Quelque chose?

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「ビルマの竪琴」

2020-02-16 | 本・映画・テレビ
竹山道雄「ビルマの竪琴」を読んだ。
今まできちんと読んだことがなかったのだが、数年前にヤンゴンを訪れた時に話題になったこともあり、「水島上等兵」の話を読んでおこうと思ったのである。

 
この物語は、こども向けの読み物として書かれ、昭和22−23年に「赤とんぼ」という雑誌に連載されたものである。敗戦の前後、ビルマ戦線で戦い、捕虜となり、あるいはビルマの地に残ることとなった日本兵の物語である。

改めて驚くのは、著者の竹山道雄氏は、ビルマに行ったことがないままこの物語を記したということだ。今であればもちろんミャンマーへの観光旅行も、ネット検索もできるけれども、
敗戦直後である当時は、ネットどころか携帯電話すらない時代である。
(今となれば、敗戦と言っても、どこかで戦争があったんですか?と聞かれるに違いない)

しかしこの本の文章からは、戦地の悲惨さはもちろん、ビルマという南の国--経験な仏教国、おおらかな国民、緑豊かな国土、香り立つドリアンなど--の風景が見事に浮かび上がってくる。

ビルマは平和な国です。弱くまずしいけれども、ここにあるのは、花と、音楽と、あきらめと、日光と、仏様と、微笑と・・・(本文より)

童話であるから、もちろんいくらか(というより多分に)御伽噺風になっているが、
兵士として人間として、苦難を乗り越え悟りを開いたと言える水島上等兵、その竪琴の響きはビルマから海を越えて日本の、現代の我々にまで響いてくるようだ。

いずれ改めてミャンマーを訪れてみようかと思った。