白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
ブログ移転しました→https://note.com/shiraishi_igo

9月の投稿一覧

2016年10月16日 20時03分22秒 | 当ブログについて&バックナンバーまとめ
皆様こんばんは。
本日は9月の投稿記事をまとめます。

9/1(木)幽玄の間
幽玄の間で中継された、山田規三生九段中野寛也九段の対局をご紹介しました。
力自慢の両者の対局は、激しい戦いになりました。

9/2(金)一力七段、天元挑戦!
第42期天元戦挑戦者決定戦、山下敬吾九段一力遼七段の対局をご紹介しました。

9/3(土)幽玄の間その2
奥田あや三段青木喜久代八段の対局をご紹介しました。
両者一歩も引かない凄い戦いでした!

9/4(日)大場より急場
指導碁の5子局を題材にしました。
考え方一つで、展開は大きく変わります。

9/5(月)9月の情報会員向け解説
日本棋院情報会員のPRを行いました。
趙治勲名誉名人金秀俊八段の対局をご紹介しています。
師弟対決は、稀に見る激戦になりました!

9/6(火)三星火災杯
三星火災杯本戦での、伊田篤史八段の好局をご紹介しました。

9/7(水)一力七段、勝利!
一力遼七段が李欽誠九段を破った対局をご紹介しました。
李九段はテレビアジア選手権で優勝したばかりでした。

9/8(木)余七段、王座挑戦!
余正麒七段高尾紳路九段を破り、王座戦の挑戦権を獲得しました。
その対局をご紹介しています。

9/9(金)三星杯結果
一力遼七段と卞相壹五段の熱戦をご紹介しました。

9/10(土)終局図の活用法
小林覚九段(黒)と鶴山淳志七段の対局をご紹介しました。

9/11(日)ゆうちょ杯
第3回ゆうちょ杯決勝、呉柏毅二段(黒)と芝野虎丸二段の対局をご紹介しました。

9/12(月)8月の投稿一覧
8月に投稿した記事のまとめです。

9/13(火)女流本因坊戦、開幕!
謝依旻女流本因坊藤沢里菜挑戦者の戦いが始まりました。
第1局の対局をご紹介しています。

9/14(水)封じ手予想
名人戦第2局1日目の見所紹介と封じ手予想を行いました。

9/15(木)高尾挑戦者、連勝!
名人戦第2局2日目の対局を振り返りました。

9/16(金)反発
張瑞傑二段村川大介八段の対局をご紹介しました。
若い両者の気合がぶつかった好局です。

9/17(土)石の価値
小林覚九段(黒)と許家元四段の対局を題材に、石の価値についてお話ししました。

9/18(日)解説について
解説とはどうあるべきか、私なりの考えをお話ししました。

9/19(月)チャンス
5子局を題材に、チャンスを逃さない事の重要性についてお話ししました。

9/20(火)封じ手予想?
名人戦第3局1日目の見所紹介と封じ手予想を行いました。

9/21(水)高尾挑戦者、3連勝!
名人戦第3局2日目は高尾挑戦者が勝ち、3連勝となりました。
井山名人、大ピンチ!

9/22(木)新人王戦第1局感想
新人王戦決勝三番勝負の第1局が行われました。
元気一杯の両者の戦いは、半目を争って最後まで縺れました。

9/23(金)ジャステック杯新鋭対抗戦
4カ国対抗、1チーム8名の団体戦が行われました。
日本チームは初日の韓国戦に4対4と健闘しました。
その中の1局、牛栄子初段対呉侑珍三段戦

9/24(土)日台戦
ジャステック杯2日目、日台戦も4対4となりました。
余正麒七段と林立祥七段の対局をご紹介しています。

9/25(日)日本勢、大健闘!
ジャステック杯最終日、日中戦もなんと4対4でした。
世界でも上位のレベルを集めた中国チームに対し、大健闘だったと思います。
その中の1局、上野愛咲美初段対宋容慧五段戦をご紹介しました。

