貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

ちいと旱魃

2022-08-29 21:23:45 | 単品

おじぇじぇも、ネタも、気力も、ちいと旱魃でごじゃりまして。

石禁かなあ、なんて思ったりもするのだけど、何か面白そうなものが安く出ているとぽちってしまって、むむう。沼ですなあ。

ミネラルクエストさんでトムソン沸石が出ていて、なんか妙なものなのでぽちっ。



和菓子ですな。美しいとはちょっと言えないかもしれないけど、こういう「何じゃこりゃ」という驚きもまた石の楽しみですね。

沸石というのはとんでもない巨大集団だし、変なかっこうのものもいっぱいあるしで、足を踏み入れたらまずい、と思ってきたのですけど、なぜか3つも買っている。
これはヒューランダイト。オレンジがきらきらできれい。



まあこのくらいにしときましょ、なんて思っても、また……


ミャンマー産高透明度翡翠【追記・再追記】

2022-08-21 22:11:17 | 単品

翡翠については前に書きました
だいたい白っぽい地に緑や青、時に黒の模様が浮かんでいる。「これが典型」というものはなくて、だいたいそのヴァリエーション。

ところがところが。翡翠も奥が深い。
ツイッターで糸魚川にある「みどり店」という石屋さんの記事を見ていると、まあいろんな種類の翡翠が出てくる。すごいものだなあと感心します。しかも採集に来た一般人のものでも、多彩だし高品質のものがある。
よく石屋さんのサイトで「もう糸魚川翡翠は採れなくなっている」と書かれたりしていますけど、商業レベルではそうなのかもしれませんが、けっこう多くの人がいくつも見つけている。驚きです。行く元気はないけど。

で、最近知ったことが二つ。
一つは、「ロウカン」というもの。濃くて鮮やかな緑で、透明度が高い翡翠。色としては、中国人が好きなネフライト(軟玉)の緑に近いかな。けれど硬質に澄んでいて、実に美しい。もちろん高価。こんなものがあるんですねえ。
もう一つは、「氷翡翠」。透明度が非常に高く無色のもの。これも、こんなものがあるんですねえ、と。
ロウカンの方は、色がちょっとあちきの趣味ではない。氷翡翠の方は、うーむ、ほすい。けどめちゃめちゃ高い。

と思っていたら、夕星庵さんで、かなり透明度の高いミャンマー翡翠が、お手頃価格で出ていたのを発見。緑系と無色をぽちった。

ロウカンとは言えないけれど、かなり透明度が高い。緑が濃淡で流れている。
はあ、実に美しいです。緑が薄めなのでむしろ好みに合うし。こんな緑というのは、ちょっとほかにはないような気がする。
そして、ものすごく微妙だけど、方向変色、カラーチェンジする。黄色や紫がかすかに揺れる。単斜晶系だから異方性があってもおかしくないけど、内包物の位置関係のせいかもしれない。



透過光で見ると、もっと色が明るく揺れる。見ていて飽きない。


そしてもうひとつ、無色。こちらは何と千円以下。

氷翡翠と呼べるほどの透明度はないかもしれないけど、かなり透明。
基本無色なのだけれど、やはり方向によって、橙、菫、緑がごくかすかに、目の錯覚かのように出る。
質感的には水晶などの爽やかさではなくオパールに近い、少しとろみのある感じ。
美しいし、見ていると不思議な感覚になる。この曖昧な光と色の中に、何か姿や風景が見えるような。占い師はクリアな水晶玉を使いますけど、これで何かお告げが得られるかもしれない。

両方とも「A貨」。つまり加工していないもの。それがこんな「プチプラ」である。在庫で。それも実に不思議。ミャンマー産翡翠はあまり人気がないのでしょうかね。
でも、すごいんですわ。かなり虜になっています。ちょっとまずい。高級翡翠に手を出したら破産するでしょう。

糸魚川産の翡翠は、あれはあれでとても美しい。ミャンマー産の高透明翡翠は、ちょっとそれとは別の石という感じ。美の種類が違う。

翡翠は不思議な、深い魅力を持った石です。

【追記】
「いろはに宝石」さんのサイトにミャンマー翡翠が出ていて、そこにこう説明がありました。

《ジェイダイト(本ヒスイ)が商業ベースで採掘されている唯一の産地は、ミャンマー最北部の中国(雲南省)の国境線近くに位置するカチン州パカン鉱山です。ここは秘境中の秘境で、車で行く道路もなく、治安も悪く、一般の人は入り込めないような所です。私たちのもとへ届くまでには、大変な苦労がありますね。》

カチン州に住むカチン族は、ちょっとヤオ、ミャオ、イ、といった雲南山岳地の少数民族に似ているところがある。納豆や餅などを食する「照葉樹林文化」に属して、日本とも深い親近性がある。日本人のルーツ、あるいは日本人と同じルーツを持つ人々なのかもしれない。そこで美しい翡翠が採れるというのも、ちょっと面白いですね。

