考える葦のブログ

さわやかに さりげなく

評価と報酬━参稼報酬調停で考えること━

2011-01-29 23:30:52 | 人事の仕事

サッカーのアジア杯への注目にかなり押され気味ではありますが、プロ野球のキャンプインが迫ってきて、少しずつ野球の話も多くなってきていますよね。これまでも、ファイターズに入る斎藤佑樹投手の話題は多かったんですけど。

その中でも、注目すべきと思う話題は、ライオンズの涌井秀章投手の契約更改。
秋からかなりもめていて、選手と球団での交渉がまとまらずに「参稼報酬調停委員会」というプロ野球、正式には日本野球機構(NPB)が定めるまさに、調停の場に持ち込まれ、昨日、ようやく今シーズンの契約がまとまったようですね。

ちなみに、「参稼報酬」なんて聞きなれない(変換もできませんでした)言葉、年俸のことのようですが、を用いたこの委員会・・・
日本プロフェッショナル野球協約2010の第94条から96条、NPB調査委員会規定の第4章に定められた機関で、最終的には委員長が年俸額を直接、契約書に書き込むことまでやる権限を持っています。そういう意味では、日本のプロ野球自体、“統一契約書”という契約からもそうですが、球団というより、NPB:日本野球機構(プロ野球)という会社に就職しているという前提で考えたほうが良いかもしれません。

また、今までの調停委員会の委員はプロ野球のコミッショナーとセ・パ両リーグの会長だったものが、今回の調停から、委員長が熊崎勝彦コミッショナー顧問、他に石塚久弁護士、堀内恒夫さん(元巨人)の3名が委員となるという改革が行われたようです。従来は、まさにプロ野球を会社としたら、その役員が委員会を運営していたものが、改革により、比較的第三者に近い人たちで運営される制度になってきているようです。
それでも、選手会からは、委員が「各球団のオーナーにより選ばれるコミッショナーにより選ばれること」、選手側からは委員については何もいえないことは、まだまだ不公平な制度だという意見もあるようです。(日本プロ野球選手会のHPより http://jpbpa.net/reform/fair.html

ここで、今回の調停の結果ですが、日経新聞では「過去になく選手側の主張が認められた」「「公平に審議」改革の成果」ということで、選手にとって意義のあるものだったという論調でしたが、ネットでざっと見る限り、多くの新聞で同じような意見のようですね。

西武・涌井年俸、球団提示は合理性欠く…調停委(読売新聞) - goo ニュース

読売新聞 2011年1月28日 20:23

契約交渉が難航していた西武・涌井秀章投手の年俸調停委員会(委員長=熊崎勝彦コミッショナー顧問)は28日の第4回会合で、球団が提示した現状維持の条件(2億2000万円)は合理性を欠くと判断、涌井の年俸を2億5300万円と決定して涌井と西武球団に通達した。涌井が希望した2億7000万円には届かなかったが、球団提示から3300万円と大幅にアップした。

2009年の野球協約改定に伴い、第三者機関の調査委員会による調停は初めて。同委の意見聴取に対して球団は「昨季の成績の査定基準で算出すれば年俸はダウン」「シーズン終盤の重要な試合で結果を出せなかった」と現状維持の根拠を述べ、涌井側は「14勝した年間を通しての成績が評価されていない」「5年連続で二けた勝利を挙げている」などと主張した。

また、日本野球機構のホームページには「株式会社西武ライオンズと涌井秀章選手との間の参稼報酬調停の要旨」として、かなり詳しく今回の調停について書かれています。
http://www.npb.or.jp/npb/20110128doc.html

この要旨によると、涌井投手の当初の年俸の希望額は3億円、球団側の当初の提示は現状維持:2億2000万円+インセンティブ2000万円・・・最終的な結果は2億5300万円。
ボクらには縁のない金額なので、何とも言いにくいのですが、ライオンズだけではなく、パリーグだけでもなく、日本を代表するような投手の一人である涌井投手の年俸はいくらが相応しいのか?