9/26(月)藤沢三段、勝利!
女流本因坊戦第2局は、藤沢里菜挑戦者が勝って1勝1敗となりました。
対局の見所をご紹介しています。

9/27(火)一力七段、李世ドル九段に勝利!
農心辛ラーメン杯で、一力七段が李世ドル九段を破りました!
対局の見所をご紹介しています。

9/28(水)一力七段、連勝ならず
李九段を破った一力七段でしたが、范廷鈺九段に連勝を阻まれました。
対局の見所をご紹介しています。

9/29(木)本日の対局
アンティ トルマネン初段と対局しました。
面白い場面をご紹介しています。

9/30(金)大西二段、新人王獲得!
大西竜平二段谷口徹二段を破り、新人王を獲得しました。
第1局に引き続いて大熱戦となった、第2局の模様をご紹介しています。

9月も毎日投稿し、累計投稿回数は194回となりました。

おかげ杯精鋭対抗戦・結果

2016年10月15日 23時59分59秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
本日は第3回おかげ杯国際精鋭囲碁対抗戦の2日目が行われました。
日本チームは韓国チームに0対5で敗れ、残念ながら決勝進出はなりませんでした。
勝ってもおかしくないと思っていたのですが、勝負にはこういう事もあります。
そして負けたからいって、彼らの頑張りが無になるわけでもありません。
そんな訳で本日は韓国戦の全5局をダイジェストでご紹介します。
全局幽玄の間で中継されましたので、ぜひ総譜もご覧ください!





(伊田―李1)
伊田篤史八段対李東勲八段(黒)戦です。
黒△と押された場面で、白Aと受ければ穏やかですが・・・。





(伊田―李2)
白1とハネました。
目一杯頑張った手ですが、黒2と切られて、一体どうするのでしょう?





(伊田―李3)
と思ったら白13まで、黒を全部取りに行きました!
危険な打ち方ですが、読みに余程自信があるのでしょう。
伊田八段の個性が表れた、物凄い作戦でした。





(一力―李1)
一力遼七段(黒)対李志賢六段戦です。
白1はシチョウアタリです。
黒Aと受ければ白Bのツケコシが成立します。
白Bに対して黒Cには白Dと切り、黒は白Bの石をシチョウに取れません。
かといって、ツケコシを防いで白Aと連打されてもいけません。
黒大ピンチですが、一力七段はどう凌いだでしょうか?





(一力―李2)
実戦は黒1から黒3!
一見すると支離滅裂な打ち方ですが、その意図は?





(一力―李3)
白1と出る一手に対して黒2と戻り、黒の意図が明らかになりました。
黒△が働いて、白Aとツケコシて来てもシチョウに取る事ができます。
一力七段、非常手段で両方を凌ぎました。





(安斎-朴1)
安斎伸彰七段対朴珉奎五段(黒)戦です。
黒1、3はサバキの常套手段で、隅に入って左辺黒の根拠を作る狙いです。
白4と繋がらせないように打ったのは最強手ですが、ここで黒5の手裏剣が飛んで来ました!
この手の狙いは何でしょうか?





(安斎-朴2)
白1、3と受けていると黒4の切りが成立します。
白5には黒6と逃げ、白Aとシチョウに取れなくなっている事をご確認ください。
これは白まずいので・・・。





(安斎-朴3)
白1と手を入れ、黒2の連打を許しました。
白の上下が分断されて苦しそうですが、覚悟の上での進行です。
白Aからの攻めに賭ける作戦なのです。
ただ、それが結果的に上手くいかなかったのは残念でした。





(謝-呉1)
謝依旻六段(黒)対呉侑珍三段戦です。
左上は三々入り定石の進行ですが、ここで定石通り黒Aと生きているようでは、白Bと傷を守られて黒良くありません。
謝六段は、隅の地を稼ぐために三々に入ったわけではないのです。





