こんばんは。
今夜は雨です。明日は上がると良いですね。
喘息の咳き込みが、まだ治らないので、ちょっと苦しんでます。
風邪はひきはじめが肝心です。
お気をつけください
小説 小松原法難 3
目がかすむ。肺腑がのどから飛び出しそうだった。包囲の陣は段々縮まってきている。受けた傷は大したことはない。ただ体力はすでに限界を超えていた。
(師の御坊は?)
鏡忍房は日蓮を見やった。合掌の姿のままじっと東条景信と対峙している。何とか師の近くに辿り着きたいが後方の新手が次々に押し出してくる。どこかに隙を見いだしたかった。数を頼む連中には必ず驕りと油断が出てくるものだ。
左。申し分ない位置が弱い。ここを崩せば日蓮の側に辿り着く。躊躇はなかった。松の太枝はとうに折れてしまっている。倒した敵の槍を奪いとった。走る。影が割れた。そこに向かって一気につっこんだ。弦のきしむ音。左肩に冷たい衝撃が走った。右大腿部に同じ衝撃。渾身の力を込めて弓手に突き進んだ。
「いかん。鏡忍房、そこは罠じゃ!」
鏡忍房が搦め手と判断し突き進んだと同時に日蓮は大声で叫んだ。景信がゆがんだ笑みを浮かべたのが目に映った。次の瞬間太刀が振り下ろされてきた。
この時代の太刀は古太刀と言って兜を叩き割るか、或いは騎馬武者を倒すために馬の足を払うために作られている。現在のわれわれが想像する太刀とは少々違いがある。
一太刀。かわした。
「景信殿、念仏を捨てよ。一乗法華経に帰依するのじゃ」
「くそ坊主が、この期に及んで何を言う」
「弥陀にすがるのではない。己の心に佛の姿を見よ。景信」
「問答無用。今日の景信は景信ではない。閻魔の使いじゃ!」
景信の二の太刀が振り下ろされてきた。かわせない。思わず手鉾でうける。
立っているのがやっとだった。弓手のはなった矢の大方はうち払ったが深手を負った。意識が遠のく。景信の二の太刀が聖人を襲うのが見えた。
「師の御坊!」
声にならない声をあげ、鏡忍房は景信に槍を投げつけようとした。背後にわずかな気配を感じた。衝撃。何が起こったのか瞬時には分からなかった。ただ槍の穂先が胸から突き出ていたのが見えた。
「ま、まだ、まだ」
倒れるわけにはいかない、そんな思いと大聖人との出会いから今に至るまでの思い出が駆けめぐった。
(吉隆公は、左近殿はまだ来ぬか)
初めて弱気がはしったその瞬間だった。
声が聞こえる。
「聖人、聖人はいずこぞ」
賊の背後で騒ぎが起こった。工藤左近吉隆だった。地面が急に迫ってきた。薄れゆく意識の中で師の御坊は必ず助かる、鏡忍房はそう確信した。
今夜は雨です。明日は上がると良いですね。
喘息の咳き込みが、まだ治らないので、ちょっと苦しんでます。
風邪はひきはじめが肝心です。
お気をつけください
小説 小松原法難 3
目がかすむ。肺腑がのどから飛び出しそうだった。包囲の陣は段々縮まってきている。受けた傷は大したことはない。ただ体力はすでに限界を超えていた。
(師の御坊は?)
鏡忍房は日蓮を見やった。合掌の姿のままじっと東条景信と対峙している。何とか師の近くに辿り着きたいが後方の新手が次々に押し出してくる。どこかに隙を見いだしたかった。数を頼む連中には必ず驕りと油断が出てくるものだ。
左。申し分ない位置が弱い。ここを崩せば日蓮の側に辿り着く。躊躇はなかった。松の太枝はとうに折れてしまっている。倒した敵の槍を奪いとった。走る。影が割れた。そこに向かって一気につっこんだ。弦のきしむ音。左肩に冷たい衝撃が走った。右大腿部に同じ衝撃。渾身の力を込めて弓手に突き進んだ。
「いかん。鏡忍房、そこは罠じゃ!」
鏡忍房が搦め手と判断し突き進んだと同時に日蓮は大声で叫んだ。景信がゆがんだ笑みを浮かべたのが目に映った。次の瞬間太刀が振り下ろされてきた。
この時代の太刀は古太刀と言って兜を叩き割るか、或いは騎馬武者を倒すために馬の足を払うために作られている。現在のわれわれが想像する太刀とは少々違いがある。
一太刀。かわした。
「景信殿、念仏を捨てよ。一乗法華経に帰依するのじゃ」
「くそ坊主が、この期に及んで何を言う」
「弥陀にすがるのではない。己の心に佛の姿を見よ。景信」
「問答無用。今日の景信は景信ではない。閻魔の使いじゃ!」
景信の二の太刀が振り下ろされてきた。かわせない。思わず手鉾でうける。
立っているのがやっとだった。弓手のはなった矢の大方はうち払ったが深手を負った。意識が遠のく。景信の二の太刀が聖人を襲うのが見えた。
「師の御坊!」
声にならない声をあげ、鏡忍房は景信に槍を投げつけようとした。背後にわずかな気配を感じた。衝撃。何が起こったのか瞬時には分からなかった。ただ槍の穂先が胸から突き出ていたのが見えた。
「ま、まだ、まだ」
倒れるわけにはいかない、そんな思いと大聖人との出会いから今に至るまでの思い出が駆けめぐった。
(吉隆公は、左近殿はまだ来ぬか)
初めて弱気がはしったその瞬間だった。
声が聞こえる。
「聖人、聖人はいずこぞ」
賊の背後で騒ぎが起こった。工藤左近吉隆だった。地面が急に迫ってきた。薄れゆく意識の中で師の御坊は必ず助かる、鏡忍房はそう確信した。
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