貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

イェンバイのアメジスト

2024-08-30 09:20:16 | 単品

前記事でベトナム産シンギング・クォーツを上げたけど、パーフェクトストーンさんはけっこうベトナムが得意みたいで、どっか相当山の奥まで行ったという報告ツイートを見たことがある。
インドシナ半島はユーラシア・プレートの南東端にあって南中国サブプレート、インドシナ・サブプレート、スンダ・サブプレートがぶつかる地域。半島東側のベトナムは南中国(揚子)地塊とインドシナ(コントム)地塊の衝突域で、北部には後期古生代に生まれたバリスカン造山地域がある。とのこと。要するにけっこう複雑な地質ということだ。(結論がものすごくいい加減w)
メコン・デルタや稲作で平地の印象があるけど、実は日本と同じく山だらけ。南北に異常に長く、南と北では言語も文化もやや異なるというのも日本に似ている。

でパフェさんはそのベトナムからいろんな石を掘って来る。(掘っては来んて)
あちきもアクアマリン、サファイアなんかを買っている。
でこれはイェンバイ産のアメジスト&クォーツ。

長辺9センチとけっこうでかくて、えらく迫力がある。何というのかな、エネルギーの強さのようなものを感じる。
最初わからなかったのだけど、これ白クォーツがアメジストにぶっ刺さっている。つか白を包むように紫が形成されたというのが正しいか。
一見無粋な塊のようだけれど、表面は繊細。



こういうの、何と言うのですかね。エレスチャルとかジャカレーとかスケルタルとか、定義がはっきりしない形容詞が多くてよくわからん。素直に言えば「階段状晶面」ですかね。それがあちこちにあって、眺め回していると楽しい。
淡く澄んだアメジストが突き出ている姿もいい。



室内だと色が鈍いのだけど太陽光だと変身シンデレラ。



ベトナムというのは石の産地としてはあんまり有名ではない感じ。インドシナにはモゴックを擁するミャンマーがあるし。でもこれからいろいろと出てくるのかもしれませんね。

おまけ。ベトナムの石たち。スピネル、アクアマリン、サファイア。




新発見のDTシンギング・クォーツ

2024-08-28 20:40:35 | ややレア

あちきが時々楽しく買い物をさせてもらっているパーフェクトストーンさんは、けっこう水晶の扱いが多い。水晶は天然石の王道で寿司で言えばマグロみたいなものだと誰かが言っていたけど、パフェさんも「やっぱ寿司はマグロだよ」と王道派を実践しているのかもしれない。といっても普通の水晶だけではない。あちこちの珍しいものをどっかから掘って来るらしい。(掘りゃせんだろw)
で、見ているうちに、つい手が出る。

これは「新発見」のベトナム産DTシンギング・クォーツ。Van Tung, Bac Kani Prov. Vietnam。
「新発見で商品化は世界初」ということだったので、「じゃあ世界初購入だね」とついポチッ。少し軽薄か。(うん軽薄)

125ミリとけっこう大きい。表面はざらざらしていて、模様も不規則。小結晶の寄り集まり?とも思えるくらい。

ところがサヌカイトの台に乗せて叩くとキンキンと澄んだ音が鳴る。
何ですかねこれ、とググってみた。そしたら唖然茫然飯三膳。(……)
そもそも「叩くと出る音」を表わす言葉は、ない。ないんですよ、これが。さらに「叩くと出るキンという金属的な音」を表わす言葉も、ない。何だよこれ。何か名前つけろよ。(誰に言ってるんだよ) 人間の認知体系はひどく粗密があるものですねえ。(大げさな)
梵鐘の音もこれ。風鈴の音もこれ。ピアノの音もこれ。鉄琴の(もういいよ)
たくさん利用しているのに、全体を表わす言葉がない。
そして、どうしてそういう音が出るのかに関して、体系的な理論もないらしい。具体的にどういうふうにしたらどういう音が鳴るとかの、実践的な経験知はあるけれど、それらを総合的に理論化できてはいないみたい。
金属的な音が――
ちなみに「金属音」でググると腸閉塞が出てくる。何だよこれ。恐いねw(寄り道すんな)
えーと金属的な音が鳴るのには、「硬くて弾性がある」ものがいいらしい。ヤング率=縦弾性係数とかいう科学用語があるけど、ようわからんのでほっとく。硬くても脆いものはだめ。しかしさあ、強度とか剛性とか硬度とか弾性とか靱性とか、いろんな用語がごちゃごちゃして、ややこしいよ。(文句多過ぎ)
さらに「減衰率」とかとかいう、ようわからんけど要するに音の伝わりやすさの問題もある。音波が吸収されずに進まないと音は響かない。密度が高く規則正しい結晶のものなら、減衰率は低くなりそうだということはおぼろげに想像できる。
じゃあ、硬くて弾性があり、稠密で規則正しい結晶構造のものなら、金属的な音がなるかというと、どうもそういうわけではない。現に「シンギング・クォーツ」というのは金属音が鳴る特別な水晶なのであって、普通の水晶は鳴らない。なんでだ?というのはわからない。「カンカン石」ことサヌカイトは、鉱物ではなくて岩石で、規則正しい結晶構造というわけではないのに金属音が鳴る。なんでだ? それにこの水晶、見掛けからするとあんまり規則正しい感じはしない。はて。

