一日中、憤りを隠した様な曇り空の後の夜の雨、窓の外で舌打ちを続けてる―壁の染みの中から
真実を見つけ出そうと目論んでる様なフィンガー・ピッキング、いつか目覚めの様に来る春の事を勇み足気味に求めて止まない…死にそうな冬の凍てついた呼吸にようやく俺は慣れ始めてきている
願望と欲望と失望と羨望が肩ぶつけながらすれ違い街路は破裂を隠した水脹れの様な思念を残して
ぼやぼやと滴りにくすぶりを上げている―アストラッド・ジルベルトの寝物語の様なビートの上のヴォイス、それを情熱と呼べないのなら他になにを選ぶべきだと…?ああ、一度だけでいい、彼女
クールなシンセサイザーのリズムで遊んでくれないかなぁ
窓の外、どうしても止められないといった調子で、寒過ぎる春が舌打ちを続けてる
「繋ぎとめて、繋ぎとめて、繋ぎとめて欲しい」
無理だよ―無理だ、零下の女神、俺たちは運命のもとに生きているのだから―溺死を覚悟しつつ汚れた海の中で不恰好な息継ぎを繰り返しているのだから…企みに嬉々としていた少年はもうここには居ないよ
昨日、「すべてを失くした」といった表情で、もがきもせずに漆黒の真夜中の向こうへ沈んでいった―止められない―止められるわけがない…あいつの眼はもう何も見てはいなかったんだ
俺は声を上げて、失いかけた右腕を波にしのばせる、ああ、重い
誰かを失くす度に指先にまといつくものは重くなる、まるで
途中で消えた蝋燭の火を、引き受けてしまったみたいに
―ああ、と俺はもう一度思う
独りで先に行く、それは
ますます独りでは居られなくなる―と、
そういうことなのだ
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