考える葦のブログ

さわやかに さりげなく

偽装請負

2007-02-24 23:56:25 | 徒然なるままに

格差問題・・・
その大きな問題の中のひとつとして、正社員と派遣・請負の格差問題がクローズアップされつつありますね。
特に最近は経団連会長の出身会社、キヤノンをはじめとした「偽装請負」問題が大きな話題となっています。

偽装請負とは、どういうことか分かりますか?

簡単に言いますと、
・企業がある業務を業務委託と言う契約で、別会社に発注します。
・その請け負った別会社は、自分たちの会社で自社社員の指示の元、その業務をこなせば契約上は問題ない(偽装ではない)のですが、
・実際は、その発注先に労働者を派遣して、発注先の指示の元、発注先社員と同様の働き方を求められる。
・つまり、契約上は委託(請負)となっているにも関わらず、実態は委託(請負)となっていないこと、これが「偽装請負」ということです。
※本来は偽装請負と言うより「偽装委託」と言うほうが、どこ(どの会社)に問題があるのかハッキリするような気がします。
(朝日新聞の記事も参照してみてください:http://www.asahi.com/special/060801/TKY200607300429.html

では、偽装請負は何が問題なのか???

上記の契約上の偽装状態が、職業安定法や労働者派遣法に抵触すると言うのが、問題なんですよね。でも、ボクの場合は、「法に触れるから問題なんだ」と言われても、スッキリと納得できないもので・・・
この偽装請負は何が問題なのかを考えてみたいと思います。

ボクが思う一番の問題点は、
会社という「法人」と比較して、そもそも立場上は弱者である労働者が、「偽装請負」という形でさらに労働契約上も給与上も弱者に追い込まれてしまうこと、
だと考えています。
基本的には、同じ会社で同じ業務をして、同じ成果であれば処遇(給与も含む)も同じであるべきです。(同一労働同一賃金の原則)それが、別会社であることにより区別される。
つまり、発注側の力が請負側より比較的強いことが一般的だと思いますので、そうなると、請負側は処遇面では、給与の不遇のみならず、契約期間が限定されたり、十分な社会保険が適用されなかったりという問題がある、と。そういうことですよね。

みなさん、ハローです。ホディです。

今日は寒かったですね。
北風が強くて、今シーズンで一番寒いんじゃないかとすら思いました。
こういう変化は体調を壊しやすいので、気をつけないといけませんね。

さて、今日の請負偽装の問題。
実に根が深いような気がしています。
と言いますのも、そもそもいわゆる「ケイレツ」(系列)で下請けのシステムが整っている日本の会社では、請負関係は当たり前だったんですよね(?)。
それが、少ない設備投資で出来る部品等の製造は海外へ移して、日本では大きな設備投資が必要な製造が残っている。そうすると、メーカー本体で投資をせざるを得ないような設備を使っての製造が残って、それを今までのように下請けの企業の従業員でこなしている、とこんな実態ではないでしょうか???
違いますかね?

労働の階層化を下請けのシステムで実現してきた皺寄せが、ここで出てきているような気がしています。
そういう意味では、偽装請負に限らず、請負そのものや、あるいは派遣も含めて、やはり格差社会の問題となるんですよね。

では、労働におけるこの格差問題の解決の糸口は何なのか?

ボクなりに考えると、以下の二点です。

まずは、労働の流動化・労働契約の自由化を進めなければいけない
本来であれば、“偽装請負”するくらいならば、自社で雇えばいいんですよ。
でも、それが出来ない。
終身雇用が常(だった)の大企業にそういうノウハウがないのも事実でしょうけど、現在の労働法の環境下では、雇用のミスマッチがあった場合のリスクは企業にとって大きなものとなります。そこで、もっと企業のリスクを減らしていく。それでは労働者にとって不利ではないかと思われますけど、もちろん一部の正社員にとっては不利になります。が、正社員とか派遣とか請負と言う契約に区別されない、広く労働者全体にとっては大切なことだと思うんですよね。
その一方で、労働基準法、職業安定法、労働者派遣法、さらに言えば下請法などの適用を厳密に行う。
そのようなバランス感のある運用をしないと、利益を上げる使命のある企業だけでは、なかなか上手く解決できないですよね。

そして、もう一点は労働組合のあり方を変えていかなければいけない
すでに労働組合への加入者は雇用者の中の2割を割っているそうです。つまり8割以上は労働組合に加入していない。
でも、弱者である労働者は団結していかないと、なかなか強者である法人と対等には交渉できないですよね。

