シェルティー ラン吉

拙者シェルティーラン吉でござる ラン吉のランは「団らん」のラン 一度しかない今日もろもろをラン吉ママがしたためまする

ポチの思い出ものがたり 11

2012-06-25 23:17:05 | ポチの思い出ものがたり

数日して、麻疹の治ったS少年と姉たちは、「ポチがいない、ポチがいない」と大さわぎしました。

「野犬狩りにあったとはかぎらないよ。もう少し待ってごらん」と父母に言われても、納得できるものではありません。

「ポチをさがして、さがしてつれて帰って来て」と、口々に言いたてます。

「お前たちの看病にかかりきりで、ポチをさがしに行くひまはなかったんだよ」と言われても、幼い子どもたちは、あきらめきれません。

近所の家を一件ずつまわって、ポチが来ていないか、聞いて歩きました。

いつもは行かないような遠くにまで、ポチの姿をさがして歩きまわりました。

S少年の母親は、おとなりのお兄ちゃんの力も借りて、くさりと首輪を買い、電車とバスを乗りついで保健所にポチをさがしに行きました。

しかし、「何日も前の話をされても、茶色の小さい犬なんて、たくさんいて分からないよ。今はいないよ」と、ろくに相手にもされません。

「ためしに、いつものエサをおいてみよう」と、汁かけ飯を縁の下においてみましたが、むだでした。

 

それきり、ポチは、二度と再び戻ってくることはありませんでした。

 

ポチには、なんというかわいそうなことをしてしまったか。

本当に野犬狩りにつかまったのか、すぐにさがしに行ってやれなかった。

こわさに震えながら、家族が救いに来てくれるのを待ちわびていたかもしれないのに。

S少年の両親は心の中で泣きながら、詫びることしかできませんでした。

 

--------------------

S少年のエピローグ

 

なあ、ポチよ

おまえをすぐにさがしに行ってやれなくて 本当に本当にわるいことをしてしまった

おまえはちっとも悪くない

なのに、ヒトの都合でさらわれて、ヒトの都合で殺された?

どんなにか こわくて、さびしい、つらい思いをさせてしまったのか・・・

そんなポチにむかって、どんな言い訳もできやしない・・・

 

ポチよ ポチ  おまえは、ほんとうにかわいそうな犬だった

我が家をえらび、我が家にいついて、家族みんなを愛してくれたのに

ポチよ ポチ  おまえは、ほんとうにかわいそうな犬だった

汁かけ飯をもらう以外に、なんにもしてもらったことなんてなかったのに

 

ポチよ ポチ  おまえは、ほんとうにかわいそうな犬だった

どうして、あんなことになってしまったんだろう

悔いても悔いても、どうしようもない

おまえのことを覚えているヒトも、もうこの世に数えるほどしかいなくなってしまった

なあ、ポチよ、 勝手なお願いだけれど、あやまらせておくれ  

許してなんて言わないから

 

ポチ ポチ  なあ、おまえ

おまえをかわいがってくれたお父さんやお母さんやお姉ちゃんに、あの世でちゃんと再会したか

おまえをかわいがってくれたお父さんやお母さんやお姉ちゃんに、あの世でちゃんとまた、かわいがってもらっているか

 

今ならば、栄養万点のおいしいご飯を、腹いっぱい食べさせてやれるのになあ

今ならば、からだもきれいにしてやって、楽しいおもちゃで遊んでやれるのになあ

今ならば、ふかふかの布団にも寝かせてやって、もっともっとかわいがって、もっともっと甘えさせてやれたのになあ

 

なあ、ポチよ ポチ  おまえは、我が家にいついて幸せだったか

一体どうして、我が家をえらんでここに住むようになったんだ

なあ、ポチよ ポチ  おまえ、家族のみんなと一緒にいて楽しかったか

一体どうして、この家族をえらんでここに住むようになったんだ

 

ひょっとして、ポチよ、 おまえ、ここにいるのが好きだったのか

みんなといるのが好きだったのか 楽しかったのか

そうか そうか そうだったんだなあ

 

おまえは、ここにみんなといて幸せだったんだな

それならいい  それならいいんだよ ポチ

 

ポチよ ポチ  ポチよ ポチ

いくら呼んでも思い出しても、もうずっと、ずっとずっと昔のことだ

おまえがここにいたという証しは、もう何もないんだよ

おまえがここにいたことを覚えているヒトの心のなか以外には

 --------------------

 

S少年の胸は今でもはりさけそうなくらい打ち震えて、あのポチを愛してやまない

 

ポチよ おまえのことだよ わかるか ポチよ