数年前まではNPBでもMLBでも近代野球において投手と打者の両立は不可能というのが一般的な概念だった。それが極東の島国出身選手がそんな既成概念をあっという間に吹き飛ばしてしまった。
大谷翔平(北海道日本ハム→LAA)
現在、MLBでTwo-way player(二刀流選手)として、その地位を確立し始めている大谷選手の活躍は、本人の才能と努力の賜物であることは間違いないが、そのロードマップを示した北海道日本ハムと栗山英樹監督の優秀なプログラム、マネージメントがあってこそのものである。今後、二刀流選手が誕生していくのであれば北海道日本ハムと栗山監督が示したシステムが模写されていくこともあろう。
奇しくもその大谷選手と同時期の2013年にCINへ入団したマイケル・ローレンゼン投手はカリフォルニア州立大学フラトン校でリリーフ投手兼外野手として活躍し、MLBでも二刀流の野望を抱いていた。
マイケル・ローレンゼン #50→2015 #21→2016~
しかし、現在はリリーフ投手に専念し「可能性さえなかった。考えようという気さえなかったぐらいだ」と語ったことがある。とは言え2015年には36打数9安打で打率.250・4打点、2016年8月19日LAD戦(@グレート・アメリカン・ボール・パーク)には本塁打を放つなど非凡な打撃センスを披露している(2017年に1本塁打を記録)。そんな彼がなぜ早々と二刀流を断念せざる得なかったのか?
LAD@CIN: Lorenzen pitches scoreless relief, homers
推測に過ぎないがCINでは北海道日本ハムのような二刀流育成プログラムを構築できず、挑戦どころか、どのようにハンドリングするべきか分からなかったのだろう。素晴らしい二刀流プログラムを構築した北海道日本ハムという球団に入団し、現在二刀流として活躍する大谷選手と比較すると、それに挑戦することすらできない球団に入団した事自体が不運だった。しかし、ローレンゼン投手が入団した当時では何か新しいことにチャレンジする勇気と先見の明がある球団がなかったのも事実であろう。
同様に二刀流挑戦を断念せざる得なくなった選手として、今シーズンMILとマイナー契約を結んだ、前SDのクリスチャン・ベタンコート捕手。
走者は#10 ジャスティン・ターナー(LAD)
2016年に捕手登録ながらセットアッパーとして2試合に登板。いきなり最速96マイル(約155キロ)の速球と54マイル(約87キロ)のナックルボールなどを披露し、大きな話題となった。(他にも二塁手、左翼手でも出場あり)
2017年は元北海道日本ハムのパドレス・グリーン監督が同選手を本格的に二刀流として起用することを明言。しかし、プレシーズン戦から精彩を欠き、開幕後はセットアッパーで4試合に登板したが、3回2/3を投げて9失点(6自責)、8四球、2三振、防御率14,73。野手では先発出場はなく、代打などの途中出場で打率.143(7打数1安打、3三振)と結果を残すことなく、4月下旬にマイナー落ち。3Aでは基本的に投手に専念し34試合(先発1試合)に登板、41回2/3を投げて3勝2敗、防御率8,21。完全な二刀流ではなかったが打者として打率.278(18打数5安打、1本塁打)とまずまずの成績を残したが、SDからの契約延長のオファーはなく、ワールドシリーズ後にFA。2018年MILとマイナー契約合意報道では今後は投手を断念し、捕手に専念するという。
そんな中、大谷選手に続く二刀流としてMLBデビューが期待されるのがタンパベイ・レイズ傘下のブレンダン・マッケイ選手であろう。
ニューヨーク・ペンリーグ/New York-Penn League所属のハドソンバレー・レネゲーズ/Hudson Valley Renegadesにてデビューを果たしたブレンダン・マッケイ選手(左から打者・投手・一塁手として出場)
2017年ドラフトでレイズからメジャー全体4位で指名されたマッケイ選手。大谷選手より1歳若い22歳で、身長188センチ体重96キロの左投左打。打者として出場するときは一塁を守る。TBは契約当初からマッケイ選手を投打二刀流選手として育てることを表明。
昨年、マッケイ選手はショートシーズンAでデビュー。ショートシーズンAは階層で言えば4軍、その名の通り6月から8月までの短いシーズンだ。今年は1Aからスタートし、MLB昇格は2019年と予想されている。彼は大谷選手とは異なり、MLBの慣習通りマイナーからキャリアを積み上げることになる。これはTBがマイナー組織を挙げて慎重な育成方法をとっていることが伺える。
昨年のショートシーズンは基本的にルイビル大学時代と同じ調整方法を試した“テスト期間”で、今シーズンはそこから得られたデータとマッケイ選手自身からの情報を基に修正した投打二刀流の調整方法を試す本格的なスタートになる。一塁を守るマッケイには大谷選手にはない守備の負担がある。一方で大谷選手はその俊足も高く評価され、ランナーとしての役割も期待されているが、マッケイはそうではない。同じ投打二刀流ではあっても、大谷選手とマッケイ選手ではチーム内の役割は微妙に異なる。当然、調整方法も異なってくるであろう。
さらに、既にMLB屈指のスーパースターになってしまった大谷選手はすぐにでも結果を求められるのに対し、マッケイ選手には目先の結果に左右されることなく、ゆっくり時間をかけて成長することが許されるメリットがある。
ほぼ同い年のこの2人。長い目で見て一体どちらの選手が二刀流の結果を出すのか。選手2人だけの挑戦にとどまらず、LAAとTBの組織を挙げて試みは始まったばかりだ。また、素晴らしい二刀流育成プログラムを構築した北海道日本ハムとマッケイ選手の育成プログラムを構築中であるTBの対比も今後興味深いものになるであろう。
大谷翔平(北海道日本ハム→LAA)
現在、MLBでTwo-way player(二刀流選手)として、その地位を確立し始めている大谷選手の活躍は、本人の才能と努力の賜物であることは間違いないが、そのロードマップを示した北海道日本ハムと栗山英樹監督の優秀なプログラム、マネージメントがあってこそのものである。今後、二刀流選手が誕生していくのであれば北海道日本ハムと栗山監督が示したシステムが模写されていくこともあろう。
奇しくもその大谷選手と同時期の2013年にCINへ入団したマイケル・ローレンゼン投手はカリフォルニア州立大学フラトン校でリリーフ投手兼外野手として活躍し、MLBでも二刀流の野望を抱いていた。
マイケル・ローレンゼン #50→2015 #21→2016~
しかし、現在はリリーフ投手に専念し「可能性さえなかった。考えようという気さえなかったぐらいだ」と語ったことがある。とは言え2015年には36打数9安打で打率.250・4打点、2016年8月19日LAD戦(@グレート・アメリカン・ボール・パーク)には本塁打を放つなど非凡な打撃センスを披露している(2017年に1本塁打を記録)。そんな彼がなぜ早々と二刀流を断念せざる得なかったのか?
