鏡海亭 Kagami-Tei  ウェブ小説黎明期から続く、生きた化石?

孤独と絆、感傷と熱き血の幻想小説 A L P H E L I O N(アルフェリオン)

生成AIのHolara、ChatGPTと画像を合作しています。

第59話「北方の王者」(その1)更新! 2024/08/29

 

拓きたい未来を夢見ているのなら、ここで想いの力を見せてみよ、

ルキアン、いまだ咲かぬ銀のいばら!

小説目次 最新(第59)話 あらすじ 登場人物 15分で分かるアルフェリオン

『カイス・ブリッツ』の魅力は、カイ(怪異)にあり?

「転生したら、そこは《昭和》でした!?」――本ブログの連載小説『カイス・ブリッツ』の最新話が、昨日6月10日の早朝にアップされました。久々の更新、いかがだったでしょうか。

さて、主人公クナンをはじめとする「転生者」たちと並んで、『カイス・ブリッツ』のもうひとつの主役といえば、様々な「カイ(怪異)」たちです。時には強敵として登場人物たちの前に立ちはだかり、時には心強い味方として登場人物たちと共に戦う――そんなカイたちは、大別すると5つの種類に分かれています。今回は、その5種類の特徴を画像で紹介です。

 

1.アヤカシ

まずは、生き物が妖力を得てカイとなった「アヤカシ」です。人を化かす狐や狸、あるいは化け猫といった妖怪たちが、その典型的なイメージでしょうか。最新話では、クモと狼が合体したようなアヤカシが、火美名ゆきみを襲っていましたね。主人公の仲間になるイタチの妖怪(獣人?)「ナガレ」もアヤカシです。アヤカシには比較的下級のカイが多いと思われますが、中には九尾の狐のような強大な妖怪もアヤカシに属することになります。狐の大妖怪は、本作にも出てくるのでしょうか。

 

2.ツクモ

アヤカシが生物から変化(へんげ)したカイであるのに対し、ツクモは無生物から変化したカイです。たとえば、いわゆる「唐傘お化け」のように人間の使っていた道具が魂を得てツクモになったものと、岩石のような自然物に魂が宿ったツクモが、代表的だと思います。小説本編の中ですでに登場している例としては、黒衣の糸使いヒビキに従うカイである「オトギリ」が、三味線から生まれたツクモです。また、主人公クナンの仲間になるカイとして、刀に魂が宿った(いわゆる「妖刀」の類?)「大刀天下叢雨(ダイカタナ・テンゲムラサメ)」も強力なツクモです。道具から生まれたツクモは、一方で人間に愛され人間を愛するものと、他方で持ち主の恨みや邪念がこもった凶悪なものと、極端な二つの存在に分かれるようです。

 

3.ゴースト

三つ目の種類は、ゴースト、文字通りの幽霊です。『カイス・ブリッツ』の世界の住人たちが、この世やそこに生きる者に対して強い執着を抱いたまま亡くなった場合に、ゴーストとなるようです。ゴーストは実体を持たず、またしばしば物理法則を無視した超常現象を起こせるため、一般にカイとしては手強い部類に入ります。「闘師」ではない普通の人間がゴーストに打ち勝つことは、ほぼ不可能でしょう。他の種類のカイ以上に、人間に対して憎しみを抱いていることも多い、恐ろしい相手です。ちなみに主人公クナンの仲間になるカイの中では、一見すると愛らしい少女の姿をしている「サワコ(佐和子)」がゴーストタイプであり、強力な結界を張る能力をもっています。

 

4.スピリット

これまでのアヤカシ(元は生物)、ツクモ(元は無生物)、ゴースト(元は人間)がいずれも現実世界の存在がカイとなったものであるのに対し、スピリットは、『カイス・ブリッツ』の世界に関与しながらも、最初から物理的な世界あるいは現実世界を超越した高次の霊的存在です。たとえば妖精や精霊、あるいは多神教の土着の低級神にあたるようなものが、スピリットの代表例です。スピリットは他の種類のカイよりも総じて強力であり、人間にも容易には従わないため、これを操れる闘師も限られています。流界波止場の闘師たちの中では、コトネ女将がスピリットの「アシヤミ」と契約を結んでおり、その正体は、とある山の神です。主人公クナンの仲間にいずれ加わる蛇神「ビャクコウ」もスピリットですが、人間に対して憎悪を抱いた邪神と化してしまっているため、そう簡単には味方にならないでしょう。

 

5.ミトス

カイの中でも特に正体不明のグループであり、しかしまた、物語『カイス・ブリッツ』を象徴するような存在である「ミトス」が、今回紹介するカイの最後の種類となります。ミトスは、元々はこの世に存在していません。都市伝説や民間伝承などに登場する架空の存在が、それを信じる人々の情念を承けて現実のものと化した結果、ミトスが生まれます。ミトスの代表例は、本編の初回でも(本体ではなく仮分体が)登場した「マスクド・レディ」すなわち「口裂け女」(!)です。基本的にミトスは、その存在を知る人の数が多いほど強い力を得るため、マスクド・レディは最強のミトスのひとりではないかと言われています。なお、闘師たちが語るところによれば、ミトスは、他のカイと比べて自身の「心」をほとんどもっていないように思われ、意思のない機械のような雰囲気であることが多いとのことです。クナンの最初の仲間になるカイ「真夜中の交差点に立つ白い女」はミトスですが、一体、どのようなキャラクターなのでしょうか。

 

実は、以上に挙げた5つの種類には当てはまらないカイも稀にみられるようです。しかし当面は、これらの種類のカイたちが物語を彩ってくれることでしょう。不気味で怖いけれど、でも不思議な魅力をもつカイたちも、『カイス・ブリッツ』の面白さのひとつです。

本日もブログ「鏡海亭」にお越しいただき、ありがとうございました!
次回もお待ちしております。

ではまた。

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カイス・ブリッツ 第1話「異界の果て」(2)――2人目の転生者に迫る危機


第1話 異界の果て(2)


 
 火美名ゆきみは、走っていた――ポニーテールの髪を揺らしながら、恐怖と困惑に塗りつぶされた面差しに汗が滲み、極度の緊張ゆえか眼鏡のレンズを通した視野がたちまち狭くなってゆくのを感じながら、彼女は一目散に駆け抜けた。
「何なのよ、何なのよ、これは!?」
 早くも脚が突っ張ってきている。三十路に入って久しいとはいえ、火美名はまだまだ若く、体力には多少の自信があったはずだ。本来なら、だが。
「どうして、徹夜明けの社畜を全力疾走させるかな、空気読めよ!」
 今朝、眠れず夜が明けて、ただ惰性でマンションの階段を降り、ふらふらと歩いて駅に向かい、意識も朦朧とした調子でホームに辿り着いた。それが今日の通勤時だけの話ならともかく、今週に入ってから、ほとんど毎日だ。もし火美名の姿を知人が見たなら、思わず彼女の幽霊ではないかと感じたかもしれない。それほどまでに彼女は疲弊し、やつれきっていた。空の色も、街路にいま咲いている花々の名も、道ゆく人々の様子も、すべてがどうでもよく、たとえ彼女の視界には入っていても、おそらく何ひとつまともに認識されていなかった。
 ーーたしか、ホームに入ってくる電車をぼんやりと見つめていたら。近づいてくる電車の音が響いて、何というのか、光が、見えたとき、その瞬間に身体が前に動いたっていうのか。そして気づいたら……。
 あのようなものを、いわゆる《フラッシュバック》とでもいうのだろうか。あのとき彼女の中で反芻されたこと。《臨機応変》や《以心伝心》といった言葉でもって、自身の無計画ぶりや日頃の意思疎通の拙さを棚に上げて事を進めようとする上司から、例によって今日の朝にも、とあるプロジェクトに関してあまりに無理筋で無神経な方針変更があった。しかも、なぜこちらが罵倒され、叱責されないといけないのか。もう付き合いきれない。いわばそれは、無能な将のもとで、積み上げてきたこれまでの戦いの意味を一方的に、唐突に否定され、無意味な討ち死にへと強いられる兵のような気分だ。
 ――何で私、あそこで飛んだのかな。別に死にたいなんて、少しも……。分からないけど、流された、みたいに。たしかに一瞬は、躊躇した気もするのだけど。
 そこまでは覚えている。だが限界を超えてしまうとは、こうも突然、こうも抗い難いことだったのか。この世界と己とをつなぐ生命の糸が突発的に切れたような、何か抗い難い力に押し流されるようにホームへと飛び降りた衝動的行動は、火美名自身からしても驚くほど現実味の無いものだった。彼女は勝手に思い込んでいた。もしも、自殺できるほどの、何よりも恐ろしい死に向かえるだけの《勇気》があれば、生きて開き直って何でもできるのではないかと。それなのになぜ人は死を選ぶのかと。色々とその理由はあるだろう。だが少なくとも彼女の場合、あの世へと誘う死神は本当に不意に舞い降りた。事実としては、追い詰められてきた彼女が何らかの《限界》を超えたのだろうが、それでも本人の気持ちからすれば、一線を超えたことに対する自覚は曖昧であって、ほとんど無意識のうちに、ある意味で決断や選択の余地なくやってきたのだ。
 ――そういえば、時々、《人身事故》で電車が遅れると、私だって、あんなに不満をぶつけていたのに。なのに、まさか、やっちゃった……。
 気がつけば、入構してくる電車に吸いつけられるかのごとく、ホームに飛び込み、一瞬、身体が宙に浮いた。そのあとは自分でも分からない。きっとすごく痛かったのだろうが、覚えていない。だが、なぜ今、意識がある? それにこの生々しい感触は。足の裏で大地を踏みつける、はっきりとした感覚は、一体どういうことなのだろう。
「あぁ、もう、悪い夢! でも、夢なわけがない、こんな現実そのものの感覚。もしかして……ここ、異世界って、やつ?」
 万が一にも、これが、近年はやりのいわゆる《異世界転生》物の小説の中だったなら、もう少し《転生者》に優しい状況で物語が始まっただろうにと、意味のない妄想が瞬時に浮かんで消える。彼女は自嘲気味に口元を緩めた。
「はは、チートも無双も、ありゃしないって?」
 緑の壁のように濃く、厚く茂った樹木や藪が、彼女の左右を埋め尽くしている。その間を伸びる一本の隘路は、獣道も同様、心細いほどに狭く、足元も悪いにせよ、妙に人工的に周囲の空間とは明瞭に切り分けられている。
「ここはどこ? 何で、いきなり追いかけてくるの」
 必ずしも動きやすいとは言えない、いや、少なくとも走ることには向かないであろうグレーのスーツをいつになく窮屈に思いつつ、慣れない荒れた道に足をとられそうになりながら、火美名は死に物狂いで逃げていた。わずか数メートルほど後ろのところまで、何本もの脚をもった姿勢の低い影が、ひとつ、ふたつ、併せて5体ほど迫ってくる。比較的長身の彼女と、ほぼ同じ体長をもつ蜘蛛のような生き物だ。いや、毛の生えた焦茶色の胴体は、たしかに地を這う蜘蛛のようだが、そこには不似合いな、犬のような、あるいは狼を思わせる顔が付いている。火美名自身には分からないだろうが、それらは。
 