(謝-呉2)
実戦は黒1を打っておいて、黒3の切り!
隅で生きるのではなく、白を分断して攻める作戦です。
謝六段らしい力技でした。





(謝-呉3)
思い切った作戦でしたが、結果は上手くいかなかったようです。
白△とハネられ、黒から手が出ない形です。
黒Aと切っても白Bと当て返され、要石の黒△が取られる結果になります。
となると隅を取られた損が大きく、白優勢になりました。





(奥田―金1)
奥田あや三段対金彩瑛二段(黒)戦です。
黒1、3のツケ切りは、サバキの常套手段です。
そして黒には、ある狙いがありました。





(奥田―金2)
白5まで取らせておいて、黒6の切り!
これが黒の狙いでした。
白7で取られそうですが、白△に対する利きを利用します。





(奥田―金3)
黒1から5までが先手になるので、黒7まで中央の白を分断できました。
ここで白がAと両アタリを防いでいるようでは、黒Bと繋がれていけません。
白に何も良い事が無く、一方的にやられた結果になります。
そこで白は・・・。




(奥田―金4)
白1、3と反撃しました!
黒4、6と3子を抜かれましたが、白7で左上の黒を取る振り替わりになりました。
物凄い大変化でしたね。
碁では時々、信じられないような事が起こります。


今回日本チームは残念でしたが、敗戦も大事な経験です。
必ず将来に繋がる事でしょう。
世界を目指す若手棋士の応援を、今後ともよろしくお願いします!

おかげ杯国際対抗戦

2016年10月14日 21時48分23秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
本日、第3回おかげ杯国際精鋭囲碁対抗戦が始まりました!
30歳以下の若手のみの棋戦で、日中韓台の4チームが優勝を争います。

日本チームは台湾チームに3対2で勝ちましたが、中国チームには1対4で敗れました。
チームとしては残念でしたが、個人では伊田八段が黄雲嵩五段に見事勝利!
黄五段はあまり知られていないでしょうが、世界でも上位の棋士です。
阿含桐山杯の日中決戦では、中国代表として井山桐山杯と戦っています(井山桐山杯の勝利)。
本日はその対局の模様をご紹介しましょう。
なおこの対局を含め、対抗戦の模様は全て幽玄の間にて中継されています。



1図(実戦黒41)
伊田八段の黒番です。
黒△と打った場面ですが、これは白△に対する「3目の真ん中」の急所です。
白△のダメが詰まっていて動きが不自由になるので、黒はそれを利用して全体を攻める狙いです。
「3目の真ん中」は昨日の名人戦でも出て来ましたね。




2図(実戦白72)
白も、ただ逃げ回るのではつまらないと、隅の黒を取りに来ました。
黒〇と白〇が攻め合いの形になっています。
白としては、黒を取ってしまえばAの傷を解消できるという事です。
次に黒Bと打てばコウになりますが・・・





3図(変化図)
黒1と仕掛けても、大きなコウ立てがありません。
白6となって、これは白良しです。
黒1の石が無駄になっているのが痛いのです。
この手は地だけで言えば、3目の価値しかありません。
序盤ではパス同然ですね
では黒どうするかと言えば、これも昨日出て来ましたが・・・





4図(実戦黒73)
出ました、コウ立て作りです!
大きなコウ立てが出来るのを待ってから、コウを仕掛けようという事ですね。
ややこしい打ち方ですが、詳しく説明していきましょう。





5図(変化図)
ここで白がコウを解消しようとするとどうなるでしょうか?
黒2と連打して3図と同じようですが、大きく違うのはAの所に黒石がない点です。
黒4に回る事ができ、左下の白が危険になります。
これは黒良しです。





6図(実戦白74~黒79)
という訳で白としては、今右下に手を入れている訳にもいきません。
実戦は白1と受けましたが、そこで黒2とコウを仕掛けました!
黒4、6が大きなコウ立てになっており、次に黒Aと打たれると白ばらばらになります。
3図と似ているようですが、宙に浮く白石の数が増えています。





7図(実戦白80~黒83)
そこで実戦は白1と受けたので、黒2とコウを取り返す事ができました。
白には大きなコウ立てが無いので、白3の「そばコウ」を使うしかありません。
ただ、ここで黒Aと受けると、白Bとコウを取り返されて、黒に大きなコウ立てがありません。
ではどうするかと言えば、黒4のコウ立て作りです!





