白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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読者コーナー(やさしく語る 布石の原則)

2017年08月26日 23時59分59秒 | 著書の誤植等について
皆様こんばんは。
著書「やさしく語る 布石の原則」の発売日が2日後に迫りました。
書店や日本棋院の売店、ネット通販などでお買い求め頂けます。
また、それ以外にも私と関わりのあるところではご注文頂けるかもしれません(五反田の教室でも販売しています)。
また、電子書籍版(pdf、Kindle等)も出ておりますので、よろしければご活用ください。

さて、ここで少し残念なご報告があります。
見本を確認したところ、いくつかの誤植等が見つかりました。
今回はミス無くと思っていたのですが、やはり難しかったようです。
正誤表は入っていないと思いますので、ここでお知らせしたいと思います。

〇19ページ下段17行目 (誤)199ページ (正)201ページ
〇46ページ5図 白2の2路下にある筈の白石が無くなっています
〇82ページ1図 右下隅、1間締まりである筈の黒石が2間になっています
〇91ページ2図 白8の位置が微妙にずれています
〇99ページ 黒5、白14の石がずれており、本来はそれぞれ2路左です
〇123ページ4図最後の行 (誤)白も (正)白の
〇201ページ下段2行目 (誤)ニ(カタカナ)間ビラキ (正)二間ビラキ

<追記(判明した順)>
〇67ページ 本来は白4の2路下(4の六)に白20がありますが、図では無くなっています。68、69ページも同様です。
〇216ページ下段6行目 (誤)白1の押しが (正)白2の押しが
〇37ページ3図と4図、35ページのテーマ図2にあった白18が無くなっています。
〇218~222ページ 第8章テーマ図7、三々ツケと呼んでいるが三々の位置ではないので不適切です。「星からのシマリへのツケ」に訂正します。
193ページ3図の一行目「2図白2で」は「2図白10で」が正しいです。


見た目からすれば図の間違いが痛いですが、本書の理解という観点からは19ページや123ページのミスの方が問題ですね。
ご購入くださった方は、まずこれらをご確認ください。
もし他にも間違いなどありましたら、お手数ですが gotanda@igoshiraishi.com までご連絡頂ければ幸いです。
この記事のコメント欄やFacebookTwitterでも受け付けます。

また、皆様からのご質問も募集しております。
意味の分かりづらかったところ、本書の活用にあたっての疑問点などがありましたら、ぜひお知らせください。
回答は記事の投稿という形で行わせて頂きます。
前作「やさしく語る 碁の本質」についてのご指摘・ご質問も受け付けておりますので、そちらもよろしくお願いいたします。


若手棋士、躍進中

2017年08月25日 21時38分39秒 | 囲碁について(文章中心)
皆様こんばんは。
王座戦挑戦者決定戦、一力遼七段芝野虎丸七段の対局は序盤から大変な戦いになりました。
どちらかが潰れて終わってもおかしくないと思いましたが、流石碁界トップクラスに手の読める両者、見事に分かれましたね。

中盤が終わる頃には一力七段の勝勢がはっきりしたと思いましたが、そこからの芝野七段の粘りには鬼気迫るものを感じました。
秒読みの中あれだけ粘れるのですから、高勝率を維持できるのも当然ですね。
しかし、一力七段も計算能力には定評があります。
最後はがっちり1目半を残し、井山裕太王座への挑戦権を獲得しました。
なお、解説付きの棋譜は幽玄の間でご覧頂けます。

井山裕太王座は、番碁では村川大介八段以外には年下に負けていません。
一力七段は鋼鉄の壁を突き破ることができるでしょうか?
楽しみな五番勝負になりますね。

また、阿含桐山杯決勝は、高尾紳路名人六浦雄太三段の顔合わせとなりました。
六浦三段は若手の成長株と言われていましたが、こんなに早く出て来るとは思わなかったですね。
何しろまだ18歳・・・また10代か、と呆れてしまいます(笑)。
決勝戦は確か10/7(土)だったと思います。
こちらも楽しみに待ちましょう。


最近の若手棋士は本当に強いです。
それが明確に分かるのが新初段シリーズです。
入段の決まっている若手が一流棋士と対局する企画ですが、長い間2子で良い勝負ぐらいのイメージでした。
しかし、近年は定先に固定されており、しかも結構健闘しています。
先で良い勝負ができるということは、互先で勝つ可能性もあることを示しています。
実際、多くの一流棋士が被害に遭っています(笑)。
今回は、最近の若手が何故そんなに強いのかを考えてみましょう。

<1>情報化社会の恩恵
インターネットの普及等により、教材となる棋譜が素早く、いくらでも入手できるようになりました。
また、国や地域を越えて対局できるようになったことも大きいですね。
この恩恵は地方で特に大きいです。
地方では同年代のライバルを探したり、棋士の指導を受けることは難しかったですが、インターネットの普及により状況は大きく変わりました。
その結果、レベルは大きく上がり、ひいては都市部のレベルアップにもつながっているでしょう。