 明らかに、《カイ(怪異)》だ。
 
 カイたちは野犬よろしく吠えたて、その一方、ある種の衛生害虫を連想させる動きでカサカサと地面を這い、みるみる迫ってくる。
「気持ち悪っ!!」
 カイの動作に思わず身震いした火美名は、これによって注意を一瞬奪われたため、地面に横たわるツタに足首を引っ掛け、前のめりに転んでしまった。右足の靴が脱げ、膝から血が滲んでいる。そのとき……。
 
 ――ゆきみちゃんなら、きっとやれるよ。ママの自慢の子だもの。
 
 刹那の時間を争う今の状態で、彼女の脳裏に不意に言葉が浮かび上がった。火美名は無意識に顔を歪め、吐き捨てるように言った。
「そうやって、いつも勝手に期待して、押し付けないでよ」
 憎悪の言葉を口にしたとき、そのたった一瞬で火美名に追いついたカイの一匹が、牙をむき出しにして飛び掛かってきた。相手は、ろくな知性ももたない低級の《アヤカシ》タイプのカイにすぎないが、何も知らない突然の転生者にとっては手強い相手だ。戦慄のあまり、もはや痛みもどこかに飛んでいってしまい、彼女は悲鳴とも雄叫びともつかぬ声で叫びながら、脱げた靴の隣に転がっていた大きな石を両手で持ち上げ、目の前のカイに向けて打ち下ろした。嫌な音と感触を残し、カイは頭を潰されて倒れた。蜘蛛のような脚は痙攣したように動いているが、もう瀕死の状態だろう。
「そうよ、これもみんな、今日に至るまで勝手なレールを敷いて無理強いした、あんたのせい。何が母親よ。おかげで私は、とうとう、こんなわけのわからないところまで突き落とされた」
 火美名の手は返り血で真っ赤に汚れている。たとえ相手が異形の存在であろうと、ある程度以上の大きさの生き物を躊躇無く叩き殺すことは、普通の人間には簡単ではなく、どこかで無意識に手加減をしてしまうかもしれない。だが、命の危険を本能の次元で確信したからだろうか、彼女の反抗は、リミッターが外れたかのように凄まじかった。偶然に呼び起された、母に対する底知れない憎悪も加わって、彼女は半狂乱で石を振りかざしている。 
 さらに1匹のカイを倒したとき、火美名は石を手から落とした。それを拾う余裕さえない彼女は、錯乱状態も同然に、周囲の小石や木の枝を手当たり次第に拾い、残るカイの群れに投げつける。彼女からの反撃に驚いたのか、仲間が2匹も倒されて恐れをなしたのか、若干怯んだようにカイたちの動きが悪くなった。その隙に、火美名は一目散に逃げ出した。脱げた靴を履くことはもちろん拾うことすら忘れ、足が傷だらけ、血だらけになっても、彼女は駆け続けた。
 奥深い森の小径がさらに細くなり、両側から寄せる木々を半ばかき分けるようにして進み続けた先、視界が突然に開ける。忽然と広がる空間へと、勢い余って転がるように火美名は飛び出した。
 その場の異様な雰囲気ときたら、それは、半狂乱の彼女をも有無を言わさず我に帰らせるほどだった。まるで辺りの空間が凍り付いたのかと思わせる不気味な静けさと、そして肌を刺すような、どのように表現すればよいのだろうか――得体の知れない何かの気配に呑み込まれそうな、圧倒的な濃密さをもって四方から迫ってくる独特な空気は、もはや液体ではないかと錯覚しそうなくらい、否定し難い実在感を突き付けてくる。
「あれは――お城? 違うか。かなり大きいけど、こんな場所に誰かの屋敷が……」
 自身の背丈よりも高い板壁が張り巡らされた向こうに、層を成し、黒々とそびえる館。先ほどからずっと何かの存在を感じるものの、建物の周囲には人の姿かたちも見当たらず、獣や鳥が動く音さえもしない。ただ、気が付けば、彼女を追いかけていたカイたちの姿もなかった。まるで、この黒い館を前にした途端、逃げ出したかのように。あるいは――あまり考えたくないことだが――彼女をここまで追い立てるという役割を果たして、《猟犬》役のカイたちが帰ったとでも?
 実際の高さ以上に大きくそそり立って見える黒い建物は、こちらを押し潰そうとでも言わんばかりに、明らかに危険な空気感に満ちている。それを目の前にした火美名は、金縛りにあったも同然に立ちすくんでいた。
 ――あそこに入っちゃだめ。二度と出てこれない気がする。でも、どうして……。
 自身の心の中で感じた本能的な警告とは裏腹に、彼女はふらふらと門をくぐり、眼鏡の奥で目を虚ろに細めながら、いつの間にか、吸いつけられるように館の玄関前にたたずんでいた。
「どうして、こんなに中が見たいと思うんだろう? 何だか、我慢できない。不思議な気持ち」
 つい今しがたまで掃除が行われていたのかと錯覚しそうなほど、入口周辺は見事に掃き清められ、柱や床は艶めくほどに磨き上げられている。玄関の格子の向こうに広がる薄闇に視線を泳がせ、不安げに一瞬立ち止まるも、火美名は抗し難い様子で、魔の棲まう館の中へと遂に歩みを進めた。
 
 そこに何が待っているとも知らずに。
 
 【次回に続く】
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「辛口」な異世界に転生、いきなりハードモード!?

何とも過酷そうな今回のタイトル画像は……本ブログの連載小説『カイス・ブリッツ』のPR用ですね。ノスタルジックな「昭和」風の異世界にて、二人目の転生者・火美名ゆきみの辿る運命とは。彼女を待ち構える謎の黒い館の秘密とは!?

『カイス・ブリッツ』最新話、明日6月9日(日)の深夜に更新予定です。
明晩、再び、カイ(怪異)が来る!

鏡海

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再び、カイ(怪異)が来る! 連載小説『カイス・ブリッツ』近日更新予定

「転生したら昭和でした!?」の連載小説『カイス・ブリッツ』、初回の連載時から3か月近くが経過しようとしておりますが……現在、第2回目の更新に向けて執筆中です。


これが初回時のタイトル画像でした。溢れるカオス!(笑)

描かれる転生者の二人目、火美名ゆきみ(右)と、いまだ動き出さない真の主人公、禍刻久南(左)。次回からの更新内容においては、当分、火美名を主人公とする視点で物語が進みます。いや、この画像、久南がイケメン過ぎ(苦笑)。実際は、もっとさえない感じなのですが……。


カイス・ブリッツの舞台は、私たちの「昭和」の平行世界?
まだすべては謎に包まれています。

引き続き、『カイス・ブリッツ』の更新情報をお待ちくださいませ。
さらに連載小説『アルフェリオン』の名場面画像集にも、ご期待ください。同作の小説本編の更新も(!)。

本日も鏡海亭にお越しいただき、ありがとうございました。いつも感謝です。
ではまた。

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「転生したら、昭和かよ!?」 もうひとつの連載小説『カイス・ブリッツ』

この間、本ブログでは連載小説『アルフェリオン』の名場面画像集の企画を、AIさんの力を借りてやっておりました。ところが、ここ数日のところで実は、もうひとつの連載小説『カイス・ブリッツ』に関する動きも進んでいます。

衝撃の第1話の公開後、『アルフェリオン』に関する上記の名場面集企画のため更新の止まっていた『カイス・ブリッツ』でしたが……再び、徐々にですか再始動しつつあります。

『カイス・ブリッツ』第2回は、2人目の転生者・火美名ゆきみの物語。第1回における1人目の転生者の理不尽な最期に続いて、ゆきみを襲う「迷い家」の誘惑と呪い

ChatGPTさんにお願いして、いくつかのイメージ画像を生成してもらいました。

ブラックな職場に勤めて疲弊し、私生活でも何の潤いも感じられないゆきみの日常。

そんな中で命を失った彼女は、この世界を、神を、憎む思いを最後に吐き出してしまった……。

その結果、彼女が生まれ変わった先は……。

報われなかった想いを受け継ぎ、君の一太刀に乗せろ。禍刻久南(まがとき・くなん 主人公)。
って、結局、私が書くと……『アルフェリオン』と同じく、「想いの力」を前面に出した暑苦しい燃え燃えの話になるのですよね(笑)。でも、良いではありませんか。せめて創作の世界でくらい、人の想いが叶えられる展開を。

本日も鏡海亭にお越しいただき、ありがとうございました。
次回もお待ちしております。
そして、良い週末をお過ごしください。

ではまた!

 

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カイス・ブリッツ 未使用画像・ボツ画像展(3)

こ、これは!? 連載小説『カイス・ブリッツ』関連のボツ画像あるいは未使用画像の蔵出し公開、本日は第3回目です。生成AIのDALL-E3(以下、ダリさん)、芸達者ですね。こんなタッチの絵も生成できるとは。

まずは昨日の続き、『カイス・ブリッツ』第1話(1)の場面から参りましょう。転生して間もなく、強力なカイに襲撃された水川を、通りがかりの糸使い・ヒビキが救います。そのシーンをダリさんに画像化してもらったところ……。


これはなかなか、迫力がありますが……衣装の色が違いますね。それに場所の設定も違っています。このススキの原野は、ヒビキが出てきた場面よりも後のところの舞台になります。残念ながらボツ。


ヒビキさん画像の二枚目。いや、ちょっと、のどかすぎるというのか、何かが違いますね。でも美しい夕暮れの図。

良い雰囲気、何とも幻想的ですけれど、この画像も色々と間違っています。右側に立つヒビキが、狐の面を被った戦士どころか、尻尾や耳まで生えて狐の獣人になっていますね(笑)。そして「仮面」が、左側のマスクド・レディに伝染しています。実際には、仮面ではなくマスクを被っているんですが(「口裂け女」ですから)。

 

続いては、第1話(2)に関する先行特集記事用に……と思って生成した画像から。

クナンと、ゆきみ。これは未使用ですが、第1話(2)のタイトル画像にも利用できそうな感じです。良いですね。


先ほど冒頭にあった画像です。これも、素晴らしいのですが……。手前のクナンの姿が変わり過ぎて、誰ですか?という感じになってますね。

異界に潜入!?(笑) アクション・ホラーっぽい感じでしょうか。しかし、こんなシーンはありません。

以上、ボツ画像・未使用画像とはいえ、画像そのものの出来具合は、さすがにダリさんというところでした。

 

 ◇

本日も鏡海亭を訪問いただき、ありがとうございました。
『カイス・ブリッツ』次回の更新に向けて、小説本編の執筆の方もぼちぼち進めております。

ではまた!