8図(変化図)
白1と打てば黒を取れそうですが、それは罠です。
黒2以下は白を団子にする手筋で・・・





9図(続・変化図)
白3まで進んだ所で、黒4とコウを仕掛けます!
黒6や黒A以下に大量のコウ立てができて、コウ争いは黒勝ちになります。
すると黒Bの切断や黒Cの眼取りが残るので、白困ります。





10図(実戦白84~黒87)
そこで実戦は白1とコウ立てができるのを避け、黒2に白3とコウを取っていきました。
左辺で得をした黒はこのコウに拘らず、黒4で左下白への攻めを狙います。





11図(実戦白110~黒111)
最終的にはこんな分かれになりました。
石を沢山取った白が良く見えますか?
しかし黒は左上、左下で得をし、さらに右上に回っています。
また、白△に打たせているのもポイントです。
この手は次にAで黒3子を取る手を残していますが、その価値は地だけで言えば11目です。
この段階では、一手パスとは言わないまでも、半手パスぐらいでしょう。
総合すれば黒十分の分かれと見られます。

プロの碁にはコウがよくできます。
アマの皆さんにはコウ嫌いな方が多いのですが、大きな理由として、コウに負ける事が心配というものがあります。
しかし、コウは必ずしも勝たなくても良いのです。
負けても二手連打できると思って、気楽にコウ争いを楽しんで頂きたいですね。


さて、コウ争いの説明だけで大量の図を使ってしまったので、ここらでこの碁のご紹介は終わりにしたいと思います。
しかし、見ているだけで面白いのはここからです。
伊田八段、切れる所を全て切って行きます(笑)
種石、カス石関係なくもりもり取って行く、皆様好みの碁です(失礼)
ぜひ、総譜でご覧ください!

井山名人、連勝!

2016年10月13日 19時27分40秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
本日は第41期名人戦挑戦手合七番勝負第5局の2日目が行われました。
結果は井山裕太名人が、高尾紳路挑戦者に白番3目半勝ちを収め、2連勝!
これでシリーズは2勝3敗となり、いよいよ面白くなってきました。
それでは早速振り返っていきましょう。



1図(封じ手・黒67)
封じ手は・・・黒△でした!
封じ手予想はこの一手という確信があったので、まさか外れるとは思いませんでした
多くのプロも同じだと思います。
それには理由がありまして・・・





2図(変化図)
黒2、4と取っても眼ができるわけでもなく、白をただ固めるだけです。
逆に下方の黒を白Aで閉じ込める手が生じてしまいます。
これは黒全くダメな図なので、実戦の封じ手は廃案にしてしまいました。





3図(実戦白68~黒71)
ですが高尾挑戦者は、凄い事を考えていました。
黒4と打ち、白Aと繋げば黒Bと切って大コウを挑むつもりです!
コウ立てはおそらく黒Cでしょう。





4図(実戦白72~白74)
ややこしい事情があり、実戦は違う形のコウができました。
白1、黒2の後、白Aと打てば黒がアタリになるコウですが、ここで白3と切ったのはコウ立て作りです。
どういう事かと言いますと・・・





5図(変化図その1)
すぐ白1とコウにすると、白5までの振り替わりが想定されます。
この図の難点は、白1が非常につまらない所にあるという事です。
大雑把な言い方ですが、この白1は一手パスみたいなものです。





6図(変化図その2)
そこでコウを仕掛ける前に、黒3まで右下の黒を太らせておこうという狙いです。
白4とコウを仕掛け、白6が強烈なコウ立てになります。
コウ替わりに白Aと4子抜けては白良しです。
黒が2回逃げてから取られたのは酷く、前図とは数字で表せば10目ぐらい違うでしょう。





