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◎千一夜物語 その4 ヌレンナハール姫と美しい魔女の物語(1)

2015-12-02 23:47:11 | 物語
千一夜物語 その4 ヌレンナハール姫と美しい魔女の物語(1)

ヌレンナハール姫と美しい魔女の物語(第807-814夜)(「完訳 千一夜物語10」、岩波文庫)

●「竹取物語」によく似たところがある話で、以下のようなものです(完全なものではありません)


「ヌレンナハール姫と美しい魔女の物語」(第807夜)より

 時の古え、ある王がいて、長男はアリ、次男はハサン、末はフサインという3人の王子がいました。3人の王子は、彼らの伯父の娘ヌレンナハール姫と一緒に、父王の御殿で育てられました
 ヌレンナハール姫は、美しさの点でも、才智の点でも、魅力の点でも、人間の娘の間で並ぶもののないかたでした

 帝王は、姫が妙齢に達したとき、3人の王子が、いずれ劣らぬ愛情で熱烈に姫を慕って、おのおの心中で姫を我がものにしようと望んでいるのに気づきました

 そこで、帝王は1策を案じました
「お前たちはそれぞれ相異なる国に出かけて、最も尋常ならぬと思う珍稀な品を、余のもとに持ち帰るのだ。余は最も驚くべき不思議なものを持って帰った者に、姫を授けよう」

 3人は旅の商人に身をやつして、ただ1人の奴隷を連れて、駿馬に乗って旅に出ました
 3人は、道が3筋に分かれている場所にある旅宿に着きました。旅の期間は1年でこの旅宿で落ち合うことにし、馬に乗って、おのおの違った道をとりました

 さて、長男アリ王子は、3か月の旅の末、インド海岸の1国ビスシャンガール王国に着きました

 市場のほうに行ってみると、中央の広場に達する大きな街路があって、広場の中央には美しい大理石の泉水がありました。店という店には全部、薔薇とジャスミンを山盛りにした花瓶が備えつけられていて、市場中がその香りに満ち、花壇のなかを歩くようでございました

 王子が店にはいって商人と雑談を交わし、インド人の風俗習慣について質問をしていると、ふと店の前に、1人の競売(せりうり)屋が、2メートル四方ほどの小さな絨毯を持って、通りかかるのが見えました

「お買いになるかたに御損はござらぬ。この絨毯、金貨3万ディナール。祈祷用の絨毯だ、おお、買い手のかたがたよ。金貨3万ディナール。お買いのかたに御損はござらぬ」

 アリ王子は「祈祷用の絨毯が金貨3万ディナールとは、いまだかつてこんな話は聞いたことはない」と思いました。王子はこちらに来いと合図して、もっとそばで見せてくれと言いました。競売人は、その絨毯を拡げました
「この祈祷用の絨毯が、どうしてお前の言い値のように法外な値段になるのか、わかりかねるが」
「おお、御主人様、この値段にお驚きになってはなりません。この品の真の値に比べれば、これは決して法外な値段ではございません。それに、実は私はこの値段を競り上げて金貨4万ディナールを現金で払って下さるかたにしか、この絨毯を渡してはならぬと命じられております」
「なるほど、この絨毯がそのような値段に値するものとあらば、何か私の知らない、さだめしすばらしいものがあるにちがいない」

…ここまで話した時、シャハラザードは朝の光が射してくるのを見て、慎ましく、口をつぐんだ