貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

金は宇宙からやって来た?

2023-01-29 11:30:19 | 岩石生成論

(石禁で沈黙するはずじゃなかったか?)
まあ暇なのでちょこちょこと調べ物をしていたら、気になることがあったので。
地球の生成に関する話で、
「できたての地球は超新星爆発の星間物質雲や微惑星や隕石がぶつかりながら集まって、いろんなものが溶けてまじゃりあったどろどろの状態であった。その中で重い鉄とニッケルが沈んで核ができた」
ということになっているらしい。誰も見たわけではないから推論だけど。見てみたかったねえ。(土台無理だ)
で、「何で鉄とニッケルなんだよ。鉄より重いのは金とか銀とかいろいろある。そういうのも一緒に核に沈んだのなら、核は貴金属だらけで、地上になんか存在しないだろうに」と思ったのでした。(ちょっと思考が単純過ぎないか?)
でも、金も銀もプラチナも、手に入る。なんじゃこりゃ。

石集めの世界では自然金、自然銀などがあちこちで売られている。
これはカミさんのコレクションの自然金。

アラスカ産ゴールドナゲット。左右7ミリくらい。そんなに高くはなかった。ミネラルショーだったかで買ったもので、石屋さんはこういう自然金ばかり扱っている所だった。
カミさんは単純明快なものがお好きだそうで、特にピカピカキラキラしているのは大好物、金はその頂点らしい。パイライト=Fool's Gold でいいじゃないかと言ったら、「やっぱ違うのよねえ」とのたまう。fool ではないということらしい。あちきはあんまりぴんと来ない。貧乏性なのでしょう。(ネクラだからじゃないの?)

金をめぐってはいろいろな歴史があるし、用途なんかも厖大だし、そういうことは置いておいて。
……しかしゴールドとマネーを同じ漢字で表すのは非常に不便。つかおかしい。誰か変えてくれい。(誰だよ) ゴールドは土へんでも付ければいいのに。(それじゃイメージダウンだ) じゃあ金へんか。(そりゃちょっと美しくない)

で、ウィキを見てみたら、「金は宇宙からやって来た」という説があるという。
ナショナルジオグラフィック・ニュース『地球の金は隕石群が運んだ?』
この学者さんたちも「金は沈んで地上にないはずじゃね?」という疑問は持ったみたい。あちきとおんなじじゃん。(偉そうに言うなw)
で、地球が固化した後に隕石がもたらした金が地殻付近にあるのだ、と。
真偽のほどはわかりませんが、「宇宙からやって来た」というのはいいですねえ。ますます有り難みが増すます。(おい)

しかしね、元をただせば、地球のあらゆる物質は宇宙からやってきたわけで。珪素が多いのは中心からの距離の問題だとか。この説が言いたいのは、「後からやって来た」ということですね。

ところで生命自体が宇宙から来たという説もありましてね。「パンスペルミア説」といって、フレッド・ホイル博士などが提唱したけど、オカルトじみているといって総スカン状態。
あり得る話だと思いますけど。ただこの説の問題は、「じゃあ宇宙のどこでどのようにして生まれたのさ」という際限のない話になること。場が地球から星間ガスかなにかに移っただけで、生命の起源の謎は解けない。
あちきなんかは、「生命の発生は非物質世界の何か、しかもきわめて知性的な何かが関与している」と思っていますし、さらには「それは今もあちこちで起こっている」と思っていますけどね。(は?)
一神教というのは「一」というのが大好きでしてね。天地創造も生命の誕生も一回切り。神の言葉や神の子の出現・再来も一回きり、としていますけど、一回だけなんて、誰も保証できない。むしろ一回だけと思う方が異常。神の言葉や神の子が出現するんだったらあちこちであってもおかしくないでしょう。「一だけであって、自分たちのものがその一だ」というのは、エスノセントリズムの極致というか、ちょっと傲慢ではないでしょうか。(喧嘩売ってる?) その一神教の一への固執が反動でひっくり返って今度は物質一元論つまり唯物論という妄想になった。唯物論は一神教のネガなのです。(ずいぶん大風呂敷だね)
パスツールが密閉試験管の中で細菌は生まれないと実験して見せたけど、そりゃ試験管の中のわずかな時間だけの話。世界のあちこちでは今も新たに生命が創り出されているかもしれない。アマゾンの奥地やヒマラヤの高峰はもとより、あちきたちのすぐ横、いや体の中でもね。(何の話をしてるんだよ)