LAD@CIN: Lorenzen pitches scoreless relief, homers
推測に過ぎないがCINでは北海道日本ハムのような二刀流育成プログラムを構築できず、挑戦どころか、どのようにハンドリングするべきか分からなかったのだろう。素晴らしい二刀流プログラムを構築した北海道日本ハムという球団に入団し、現在二刀流として活躍する大谷選手と比較すると、それに挑戦することすらできない球団に入団した事自体が不運だった。しかし、ローレンゼン投手が入団した当時では何か新しいことにチャレンジする勇気と先見の明がある球団がなかったのも事実であろう。
同様に二刀流挑戦を断念せざる得なくなった選手として、今シーズンMILとマイナー契約を結んだ、前SDのクリスチャン・ベタンコート捕手。
走者は#10 ジャスティン・ターナー(LAD)
2016年に捕手登録ながらセットアッパーとして2試合に登板。いきなり最速96マイル(約155キロ)の速球と54マイル(約87キロ)のナックルボールなどを披露し、大きな話題となった。(他にも二塁手、左翼手でも出場あり)
2017年は元北海道日本ハムのパドレス・グリーン監督が同選手を本格的に二刀流として起用することを明言。しかし、プレシーズン戦から精彩を欠き、開幕後はセットアッパーで4試合に登板したが、3回2/3を投げて9失点(6自責)、8四球、2三振、防御率14,73。野手では先発出場はなく、代打などの途中出場で打率.143(7打数1安打、3三振)と結果を残すことなく、4月下旬にマイナー落ち。3Aでは基本的に投手に専念し34試合(先発1試合)に登板、41回2/3を投げて3勝2敗、防御率8,21。完全な二刀流ではなかったが打者として打率.278(18打数5安打、1本塁打)とまずまずの成績を残したが、SDからの契約延長のオファーはなく、ワールドシリーズ後にFA。2018年MILとマイナー契約合意報道では今後は投手を断念し、捕手に専念するという。
そんな中、大谷選手に続く二刀流としてMLBデビューが期待されるのがタンパベイ・レイズ傘下のブレンダン・マッケイ選手であろう。
ニューヨーク・ペンリーグ/New York-Penn League所属のハドソンバレー・レネゲーズ/Hudson Valley Renegadesにてデビューを果たしたブレンダン・マッケイ選手(左から打者・投手・一塁手として出場)
2017年ドラフトでレイズからメジャー全体4位で指名されたマッケイ選手。大谷選手より1歳若い22歳で、身長188センチ体重96キロの左投左打。打者として出場するときは一塁を守る。TBは契約当初からマッケイ選手を投打二刀流選手として育てることを表明。
昨年、マッケイ選手はショートシーズンAでデビュー。ショートシーズンAは階層で言えば4軍、その名の通り6月から8月までの短いシーズンだ。今年は1Aからスタートし、MLB昇格は2019年と予想されている。彼は大谷選手とは異なり、MLBの慣習通りマイナーからキャリアを積み上げることになる。これはTBがマイナー組織を挙げて慎重な育成方法をとっていることが伺える。
昨年のショートシーズンは基本的にルイビル大学時代と同じ調整方法を試した“テスト期間”で、今シーズンはそこから得られたデータとマッケイ選手自身からの情報を基に修正した投打二刀流の調整方法を試す本格的なスタートになる。一塁を守るマッケイには大谷選手にはない守備の負担がある。一方で大谷選手はその俊足も高く評価され、ランナーとしての役割も期待されているが、マッケイはそうではない。同じ投打二刀流ではあっても、大谷選手とマッケイ選手ではチーム内の役割は微妙に異なる。当然、調整方法も異なってくるであろう。
さらに、既にMLB屈指のスーパースターになってしまった大谷選手はすぐにでも結果を求められるのに対し、マッケイ選手には目先の結果に左右されることなく、ゆっくり時間をかけて成長することが許されるメリットがある。
ほぼ同い年のこの2人。長い目で見て一体どちらの選手が二刀流の結果を出すのか。選手2人だけの挑戦にとどまらず、LAAとTBの組織を挙げて試みは始まったばかりだ。また、素晴らしい二刀流育成プログラムを構築した北海道日本ハムとマッケイ選手の育成プログラムを構築中であるTBの対比も今後興味深いものになるであろう。