7図(実戦黒75~77)
という訳で黒も2子を逃げず、黒3までの振り替わりとなりました。
5図との違いはAの所に白石が無いという事です。
白としては満足の分かれでしょう。
左辺の黒地が大きく見えるかもしれませんが、何しろポン抜き30目と言います。
白の勢力ができて、周りの黒が弱くなっています。
この差は物凄く大きいのです。





8図(実戦黒85)
右下黒△と打った場面です。
殆どの方は右上白△を動く事を考えるでしょう。
それはプロも同じなのですが、井山名人は違いました。





9図(変化図)
白1などと打ちたくなる所です。
ここで井山名人が、具体的にどんな図を嫌ったかは定かではありません。
例えばこのような図でしょうか?
白は黒4子は取れますが、黒△をポン抜いてこれ以上なく強い石に、さらに手をかけて地を増やしているだけと見る事もできます。
黒4で上辺白の薄みを衝いて来られ、主導権を奪われるかもしれません。





10図(実戦白86~白90)
という訳で実戦は白1~5、薄い上辺を守る打ち方でした。
理屈は分かるのですが、そうは言ってもなかなか井山名人のようには打てません。
黒を取れる所で、逆に自分の石を捨ててしまうのですから・・・。
この大局観、流石名人だと思いました。





11図(実戦黒97)
形勢はやや白リードしている印象です。
ここで黒△が高尾挑戦者の勝負手です!
白△をただ取るだけなら簡単ですが、中央を目一杯に構えて丸飲みするぞと言っています。
白としてもそれを許す訳にはいきません。
さて、どこまで踏み込むかですが・・・





12図(実戦白98~白100)
実戦は白1と最大限の踏み込み!
黒2と利かしに来るのに対して、白3と迫ってあなたも弱いですよと言っています。
井山名人らしい気迫溢れる打ち回しで、このあたりの数手が本局のハイライトシーンと言って良いでしょう。





13図(実戦黒101~白108)
黒1からは戦力増強の狙いですが、白8まで上辺を受け切りました。
白△が所謂「3目の真ん中」の急所に来ており、黒は思うように攻められません。
相手の弱みを衝く、凌ぎ方のお手本のような打ち回しです。
黒〇をポン抜いた厚みも睨みを利かせており、どうやら白は死ぬ心配が無くなったようです。





14図(実戦白128)
結局白1まで凌ぎに成功しました。
黒は白△は取れましたが、全体の地は白の方が多そうです。





15図(実戦白134~白136)
白1から3のヨセも上手い!
白△を利用して最大限に踏み込んでいます。
このあたりで白の勝ちがはっきりしたと思います。


なかなか調子の出なかった井山名人ですが、猛然と追い上げ始めました。
ここ2局は内容も素晴らしく、いよいよ本領発揮といった印象です!
一方の高尾挑戦者も打ちたい手を打っており、連敗したとはいえ決して調子は悪くなさそうです。
第6局でどんな戦いを見せてくれるのか、楽しみですね!

第6局は10月26日(水)、27日(木)、静岡県河津町「今井荘」で行われます。
ぜひご覧ください!

名人戦第5局・封じ手予想

2016年10月12日 23時08分22秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
第41期名人戦挑戦手合七番勝負第5局、始まりました!
第4局では井山裕太名人が初勝利を挙げましたが、追い込まれた状況である事には変わりません。
なんとか本局にも勝って望みを繋げたい所です。
一方の高尾紳路挑戦者は、井山名人の怖さを誰よりも知っています。
この一局で決めなければ危ないと思っているでしょう。
圧倒的有利な状況とはいえ、油断はありません。
名勝負を期待したいですね。

それでは1日目の模様を振り返っていきましょう。
なおこの対局は幽玄の間にて、小松英樹九段の解説付きで中継されています。
また、ニコニコ生放送でもご覧頂けます。



1図(実戦黒21)
高尾挑戦者が黒△と打った場面です。
あれっ、この碁形はどこかで・・・?