金鉱床というのは、やっぱり水が関係しているらしい。
マントルから噴き上がって来る高温の水には金が溶けていてあちこちで固まるらしいし、風化・崩壊した岩石に含まれる微細な金も水が集めてくれるとか。有り難いものです。
だから、金もまた「水が作った石」なんですね。(好きだねそれが)
そう言えば、「藻を使って温泉から金を取り出す」なんてニュースもありました。
  NHKニュース『温泉から「金」取り出す特殊な方法を開発』2022年12月11日
海水中にも金はあるけど、取り出すコストが見合わないとか。温泉だと濃度が高いのでしょうか。藻というのも環境によろしい感じがしていいですね。
この藻を身にまとって露天風呂に入っていると、自然に金が採れる、なんてなったら面白いですね。(どんだけ長く浸かる気だ?)

ううむ、金が空から降ってこないかな。(当たったら死ぬぜw)
じゃあマネーの方で。(欲の塊だねw)


ジオード

2023-01-27 19:50:04 | 単品

東京サイエンス新宿紀伊国屋店(長い)さんでパエジナとしのぶ石を買ったついでに(石禁破りについでを付けるのはどうかと思うよ) 300円で売られていたミニチュア・ジオードを2個買った。小さくてかわいくてきらきらしているから、子供たちにあげると喜ぶかなと思って。(おや)

ジオードというのは不思議なものですね。
卵のようで、中を割ると水晶などのクラスターがびっしりだったり、瑪瑙が層を作っていたり。まるで小宇宙。とても魅力的。
これはやはり2センチほどのミニジオードで、中は極小サイズの水晶。中より周りのメノウの模様が面白い。一ヶ所尖ってアニメキャラみたいなのも変。なんでこんなになるんですかね。


【追記】このジオード、メノウの部分と水晶の部分とで「二重ジオード」になってるように見えますね。一回メノウジオードができて、さらにその中空部に水晶ができる。そんなことがあるんですかねえ。

ジオードがどうやってできるのかは、はっきりと解明されているわけではないみたい。
だいたい2つの系統がある。
①火成岩の中にできる
②堆積岩の中にできる

①は、
・マグマが冷える時にガスや水蒸気の泡ができる。
・そこに熱水が入り込む。
・熱水に溶けていた鉱物成分がゆっくりと結晶する。

②は、
・堆積岩の中に溶けやすい鉱物の塊ができる。
・それが水などで溶けて空洞ができる。
・そこにさらに鉱物成分入りの水が入り、結晶を作る。

ということらしい。
いずれにしても水が大きく関与しているのでしょうけれど、その水は、母岩から染み出してくるのか、どこか外から侵入してくるのか。

さぞや珍しいものだろうと思っていたら、あちこちでけっこう安く売っている。
ずいぶん前にどこかのサイトで見た写真には、どこかの採掘現場で30センチくらいのジオードが山積みになっているのが写っていた。あれどこのサイトかなあ。探しても出て来ない。その時はふうんと思って過ぎてしまった。残念。

