本格的に体を鍛え始めたのは3年前、海外の雑誌の切り抜きを持ってよくジムのスタッフさんにフォームを教わっていた。中でも一番親切だった男性スタッフがいて、悪いなとは思いつつも見かければいつも教わりに行っていた。そんなスタッフさんもいつの間にか退職し、自分はこの2年ちょっとの間、別のトレーナーさんに教わりながら、とにかく鍛えて体を変えた。風の便りで、3年前のそのスタッフさんは当時大学生のアルバイトで、就職するので辞めたとのこと。自分はマシンと簡単なダンベルしか使っていなかったから、大学生だった彼から教わった全てが、フリーウェイト中心の今の原点になっている。
先日、スーツの男性がジムの入口に立っていた。ふと見ると、3年前の彼だった。転職して、今度は正社員として、もう一度このジムで働くのだそうだ。懐かしかったし、びっくりしたし、何より嬉しかったし、また会えて本当によかった。
「覚えてないかもしれませんが、昔よくフォームを教わっていました。」
挨拶をしに近づいて、そう伝えると、すぐに首を振って答えてくれた。
「覚えていますよ。見違えましたね。肩幅とか全然違いますよ。」
そりゃあ10kg近く増えれば変わるだろうな。これも、今のトレーナーさん、ひいては目の前にいるスタッフさんのおかげだ。
「ずっと感謝していました。」
「嬉しいです、そう言ってもらえると。」
本当にいい人だなあって思った。3年前も今も。この人に教わって新しい一歩を踏み出す会員は何人いるのだろうか、と、話している最中にふと思った。