【再追記】
夕星庵さんにもうひとつ、高透明度のものがとても安く出ていたので、追加ぽちっ。



「グレイッシュ・ラベンダー」となっていて、確かにグレイのようなラベンダーのような、ものすごく微妙な色合い。やはり方向によって色合いが変わる。すごくいい。



お三方集合写真。ほんとに3つとも、魅せられました。


スウェディッシュ・ブルー、蛍光

2022-08-14 22:28:27 | 単品

ピーポーピーポー。スウェディッシュ・ブルー、蛍光セリ、繰リ(やーめーなさい)

UVライト出したついでに、同じガラスのものを照らしてみた。
スウェディッシュ・ブルー。既出。鉄精錬所のスラグから出たガラス。
そのままで美しい青です。



UVライトで照らすと、さらに鮮やかな青に輝く。



実に素晴らしい。
のですが、変なことが起こった。
カメラで撮ろうとすると、光が明滅する。動画はこちら
まあ、ライトの発光メカニズムのせいでしょうけど、少し不気味。

しかし、黒曜石といい、スウェ君といい、ガラスなのになぜ?
中に含まれる何らかの元素のせいなのだろうけど、ガラスって非晶質だぜ。電子のやり取りみたいなのはないのとちゃうか。
あ、オパールも非晶質なのに蛍光するか。
アモルフ体の中にある何らかの原子・分子が単独でエネルギー吸収・放出を繰り返しているということ?
わけわかりませぬ。


黒曜石、蛍光セリ

2022-08-14 20:34:58 | 国産鉱物

黒曜石、蛍光セリ、繰リ返ス、黒曜石、蛍光セリ。(何だよそれは)
いや、ちょっとびっくりしたもんで、緊急報告。(大げさな)







まさかねえ。
黒曜石は火山性の自然ガラス。それが蛍光するなんて。
写真は少し偏り過ぎ。肉眼ではもっと全体がぼわーっと薄暗く蛍光する。濃い赤。

今日ネットを見ていたらパーフェクトストーンさんが蛍光するアゲートをアップしていた。
ほお、アゲートでも蛍光するものがあるんだ、と思って、うちの雑石箱を照らしてみた。標本のカケラやアゲートの磨きさざれなんかが入っている。(カケラって壊したんか?)
コーラルアゲートの中に、少しだけ光るものがあった。まあ蛍光と言うほどのものではない。
ところがその横で、ぼんやりと赤い光を発しているやつがいる。
明かりをつけてみてびっくり。君は黒曜石ではないか。

この黒曜石、あちきの唯一の自採品。信州和田峠で採った。
採集なんてものではない。地面にぽろぽろと落ちているのを拾っただけ。
小さいものだけど、独特の貝殻状破断面光沢があってなかなかいい。
だから素姓は確か。

黒曜石が蛍光するなんて話は聞いたことがなかった。
もちろんいろいろな石が蛍光する、それをいちいち書き上げているわけには行かない。
けど、ネットで調べてみると、神津島の黒曜石研究家兼加工業者の人がブログで大発見のように書いているのが見つかった。研究家の人でもそれまで知らなかったわけですね。

まあ、だからどうだというわけでもごじゃりません。素晴らしく美しい蛍光ではないし。
けど、UVライトをお持ちなら、いろいろな石を照らしてみると面白いかもしれません。意外な石が意外な色を発したりするかも。


イエロー・サファイアあるいはゴールデン・サファイア

2022-08-14 10:56:44 | 単品

ずっと、サファイアというのは青だと思っていた。赤いのはルビー。
でもネットを見ていると、いろいろな色のサファイアがある。へえ。
コランダム(酸化アルミニウム)のうち、赤いのはルビーで、後のは全部サファイアと呼ぶらしい。初めて聞いた時は「は?」と思いましたね。だったら青いのはサファイアにして、別の色のはまた別の名前にしたらいいだろうに、と。まあそんなことするとトルマリンやガーネットみたいに「名前大杉」になるか。
緑、紫、黄色、ピンク、さらにはバイカラーつまり二色入りなんてのもある。アイスクリームの世界みたい。「ブルーベリー何たらにチョコミント何たらのダブルコーン」なんてよく食べるよなあと呆れていましたね。(何の話だ)

で、過日、ミネラルクエストさんで石を見ていたら、サファイアのミニミニルースセットの中に、妙な色のものがある。で、お安かったのでぽちってみた。



黄色。きらきら。イエローがきらきら輝けばゴールデン。(まあな)
小さいけどゴージャスな輝き。はええ、と驚嘆したのでした。知りませんでしたねえ、黄色があるとは。

で、気に入ったので、別の日にミネクエさんで出ていたルースをぽちっ。
こちらもゴージャス。ただ、サファイアの特質なのか、角度によって少し緑っぽい色が浮かぶ。バイカラーサファイアの黄色圧倒版という見方もできる。