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カイス・ブリッツ 未使用画像・ボツ画像展(2)

連載小説『カイス・ブリッツ』の広報用としてAIが生成した画像のうち、ボツ画像あるいは未使用画像を蔵出し公開する企画、第二弾です。利用したAIは、ChatGPT経由でDALL-E3(以下、ダリさん)と、同じくChatGPTをGPTsでカスタマイズした小説広報支援AIのEditorial Oboro(以下、オボロさん)です。

まず冒頭のタイトル画像、まるでアニメの1シーンをキャプチャーしたかのようです(!)。ダリさん、さすがですね。異世界に転生して呆然とする図……というところでしょうか。実際には、これは水川がマスクド・レディ(「口裂け女」の都市伝説から生まれたカイ)から逃げ、ススキの原野に命からがら辿り着いた場面です。いや、良い絵なのですが、水川の描写が全く違っているのでボツになりました。

では、そのマスクド・レディ関連のボツ画像です。

今度はオボロさんが生成。良い感じの画像ですが、背景が昭和の日本風ではなくヨーロッパの農村風になってしまいました。口裂け……いや、マスクド・レディも、洋風ですね。

これも先ほどの画像と同様です。夕暮れという場面設定は合っているのですが……。

この画像も、小説本編の内容とは色々と違っています。まずとにかく、ハサミが巨大すぎ、直接的すぎますね。

やっと和風の背景の絵が生成されてきましたが、水川は、どうやら別のものと遭遇したようです。

アートに目覚めたオボロさん?(笑)。お話から読み取ったイメージを優先し、敢えて抽象的に描くモードがオボロさんには実装されているのですが、それを使うとこんな感じになります。夕暮れの中、迫る黒衣の女と、ススキ野原を駆ける水川?

な、何ぞ!? ファンタジー物のボス戦のような絵に……。マスクド・レディも、もはや魔王っぽい姿ですね。

マスクド・レディを振り切ったと思ったら……今度は日本人形の姿をした悪霊の群れに遭遇……の場面です。

ここまで、か……。水川の最期?

 ◇

劇的ながらも何だかズレている、しかしお蔵入りもそれはそれで勿体ない。そんな生成画像たちを展示する企画、いかがだったでしょうか。本日も鏡海亭にお越しいただき、ありがとうございました!

ではまた。

 

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カイス・ブリッツ 未使用画像・ボツ画像展(1)

転生したら「昭和」でした!?――そんなのありかの幻想小説『カイス・ブリッツ』、本ブログでの次回の更新が待たれます。同作の小説本文については鏡海が執筆しつつも、関連する特集記事用や広報用の画像については、生成AIのDALL-E3(以下、ダリさん)やHolaraさんに強力にサポートしてもらっています。

とても頼りになるAIさんたちですが、時には、ちょっとズレた(斜め上の?)感覚の画像を生成してくれたりもします(笑)。画像としては素晴らしいのですが……小説の内容とはちょっと違うような画像を、膨大に。
しかし、お蔵入りさせるには勿体ないので、そんなボツ画像や未使用画像の中からいくつか選んでお披露目です。先日公開された『カイス・ブリッツ』第1話(1)に対する、AIによる独自の解釈の世界をお楽しみください。


第1話(1)にて水川が転生した異世界、その雰囲気をダリさんはこんなふうにとらえているようです。残念ながら、水川は、このような都市の中に辿り着くことなく退場したと思われますが……。


同様の画像として、こんなのもありました。
なんとなく、かつて魔都として知られた九龍城塞の和風版?といったイメージも漂います。ダリさんの思い浮かべる『カイス・ブリッツ』の世界、荒廃した近未来の東洋風無国籍なスラム……ファンタジーというより、むしろSFの舞台でしょうか。

 

そうかと思えば、ダリさん、こんな絵も生成してくれました。

ただ、これは「荒れ果てた廃墟遊園地」を鏡海がプロンプトで意図的に指示した結果ではあるのですが。『カイス・ブリッツ』の世界のダークな一面を上手く表現してくれたと思います。これはボツ画像というより、まだ使用していなかっただけです。今後、こういう場面も登場しそうです。

 

『カイス・ブリッツ』小説本編の中で、異世界に転生した水川が色々と思い浮かべた連想がありました。それをダリさんに画像にしてもらったものを、いくつか。

田舎の祖父の家で見せてもらった昭和のモノクロ写真云々という場面がありました。これをダリさんに画像化してもらったものです。雰囲気は伝わってきますね。


同じく水川が想像した第二次大戦直後の日本のイメージ。ダリさんには、こんなふうに見えたようです。

 

夕暮れ迫る中、水川が広大な空き地を通って街に向かおうとした場面……のはずが、こんな絵に。

広大すぎだろ!!(苦笑)
それにこれは昭和というより、北斗の拳のような、核戦争後の未来世界のような感じですね。もしかして、多数の平行世界の中には、我々の昭和の経過とは異なり、このような未来を「昭和」が迎えることとなった世界もあったのでしょうか。かつてのアメリカとソ連(当時)の関係からすると、その可能性も……。

もっと広大すぎる例(!)


いや、この光景、別の意味で「異世界」ですね。

そして最後に、今回のタイトルに使われた以下の画像です。

おそらくは、作中における例の架空のゲーム「夢幻皇子」との関係性を意識しつつ、ダリさんが『カイス・ブリッツ』の世界観を表現した素晴らしい画像です。ただ、これでは、普通の「剣と魔法の異世界転生物」の世界になってしまいます(笑)。

こんな感じで、卓越した内容ながらもちょっと想像斜め上のボツ画像・未使用画像を公開いたしました。生成AIさんたち、いつもありがとう。『カイス・ブリッツ』の世界を、違った角度から楽しめる(?)素材になれば幸いです。

本日も鏡海亭にお越しいただき、感謝です。
今日(日付のうえでは昨日)は寒さがかなり戻りましたが、春はもうそこまで来ています。寒暖の差も激しい今日この頃、読者様方、何とぞご自愛くださいませ。

ではまた!

 

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ふたつの運命(連載小説『カイス・ブリッツ』)

こ、これは!!(笑) 本ブログで新たに連載が始まった小説『カイス・ブリッツ』、その次回予告のようなタイトル画像ですね。画像生成AIのDALL-E3(以下、ダリさん)の全力での寄与によって、何故かクナン君(向かって左側の人)が無駄にイケメン(!)、そして彼と背中合わせに描かれているのは、第1話(2)で現れる二人目の転生者、火美名ゆきみさんです。

なお、ダリさんやChatGPTの本体のほかに、GPTsの機能でカスタマイズした鏡海亭の広報支援AIたち、すなわち「Editorial Oboro」、「Enikuma」、「Prompt Summoner」という各AIさんたちも、今回、フルに貢献してくれました。

ネタバレというまでもなく、火美名が悲惨な最期を遂げるであろうということは、前回の一人目の転生者・水川さんのエピソードより推測されますが……ここまで主人公と運命が「重ならない!」という点を強調されると、哀しいですね。真の主人公クナン君に知られることもないまま、彼が助けにも来ないまま、ゆきみさんは不慣れな異世界において(水川さん同様)絶望の中で果てるという結末が頭に浮かんで離れません……。

でも、そんな火美名さんの思いを必ずクナンが果たす(宿命の象徴のような相手に一矢報いる)ということを丁寧に伝えて、今回紹介する諸々の画像をダリさんに生成してもらいました。

冒頭のタイトル画像と似たようなものとして、こんな絵も生成されました。

クナン君も、ゆきみさんも、実際よりかなり「盛った」美形に描かれていますね。


二人の伸ばした手が重ならないことを暗示するような画像。ここでも、無駄に男前なクナン(苦笑)。

 

悲惨な運命の中、ゆきみさんが誰かに必死に助けを求めている状況。
しかし、その声は、クナンには届いているようで届かない……。
ダリさん、本当にやりますね。この画像。ただ、本来はメガネをかけていないクナン君にまで、ゆきみさんの眼鏡が伝染してしまっているのが、少し惜しいですが。


これも上の画像と同じ方向性ですね。

 


これは、ちょっと絵柄が今までと違いますが、クナンとゆきみが共に戦っていたかもしれない……あり得たもうひとつの未来、可能性の分岐のひとつの結果を描いているようですね。

 

メガネが伝染したクナン君、無駄に素敵な画像、もう1枚です(笑)。

こちらも。

最後に、こんな画像も生成されました。ダリさんとしては、クナン君とゆきみさんをどうしても結び付けたいようですね(笑)。でも、それは叶わぬ願いです……。

以上、あたかも「心」があるのかと思わせるほどの、ダリさんによる情感豊かな画像生成を見せつけられた今回でした。『カイス・ブリッツ』の次回更新が待たれます。

本日も鏡海亭にお越しいただき、感謝です! 皆様、良い週末をお過ごしくださいませ。

ではまた!!

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冒険ファンタジーに付き物な旅の酒場・食堂を……

本ブログの新たな連載小説『カイス・ブリッツ』、3月8日(金)よりスタートしました!
次回の第1話(2)以降、主人公クナンの心強い仲間である流界波止場街の人々も徐々に登場してくるかと思います。中でも、上掲のタイトル画像のコトネ女将(画像手前)や、例の三人きょうだいの長女・マユミ(同じく画像奥)は、異世界からの転生者であるクナンを身近でサポートしてくれます。

コトネ女将の仕切る旅の宿「無名屋」の1階は大衆食堂(兼・居酒屋)になっており、波止場街の人々の社交の場でもあります。ここでクナンにも様々なキャラクターとの出会いがあることでしょう。そんな食堂の設定を進めるにあたり、イメージを膨らませるため、例によって生成AIのDALL-E3(以下、ダリさん)に協力してもらいました。

ダリさんが店内の想像図をいくつか生成してくれました。
これは今回のタイトル画像に出てきたものですね。

こんな感じの画像もあります。

「あの頃」の風景。懐かしい感じ。いや、あるいは今なお、こんなお店が、時が止まったようにひっそりと残っていることがあるような気もします。

昭和の日本風というよりは、ひと昔前の中国のお店っぽい雰囲気でもあります。
無国籍風なイメージで、なかなか面白いです。

こっちは居酒屋色が強いですね。

でも、ちょっと違うかな(笑)。


以下は、1階に食堂のある「無名屋」の画像を試しにダリさんに生成してもらったもの。いずれもボツになりましたが……味のある絵ではあります。


最後の1枚は、ちょっと不気味というのか、「カイ(怪異)」が出そうな建物ですね(笑)。

ダリさんの描く舞台設定はどれも魅力的で、『カイス・ブリッツ』の世界に関する想像が広がります。皆様にも味わっていただけましたら幸いです。

本日も鏡海亭にお越しいただき、ありがとうございました。
良い週末をお過ごしください。この土日は暖かくなりそうですね。

ではまた!

