(書評)
『新型コロナは人工物か? パンデミックとワクチンをウイルス学者が検証する』(PHP研究所)
著者 宮沢孝幸
フェイク・ニュースとか陰謀論とか、そういう話の真偽について、素人には確かめようがない。
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実は、私がSNSなどで本格的に発信を始めた理由は、この人工ウイルス説を唱える陰謀論者と思われる人たちを牽制する目的もありました。私は陰謀論をまったく信じていませんでした。「変ったことを言う人たちがいるものだ」程度の認識でした。「ディープステート(DS)という組織が存在しており、地球上の人口を大幅に削減することを目指している」という話も聞いたことがあります。当時の私は、なぜそんな根も葉もない話がでてくるのかさっぱりわかりませんでした。
(本書「第一章 「人工ウイルスではないだろう」と思っていた」)
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「根も葉もない話」ではなかろう。〈「地球上の人口を削減すること」によって生態系のバランスを回復する〉という夢を語る人はいそうだ。〈ヒトよりクマが可愛い〉と思っているヒトはいるはずだ。
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私がアメリカ在住のウイルス研究者に新型コロナウイルスの起源に関する見解を尋ねたところ、「武漢型は人工である可能性が高いと考えている。その後の変異体については配列を追ってもいないし、人工であるとは考えたこともない」、「なぜそんなものをわざわざつくる必要があるのか?」と問われました。
(本書「第五章 誰がつくったのか?」)
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「なぜそんなものをわざわざつくる必要があるのか?」という質問をするのは、「ウイルス研究者」として変だ。動機について考えるのは、心理学者の仕事だろう。あるいは、軍事研究者などの仕事だろう。
専門家でも、ちょっとばかり自分が知らない話題になると、見栄を張って論点を無視することがある。つまり、知識人に成り下がる。
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私はmRNAワクチンと新型コロナウイルスはセットで計画されていたのではないかと疑っています。もちろん、決定的な証拠があるわけではないのですが、あまりにも早くmRNAワクチンが世界市場に投入されたことから、事前に周到に準備していたのではないかと思ってしまいます。証拠がないことを騒ぎ立てるのはそれこそ陰謀論になってしまうので強く言えませんが、mRNAワクチンを巡る動きも私の目にはとても不可解なものに映っていました。
(同前)
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素人がやるべきなのは、「陰謀論」めいた話に関する真偽の判定ではない。もっと基本的なことだ。
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なお、厚労省は現在(2024年6月26日確認)でも、次のようにホームページに掲載しています。「mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンで注射するmRNAは、数分から数日といった時間の経過とともに分解されていきます。」この文章にはどの細胞、組織においていつまでにどの程度分解が進むのかは示されていませんし、あたかも数日ですべてが分解されるかのような印象を与えています。また、NHKは、「感染症データと医療・健康情報サイト」で(2024年6月26日確認)「厚生労働省は、「mRNA」は体内で数分から長くても数日で分解されるとしています」と掲載していますが、これは、厚労省の説明を読み違えたミスリードです。
(本書「第四章 超過死亡とmRNAワクチン」)
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素人が注意すべきなのは、印象操作と疑われるような文章を「読み違え」ないこと。そして、勝手に作り替えた文章を発信しないこと。
要するに、misreadしてmisleadしないこと。
誤読は嘘の始まり。SF小説の始まりなら、いいんだけどね。
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(終)