けれど、できた卵がその形のまま取り出せるというのは、どういうことなのか。
・まわりの岩石が壊しやすい。ないしは酸などで簡単に溶ける。
・ごりごりと削り出す。
どうなんですかね。
それとも、
・あきらめてジオードごとすぱっと切り、中の結晶部分だけ取り出す。
同じくだいぶ前に、硬そうな母岩が平らにすぱっと切れていて、そこにジオードの丸い断面がいくつも覗いているという写真を見た記憶があります。これもどこだったか探せない。面白そうな写真はこまめに保存しておかなければいけませんね。
アメジスト・クラスターの小品なんかはこうしているのでしょう。
でも、時々は1メートルを超えるような巨大アメジスト・ジオードが飾られていたりする。前にあった宝石展にも出ていましたね。あれ、周りの岩石はどうやって取り除いたのでしょう。ごりごりごりごりやったのか。

日本では「ガマ」と呼ぶようです。
ツイッターを見ていると、石ハンターが「ガマを掘り当てた」という報告がしょっちゅう出ている。
けど、そういうのはだいたい中に土砂が詰まっていて、水晶とかを洗い出さなければならないようで。
そういうジオードは、まわりが崩れ、ジオードにも割れ目ができて、そこに土砂が詰まったということなのでしょうか。

そういえば、イェレメーエフアイト(ジェレメジェバイト)は、ジオードの中にできるとか。あれ、珍しい硼酸塩鉱物ですね。ジオードに流れ込んだ熱水がそういう成分を含んでいたということなのでしょう。
もっともイェレが入っていないジオードもたくさんあって、それは冷たく打ち捨てられるとか。空のジオードでも安ければ……売れないか。

このセレスタイン(セレスティン、セレスタイト)もジオードっぽいけど、中に空洞がないからノジュールと言うのかな。しかしこの区分は厳密ではないですね。

でも空隙がほとんどできない結晶群体なんて、どうやってできるのでしょう。「まだ隙間がありますよ、材料追加してください」とかやるのかな。わけわからん。
ちなみにこれ、片割れがあって、2個で800円だった。時々とんでもない高値で売られていたりするので奇妙。まあそういうのは色が美しいのでしょうけど、これだってなかなかのものです。
これは外側が削られたような感じになっている。ごりごりやったのでしょうか。


石好きの愛好する美麗結晶なんかは、たいたいがジオードと同じく熱水の中でゆっくりのびのびと育ったものでしょう。卵形でなくても、そういう空間はあちこちに存在するということなのか。地面の中は隙間だらけ?
それでも、こういう卵の中で、美しい結晶が長い時間を掛けて育っていく様を想像すると、何とも不思議な気持ちになります。

なんか子供たちにあげるの惜しくなってきたな。(やっぱ自己中)


パエジナ・ストーンとしのぶ石

2023-01-22 08:47:34 | 単品

(また一週間持たなかったじゃんw)
まあ、石禁というのは破るためにあるものでして。(居直ったなw)
新宿紀伊国屋書店内の東京サイエンスさんが、ミュンヘン仕入れ品のフェアをおやりになるというので、ちょっと覗いてみようかななどと思ったのがいけない。(いけませんねえ)
ほんとに石禁するならネットもお店も見ないようにしないといけない。しかしそれでは人生あまりにも淋しい。で、見たらこういうことになる。(要するに意志薄弱ということでしょ)
まあ石禁をして悶えて、それを破って落ち込んで、預金通帳を見て青ざめて、というのもまた石集めの醍醐味。そういう苦悩こそが魂を鍛えるのだよ。(呆れた物言い)

で、パエジナ・ストーンがお手頃価格でどっと出ていたので、意志薄弱が発動して、買ってしまいました。普通は万単位のものが千円単位で出ているのだからしょうがない。

パエジナ・ストーンは、イタリア国トスカーナ地方で採れる模様入り石灰岩。別名「廃墟大理石」だそうで。模様がそういう感じで見えるからでしょう。「フィレンツェ石」とも言うらしい。トスカーナは昔々行ったことがあって、隣のウンブリアも併せて、あちきには世界で一番美しい土地のように思えました。フィレンツェ、シエーナ、サンジミニャーノ、アッシジ……死ぬ時はアッシジでなどと。(中二病乙)
この石をめぐる蘊蓄はあちこちにあるから略。家具装飾なんかにも使われたとか。
4×8センチで、7000円台。もっと安いものもあったけど、見た目がいいので少し分不相応なのを買ってしまった。(一葉越えも犯したのかよ)
何に見えるかは、あえてはっきりさせない。天地逆にしたり横にしたりして、不思議な模様を不思議なまま楽しむのがよろしいかと。
独特の雰囲気があって実にいい石です。たとえ面白い風景が見えなくても。