結局のところは、誰も「正しい」金額が計算できるわけではない・・・
これは、涌井投手だけではなく、他の選手も、もちろん、ボクら普通のサラリーマンもそうなんですよね。身も蓋もない言い方ですが、これは事実です。

一方で、「適正かもしれない」金額は存在します。
これは、涌井投手の考えるもの、球団が考えるもの、そして調停委員会が考えたもの、それぞれ異なったんですよね。さらに、ボクらの勝手な算盤も入れれば、いろいろな「適正かもしれない」金額があるわけです。

いつも思うんですが、こうして揉めても実は誰も良い思いをしないんではないか、と。

球団側は結果として年俸の計算ロジック、その査定の合理性を否定され、
涌井投手もどんな思いだったのかは想像するしかないのですが、何度も交渉して、調停委員会という外部の人に値踏みされて、それでも希望には達しなかった。涌井投手にいたっては、夕刊フジでは「自ら調停を申請しながら、調停の結果に関するコメントも代理人を通じて出しただけ。これでは西武のエースという看板が泣く」、「選手側に問題が残った」とまで書かれる始末。(ボクらは選手の契約のどこまで知る権利があるんでしょうか。)

これだけ成果がハッキリ出るような世界なので、もう少しやり方もあるように思うんですが・・・
査定の基準の明示や、段階的な評価のフィードバックなど、どこまでできているんでしょうか?
もっと相互に「契約」「理解」しておくことで、避けられるような無用な不信・不振もありそうな気がするんですが、事実を知らないのでここまでにしておきます。

最後に、今回の調停で「附言」されていた内容を一部引用しておきます。(野球機構の要旨より)

およそ参稼報酬は、双方の誠意ある交渉による合意により定まることが最も望ましいところ、西武球団と涌井選手との交渉の過程で、涌井選手が合意妥結を探り、(中略)、交渉の過程で、西武球団側にも、妥結に向けてのもう少し柔軟かつ積極的な姿勢が見られてもよかったのではないかと考える。

※強調と傍線はボクが入れたものです。

仮に、実際は球団側の査定が正しかったとしても、選手にこれだけがんばればこれだけの報酬になると期待させてしまったこと、それ自体で球団の落ち度もあるわけで(もちろん、だからといって、選手の期待通りにしないといけないわけではない)、そうなると、順調にいくケース以上に、分かりやすく、客観的な説明が必要だと思いますし、「誠意」が求められるわけです。

これは、野球の世界だけではなく、サラリーマンの世界でもいえますよね。
目標設定や評価基準の明示などだけでは不十分で、最後は「人」同士、誠意と合意ではないでしょうか。

そもそも外国人選手の契約(期間の自由をはじめ、査定や年俸なども)と日本人選手のものとの不公平さも、きっと不満のベースにあるだろうと思います。そう意味では、契約の自由度を上げることが一部のスター選手にとっては待遇改善の手っ取り早い方法なんでしょうけど・・・
そういうことも含め、少し考えさせられる話題でした。

 


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2 コメント

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re:サッカー (hoddy)
2011-01-30 22:36:13
moto金田浩さん、コメントありがとうございます。

サッカー、本当に良かったですね。
個々では体格も劣るけど、総合力・チーム力で勝つ!、いい感じでした。

それと、選手の契約・・・
一般のサラリーマンとは、世界や注目度等々、全く違う面も多いですよね~
そして、プロのスポーツ選手は、逆に数字だけではない面も強いと思うので、とても評価が難しい気もします。長嶋と王はどっちが年俸が高いほうが良いのか???という話にもなりますし、、、
悩ましいです。

返信する
サッカー (moto金田浩)
2011-01-30 20:39:19
勝ってよかったですねぇー。

さてと、契約の件、考えさせられました。

選手という短期間の契約、まさに能力給
ということですから一般のサラリーマン
とは異なりましょうが。
返信する

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