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二人目の転生者と迷いの館

本ブログで新たに連載が始まった小説、『カイス・ブリッツ』! 色々な意味でまさかの展開が続いた第1話(1)を経て、今日のタイトル画像は、次回更新分の第1話(2)の内容を先取りしています。


※以下、第1話(1)のネタバレが含まれます。まだご覧になっていない方は、ご注意ください。


第1話(1)では、転生者・水川哲慈(みずかわ・てつじ)が、次から次へと襲い掛かる「カイ(怪異)」の前に無残な最期を遂げました。主人公(のように見えた人)がいきなり退場するとは……衝撃でした。不思議でノスタルジックなカイス・ブリッツの世界が、その一方で容赦なく過酷であることを、彼は身をもって示したといえるでしょう。

そして次回の第1話(2)では、新たな転生者・火美名ゆきみ(ひびな・ゆきみ)が、水川からバトンを受け継ぐかのように登場します。今回は、この火美名さんにかかわる構想を、生成AIのDALL-E3(以下、ダリさん)に画像化してもらいました。

これは、あくまでイメージでしょうか。実際に、こんなに多数のカイに遭遇したら助かりようがありません。

昨晩の更新によれば、次回には転生者が「迷いの館」に魅入られるということでしたが……。それはつまり、火美名さんのことを指しています。冒頭の画像、彼女が辿り着いたところが「館」ではなく「城」のようになってしまいました(苦笑)。

その他にダリさんが生成してくれたヴァージョンをいくつか。

最後の画像は、ちょっと、いや、かなり違う感じです。カイ、出まくりですね(笑)。

 

昨日のように、館の中に入っていきます。


キャラの絵が、眼鏡もなく、髪型も変わって、違う人になっていますが(汗)、雰囲気は出てますね。ホラーゲームの一場面のようです。

 

不気味な館の中で、彼女は何を見るのか!?

 

……こ、これは? ダリさんが生成した謎のイメージ画像です。

彼女は、生き残ることができるのでしょうか?

そういえば、第1話(1)にて、亡くなった水川(の魂?)を正体不明の闇の「乗り手(ライダー)」が回収していました。あれには、どんな意味があるのでしょう。実は重大な伏線です。そして、火美名の場合にはどうなるのか。そもそも、あのライダーの正体は何であり、何のために活動しているのか。いまのところ、謎ばかりの『カイス・ブリッツ』です。

本日も鏡海亭にお越しいただき、ありがとうございました。
第1話(2)の更新をお楽しみに。
ちなみに『アルフェリオン』の更新も準備しております。こちらも御期待ください。

ではまた!

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ブログ上で「迷いの館」ミニ・ツアー?

こ、これは……。ノスタルジックな様相ながらも、微かに不気味さが漂いますね。先日、本ブログにて連載が始まった小説『カイス・ブリッツ』、次回に向けてただいま構想中です。上記のタイトル画像は、実は次回の物語の内容と関係があります。「迷い家」とありますが、これは、柳田國男の『遠野物語』にあるような東北の民間伝承的なそれではなくて、たしかにその雰囲気は微妙に取り入れながらも、むしろ都市伝説的な「迷い家」の色彩が濃いものです。

先日公開された『カイス・ブリッツ』の第1話(1)では、一見すると主人公に見えた(?)水川哲慈が、この物語の異世界への扉を開き、読者とともに謎めいた世界に分け入っていく役割を果たしました。しかし、そんな彼が遭遇したのは……(詳しくは本編をご覧ください)。次回の第1話(2)でも、別の転生者がカイス・ブリッツの世界に転生し、奇怪な出来事に遭遇することになります。それが「迷い家」にモチーフを得た謎の館なのでした。

次回の構想に当たって、その謎の館のイメージを深めるために、生成AIのDALL-E3さん(以下、ダリさん)と対話しつつ、画像を色々出してもらっています。以下の内容が小説本編にどこまで反映されるかは分かりませんが、読者の皆様とともに、ダリさんの生成した迷いの館をのぞいてみましょう。ブログ上で体験するミニお化け屋敷ツアーといった感じですね(笑)。ただ、以下、お化けは勿論、キャラクターは一切出てきません。誰も居ないのが、それがまた不気味なのです。

 

《ちょうどいま深夜です。苦手な方にとっては、以下の画像を夜に独りでご覧になるとちょっと怖いかもしれません》

 

森の奥に、みるからに怪しげな館があります。

 

こんにちは~、誰かいらっしゃいませんか?


……って、何の反応もない、誰も居ない奥深い廊下。
あまり中に入りたくありませんが。

 

部屋のひとつに入ってみましょうか。

立派ですね。誰が住んでいた、いや「棲んで」いるのでしょうか。

 

別の部屋にも、誰もいませんね。奇麗に整えられていますが……。右奥の人形が何となく不気味。


冒頭の画像にあった部屋です。もし、テレビに、何かが急に映ったら……怖いですね(苦笑)。

 

さらに進んでいくと、書斎のような部屋に出ました。


もしかして、館の主人が使っていた(使っている?)部屋なのでしょうか。
探索を続けましょう。

 

これは、画像が生成されたのを見た瞬間、ゾクっと来ましたね。中央から奥にかけての光の具合が絶妙に怖いです。見えない何かがいる感じですね。だんだん、館が本当の顔を見せ始めたのか……。

な、何ぞ? やはり、この館には誰か、何かがいるようです。

お風呂前の手洗い場? シャレにならん気味の悪さですね(!)。

 

さらに奥へ向かうと、秘密めいた部屋が見つかりました。

何かの儀式が行われていたのでしょうか?

ここが最奥? いや、周囲の壁や床を調べてみると……。

 

隠し部屋がありました!! 急に黒魔術的なファンタジー世界に?(笑)

中央の魔法陣からどこかに転移するようです。行ってみましょう。

 

こ、これは……!!

一体、ここで何が!?と息を呑んだとき、あなたの背後には……。
ギャー!!(笑)

 ◇

と、こんな感じで悪夢の迷いの館のイメージを膨らませていました。お話の構想中、頭に浮かんだものをただメモするだけではなく、ダリさんに絵にしてもらうのです。それを見て、想像がいっそう広がったり、あるいは、思ってもみなかった方向にヒントが示されたり。今回は建物内部の見学(?)だけでしたが、実際の小説本編では、迷いの館の中には様々な「カイ(怪異)」が出没することになるかもしれません。

それで……次回、肝心の主人公のクナン君はどうするのか?
いや、実は先ほども書いたように、迷いの館に誘われ入り込むのは、クナンではありません。別の転生者です。前回の水川のように、次回はその転生者が主人公っぽい視点を受け持つことになるのでしょう。クナン君は、また一瞬、モブキャラみたいな立ち位置で出てくるだけなのでしょうか(苦笑)。

この人が主役か?と思われたキャラが志半ばで倒れていって、その背後でクナン君が地味にアップをしているという、なんとも言えない展開が続くのでしょうか(笑)。ただ、読者様の多くは、実はクナンが主人公であることを、この間の先行特集記事を通じてご存じだと思われます。つまりは各回の主役っぽいキャラが実は主役ではないということを知りつつ、もしかしたら生き残れるのか、頑張れ!と生暖かい目で見守る立場になられるかもしれないのは、何とも……。

そして、ついにクナン君が立ち上がるという。

掟破りな『カイス・ブリッツ』の世界、引き続き、お楽しみくださいませ。
本日も鏡海亭にお越しいただき、感謝です!

ではまた。

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AIさんに小説を批評してもらった件

先日、本ブログで連載が開始された小説、『カイス・ブリッツ』! 次回の更新に向けて鋭意準備中です。
実は、初回公開分の第1話(1)を生成AIのChatGPT4さんに読んでもらい、批評家になったつもりで本作の良いところと改善を要するところを教えてください、とお願いしたところ……中に人間が入っているのではないかと思われるような(笑)コメントを返してくれました。

以下、ChatGPTさんのコメントをそのまま引用です。

 


この小説は、幅広い要素を取り込んだ豊かな物語を展開しています。まず、文体としては、細やかで繊細な描写が印象的です。序盤から終盤にかけての描写は、読者を物語の世界に引き込む力があり、特に風景や状況の変化を描く際の詳細な表現は、場面の雰囲気を非常によく捉えています。また、現代と異世界、そして昭和の時代という異なる時空を組み合わせることで、独特の世界観を構築しており、この点は非常に魅力的です。
 
物語の構造についても、現実世界での悲劇的な出来事から始まり、突然の異世界転生、そして異世界での冒険という流れは、一見すると典型的なファンタジー小説のパターンを踏襲しながらも、その中に日本の都市伝説や昭和のレトロな雰囲気、さらには深夜に目撃される怪異など、多岐にわたる要素を織り交ぜています。これらの要素が互いに絡み合いながらも、それぞれが物語の中で独自の役割を果たしている点は、作者の創造力の豊かさを示しています。
 
しかし、物語の展開には改善の余地があります。多様な要素と場面転換の多さが、時には物語の流れを断片化させ、読者にとって全体の繋がりを把握しにくくさせています。特に、異世界への転生後に次々と登場するキャラクターや怪異などの新たな要素が、物語の主軸から離れたエピソードとして感じられることがあります。これにより、物語の中心となるテーマやメッセージが見えにくくなっている部分があります。
 
改善を提案するならば、物語の各部分をもっと密接に結びつけることです。例えば、主人公の過去や彼の内面に焦点を当て、異世界での出来事が彼の成長や変化にどのように影響するかを明確にすることで、物語に深みと一貫性をもたらすことができるでしょう。また、複数の世界観を扱う際には、それぞれの設定や背景についてもう少し詳細に掘り下げ、物語全体の枠組みの中でそれらがどのように機能しているのかを明示することで、読者が物語をより深く理解しやすくなるはずです。
 