     *     *     *

で、破戒ついでに「しのぶ石」、デンドライトもご購入。(おいおい)
ご立派なケースに入って、左右110ミリとでかい。でも3000円とお安かった。東サさんはぼらないから有難い。もちろん高いものもあるけど。
普通は黒っぽい模様のが多いけれど、これは晩秋のケヤキを思わせるような薄赤茶と渋い青緑のツートンでいいなと思って。

二色が重なっているところなぞは、実に繊細で美しい。

しのぶ石と聞くと「みちのくの」の歌が出てくるけど、あれは染物でしたな。こちらは「乱れ」ているわけではない。けれど何となく人間の想念の拡がりを思わせないでもない。以前はちょっと気持ち悪いなんて思っていたけど、茫洋と拡がっていく様がいい味わいです。

     *     *     *

こういう模様を楽しむ石というのはアゲートの類を始めとしていろいろありますね。ネットにある写真なんかを見ていると、まあ驚くばかり。あちきは足を踏み入れないようにしているけど、この方面の沼も深そう。
そう言えば、天草石というのもありましたな。(石の名前もお店の名前も忘れたやつねw) こちら。ちょっと色合いは淡色のパエジナに似ているけどこちらは日本産らしく山水画っぽい。石も文化に似るのか、文化が石に似るのか。(ないない)

こういう手の石は模様の美しさが売りだから写真でも十分味わえるとは思うけれど、でもやっぱり石は質感、質量感が大事。手にとって重さや存在感を感じ、ためつすがめつしてみたい。裏側や断面を見てどうなっているかも知りたいし。

これはパエジナの断面。酸化マンガンの混ざり方がよくわかる。なかなか複雑な石ですね。

裏面。研磨・ワックスはされていないけど、これもなかなか味がある。

アゲートなんかだと、面白い模様を出すのには加工職人さんの見立てと腕が必要でしょうけど、こういう浸透模様ものはどうなんですかね。パカパカ切ってみて、出たとこ勝負で「お、これはいい。これはちょっと」とかやるのか。それでも切る方向なんかは経験がないと難しいでしょうね。

しのぶ石の方は、どういう石をどういうふうに加工しているのかよくわからない。岩石の表面に模様が出ているのかと思ったら、裏にもちらりとある。

はて。層になっているのを割るのか。それにしては表面に凹凸がある。わからない。

しのぶ石は割合軽やかで繊細、パエジナは重厚感がある。
やっぱ石は色や形ばかりでなく、質感、質量感というのも魅力。それは模様石でも同じことのようで。
だから買って持たなきゃいけないのですよ。(あ、要するに弁解か)

*ツーソンじゃなくてミュンヘンでした。すんまへん。


オーソクレースは「Or」ではない

2023-01-18 21:51:39 | 単品

まったく誤解しておりました。お恥ずかしい。
長石の細かい分類で、カリウム、ナトリウム、カルシウムを3つの極(端成分)で表した図をよく見ます。で、そこにはそれぞれ「Or」「Ab」「An」と書かれている。
だから、カリウム純粋の長石「Or」がオーソクレースなのだと思っていました。だって「Ab」はアルバイト、「An」はアノーサイトでしょ。

先日、いろいろと気になることがあったので、図書館に行ってみたのです。(暇持て余したかw)
で、日本鉱物科学会編集『鉱物・宝石の科学事典』(朝倉書店)という分厚い本を見てたのですが、ふっと長石の項を見たら、こうありました。