インターネット自体は昔からあるとは言え、ネット対局が広く行われるまでには時間がかかりました。
私は中学2年生頃から始めましたが、まだネット対局をやっていて当たり前という時代ではなかったと思います。
何しろ、常時接続が当たり前ではなく、うっかりすると電話代が酷いことになるような時代でした。
私はそれで親に怒られたこともあります(笑)。
しかし、現在の若手は子供の頃からインターネットを活用して来ています。
この差はかなり大きいですね。

<2>上に上がりやすいシステム
これは私が入段する以前からですが、大手合の撤廃を含む予選システムの改革により、段位による棋戦への影響がほぼ無くなりました。
以前は、四段以下の若手はまず低段者予選を打たなければいけませんでした。
その結果、有望な若手同士で潰し合い、中々上に行けないということがよくありました。
しかし、現在は入段直後こそ全て一番下からのスタートですが、以降は基本的に前年の成績のみで決まります。
初年度に活躍すれば、翌年は本戦やリーグ戦に非常に近いところからスタートすることも可能です。
この結果、低段者でも本戦入り、リーグ入りを果たしやすくなり、自信と経験が積みやすくなりました。
最近の若手は一流棋士と対局しても、自然体で実力を発揮できているように見えます。

<3>競争の激化
強い子供、院生、若手棋士が増え、同年代での競った勝負の機会が増えています。
そして、これがまた全体のレベルアップにつながっているのです。
何しろ、楽に勝ってばかりではなかなか自分の課題を見付けることができません。
また、細かい終盤勝負もなかなか経験できないでしょう。
終盤に強くなくては、プロの世界で活躍することは不可能です。

<4>ナショナルチームの設立
最近はナショナルチームというものもでき、若手棋士のレベルアップに一役買っています。
ナショナルチーム内での強化対局はもちろん、海外遠征の機会が増えたことも大きいです。
世界の同年代のライバルやトップ棋士との対局は、勉強にもなりますし刺激にもなるでしょう。


他にも様々な要因が考えられるでしょうが、パッと思い付くものを挙げてみました。
中国や韓国の棋士も同様にレベルアップしており、追い付くことは簡単ではありません。
しかし、差は確実に縮まって来ています。
日本の若手が層の厚さで中国、韓国に追いつくことは、社会の違いもあり、5年や10年ではまず不可能です。
しかし、個人レベルで勝負できる若手は出て来ているので、まずは彼らの成長に期待したいと思っています。

本日の対局

2017年08月24日 19時34分10秒 | 対局
皆様こんばんは。
本日は第66期王座戦予選林子淵八段と対局しました。
明日は王座戦挑戦者決定戦、一力遼七段芝野虎丸七段の対局が行われることは昨日お伝えした通りですが、そちらは第65期です。

プロ碁界では年中様々な棋戦が入り組んで行われています。
棋戦の年間スケジュールをご覧頂ければ、何となくイメージを掴んで頂けるでしょう。
ただ、実際にはこの表に加えて、前後の期も絡んで来る訳です。
ややこしい限りですね。

さて、それでは対局の方を振り返って行きましょう。



1図(実戦)
私の白番です。
白1ではAやBが定石ですが、一路広く開いてみました。
最善手はとても分かりませんが、最近はこういう時に打ちたい手を優先させることにしています。
打ちたい手を打っていれば、仮に上手く行かなかったとしても後悔はありません。
中心からずらした白7の開きも、似たような気分です。

ところで、この後隣で石音が聞こえたので、チラッと見やったところ・・・。





2図(隣の対局)
白△と打ったところでした。
配置が全く違うので、真似した訳ではないでしょう。
しかしこの瞬間、心なしか隣から視線を感じたような・・・(笑)。





3図(実戦)
黒1に白2、4のツケ伸びも、打ってみたくなった手です。
両ガカリされた時以外のツケ伸びは、プロの対局ではあまり打たれません。
私も初めて打ったはずです。
一言で言えば、左辺を立体的に構える目的です。





4図(実戦)
黒5と侵入されて左上隅が弱くなりました。
白8、10のツケ伸びは、頭を出しながら隅に根拠を求める打ち方です。
この系統のツケ伸びは実戦によく現れますね。





5図(実戦)
出来上がり図です。
左下黒△とほぼ同じ形が左上でもできました。
妙な碁になったものです(笑)。
この後白8から左辺黒を攻める展開になりました。

この後優勢になりましたが、例によって勝ち切れず、残念な1局になりました。

ニュースまとめ

2017年08月23日 22時40分40秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
昨夜は疲れて少し横になろうとしたのですが、気付いたら朝でした。
まあ、対局前に体力を回復できたと思っておきましょう。
本日から毎日更新に戻ります。
対局前日ということもあり、今回はニュースについてコメントする程度にしておきます。