まあいいや。(何だよ放り出すのかw) 音も光・色と同じで複雑難解な現象のようですね。


竜王第二鉱山産の水晶

2024-08-25 09:54:03 | 国産鉱物

「水晶はパスです」という方針でやってきた。のだけれど、いつの間にかけっこうの数の水晶君がいる。はてさて。
堤防決壊の第一因は青水晶だった。「なんか大きめの青い結晶が欲しいなあ」などという気持ちを持ったのがいけない。で、デュモルチエライトだのラズライトだののインクル・クォーツに手を出した。結局澄んだ青水晶というのは、人工ものしかなかったという落ち。
もう一つは国産鉱物。荒川鉱山の緑水晶に魅せられて、そこから芋づる式に各地の可憐な水晶に惹き付けられて、無色の水晶にも手を出した。竹森、天井沢、湯沼、蛍鉱山……
かくして堤防決壊。(なんかそんなことばっかやってないか?)

「石集めは水晶に始まり水晶に終わる」なんていう言葉もあるらしい。あちきは水晶に始まったわけではないけど、そろそろ「水晶に終わる」になってきたかもしれない。(またまたw)
で、いくつかのものを。

まずは竜王第二鉱山産水晶2つ。
竜王といっても中央線の竜王とは関係ないんですね。長野県南佐久郡北相木村下新井。これじゃわからん。秩父山塊の北端、小海線松原湖から真東へ十数キロ。それでもわからんね。まあ山また山の奥深くですね。
石灰質緑色岩・粘板岩砂岩と石英閃緑岩・石英斑岩の接触交代鉱床、つまりスカルン鉱床。硫磁鉄鉱などを産した。現在は閉山立ち入り禁止。
で、緑水晶。

といってもインクルで緑に染まっているのではなく、クローライトか何かが完全に皮膜を作っている。これ水晶ですか?というくらい。しかしそれがかっこいい。
緑に透き通った小結晶もくっついてはいる。

なんか重厚で、シャープで、とても素敵です。

もう一つは色なし。ヤフオクで2個セット。



これが迫力あるんですねえ。写真だとのぺっとしてしまうけど、実物はうわっと思うくらい。
あちゃこちゃ向いてる結晶の姿もいいし、ちょこっと赤く染まっている所があるのもかわいい。


おちびの方もきりっとした結晶でなかなか。

それほど有名ではないのかもしれませんけど、いい産地ではないでしょうか。


タンザナイト:変成性熱水鉱物?

2024-08-21 21:02:10 | 単品

タンザナイト。有名過ぎて今更何をか言わんや。(でもぐちゃぐちゃ言うんだろw)


