅茶苦茶。ナトリウム・カルシウム長石=斜長石は伝統的にいろいろ名前があるけど、全部「正式鉱物名にあらず。何でもかんでも斜長石」。一方、カリウム・ナトリウム長石=カリ長石のほうは、「成分比率ではなくて結晶系で3つ名前を分ける」。こちら。何なんですかこれ。成分比を無視した分類なんて長石だけじゃないですか?(オーソクレースでドジ踏んだのを逆恨みしてるんだろw)
さらに加えてムーンストーンだのサンストーンだのという名称も入り込む。アデュラレッセンスだのラブラドレッセンスだのアベンチュレッセンスだのという形容も添加される。
もういいよどうでも。(投げるなw)
この石は「ペリステライト/ホワイトラブラドライト/アルバイト/オリゴクレース/プラジオクレース/ホワイトムーンストーン」とどう呼んでもOK。要するに長石です。ふん、フェルスパーだよ。時々青く光るよ。

ほんと長石というのは、どこにでもあって、だいたい地味で、そのくせ素晴らしいスターがいてとんでもない美しさを見せ、素姓を調べると厄介で……まあともあれ、魅力ある石です。


岩石も「進化」する?

2023-03-19 10:05:32 | 岩石生成論

「岩石」というのは、様々な「鉱物」の混ざったもの。
鉱物は様々あってそれがまた様々に混ざるから、もう訳わからん状態。
図鑑なんかを見ても、色がどうで成分がどうでどういう場所で見られるといった現象的記述の羅列で、分類も見た目だったり成分だったり生成環境だったりとばらばら。読んだ先から忘れていく。(それは老化じゃないのかね)
鉱物学者・地質学者の方々はこれ全部覚えているんだから大したもんです。(そりゃプロだ)
まあ、ただ石を眺めて楽しんでいるあちきのような者にはほとんど無縁。しかしあんまりにも知らないというのはよろしくない。
そこで、半分遊びで、自分が把握できるようにと、火成岩とその派生類に限って、「どうやって生まれてきたか」をメインにして、大雑把な“岩石系統図”を描いてみたのです。全然厳密ではなく、あくまで大まかなイメージ。

こうやってみると単純なものだ。(いや君が無理やり単純にしてるだけだw)
専門の方々からすれば噴飯ものだろうけど、こういう大見取り図を作って説明してくれないとあちきのような非感覚タイプの人間はわからんのですよ。(タイプの問題じゃないんじゃない?)

ついでに主要火成岩の主成分推移をわかりやすく並べてみる。多い順ではない。図に入れようと思ったけど入らんかった。

・橄欖岩 橄欖石・輝石
・玄武岩 橄欖石・輝石・斜長石・磁鉄鉱
・安山岩     輝石・斜長石・角閃石
・花崗岩        斜長石・角閃石・石英・正長石・雲母

橄欖石は次第になくなって、角閃石・石英・正長石が加わってくるという大まかな流れ。角閃石と雲母は含水鉱物。水が増えていくわけですな。

こうすると主要な美石鉱物の生成背景が漠然とイメージできる。のではないでしょうかね。一番華々しいのは右上のあたり。左のあたりはちょっといい加減だけど、造岩鉱物っぽい感じの集まり。上に行けばシリカと水が増え、下は苦鉄質。

     *     *     *

で、ここで「ん?」と思った。
「これ、系統樹っぽくない?」
「岩石も進化している?」

生物の分野では「進化系統樹」というものが考えられている。原始的な生物からいろいろ枝分かれして、複雑な――高等と言ってはいかんらしい――生物になっていく。て、それを見るとあちきら人類は末端の最進化形。偉いかどうかはまた別。
岩石・鉱物もまた進化系統樹みたいな構造があって、マントル・マグマから生まれる原始的な形態のものが、だんだん変化して、複雑に、軽やかに、そして美しく――これは主観かな――なっていく。橄欖岩と玄武岩だけの始原的世界が続いていたら、安山岩・花崗岩の大陸地殻がなかったら、花崗岩マグマの生み出す熱水がなかったら、多くの美石は生まれなかった。
とすると、あちきらが愛玩する美石たちは、やはりあちきらと同様、末端の最進化形だと言えるのではなかろうか。地球の神は、生物と同様岩石も、始原的なものからより多様・複雑で美しいものへと進化させてきたのではないか。