2図(本因坊戦の進行1)
図は当ブログでもご紹介した本因坊戦第2局、やはり高尾挑戦者の黒番で黒1と打ちました。
一見すると全く同じ碁のように見えますが、左辺AとBにあった黒石が、一路ずつずれて△にあります。
どちらも定石ですから、何でもない差のようですが、実はこれが伏線です。
本因坊戦では、井山本因坊が白Cと反撃して・・・





3図(本因坊戦の進行2)
白は右下の石を全部捨て、左上の上下の黒を強引に切り離して行きました。
右下の厚みが最大限に働く展開になりました。





4図(実戦変化)
では、実戦で同じ事をやるとどうなるでしょうか?
ここで左上黒に対して仕掛けたいのですが、隙がありませんね。
となると、形勢は右下で白を取っている黒が断然有利です。
これが高尾挑戦者の狙いでした。
もちろんそれは井山名人も察しているので・・・





5図(実戦白22~白28)
取られないようにおとなしく受けました。
ほんの少しの配石の違いで、展開ががらりと変わってしまいました。
碁の奥深さを感じますね。

さて、白7となった場面です。
お互い弱い石がなくなったので、次に黒Aなどと大場に向かいたくなりますが・・・





6図(実戦黒29~白36)
実戦は黒1と形良く伸び、白2の大場を譲りました。
そしてさらに黒3と、生きている白を閉じ込め、白8とまた大場に回られています。
交互に打っているのに、大場を2つも打たれてしまうとは
しかし、しっかり石を繋げて手厚く構えておけば、後でいくらでも取り返せると見ているのでしょう。
高尾挑戦者の重厚な棋風が、色濃く表れた場面でした。





7図(実戦黒43)
白△と守った手に対し、黒1も高尾挑戦者らしい一手だと思いました。





8図(変化図)
黒1の方に目が行きますが、白2、4で根拠を奪われる事を警戒しました。
黒△全体が攻められる可能性があります。
こういう石を逃げてダメを走らされる展開は、高尾挑戦者の最も嫌う所です。

ちなみに名人戦は朝日新聞デジタルで特集されています。
その情報によると、高尾挑戦者の打ち方は武宮正樹九段にはかなり不評だったようです(笑)
一流棋士の間でこれだけ意見が食い違うのですから、碁は面白いですね。





9図(実戦白44)
白が左辺に打ち込んだのは当然です。
地を荒らすのではなく、上下の黒を攻める狙いです。
戦いが始まりました。





10図(実戦白54~白56)
白1と一本打ち込み、一転白3と左下黒を攻撃しました。
井山名人らしい複雑な打ち方ですね。
白1に一体どんな意味があるのでしょうか?
それはこの後明らかになります。





11図(実戦黒57~黒59)
黒1、3と厳しく迫られ、白はいかにも窮屈そうです。
しかしここで打ち込んでおいた1子が役に立ちます。





12図(実戦白60~白66)
白7まで、白△を活用してあっさり形を作ってしまいました。
見るからにゆとりのある姿になっています。
しかも白△はまだ死にきっていません。
取られるまでに相手が何手もかけてくれれば、石の効率で有利になります。
井山名人の見事な打ち回しでした。
さて、ここで封じ手ですが・・・





13図(封じ手予想)
封じ手予想は・・・黒1の抱えしか思い付きません!
面白い予想を期待されていた方がいらっしゃったら、申し訳ありません
白△の動きを封じる本手です。
白〇はカス石ですから、これを取りに行くような事はしないでしょう。

左辺の白と上下の黒は、それぞれまだ生きていません。
しかし、命の危険があるほどでもありません。
明日は比較的穏やかな戦いになるのではないでしょうか。

明日の2日目も本日同様、幽玄の間ニコニコ生放送で中継されます。
ぜひご覧ください!

※なお明日は私も対局があります。
ブログの更新は遅めになる見込みです。