不定形な文字が空を這う路地裏

bad religion



誰の耳にも止まるよう鎮魂歌は轟音で鳴らされる、崩落した世界の底で見上げる太陽は一番輝いている、絶望や失望と戯れるうちそれが主食かと思うようになった、どこを歩いても腐敗臭ばかりさ、自尊心が内容を上回っている連中が獲物を探している、晴れた空がまるでブラックジョークみたいに見える塩梅だ、ロックンロールは循環コードと染めた髪以外のすべてを失ってしまった、欲望の感じられない、音の通りに発せられているだけの歌唱がチャートのいたるところからドロドロの血液みたいに吹き出している、人を極限まで生き易くするシンプルで滑稽な認識がどんな戯言を並べようが俺のやることとは何の関係もない、安易な選択肢に蟻のように群がることで人間は落ちるところまで落ちてしまった、もはやそれは個人ではない、上空にかかった雲のようなたったひとつの意識だ、現代社会とはたったひとつのイデオロギーによって遺伝子を繋ぐ単細胞生物に過ぎない、新しいビルや車、産業のためにほとんどの一〇〇年がドブに捨てられている、俺はお前らのようにはならないよ、生まれてこのかたずっとそう思って生きてきた、それで何もこの手にすることが出来なくとも、選択しなかったという一点に置いて自分のままで終われる、とはいえ、人生は長く、また新しい感覚が俺がこの身体に明日を呼び込む理由になる、俺が吐き出すものはいつだって誰もまだ見たことが無いものさ、だってそれは俺だけにしか作れないものなんだから―あらゆる表現はいつだってそうあるべきなんだ、お手本をなぞるだけじゃ一生まがいもので終わっちまうぜ、そこから先へ行くんだ、良識のある大人たちは俺のことを何者になることも出来なかった年寄だって言うよ、だけど巨大な檻の中で、胡坐をかいて肥え太っているだけの連中にそんなことを言われても俺だって困っちまうってもんさ、俺にとっちゃ俺の身体だって俺の書く詩のひとつなんだ、すべてがそうした証明でなければならない、瞬間瞬間の理由の証明でなければならない、でもそれは証明の為に綴られてはならない、それでは主張になってしまう、スタンスやスピリットはあくまで、湧水のように滲み出たものでなければならない、だから俺は主張の為に言葉を綴ることはしない、なぜだかわかるかい?主張を身体に張り付けて歩いている連中を見ろよ、その主張がどんなものでも恥ずかしいものに見えるだろ、俺はそんなものになりたくないんだ、命だって、モラルだって、主義だって、風や温度のように感じられるものが正しいのさ、鎮魂歌は轟音で鳴らされる、死者がなにも残さなかったときにそうなるのさ、もしも俺が死んだら俺の詩が語られるだろう、読みやすいようにまとめておいておくれよね、俺にはまだまだ時間が残されているはずだから…太陽の光は無数の針のようだ、頭上から真直ぐに突き刺してくる、地上で蠢く俺たちはいつだって神の生贄さ、正式な手続きでもってそれが捧げられなくなったから神様もあれこれして帳尻を合わせなくちゃならないんだ、わかるだろ、社会が感性を失った前世紀の終わりから、ずっと人間の数は微調整されてるって話さ、災害や戦争、やつらはきっと本当はイチから組み直したいと考えているに違いないぜ、ゴッド・セイブ・ザ・ブレイン、俺たちは神様によって救済されるべきだぜ、本当に世界を救うことが出来るのは美しい詩篇さ、でも誰かにそれを気付かせることは本当に困難な作業なんだ、金にならないものにはやつらは目を瞑ってしまうからね、どこまで行ける?何が出来る?考えているより一言でも多く書き残したほうがいいさ、今すぐ死ぬわけじゃないがいつまでも生きられるわけじゃない、生き急がなければ真理なんて手に入れられるわけがない、胃袋より飢えろ、脳味噌より考えろ、もっともっと使える感覚はあるはずさ、自分が知らないところまで行けて初めて旅と呼べるように人生も展開されていくべきだ、クロスロードで悩むなんてナンセンスさ、闇雲に進めばそのうち踏破することだって出来るはずだ、アクションの中で考えることだよ、現在の尻尾を掴んだまま模索し続けるんだ、現在にすら追いつけることはない、過去は体内で蓄積し変換される、再構成された現実はもう一度吐き出される、それは綿密な認識であり、もしかしたらその時は気付けなかった真実の発見かもしれない、知ったような顔なんか出来るわけがない、未知は生まれ続ける、パックマンみたいに食い続けるのさ、検分する必要はない、それは肉体の中でじっくりと行われる、知る時が来たら勝手に浮上してくる、好きなだけ飲み込んだって誰も文句を言ったりなんかしない、誤差に注意を向けないことだ、そうすればあらゆる物事は自分のものになっていく、鎮魂歌を垂れ流すスピーカーを叩き壊せ、俺には自分すら弔う気など無い。


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