この問題で気がついた人も多いと思いますけど、実は今の格差問題では労働組合は強者の代弁者にもなったりします。単一の企業の中で、しかもその多くは正社員で構成される労働組合は、下請けの企業の従業員、あるいは派遣労働者までケアできない。逆に言えば、限られた財源をシェアするのに、分配者が増えると取り分が減ってしまうという問題もあります。
つまり、この点では企業と同じ言い分になることが往往にしてあります。
本来は弱者の味方であるはずなんですけどね。。。

本来の労働組合を取り戻すには、同じような契約形態の労働者だけでなく、しかもひとつの企業だけではなく、広く業界、あるいは地域で団結できるように変わっていかないといけないのだと考えています。
そうすることが、一時的には問題となっても、長期的には労働者全体の利益につながるのではないかと。しかも、それが格差問題を解決する糸口であると、そう思うんですよね。

いずれにしても、この「偽装請負」の問題は悪いことである、という前提が必要です。
ライブドアの決算の“偽装”が悪いことだと言うのと同じです。
安倍首相は「競争に勝ち抜いた経営者としての手腕と見識を日本経済に生かしてもらいたい」などと問題の企業の会長を再三擁護したのだそうです(中国新聞の記事より)が、まずいですよね。
「偽ってまで競争に勝ち抜くこと」が大切だとすると、ホリエモンの発想と同じです。
正々堂々と競争できる社会の実現をお願いしたいものです。


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4 コメント

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re:不平等 (hoddy)
2007-05-09 00:19:11
freeさん、はじめまして。
コメントありがとうございます。

偽装請負は是正されつつあると、何となくそんな世論の流れを感じていますけど、現実はまだまだ厳しいようですね。

委託する会社も、請け負う会社も・・・
それなりの生き抜くための企業努力となるんでしょうけど、freeさんのような声を聞くと改めて怒りを感じますね。
そんなことをしながら、日本の社会はどこに行き着くのか???
いろいろ考えさせられます。

返信する
不平等 (free)
2007-05-07 19:58:41
偽装請負を労働局に告発。すると会社と請負先は、完全請負へと方向転換。
今まで共に働いてきた仲間からも反発や不満が爆発。
それを利用して請負先上司からの稚拙な嫌がらせ!
うその情報を流して、敵対させたり、仕事に支障が出るような事まで。(こちらは請負側だから反発できない)
喜んだのは担当者!(郵便配達人と呼ばれていた)
何箇所も掛け持ち担当をして、一日何箇所も駆けずり回っていたのが、偽装が表立ったから常駐となり、ろくに仕事もしないで(仕事内容すら覚えようとしない)…
しかも課長などと役付きになり。役職手当が転がり込んで来たと言う有様。
労働組合を結成して賃上げ要求を出した所、額面ギリギリまで出しているとの事。
請負先には「一人あたり200~300万出しているのに貰ってないのはそちらの会社の問題」と言われた。
会社にそれを伝えるが…「いくら支払われているか企業の秘密漏洩に繋がり、プライバシーの侵害にもあたるので教えられない!」の、一点張り。
組合活動は一応認めるが、社内での活動は一切許可できないし休憩時間すらしてもらっては困る。
組合の連絡も一切取り次ぎは出来ない。などなど・・・・
ふざけた話。
こんな会社が神戸で職業訓練校なるものを始めたから性質が悪い。
募集内容で年一回昇給をうたいながら事実上は無し!
作業着貸与とうたいながら、二着目からは半額負担!
ひどいでしょう。
社長は年々申告額がUPで一億近い額。
どう思います?
鬼畜でしょ!!
返信する
re:不平等 (hoddy)
2007-02-26 20:21:16
のんさん、コメントありがとうございます。

ここにきて、いろいろな企業の偽装が挙げられてきていますね。かつてのボクの在籍した会社でも同様の偽装はありましたし、かなり一般的に行われているんでしょうね。ホント、由々しき問題です。

こういう悪事が企業が利益を出すために不可欠だと経営者が思っているようだとしたら、まずいですよね。
おっしゃるとおり差別です。
企業もこういう差別をなくしても、元気な会社でいられるように工夫して欲しいですね。

返信する
不平等 (のん)
2007-02-26 16:52:59
これは確かに由々しい問題ですよね。
要求される作業の質や課せられた責任に差がないのに、待遇面で格差が生じるというのは、あるいみ差別にも近いし、このようなダブルスタンダード、不平等は、社内のモラル低下(→結果的に品質事故)にもつながりかねません。
以前勤めていた会社でも、派遣の人の「正社員の人とやっていることがかわらないのに」という不満はよく聞こえてきていました。最初は、棲み分けがあってもなし崩し的に一緒になっていっちゃうんですよね、管理者側がちゃんと管理できていないとか、意識が低いために….
わたしもhoddyさんのご意見に賛同です。人材流動化と組合の有り様の変化は本当に急務だと思います(請負偽装に関らず)。
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