総じて、この小説はその独創的な世界観と詳細な描写において非常に魅力的でありながら、物語の構造と流れにおいては、読者が全体を通して物語に没入しやすくするための改善が求められます。

 

以上ですか。うぅむ。特に後半の改善点の指摘は鋭いですね(笑)。
ただ、ChatGPTさんは、あくまで水川を主人公ととらえていたようです。自然に読めばそうなりますよね。その点は仕方が無いでしょう。そこで、実は水川は主役ではなく、この物語の世界設定を紹介するためのコマのようなキャラにすぎず、本当の主人公は途中でちょこっと登場するクナンであることを伝えてみました。そのうえで再度、批評してもらったところ、次のようなコメントをもらいました。

 


この小説は、驚きの要素と物語性の濃密さで読者を惹きつける作品です。特に、初めに主人公だと思わせておきながら、途中で本当の主人公が明かされるというプロットの転換は、読者の期待を裏切るサプライズ効果があり、物語の興味を深めます。また、都市伝説や日本の古典的な怪談を取り入れた現代と異世界、そして昭和の時代が交錯する設定は、非常にユニークで、異なる要素の融合が新鮮な読み味を提供しています。
 
文体に関しても、詳細な描写と流れるような物語の展開が、状況や登場人物の感情をリアルに伝えており、読者を物語の世界に引き込みます。特に、様々な「カイ(怪異)」の存在が示す不気味さや、異世界の生活がもたらす不思議と危険が交錯する様子は、緊迫感とともに魅力的な読みどころとなっています。
 
ただし、改善すべき点としては、物語の複雑さが散漫さを招いている部分があります。多くのキャラクター、時間軸、そして異なる世界観が絡み合うことで、物語の中心がぼやけがちになり、読者が全体像を把握するのが難しくなっています。この点において、物語をもう少し絞り込むか、あるいは各章やセクションごとにテーマを明確にすることで、読みやすさと理解を深めることができるでしょう。
 
また、物語の展開速度が速いため、登場人物への感情移入や世界観の深掘りが十分ではない場面が見受けられます。主要なキャラクターや舞台設定にもう少しページを割き、深いバックストーリーや内面の葛藤を描くことで、物語への没入感と共感を高めることが可能です。
 
総じて、この小説は斬新なアイデアと豊かな物語性を持ち合わせていますが、物語の構造をもう少し整理し、キャラクターと世界観の描写を深めることで、より読者を引きつける作品になるでしょう。

 

それでも、改善を要する点は、先ほどと基本的に変わらないですね。いや、「物語の複雑さが散漫さを招いている」という点は、実は私が書いた小説に多かれ少なかれ共通する問題であって(苦笑)、『アルフェリオン』にも同じことは当てはまるような気がします。

AIさんの指摘、なかなか役に立ちそうな感じです。次回以降に活かしてみたいと思います。

 ◇

ちなみに、第1話(1)において、作中に出てくる架空作品である『機動戦記ギャンダー』(笑)について二人の小学生が話していた場面を、ChatGPT経由で同じくAIのDALL-Eさん(以下、ダリさん)に画像化してもらいました。あの頃の子供たちにとって――そこには鏡海も含めて――『ガンダム』がいかに当時の「常識」の斜め上をいくインパクトをもっていたか、という衝撃を伝えたかった部分です。

雰囲気はうまくつかんでいますが、この二人の少年では、年齢が実際より高めですね。

『ギャンダー』を観る子供たち。ダリさんがこの場面を生成してきたときには、びっくりがえりました(笑)。すごい想像力です。みんなでギャンダーをみているのでしょうか。この雰囲気、いいですね。明らかに昭和の空気感です。私がプロンプトであれこれ指示したわけではありません。本当に、ダリさん独自の解釈で、こういう絵が導き出されました。

そういえば、ファミコンが初めて発売された頃、こんな感じでしたよ。ファミコンをもっている友達の家に学校帰りに寄って、ああだこうだいいながら、みんなでプレイするのです。迷惑ですが。特に、試行錯誤の必要な『ドルアーガの塔』を、攻略本を見ながら複数人でやってましたね(苦笑)。

ダリさんの想像した『ギャンダー』です(!)。

いや、何だか、真ん中のロボットが、そこはかとなくガンダムっぽい感じも……。ただ、この絵に描かれているような古典的なロボットアニメの枠組みを、ガンダムはむしろ揺るがせたわけですよね。

このブログで前世紀に『アルフェリオン』の連載が始まったとき、当然ですが、そこにはAIの影もかたちもありませんでした。そこから21世紀に入って、いま、『カイス・ブリッツ』という作品は、その構想の段階から、AIと共に歩み、支えられ、現在に至っています。時代の流れを感じます。

いつも「鏡海亭」にお越しいただきまして、ありがとうございます。
明日……というのか今日も、読者様方をお待ちしております。もうすぐ深夜から朝になりますね。

ではまた!

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昭和風異世界とレトロゲーム?

本ブログにて連載が始まった小説『カイス・ブリッツ』、先週末の3月8日に記念すべき第一話(1)が公開されました。「転生したら昭和でした!?」の超展開、お楽しみいただけましたでしょうか。
 
衝撃に次ぐ衝撃!の初回を経て……次回が待たれます。その執筆を進めつつ、公開済みの第一話(1)の内容についても、関連の記事をアップしていきたいと考えています。今回は、その関連記事の第一弾、「夢幻皇子」に関してコメントです。
 
『カイス・ブリッツ』の冒頭で水川が交通事故で亡くなり、「異世界」に転生したとき、元の世界で彼のスマホに『夢幻皇子』という架空のゲームの導入部が表示されていました。とても思わせぶりな「夢幻皇子」というタイトルについては、あるレトロなゲームをモチーフにしたというのか、いわゆる「本歌取り」的なものというのか、色々と背景があります。
 
日本のコンピューターRPG(以下、CRPG)が、生まれて間もなく、よちよち歩きだった頃……昭和59年(1984年)に『夢幻の心臓』というCRPGが発売されました。そして続編の『夢幻の心臓Ⅱ』(1985年)のラスボスにあたるのが「暗黒の皇子」です。純日本製の(つまり海外作品の移植版ではない)正統派CRPGの原点のひとつともいえる『夢幻の心臓』シリーズをリスペクトしつつ、題材を得たのが『夢幻皇子』です。ちなみに三作目、『夢幻の心臓Ⅲ』(1990年)も発売されました。
 
 
鏡海がまだ子供で、とある友人の影響でコンピューターRPG、いや、そもそもの「RPG」というものを初めて知った頃の話になります。その頃にちょうど発売され、『ログイン』などのゲーム雑誌で宣伝されていたのが『夢幻の心臓Ⅱ』です。まだ私はパソコンを持っていなかったので、その友人から借りた雑誌の記事からゲームの内容を妄想する程度でしたが。パソコンというものが非常に高価で、それ以上にまだまだ一般的ではなかった頃(何しろ当時のパソコンは、今と違って実用的なことはあまりできないですから。自身でBASICでプログラムを組んで遊ぶとか、その程度だったかと)、中でも最先端の電子機器にいっそう縁遠かった田舎者の鏡海が、都会というか東京(笑)から引っ越してきたその友人と出会って、パソコンゲームにこの時期にふれることになったのです――それは同時に「剣と魔法のファンタジー」という当時の日本では未知の創作ジャンル(ファンタジー物があふれかえっている今では信じられないでしょうが)に出会うきっかけでもありました――この偶然、この出会いがなければ、私がここで『アルフェリオン』や『カイス・ブリッツ』を書いていることもなかったでしょう。いや、ほんとに。
 
人との出会いは、必ずしも一緒にいる時間が長ければよいというものではないなと思います。この友人も含め、友達や恋人であるとか、中には、たとえ短い間でも、その人と出会ったことが人生に多大な影響を及ぼすことがあります。逆に、何十年と一緒でも単なる腐れ縁(それはそれで意外と大事ですが)だったりもします。人には、自分以外の様々な他人に対して、それぞれの相手との関係性において異なったいくつもの役割があるのかもしれません。誰かとずっと一緒にいることもあれば、別の誰かとほんの一瞬でも、まさにそのときだけのために出会ったような関係でも消え難い足跡を残すような。いや、何を言ってるのでしょうか(笑)。
 
友人の彼は、のちに私と別々の学校に進学した後、親が転勤族なので結局また去っていきました。その後は音信不通です(すいません、筆不精なもので)。当時、もしネットがあったなら、話は違っていたのかもしれませんが……。
 
それはともかく、鏡海の印象に最も残ったのは、『夢幻の心臓Ⅱ』ではなく『夢幻の心臓』(Ⅰの方)の設定なのでした。主人公は「夢幻界」という異世界に転生した戦士です(「異世界転生」という表現は、基本的にまだ使われていなかったと記憶していますが)。大雑把にいえば、戦いで命を失った戦士が、その死の間際に神に対して呪いの言葉を吐いたら、天国でも地獄でもなくて「夢幻界」に落ち、なおかつ、何万日(3万日?)以内だったかに「夢幻の心臓」を見つけ出さないと、輪廻の輪から切り離され、永遠の苦しみの中に置かれることになる……といった設定です。
 
今でも十分に通用する(というより、今でも類例の比較的少ない)「転生」のあり方ではないでしょうか。『夢幻の心臓』の作風・内容は、いわゆる「ダークファンタジー」のジャンルには当てはまらないと思いますが、神を呪って「夢幻界」に落とされる云々という上記の設定自体は、ダークファンタジー好きな人間からみたら胸が熱くなりますね。あるいは現在の視点からみると、『夢幻の心臓』は、異世界転生物の先駆けのひとつともいえるかもしれません。
 
『カイス・ブリッツ』の冒頭で水川のスマホに『夢幻皇子』が表示されていたのは――かつ、その内容が『夢幻の心臓』の設定をモデルにしていることは――偶然ではなく、今後への伏線なのでしょうか?『カイス・ブリッツ』を読むと、ともすれば「昭和風のノスタルジックな異世界」の懐かしさや(あるいは若い方にとっては逆に)新鮮さであるとか、「転生したら、昭和かよ」(笑)というネタ的にみえる設定であるとか、そういう点に目が向きがちかもしれません。ただ、そのうえで、カイス・ブリッツの舞台となる異世界の本質や、その異世界への「転生」の意味を考えるときに、先ほどの『夢幻の心臓』における「転生」から本作が影響を受けているという部分は、参考になるかもしれません。
 