おまけにつけてくれたのが、同じイエローサファイアのミニルース。これがまたすごい。3ミリほど、くしゃみしたらおしまい、の小ささですけど、少しオレンジがかったイエローが、実に美しい。

しかも、下の二つは、表面に不思議な虹が出ている。表面の構造色なのか、あちきの老眼ではよくわかりません。

いいですねえ、イエロー・サファイア。

     *     *     *

ところがサファイアには厄介な問題がありまして。
「加熱処理」というもの。加熱するとブルーが鮮やかになるそうで、「最近は原産地でほとんど焼いてしまう」という話もある。
タンザナイトなんかもそうですけど、まあ、加熱というのは自然にそうなることもあるわけで、「変造」ということにはならない。それを承知で買って観賞するなら、別に問題ないでしょう。
ちょっと厄介なのが「拡散処理」と呼ばれているやつ。加熱する際に、別の元素を加えることで、色を大きく変えたりできる。これには二種類あって、
①表面拡散  クロムで青を鮮やかにするとか、チタンで「スター効果」を出すとかがあるらしい。削ると取れる。
②浸透  加熱する際、原子の小さいベリリウムを加え、内部まで浸透させることで黄色味を鮮やかにする。削っても取れない。
しかし②を普通「ベリリウム拡散処理」と言うみたいで、これちょっとおかしくないですかね。拡散というのは「すでに在るものを拡げ散らす」ことであって、外から入れるのなら「浸潤」「浸透」「含浸」と言うべきでしょう。アクアマリンなんかで「含浸処理」と書かれているものも時々ありますね。
パパラチア・サファイアという美しい「蓮の色」のサファイアがあって、人気で価格も高い。けれど、しばしばベリリウム浸潤でこの色を出しているものがあるらしい。
まあ「加熱拡散・浸潤」は人工変造の部類に入るかなあ。

で、上記のサファイアのルースは「ベリリウム拡散処理」とちゃんと注記してある。こちらも承知で購入したもの。たぶんミニミニルースのほうも同様でしょう。
承知の上でなのだから、問題ない。美しい。それでいい。それに天然コランダムにベリリウムが含まれることはあるので、まったくのでっち上げというわけでもない。あちきは別に宝石的な価値とか考えてないし、そもそも1000円くらいのものにそんなものあるわけもないし。
まあ、とんでもなく高いお値段で買った「パパラチア・サファイア」が、実は浸潤処理のものだった、というのはちょっと問題でしょうね。資産的価値を考えて宝石を買うなら、ちゃんとしたお店で鑑別書付きのものを買うしかない。

     *     *     *

ネットで「イエロー・サファイア」「ゴールデン・サファイア」を検索してみると、あまり品数はない。「天然」と謳ったものはものすごく高い。産出が少ないのでしょうね。加工で黄色味を出すにしても、無色透明のものが必要で、それもあまり多くはないのかもしれない。
お手頃値段のものはベリリウム浸潤処理でしょうけど、承知で味わうのなら、いいんじゃないでしょうかね。すごくきれいだし。

イエローないしゴールデンの天然石というのは、そんなにない。有名どころではイエローダイヤモンド、シトリン、ヘリオドール(ベリル)、スキャポライト、トパーズくらいかな。スフェーン、ジルコンなんかも時々あるようですけど。ちなみにシトリンも加熱処理のものが多いとか。

黄色の透明石ならシトリンでいいじゃないか、と言われるかもしれないけど、やっぱりコランダムはちょっと違う。例の「屈折率・分散度・複屈折」というやつ。

・屈折率
  コランダム 1.760~1.772
  ベリル 1.577~1.583
  水晶 1.544~1.553
  スキャポライト 1.538~1.541

・分散度
  コランダム 0.018
  ベリル 0.014
  水晶 0.013
  スキャポライト 水晶より若干高い

人間の目はこういう微細な違いを見分けるようで、サファイアが人気なのはやはり屈折率・分散度が高いからではないでしょうか。新米のあちきが見ても、何となくきらきらがすごい。ような気がする。(頼りないなあw)
さらに、コランダムは光学的異方性、つまり方向変色もある。バイカラーサファイアのゆらゆら揺れる色は素晴らしいものです。

ということなのだから、いっそのこと、「ベリリウム浸潤処理」のイエロー・サファイアを、「ゴールデン・コランダム」とか別の名前で大々的に売り出したらよろしかろう、と。美しいから、人気が出ると思うのですけどね。(君は石屋か?)

まあしかし(まだ続くのかよ) よくこんな小さなものをカットするものですねえ。どうやったらこんなことできるのだろうと、いつも不思議に思う。あちきなんか逆立ちしても無理ぽ。
こういうきれいなものを安価に楽しめるのだから、石の世界はいいですねえ。