「進化」という概念はいろいろと議論を呼ぶものですけど、まあ価値判断は保留して、単純な構造が複雑な構造へと進化していくということはある。特異な色や姿といったものもあるでしょう。「階層性」すらあるかもしれない。
たとえば、オパールやラブラドライトの変幻する光。
熱水が生み出す結晶の複雑精妙な姿。多彩で鮮やかな色。
あるいはヴェスヴィアナイトの「Ca19(Fe,Mn)(Al,Mg,Fe)8Al4(F,OH)2(OH,F,O)8(SiO4)10(Si2O7)4」といったとんでもない構造。
こういうのは、宇宙広しといえども地球にしか、原始の地球ではなく進化した地球にしか存在しないものかもしれない。ホモ・サピエンスが進化した地球にしか存在しないように。
いや、「最も高度だ」と言っているわけではありませんよ。宇宙にはたぶんもっと高度な別種の物質があり、高度な生命的知的存在がいるでしょうし。(は?)
そして、少なくとも地球上で、生命進化の先端であるホモ・サピエンスと、地球物質進化の先端である美石とが出会う。それが「石集め」という奇跡的出来事ではないか。そこに何かしら「この世ならぬもの」を感じるのは、進化という神秘を感得するからではないか。(おいおい石沼民の自画自賛かよ)

夢想はこのくらいにして。
ここにはもちろん堆積岩や変成岩は入っていません。
まあ堆積岩は「積もってますねえ」「ああ、積もってるね」でいいんだろうけど(よくはないだろうよw)、変成岩はまたまた訳わからん状態。また別のお話としましょう。


スギライト

2023-03-18 20:30:58 | 単品

杉石。どうしても「すぎいし」と読んでしまうけど、「すぎせき」が正しいと。
日本語版ウィキペディアだと
(K,Na)(Na,H2O)2(Fe3+,Ca,Na,Ti,Fe,Mn)2(Al,Fe3+)Li2Si12O30
とあるけれど、mindat では
KNa2Fe3+2(Li3Si12)O30
と素っ気ない。よくわからんけど、複雑な組成であることは確か。リチウムと珪酸がミックスしているところが味噌かな。与党六環派(サイクロ)。この派閥はベリル、トルマリン、アイオライトと面白い石がいる。やや珍しい少数派閥。
1944年に愛媛県岩城島で杉健一(1901-1948)らによって発見され、75年に村上允英らが分析、翌76年にIMA認定された。杉は日本の変成岩学の先駆者だったが若くして世を去った。
最初に発見された日本産はうぐいす色で、mindat には「曖昧な汚ねえ緑っぽい黄土色」と書かれている。ひどいね。(「ねえ」とは書いてないだろw) その後南アフリカでマンガンを含んだ紫ないし青紫の美しいものが出て、一躍有名になった。近年はは三大何ちゃらともてはやされている。
ただし英語圏の人々は「スジライト」と読んでしまうらしい。スジは美しくないねえ。ローマ字は表音文字だなんて言ってるけど全然そんなこたあない。

産出がそれほど多くないのか、だいたい高い。そして透明度がないものが多い。
個人的には赤っぽい紫があまり好みではなくて、スルーしていた。似たような感じだったらチャロアイトやスティックタイトがあるし、と。
ところが、先日、エヌズミネラルさんでかなり透明なものがわりと安く出た。思わずポチっ。

南アフリカ、Wessels Mine産。まあちょっとエヌズさんの写真は美しく撮れ過ぎていたけど、透明な部分がけっこうある。



強い光を透過させると、かなりどぎつい赤紫が輝く。写真よりもっと赤くどぎつい。こんな色はほかであんまり見たことがない気がする。

スギライト自体、あまり大きな結晶にはならないようで、母岩にたくさん張り付いているのとか、他の成分と混じって不透明なものとかが多い。これは結晶複合みたいな感じで、なかなかいいのではないかなと思っておりますです。
ちなみに「天然石業界のダイ〇ー」こと誠安天然石さんのサイトには6ミリ玉のすごく美しいネックレスが出ているけれど、なんと100万円越え。ダイ〇ーさんでこの値段なんだからすごいですねえ。

三大何ちゃらというのだから、おでこに貼るとご利益があるかも。(よしなさい)