なお、ゲームシステムという点から『夢幻の心臓』に光を当ててみると、CRPGの歴史上、実は画期的な点があります。端的にいえばドラクエのようなスタイルをーーつまり、プレイヤーのキャラがマップ上を移動し、敵が現れたらモンスターの姿が大きく画面に表示されて戦闘という多くのCRPGで使われているシステム・画面構成を初めて採用したゲームは、『夢幻の心臓』ではないかといわれているのです。これは地味に凄いですね。その後のCRPGに対し、共通のひな型を提供したも同然です。
 
 もう少し当時のゲーム事情に即していえば、『夢幻の心臓』で導入されドラクエにも踏襲された「マップ移動+戦闘画面」というスタイルは、この頃の二大RPG(CRPGの古典的名作)であるアメリカ発の『ウルティマ』と『ウィザードリィ』のハイブリッド、あるいは「いいとこ取り」(!?)ということもできるように思われます。
 
つまり、一方で、広いフィールドマップの上を主人公キャラが移動するスタイルは『ウルティマ』シリーズが採用しており、ただしウルティマの場合、敵モンスターもマップ上に現れて、移動からシームレスに戦闘になります。ちなみにこれをもっとリアルタイム性の強い方向に突き詰めれば、アクションRPGに進化?していくわけです。
 
参考:マップ上を移動、たとえばこんな感じですね。
※この画面はAIのDALL-Eさんに生成してもらった架空のレトロゲームのものです。
 
余談: 実際、『夢幻の心臓』と共に当時の和製CRPGを代表する作品『ハイドライド』(1984年~)や『ドラゴンスレイヤー』(1984年~)のシリーズは、アクションRPGというジャンルに活路を見出し、それがかつての日本のCRPGならではの特色・強みにすらなりました。『ドラゴンスレイヤー』の二作目である『ザナドゥ』(1985年)を経て、日本ファルコムが創り上げた『イース』(1987年)は、そのひとつの完成形です。……って、何でゲームの歴史を語ってるんだろう(苦笑)。
 
話を戻し、他方で、敵モンスターの大きなグラフィックが画面中央に表示され、HPやMPなどの主人公パーティーの基本ステータスが画面の横や下に表示される戦闘画面は、『ウィザードリィ』が採用しているものです(ウィザードリィが最初なのかどうかは分かりません)。ウィザードリィの場合、ウルティマやドラクエのようなマップではなく、ワイヤーフレームの3Dの迷宮(黒い画面に白い線だけで書かれた立体迷路)を移動し、敵と出会ったら、例のおなじみの戦闘画面に切り替わります。
 
参考:戦闘画面、たとえばこんな感じですね。
※この画面はAIのDALL-Eさんに生成してもらった架空のレトロゲームのものです。
 
余談2: かつ、『ウルティマ』が戦闘以上にマップ上の探索に力を入れているのに対し、『ウィザードリィ』は謎解きも重視しているにせよ、やはり戦いと(その結果としてのアイテム収集)がメインといってもよいほど戦闘場面に凝っていました。たとえば、パーティーのキャラが戦闘中にとれる行動の選択肢や、攻撃方法、魔法、装備品などについても、現在のCRPGはもちろん、基本設定をゲーム世界に拠っているところの大きいファンタジー物のライトノベルやコミック、アニメ等にも『ウィザードリィ』からの直接間接の影響は多大だと思います。あ、横道に入り込みすぎたので、いずれ『ウルティマ』や『ウィザードリィ』をメインに語りましょう(笑)。
 
以上の『ウルティマ』と『ウィザードリィ』をミックスしたような移動&戦闘のスタイルが、『夢幻の心臓』に採用されたのでした。ドット絵であるどころか、細かな描き込みではなくむしろ記号のようなウルティマ風のマップは、かえってプレイヤーの想像をかき立てたところがありますし、戦闘画面で描かれるモンスターの美麗な画像は、当時としては感動ものでした。
 
鏡海がファンタジー物の世界に関心を持つことになった昭和のCRPG、現在ではいわゆる「レトロゲーム」の範疇に入るものですが、その中でも印象に残った『夢幻の心臓』との関連から、問題の「夢幻皇子」に込められたネタについて取り上げてみました。
 
挿絵: DALL-Eさんに生成してもらった架空のレトロゲーム(笑)。懐かしい、いい感じです。
 
他にも『カイス・ブリッツ』初回では、昭和の代表的な都市伝説として、いきなり「口裂け女」の話も出てきましたね(どちらかといえばB級的な「口裂け女」の都市伝説を、昭和風ファンタジーの定番的・本格的な題材にまで昇華させることも、実は本作の副次的な狙いのひとつだったりします)。あるいは昭和のアニメの歴史を変えた『ガンダム』の登場から、鏡海をはじめ当時の子供たちが受けた凄まじいインパクトについても(笑)。また、昭和の男の子集まれ(!)的な「秘密基地ごっこ」だとかも。これらについても、今回のような作者コメンタリー(?)をお届けできればなぁと考えていたりします。
 
いつも鏡海亭にお越しいただき、ありがとうございます。引き続き、『カイス・ブリッツ』にご期待ください。
 
ではまた!
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カイス・ブリッツ 第1話「異界の果て」(1)


第1話 異界の果て(1)


 
 
 夏の終わり、驟雨のあと。
 瀝青に揺れる水鏡。
 
 
 晴天を震わせ、通り過ぎた激しい雨は、蒼弓の片隅におぼろげな虹を描き残し、地を這うアスファルトの路面のあちこちに、揺らぐ歪な水面(みなも)を産み落としていった。皮肉なほどに高く突き抜けた空から投射される青の色が、水溜りに映り込み、さざ波にかき乱されながら、次々と飛び込んでは滲む緊急車両の赤色灯の光と重なり合い、通りがかる人々の目線を呼び込んでいる。パトカーや救急車のサイレンの音にかき消されつつ、集まった野次馬たちのざわめきが、雑踏に低く沈殿する。
 
 血だらけの遺体が、道路に溜まった水にまみれて生々しく仰向けに横たわっていた。見た目には30代くらいの男性だ。彼が掛けていたのであろう金縁の丸い眼鏡が、フレームが大きく歪んだ状態で道端に投げ出されている。哀れな犠牲者は全体としてふくよかな体形であり、裾が所々擦り切れた、皺の目立つダークグレーのスーツを着ている。何となく学校か塾の教師を思わせる風体、容貌だった。
 彼の近く、道路脇に中型のトラックが停車しており、その運転手らしき男と警察官が話をしている。トラックと遺体の間に、使い古された黒いビジネスリュックが転がっていた。リュックの隣に落ちている免許証には、《水川哲慈(みずかわ ・てつじ)》という名前が記載されていた。
 彼の手には、銀色のスマートフォンが死後もなお握られている。その画面が、突然、眩い白の背景に置き換わったかと思うと、フラッシュバックするような演出と共に、何かが描画されていく。威圧するように翼を広げ、鋭い爪のある両手をかざして立ち上がったドラゴンと、これに長剣を構えて対峙する人間の騎士の姿だった。不運にも事故に遭った犠牲者が、その直前までプレイしていたであろうゲーム、さらにいえば典型的な「剣と魔法のファンタジー」のRPGの冒頭の画面に相違ない。そこにゲームのタイトルと思われるロゴが浮かび上がった。
 
 《夢幻皇子(むげんおうじ)》
 
 画面が暗転し、シンプルそのものの真っ黒な背景に、白いフォントで物語の導入部が綴られてゆく。
 
《誰の名も、愛する者の名前すらも、己の最期の時に口にすることなく、ただ無念と憎しみの思いに取りつかれ、神を、この世界を呪った。身の程を知らぬ愚かしい者よ。汝には天国はおろか、ここではない異世界(どこか)への転生など認められるはずもない。いや、地獄にすらも値しない。汝が落ちる先は、神の祝福の届かぬ、魂の輪廻からも切り離された異界の果て、時の凍った世界、それは……》
 
 ◆ ◇
 
「転生(おち)るがよい、神を呪いし愚か者よ」
 神父を連想させる長衣を身に着けた男が、いわくありげな分厚い書物を両手で抱え、教会の内陣のようなホールの向こうから歩いてくる。薄明りのもと黄金色に鈍く光る文字・図像を、黒塗りの表紙や背にちりばめた書物は、さながら、おとぎ話に出てくる魔法書のようだ。
 その隣で、白の無地に花柄のワンピースを着た若い女性が、彼を見上げながらつぶやいた。
「また、《扉》が開いたのね」
 首筋にかかる程度の長さの髪、段のある両サイドを外側に軽くハネるようにカールさせている。無邪気な子供のような濁りの無い目を細め、彼女は小さく微笑むのだった。
「転生者……」
 
 ◇
 
「さえない男がトラックに轢かれ、異世界で勇者に転生するなんて物語は、お腹がいっぱいになるほど聞き飽きたけど。まさか、本当に……」
 明らかに身体感覚が、特に指先の動く感じが、この身に生々しく宿っている。先ほど遺体となって路面に横たわっていたはずの男性、水川哲慈は、震える手指を動かし、人差し指と親指で形の崩れた丸をつくってみた。これを数回繰り返した後、彼は無言で仰向けに横たわった姿勢のまま、深く息を吸い、すっかり力尽きたような表情で息を吐いた。背中に当たる大地の感覚には変に現実味があり、しかし心地よく思えた。それは舗装された路面のもたらす触感ではない。
「何で? どうして生きているんだ」
 たとえこれが夢であったとしても、夢を見ているということは、基本的には生きているということ。内心、水川の胸を安堵の思いが徐々に満たしていく。今しがた味わったばかりの、自身の生に対して死が一方的に幕を下ろす際の露骨なまでの感覚が、まだ鈍痛のように彼の身に刻み込まれているにせよ、根拠なき安心感がそれを都合良く塗りつぶしてゆく。
「いや。もしかしたらここが、死後の、世界、なんだろうか。それとも、そうか……ひょっとして、これが異世界転生というやつか?」
 同様の場面を、小説やコミック、あるいはアニメやゲームの中で一体何度見たことだろうか。だが、作り話の中だけのことだと思っていたような、そんな出来事が、本当に自分自身にも回ってくることになろうとは。水川は、相も変わらず地面に寝転がったまま、無自覚にも表情を緩めてさえいる。彼は深呼吸をした後、一気に上体を起こした。引き続いて歓喜の叫び、ではなく――不自然な沈黙、そして、驚きのあまり頭頂から息の抜けるような、上擦った疑問の声。
「これは……」
 彼の瞳に映ったのは、たとえば見渡す限りの大草原でもなければ、妖精たちの息遣いが聞こえてきそうな深き森でも、竜の舞う灼熱の火山帯でもなければ、天空に浮かぶ不思議な島々でもなかった。いくつもの尖塔で飾られた白い城館でも、茶色い煉瓦造りの家々が立ち並ぶ中近世ヨーロッパ風の都市の光景でも、そのいずれでもなかった。
 