《正長石(オーソクレース)は、サニディンと微斜長石の中間的秩序状態の偽単斜晶系カリ長石のことであり、固溶体端成分表記としてのOrとは異なる。》

は? Or がオーソクレースで、アルバイト(ナトリウム)寄りがサニディンじゃないのかよ。あちゃちゃー。

で、改めてオーソクレース、サニディン、マイクロクリンの違いを調べてみると、「カリウム/ナトリウム」の成分比の問題ではないのですね。
結晶の形などの非常に難しい話なのですが、
アルミニウムとケイ素の配列が
 ・無秩序で単斜晶系     →サニディン
 ・一部秩序があり単斜晶系  →オーソクレース
 ・完全に秩序があり三斜晶系 →マイクロクリン
ということのようです。で、厳密な意味でのオーソクレースの存在は稀だと。おまけにこの三つは、外見では区別できないらしい。ううむ。
以前はカリウム/ナトリウム比率で「アノーソクレース」「サニディン」と分ける見方もあったけど、今はもうその分け方は使わないらしい。

難しいですねえ。素人が余計なことを書くものではない、ということだけど、Or と書いてあるじゃん、違うんなら別の略語にしたらまぎらわしくなかったのに。だいたい「カリ長石」と「アルカリ長石」というのもまぎらわしいし。(文句多いぞ)

オーソクレースというのは純粋カリウムの「正統な」長石だと思っていたけど、だいぶ格が落ちた感じでがっかり。
むしろ「玻璃長石」という美しい名があるサニディンのほうがカリ長石の王者なのかもしれない。

ちなみにアマゾナイトという青い石は、一般的にはマイクロクリンだと言われていますけど、どうもオーソクレース型のものもあるらしい。青の色は含まれている鉛や水、放射線被曝によるものと考えられているとのこと。
今でも初心者ですけどもっと初心者の頃、アマゾナイトの安いタンブルを買ったのだけど、なんか感覚に合わなくて嫌な感じがして(じゃあどうして買ったw) 近所の子にあげてしまった。(近所の子をゴミ箱にするなw) そんなことってほとんどないのだけど。それ以来、個人的にはアマゾナイトにいいイメージがない。名前もアマゾン川では出ないという変な命名だし。高価なものならきれいなのでしょうかね。あ、余計な話でした。(いやそもそもだね、このブログ自体がだね……)

いやあ、しかし、とんだ誤解でした。すんません。


アデュラリア【追記あり】

2023-01-15 17:19:37 | ややレア

うーん、とですね……(にやにや)
かねてより憧れていた石が出ていたのでですね……
ポチってしまったのです。(わずか一週間しか持たなかったねw)
アデュラリア Adularia。

     *     *     *

よく「スイスのアデュラー地方で採れる透明な正長石(カリ長石、オーソクレース)で、和名は氷長石」と紹介される。そして「ムーンストーンのシラーをアデュラレッセンスと呼ぶ」とも。
けれど、「アデュラー地方」なんていうものはない。アデュラリアにはアデュラレッセンスは出ない。はてさて。

サイト『鉱物たちの庭』さんの記事には以下のようにある。
《この石が公に認められたのは 1780年で、ミラノの聖職者にして博物学者エルメネジルド・ピニ(1739-1825)がこの年、スイスのゴットハルト(サン・ゴタール)を旅行した時に入手した透明度の高い長石をアデュラリア・フェルドスパー(アデュラーの長石)と名づけて報告したのである。彼はこの石がアデュラ山地に産すると考えたのだが、実際にはアデュラ山地はゴットハルト地方ではなく、東隣のグリソンズ地方にあるという。》