ホコリアイト付きw

やっぱ美しいですねえ。アイオライトの青よりすこーし紫味が少ないのかな。個体差もあるだろうけど。アイオライトと同様、多色性=方向変色を示すものもある。
タンザナイトはゾイサイト=灰簾石のうち青い結晶のものを言う商品名。商業的だけど異国の夕空をイメージさせるようで、いい名前ではある。
市場に出ている多くは加熱処理で青くしてある。mindat さんによれば、《この色は微量のバナジウム陽イオンの混入によるもので、加熱により380nmの V4+吸収帯が増加し、350nmの V3+吸収帯が減少します》とのこと。しかしなんで熱で電荷が変わるのかはわからんw
《ゾイサイトは以前はエピドート・グループに分類されていましたが、クリノゾイサイトの斜方晶系多形であるため、エピドート・スーパーグループの新しい命名法により、このグループのメンバーとはみなされなくなりました。》何じゃこりゃ。このグループ分けというやつ、やっぱわけわからん。ゾイサイトをハブにして何が面白いん?(素人は黙ってなさい)
ちなみに青く透明度のあるものがタンザナイトであって、ピンク・タンザナイトなどいうものはない。(君もそう書いていなかったか?) いや、タンザナイトをゾイサイトの透明結晶というふうに広義に捉えればピンク・タンザナイトはあり、という……(クソ屁理屈の言い訳w)
Ca2Al3(SiO4)(Si2O7)O(OH)。変な化学式。
でこのゾイサイト、エピドート=緑簾石に似た柱状結晶もあるけど、だいたいは結晶ではない塊。時にルビーが一緒に入っていたりする。「ルビー・イン・ゾイサイト」ね。

この旧・緑簾石グループの緑簾石、灰簾石、紅簾石、褐簾石は、主に広域変成岩中に生成する。だから大体、上のルビー入りのようにぐちゃぐちゃっとした石になる。変成岩中にできたら、まわりは石だらけだから、きれいな自形結晶にはならないですわな。アイオライトなんかも主に変成岩中にできるから、あまり大きな結晶にはならないし、自形なんてまず出ない。
広域変成岩に特色的に見られる主な鉱物には以下のものがあるそうで。
《柘榴石、菫青石、藍晶石・珪線石・紅柱石、透閃石、珪灰石、緑簾石、緑泥石、滑石、蛇紋石》
ガーネットは別として、美麗な自形結晶になるものはやっぱ少ない。
けれど、時折はキリッとした自形結晶で出るものもある。前に上げたパイロフィライト=葉蝋石もそうだけど。
これは何ぞや。
案ずるに、岩石が変成する際に、固体のまま変成するだけではなく、熱水に溶出する部分があり、その熱水の中でできたということではないでしょうかね。そんなことがあるものかと思うけど、そんなことがなくては自形結晶生成の説明が付かない。まあ「最初に結晶」というのもあるにはあるだろうけど。

多くの美麗鉱物は、例の「玄武岩→安山岩→花崗岩」の王道ルートをたどって花崗岩から発生する熱水でできる。しかし一方、変成作用の中で生じた熱水でできる鉱物もあるのではないか。岩石進化の最先端たる「水成鉱物」にも、マグマ熱水由来のものと、マグマは直接関係ない変成作用由来のものがあるのではないか。
タンザナイトの美しい結晶は、その変則ルートの「進化」の頂点的存在ではないか。
まあ素人の妄想です。ほんとかどうかはわかりません。(おいおいw)


ガーネット・イン・ヌーマイト

2024-08-18 09:49:06 | 単品

ちょっとこれ珍しいんじゃないですかねえ。
ガーネット・イン・ヌーマイト。

ヌーマイトは前に上げた。30億年前の岩石が25億年前に変成されてできた岩石。直閃石と礬土直閃石を主とした片麻岩。1982年にグリーンランド・ヌーク地方で発見された新岩石。二種の角閃石が針状結晶の中で層をなしていてその境界面でシラーが生まれるらしい。あちきの持ってる磨き石はとても美しいのでつい自慢したくなる。

で、なんでそこにガーネット君がいる? そんなん初めて見た。

ガーネットは名前もめんどくさいけど、あちこちに出現するので面食らう。スカルンでも出るし、いろいろな変成岩にも登場する。果ては「沈み込んだ海洋地殻が高圧脱水して重い変成岩になりついにマントル下部まで沈下していく」というエクロジャイトの主成分になったりもする。
まあヌーマイトも直閃岩が高圧変成してできたものだろうから、そこにガーネットが登場してもおかしくはないでしょう。特に高圧だったのかもしれない。たぶんテツアルかマグパイか(またかよ)、苦鉄質ガーネットでしょう。
25億年前、何がどうなったのかはわからないけど地球大変動があり、ものすごい圧力が加わってあらゆる岩石がぐちゃぐちゃになった。その姿の一つ。地味だけど、実に奥深い石ではないですか。なんつったって25億年前ですし。