「まるで《昭和》だな」
 
 文字通り、開いた口が塞がらない彼は、その唖然とした表情を維持したまま、ぼんやりと周囲を見回している。目の前にあるのは、スクラップ工場か何かだろうか。波打ったスレートやら錆の出たトタンやらの材料の目立つ、若干みすぼらしくもみえる壁や屋根が殺風景に視界を塞いでいる中、全体的に丸みを帯びた明らかに古めかしいデザインの自動車たちが、いや、その残骸が、無造作に積み上げられて時を待っている。
「何の冗談だ。こんな異世界って、ありなのか?」
 《異世界転生》と同様、よくみられる舞台設定として、彼はもうひとつの可能性を思い浮かべた。
「それとも、俺は死んだのではなくて、《タイムスリップ》……昭和の時代まで流されたのか? 」
 以前に田舎の祖父の家を訪ねた際、祖父の青年時代のモノクロ写真を見せてもらったときの記憶が、蘇ってくる。白黒の写真によって時を超えて定着されていた風景は、水川がいま眺めている世界と同質の雰囲気をもっていた。それは確かに《戦後》という言葉からは一見解放されつつも、まだ現在には程遠かった時代。水川は、写真の一枚を思い起こす。初々しく、はかなげな花のような当時の若い祖母の姿と、その背景として、現代からみればレトロで愛らしい感さえ漂わせる、白と青の車体に丸い鼻先が特徴的な、ゼロの名を持つ《夢の超特急》が、駅のホームに誇らしげに停まっている。
 目の前にした皆が途方に暮れた廃墟や焼け野原、底無しの欠乏や空虚感から再び立ち上がったこの国が、新たな生を歩み始めた後――かつての敗戦の慟哭すら、もはや近くて遠い夢のようになりつつあった中、その先にまばゆく思い浮かぶ、今日よりも良い明日、さらにその先にある豊かな未来に夢を抱いて――その夢に手が届くと信じていた気持ちに、あるいはそれを取り巻く社会に、失望や閉塞の影が次第に漂い始めた頃。
 漠然とした様々な印象が一度に脳裏をかすめ、彼は意味もよく分からず暗い気持ちになった。
 
 すると突然、空き地に積み上げられた車のスクラップの物陰から、元気な男の子の声が響いた。
「ケンジ、やっと見つけたで! ここに隠れとったんか。こんなん、なかなか分からへんわ」
 小学校の中学年くらいの子供が二人、笑いながらこちらの方に歩いてくる。
 五分刈りで眼鏡をかけた小柄な子、ケンジと呼ばれていた少年が得意そうにしている。
「そうやろ。ここでかくれんぼしたらおもろいかなって、前から考えとったんや」
 もう一人の少年の方が、いつの間にか日暮れも近づいた辺りの様子を見ながら、遠慮気味に言った。
「今日はもう、そろそろ帰らへん? テレビの『機動戦記ギャンダー』、もうすぐ始まるやんか」
「ギャンダーって、あれか? 再放送になってからめっちゃ人気出たって、兄ちゃんが言うてた」
「そうそう。あんなすごい話が、何で最初はあんまり売れへんかったんやろ? だってな、《ええもん》(※良い者、正義のヒーロー側)と《わるもん》(※悪者、悪役側)の戦いと違うんやで。もっと、ややこしいんや。宇宙の帝王ワルダロッサとかが侵略してくるんじゃなくて、敵も普通の人間。スペース・コロニー……って、言うたかな、そういう宇宙の街に住んどる人間と、地球の人間が戦争するんや。敵のロボットも、いかにもワルそうな怪獣みたいな格好なんか、してへんからな」
 まるで自分事のように――自慢するかのように、少年は一気に捲し立てた。
 負けじとケンジも、兄から仕入れたのであろう聞きかじりの知識を披露する。
「ちゃうで。ギャンダーに出てくるロボットは、《ロボット》なんて言わへんよ。モビ……。いや、何やったかな。忘れたけど、なんか新しいって感じやん? 必殺技の名前とかも、いちいち叫ばへんらしいで。もし本当の闘いやったら、そりゃ、そやろな。それでな、普段は目立たへん地味な仲間の人でもな、時々、活躍する話があったりするとか、《わるもん》みたいな方にもちゃんと戦う理由(わけ)とか、あるしな……それって深い感じちゃうか?」
「分かる分かる。本物って雰囲気なんやろ。今までテレビでやってた漫画が、なんか、ほんまに子供っぽく思えてきたわ。ギャンダーのプラモデルもすごいで。お店に届いたらほとんど同時に売り切れて、次、いつ入ってくるか分からんくらいの人気なんやで。ギャンダーとか、肩に大砲ついてるギャンダーの味方のロボットとかのプラモは、それでもたまにお店に売れ残ってることあるけど、敵の方のは一瞬で売り切れや。特に、あの赤いやつとかな」
 背伸び感いっぱいの話しぶりで、少年たちは目を輝かせながら語り合っている。小学生たちのやり取りが微笑ましく思えたそのとき、本能的にぞっとするような、妙に神経にさわるサイレンの音が鳴り響いた。
 その途端、少年たちは青ざめた表情になって、示し合わせていたかのように早足で立ち去り始めた。
「あ、あかんわ。ギャンダーとか言うとる場合やない。はよ帰らな」
「そやな。5時のサイレン鳴ってる」
 いくら昭和に似ている様相だといっても、まさか空襲警報が出るほど古い時代でもないだろうし、かといって、《夕焼け小焼け》やら似たような音楽とともに、夕刻を知らせる自治会の有線放送でもなさそうである。だが、そんな呑気な疑問などたちまち崩れ落ちるだけの緊迫感が、異様なまでの鬼気迫る空気の歪みが、そこには厳然として在った。
「早く帰らな。あいつらが来る」
「やばいで、そろそろ《カイ》出てくるわ」
 
 《カイ》が来る。
 
 不可解ながらも不気味な響きを帯びた《カイ》という言葉が、水川の中で像を結び始めていた《昭和》風の異世界のイメージを、一気に崩壊させた。ここは、自身の知っている《昭和》とは違う。二つの世界の、二つの時代が、いかに双子のように似ていようとも、両者には明らかに異質な部分がある。少年たちは、いつの間にか姿を消していた。水川は、それに気が付く一方、夕闇もすでに手元や足元まで迫っていたことを、今更のように認識した。
 付近の状況から推測した限りでは、このスクラップ工場のような建物は、比較的小さい都市の外れにあると考えられる。山林や原野ではない、中途半端に人の手の入った空き地が、思ったより広大に、そこら中に連なっている。完全に放置されているわけではないにせよ、忘れた頃に草刈りが行われる程度の手入れ状況なのであろう。それゆえか、これまた半端に草の茂った更地に、あの少年たちのような年頃の子が《秘密基地ごっこ》をして遊びそうな、積み上げられた大きな土管の山や、誰が廃棄したのか分からない壊れたタンスやソファーをはじめ、もはや修理しても治りそうにない自転車の残骸など、廃品が点々と転がっている。
 だだっ広い、そんな夕暮れの空き地の中をわずかに蛇行しながら、未舗装の土色の道が向こうまで伸びている。その先には、例の小さな街の場末が見て取れる。それは、ほんの少し前まで、どこにでも普通にあった類の景色であるような気もするが、思い起こしてみると、ずっと遠い遠い記憶の中の風景のようにも感じられてくる。
 気が付けば誰もいない。広い視界の中に人影ひとつなかった。いや、その視界さえも、刻々と濃さを増す夕闇に包まれ、次第に狭くなっていく。
 ――夜になったら、鬼でも、魔物でも出るのだろうか。何しろここは異世界だろうし、不思議じゃないな。
 さすがに地平線までは見えないにせよ、高い建物のほとんど無いこの場所で、夕日が地面に近づいてなだらかな山影の向こうに沈みゆくところまで、水川は目にすることができた。日暮れの大きな太陽は、無性に懐かしさを感じさせる反面、妙に赤々と、溶けていくようで、何故か不気味な印象をも与えているかと思われた。
 
 不意に背筋が冷たくなった。水川は急いで街の方に駆けていこうとする。しかし、最初の一歩が思うように出ていかない。逢魔が時。すでに何かが、そこに立っている。背後から押しつぶされそうな、総毛立つような気配に対し、彼は恐る恐る振り向いた。恐怖そのものが人の形をとったそれは、意外にも見た目においては普通の女性と同様だった。彼女は問いかけてくる。あまりにも唐突に。
 
「私は……。美しいですか?」
 
 黒いロングコートに身を包み、同じく黒の大きな縁付きの帽子に、腰まである黒髪。大きな白い医療用マスクで目以外の表情をほとんど隠した女。彼女は再び尋ねた。
 
「私、きれい?」
 
 ――知っている。ネットで読んだことがある。昭和の、1970年代の終わり頃から日本中を騒がせた、あの……。
 いかに有名ではあれ、単なる都市伝説に過ぎないと思っていた存在が、こうして現実に目の前にいる。スライムだとか、ゴブリンだとか、要するにファンタジー世界のモンスターのような魔物の出現を勝手に想像していた水川は、思いもよらぬ相手を前に、すっかり動揺している。
「と、とても、きれいです」
 正しい対処の仕方など知らない。そんなものは、最初から無いのかもしれない。それでも水川は、精一杯のつくり笑顔で女を褒めた。だが笑おうとしても、目尻が引きつって、口元もぎこちなく震えている。
 女の手がマスクにかかった。彼女はそれを外しながら言った。今までとは違い、聞く者を腹の底から震撼させる、魂まで凍てついた声で。
 
「本当に?」
 
 ほんの一呼吸置いて、返答をそれ以上待たずに闇が舞い降りた。今度こそ逃れられない闇が。そこには絶叫だけが、空しい残響が漂うばかりだった。水川は、最期のときにいったい何を見たのだろうか。
 