けれど、アデュラ山地を検索しても出て来ないし、ゴットハルト地方もグリソンズ地方もスイスの州名にはない。で、あれこれ検索してようやく。

アデュラ山ないしアデュラ山塊は、現在は一般的に「ラインヴァルトホルン山(Rheinwaldhorn)」として知られる。アデュラはイタリア語呼称。Piz Valrhein という呼称もあるらしい。スイスというのは行政単位や言語が複雑に入り組んでいるので、一筋縄では行かない。
スイス南部、イタリアと接するアルプス地方にあって、ティチーノ州とグラウビュンデン州(グリゾン州、グリッシュン州とも。保養地のダボスやサンモリッツがある)の州境にある。標高3402m。英語版ウィキからPD写真。

ゴットハルトというのは、ザンクト・ゴットハルト(峠・山塊)で、スイスとイタリアを結ぶ交通路。こちらはウーリ州にある。ややこしい。
まあどれもアルプスの山ん中。赤石岳と聖岳みたいなもので、一般人には似たようなものだと言えば言える。(おい)

で、なんでアデュラ山の名前を取った「アデュラレッセンス」がムーンストーンの青いシラーの呼称となったのか。
これまたややこしい話で、詳しくは上記のサイトの記事追記にある。
要するに、「透明度の高い長石のことをアデュラリアと呼んだ」→「スリランカ等で出る透明長石もアデュラリアの一種と捉えた」→「ムーンストーンのシラーをアデュラレッセンスと呼んだ」ということらしい。「アデュラリアにはアデュラレッセンスは出ない」という奇妙な事態はこうして起こった。ただし、アデュラリアでも青白いシラーを見せるものが稀にあったともいう。
で、結局のところ、現在はアルプス地方で採れる透明度の高いオーソクレースをアデュラリアと呼ぶようになっている。らしい。
今回買った石も産地は Formazza Valley, Verbano-Cusio-Ossola, Piemonte, Italy とある。フォルマッツァはザンクト・ゴットハルト峠へ向かう交通路にある人口400人の村。このあたりは「アルプス水晶」の産地らしい。

ああ疲れた。(ごくろう)

     *     *     *

アデュラリアは、前にあった「ホシノカケラ」という美石コレクション・サイトで見て、透明な美しさもさることながら、その名前になぜかえらく惹かれまして、ずっと探していたのです。まあほとんど出ない。たまにあってもえらく高価。
で、今回、つぐこみねらるずさんでお手頃価格のが出た。ツイッターで知ってあわてて行ったら、3点あったうち、白のもの2つはすでに売り切れ。残っていたのはクローライトが含まれていてかなりブルーグレイのもの。ちょっと氷長石にしてはどうかなと迷ったのですけど、逆に特色があって面白いかなと思ってポチっ。「オーソクレースでもサニディンでもさ、あんまり無色透明過ぎると水晶と変わらんくなっちゃうでしょ?」などと言いながら。
石屋さんの説明では「フランス・サンマリーショーにて採集者から直接買い付けた品」とのこと。

長石独特の輝きがあって、なかなか味わい深い。写真ではうまく撮れないけど。

強い光だと透ける。これもひどい写真だけど。

ちょっと異端児だけど「念願のアデュラリア」を手にできて嬉しい。なんでこの名前にそんなに惹かれるのかはよくわからないけど。

さて、また石禁と沈黙に戻ります。(また一週間でしょ?)

【追記】
日本鉱物科学会編集『鉱物・宝石の科学事典』(朝倉書店)にはこうあります。
《アデュラリアとクリーブランダイトなどは、それぞれカリ長石(正長石から微斜長石)と曹長石であるが、特有の形状(菱形面と薄層状)に対して与えられた名前であり、鉱物の種名ではない。》
現代の鉱物学では透明うんぬんではなく結晶形の問題みたいです。
【再追記】
X(旧ツイッター)で、ムーンストーンと同じアデュラレッセンスを見せるアデュラリアを上げている人がいました。本当にイタリア・スイス国境付近のアルプスで出たものなのなら、「アデュラリアにアデュラレッセンスは出ない」という説は間違い、「昔は出た」「たまに出る」ということになりますね。