株式会社ドコモgaccoの協力で、「吉原由香里六段と学ぶ、囲碁の上達法」講座が開講
囲碁を新しく始めたいと思っても、対面で教わりに行くのは敷居が高いと感じる方は少なくありません。
しかし、そんな方もネット上なら気兼ねなく参加することができるでしょう。
このような試みが増えることは、囲碁普及には大きなプラスになりますね。

課題としては、このニュースが囲碁を知らない方にどれだけ伝わるかという点が挙げられます。
日本棋院のホームページにしても私のブログにしても、囲碁を打てない方に対するアピール力が足りません。
入門に限らず、囲碁普及全般には広報活動の充実も必須なので、色々と工夫していかなければいけませんね。

〇名人戦七番勝負、開幕迫る!
第42期名人戦挑戦手合七番勝負が、8月30日(水)に開幕します。
前期は高尾紳路挑戦者が3連勝、3連敗、最終局勝ちという劇的な勝利で名人位を獲得、井山名人の七冠独占を崩しました。
高尾新名人はその時から井山元名人とのリターンマッチは覚悟していたでしょうが、まさかその他の六冠を全て保持したままで来るとは予想していなかったでしょう。
前期に劣らず、大注目の七番勝負になります。
これは絶対に見逃せませんね!

〇王座戦挑戦者決定戦
第65期王座戦【主催:日本経済新聞社 】挑戦者決定戦は、一力遼七段(20歳)と芝野虎丸七段(17歳)で争われます!
待ち構えるのは、タイトル獲得数45の大御所、井山裕太王座です!
・・・などと言ってみましたが、井山王座もまだ28歳です。
もはや囲碁界では、若手と呼べるのは20代前半までという雰囲気になっています。

一力七段は既に数々の実績のある棋士ですし、芝野七段も竜星戦優勝など、各棋戦でトップクラスの活躍を見せています。
どちらが出て行っても、大変楽しみな五番勝負になりますね。
明後日25日(金)の対局は幽玄の間で中継されますので、ぜひご覧ください。

〇LG杯準々決勝、準決勝を日本で開催!
LG杯は韓国棋院主催の国際棋戦であり、通常であれば韓国で開催されます。
今回日本で開催される理由は、井山裕太九段が勝ち残っていることに他ならないでしょう。
これは物凄いプレッシャーにもなりそうですが、井山九段なら意に介さず勝ち上がってくれると思います。
11月13日(月)の準々決勝、15日の準決勝が今から楽しみです。


色々調べながら書いていたら、結局いつも以上に時間がかかりました。
今日はゆっくり休んで、明日の対局に備えたいと思います。

石の強弱

2017年08月21日 23時12分09秒 | 仕事・指導碁・講座
皆様こんばんは。
最近は棋戦や大会などが重なり、幽玄の間に表示されている棋譜も膨大な数になっています。
ナショナルチーム合宿での対局も、公式戦に負けず劣らず、かなりの熱戦です。
また、公式戦の中では、棋聖戦Bリーグの王銘エン九段金秀俊八段の対局が必見です。
いかにも何かが起こりそうな組み合わせですが、やはり物凄い戦いになりました。
私が眺めていてもよく分からないレベルですが、分からなくても楽しめる1局だと思います。
ぜひご覧ください。

さて、本日は指導碁を題材にします。
9子局です。



1図(テーマ図1)
白△と飛んだ場面です。
黒AとB、どちらが正しい方向でしょうか?





2図(正解)
隅の黒が一番弱い石なので、黒1が正解です。
白2と来られても右辺黒には根拠があるので、黒3などと切り離せば白を一方的に攻めることができます。





3図(テーマ図2)
実戦は方向を間違えたので、右下黒が弱くなりました。
守っている間に、白への攻めのチャンスを逃すことになっています。

さて、今度は白△と打たれた場面が問題です。
黒AとB、どちらが正しい方向でしょうか?





4図(正解)
左右の黒△が弱いので、黒1などと守る手が正解です。
白2と滑られると左辺の黒地が無くなりますが、左上一帯の黒はガチガチに堅いため、全く問題ありません。
黒3などと打ち、黒Aの分断を狙って行けば全く隙の無い進行です。

なお、黒1は最も堅い守り方であり、もっと効率の良い打ち方も考えられます。
そのあたりは棋力との相談ですが、いずれにしてもこの方面に打つところです。
実戦は黒1で左上の地を守ってしまい、白に下辺に打ち込まれて局面が紛糾しました。


テーマ図1とテーマ図2は、石の強弱に関する意識が足りなかったという点で、同じパターンのミスと言えます。
本局ではこのパターンのミスが、他でも何回か出てしまいました。

多くのアマの皆様は、毎局のように同様のミスを犯しています。
ということは、もし正しい考え方を身に付ければ、毎局いくつかの大きなミスが減ることになります。
そうなれば、段級の1つや2つは簡単に変わって来るでしょう。

石の強弱は新刊「やさしく語る 布石の原則」でも重要なテーマです。
今回示したような正しい考え方を、パターンとして身に付けられるような構成になっています。