岸本裕史『ドラえもんの学習シリーズ ドラえもんの算数おもしろ攻略 改訂版 算数まるわかり辞典 4~6年生』(小学館)
(6)概数と四捨五入(p30~31)
偽ドラえもんは意地悪だ。
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偽ドラえもん「40219人とか、106312人とか、ややこしい数を聞かなくても、「だいたい4万人ぐらい」と聞けば、すごくたくさんの人が集まったことが、だれにでもかんたんにわかって、便利だね」
偽のび太「へえっ、だいたいでいいなら、概数って便利だな。」
偽ドラえもん「また都合のいいことを…概数には、ルールがあるんだよ!」
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「だいたい」だと、そもそも「ややこしい数」を数える必要がない。
「4万人」が「すごくたくさんの人」なら、「10万人」はどう表現しよう。
日常生活における「だいたい」の数も算数の「概数」も、「便利」なのだ。便利でなきゃ、何のためにあるのか。
「ルール」を知る前に、「だいたい」の数に慣れるべきだ。たとえば、〈五万といる〉とか、〈百万ドルの夜景〉とか、〈億万長者〉とか。〈一億総懺悔〉とか。
逆に、小さい数の「だいたい」もある。
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「あと、安心して。私、年下には1ミリも興味ないから。あなたを襲うこともないから」
「僕も、年上には1ミクロンも興味ありませんから。大丈夫です」
「……言い切ったね」ちょっと頭に来る。
(北川悦吏子『ロングバケーション』)
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日常生活では、10進法だけでなく、12進法も使う。土曜日の夜の12時10分は、日曜日の午前だが、日常生活では土曜日だ。5進法も使う。4日も6日も約5日だ。7進法もある。6日も8日も約1週間だ。365進法も……
「都合」が良すぎると曖昧で誤解されて却って不便になる。だから、「ルール」を拵えたのだ。〈初めにルールありき〉ではない。
大きい数に関して「だいたい」という実感のない子どもに概数の「ルール」を教えても納得しない。苦しむだけだ。結局、算数嫌いになる。
切り捨ては簡単だ。しかし、410円の商品を買うとき、勝手に切り捨てたら、店員に叱られる。消費税がいくらプラスされるか、きちんと計算できなくても、500円を超えることはなかろうと思えば、切り上げる。四捨五入を使うことは、日常生活では、あまりなかろう。50メートル走で、48メートルも52メートルも一緒というわけにはいかない。
偽ドラえもんには人間味がない。ロボットのような人間どもがこの本を作ったらしい。
(終)