古い記憶の様にくすんだ空の彼方を
飴色の羽根の蜻蛉が果てしなく越えて行く
忘却の淵で行きつ戻りつする唄が
時折脳髄に痕跡を刻み込む
淑女のしなやかさで運命を決める創造主
点在するものに出来ることなどたかが知れている
賛美歌の隙間に紛れ込む囁きがある
光が強ければいっそう深く陰は凍るもの
天を貫かんと昔猛った巨木の根っこに腰を下ろして
風が爪弾く葉脈の命を辿った
獰猛な太陽は彼らの隙を探して
隠された一角にさえ光りあれと説く
湿度を慈しむ蔓に口づけをしながら俺は生きてきたよ
潜むものたちの優しさは度を過ぎることが無い
誰だって傷みに耐えたことがあるんだ
そしてそれを無駄にしないだけの理性があったのさ
磨かれた床に写るのは偽りの示唆だ
放たれるために編んだはずの拙い矢尻
つがえる間も無く土に汚れた
跪きうなだれた唇から漏れるのは本当の憎悪
飴色の羽根の蜻蛉はあの頃からすべてを見ていた
諭すだの
託すだの
受け継ぐだの
そんなものばかりで地を這ったわけじゃない
濡れたくない雨から逃げるためには
心底からの跳躍を膝が打たなければ
時計の針はどちらにも回る
時間など
誰が定めたものでもない
本物の時を知りたければ
疲労や
顔の皺を数えればいい
恥ずかしいと思ったなら
もう一度
心底から跳べ
心底から跳べ
飴色の羽根の蜻蛉が見ている
飴色の羽根の蜻蛉が見ている
あいつを地上に叩き落してしまえばいい
湿度を慈しむ蔓に口づけをしながら俺は生きてきたよ
そしてそれは
俺にとっての本当の光なんだ
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