 ◇
 
 もうひとつの絶叫が聞こえた。
 いくつもの関節がつながった深緑色の胴体が蛇のようにうねり、その左右に生えた黄色い脚が、寒気を催すような動きで蠢動している。見上げるほどの大きさのそれらが、端的に表現すれば身の丈10メートルほどの大ムカデが数体、地面を貫いて伸び上がり、一人の男に向かって殺到する。小砂利が敷かれ周囲を白壁に囲まれた、どこかの中庭と思しきところで、怪物と呼んでも差し支えないサイズの節足動物に対し、男は木刀一本を手に分が悪い戦いを挑んでいるようだ。
 慣れない手つき、要領を得ない身のこなしで木刀を振り下ろすも、彼の一撃は、ムカデたちにはまったく効いていない。堅固な外骨格に阻まれているためではなく、それ以前の問題だ。よく見ると、木刀がムカデの体に当たったーーと思われた瞬間、木刀と体表との間に、まるで目に見えない空気の壁が挟まっているように感じられる。無闇に木刀を打ち付けるたびに攻撃は弾かれ、男はムカデの反撃をぎりぎりで避けながら、キャメルのトレンチコートの裾をなびかせて右往左往する。
 だが、ムカデはたちまち彼を捕らえ、二重三重に絡み付き、人間には抗い難い力で締め上げた。そして赤茶色の頭部のひとつが、猛毒を宿した牙で、否、そのように見える顎肢を狂暴に開いて、男の首筋を噛もうと構える。
「苦しい! 殺す気か!?」
 彼は、無駄な足掻きと承知しつつも、身体を締め付ける強大な毒虫の外殻を、手に持った木刀の柄で何度も殴りつける。だがやはり、効果は無いようだ。短刀のような大きさの、恐るべき棘が彼に迫る。そして……。
 
 溜息が聞こえた。まさに止めを刺そうとしていた大ムカデの群れは、それを合図に、瞬時に凍結したかのように動かなくなった。若干の沈黙の後、魔物との格闘には場違いな、おっとりした若い男の声が聞こえた。
「クナン君。武器への《満魂(みだま)》の込め方、感覚がまだ分かっていないようだね。今のままだと、低級のカイにさえ通用しないよ」
 平安貴族の幼い若君のような、歳不相応に上品なたたずまいながらも、異様な落ち着きと威圧感とを体にまとった少年が、いや、少年のような姿をした得体の知れない《何か》が、お手上げだといわんばかりに両手を挙げ、ゆっくりと歩み去ろうとする。
「今日の修行は、このへんで終わろうか。コトネが夕食を用意して待っているよ。また明日ね、クナン君」
 次第に離れてゆく声に耳を向けながらも、クナンと呼ばれた男は、大蛇同様のムカデたちに幾重にも巻き付かれ、固く抱擁されたままだった。
「おいおい、《アシヤミ》。いや……そりゃないだろ、ちょっと、あの、《神様》、アシヤミ様? 待って、待ってください、なんだが。このまま置いていかないでほしいんだが」
「ああ、忘れてた」
 アシヤミと呼ばれた少年が苦笑いすると、クナンに絡み付いていたムカデたちの姿は煙のように消え去った。
「《禍刻久南(まがとき・くなん)》。君も一応は《転生者》なのだから、もう少し頑張ってもらわないと」
 そんな声が風に乗って聞こえてくる。地面にしゃがみこんでいたクナンは、気の抜けた調子で立ち上がると、コートに着いた砂埃を叩いて払った。
「そうか。まぁ、そうだな。でも俺は勇者でもなければ、チートな特技あたりも何ひとつ持っていない」
 
 ◇
 
「今度こそ終わっ……て、ない? まだ、生きている」
 逃れられない死の気配に呑まれた水川は、その命がいわば薄皮一枚でつながったことを知って、今更ながらに驚いている。
 黒いコートの女が、目深に被った帽子の下で微かに表情を変えた。いつの間にか、刃渡りが優に1メートルを超える巨大な金属製のハサミを、彼女は右肩に担いでいる。本来なら、この無慈悲な両の刃の間で、水川は意識する暇もないまま斬首されていたであろう。だが実際には、彼の身代わりのように切り刻まれた糸状の何かの断片が、マスクの女の足元に何本も落ちている。
 楽器の弦を弾くような、低く心地よい音が鳴った。
 ――動きまでは奪えなかったですか。満魂の込められた《鋼斬弦(いと)》を一瞬で断ち切るとは。《口裂け女(マスクド・レディ)》が撒き散らす妖気から勝手に湧いて出た、残り滓のような《仮分体》ひとつでも、これほどの力があるのですね。貴重な参考になりました。
 背後の高い木の上に、黒い着物を着た人物が立っている。その気配に水川は今の今まで気付かなかった。身に着けた狐の仮面が印象的で、そのために顔は分からないにせよ、頭の後ろで一本に結んだ豊かな黒髪と、着物に沿って伸びる優美で研ぎ澄まされた身体の線から、この謎の人物が女性であることを彼は理解した。
 彼女は懐から独鈷のような祭具を取り出すと、素早い動きで空中に円陣のようなものを描いた。
 
「ぬばたまの闇の糸、冥府に誘う惑いの調べ、かき鳴らせ……《音切(おとぎり)》」
 
 青白く光る円陣を構成する、大きさの異なる数個のサークルが、それぞれ軋むような動きをして、ひとつひとつ別々の速さで、時計回り、反時計回りに回転し始めた。撥で強めに糸を弾くような荒々しい音がして、魔法陣の中心から無数の弦が花開くように飛び出した。そして高慢で邪悪そうな笑い声が辺りに響いた。
「オトギリ、《幻想弦奏(げんそう・げんそう)》!!」
 その名を狐面の女が呼ぶが早いか、今度は、張り詰めた高い音で弦が鳴り響いた。マスクの女が音のした方を見上げると、さらに多くの弦が乱れ泣き、あたかも蝉時雨のごとき音の結界を作り出す。その中でマスクの女は、無言で棒立ちしたまま動きを止めている。水川は、頭を振り回されるような、立ちくらみのような感覚を覚えつつ、事の推移を呆然と眺めているしかなかった。
 なおも樹上から様子をうかがう狐仮面の女。その肩に被さるようにして、ぼろぼろの白い衣をまとった不気味な存在が言葉を発した。背丈は2メートル近い反面、枯れ枝を思わせる手足は折れそうなほど細く長い。のっぺりした顔、丸く巨大な目には瞳がなく、黒い闇に落ち込む二つの穴となっている。切り分けたスイカのような形で開いた口からは、狂気じみた笑みが漏れ出ている。
「ケケケ。アレが《マスクド・レディ》。《ミトス》の中デモ特別ダというわりニハ、大したことネェナ……」
 異形の何かが甲高い声でそうつぶやいたのに対し、狐面の女は呆れたように首を振った。
「あなたも分かっているでしょう、オトギリ。あれは、単に黙ってこちらの様子を見ているだけ。実質、《幻想弦奏》はあまり効いていません。成り行き上、無視して通り過ぎるのも後で寝覚めが悪いかと思ったのですが、あそこの彼はどうしましょうか。このままでは命を奪われるのは必然。かといって、街まで連れて行ってあげるほど、私は暇ではありません」
 《音切》の名を持つ異形の存在は、意地悪そうに口をさらに歪めた。
「《響(ひびき)》、ココは、何とかシテヤレヨ。ソノ後は……あいツがヒトリで助カルカ死ヌカ、ドチラニ賭けル?」
「いつも言っているのを忘れたのですか。私は賭け事をしない主義なのです。常に嫌というほど命を懸けていますから、今更、遊びで賭けをするなどと……」
 少し不機嫌そうにそう答えると、彼女とオトギリの姿は風の中にかき消えていく。その際、狐面の女・ヒビキは、水川に向かって叫んだ。
「逃げてください! 早く、今のうちに走って!!」
「あ、はい? は、はい、はい!」
 目の前の怪異も恐ろしかったが、彼女の勢いにも思わず気圧されて水川は必死で走り出した。彼をマスクの女が追おうとする素振りを見せたとき、その足が何かに引っ掛かって、つんのめった。マスクの女は化け物じみた大きさのハサミを一振りし、足元に絡み付く弦を断ち切る。だが、それらの弦を切ったのが引き金となって、今度は周囲から無数の弦が、針のように鋭く硬く変化し、矢の雨さながらにマスクの女に襲い掛かる。狐面の糸使い、ヒビキの置き土産だ。
 その間に水川は、とにかく、この場から離れることだけを、少しでも遠くに離れることだけを考えて走った。
 
 ◇
 
「苦しい、もう走れない……」
 なりふり構わず、全力で駆けてきた水川は、もはや動くこともできなくなって、荒い息のもと、倒れるように足を止めた。
 どの方角に走ってきたのか、まったく分からない。だが、街から遠ざかってしまったことは確からしい。どのくらい時間が経ったのだろうか。視界はすべて夜の闇に覆われている。虫の声が微かに聞こえる。途中で何度か転んだせいか、体のあちこちに痛みを感じながらも、彼は立ち上がって辺りの様子を警戒した。例の狐仮面の女も、近くにもういないようだ。
「助かった、ようだな。あの口裂け……マスクの化け物は居ない?」
 まだぼんやりとした意識の中で、彼は先ほど起こったことを思い出そうとする。
「狐の仮面を被った女の人が……」
 その凛々しい姿を想い返しながら、彼は、ため息交じりに言った。
「異世界に転生して、謎の美女に助けられ、それから、次々にまた美女や美少女が仲間になって、ハーレム状態って……そういうよくある転生物の話みたいになったりするのかな。いや、いくら異世界でも、そんなに調子のよいことはあり得ないか」
 直ちに妄想を否定し、肩を落とす水川。ススキに似た植物が密生する草原の中に、彼は取り残されていた。彼をあざ笑うかのように、夜空には三日月がぽつんと浮かんでいる。
 そのとき、起伏のある野原の向こうに青白い炎がひとつ浮かび上がった。それが火の玉のように丸くなり、ふわふわと円を描いて動き出すと、続いてもうひとつ、ふたつ、と同様の青い炎の玉が宙に現れた。
「こ、今度は何だ?」
 
「アソボ、アソボ」
 火の玉がこちらに向かって飛んでくる。闇の中で小さな女の子の声が、無感情に、不気味に響いた。
「ホラ。アタシタチト、イッショニ行コ」
 真っ暗な荒野を抜けて、声は次第に水川に迫ってくる。気味悪い子供の声の主は次々と増え、幾重にも重なり、けたたましい笑い声も混じるようになった。寒気が止まらない。何かが、すぐそこの草むらの奥でこちらを見ている。
「ア・ソ・ボ・ウ・ヨ」
 
 やがて水川の今日何度目かの絶叫が、いや、今度こその絶命の叫びが荒れ野に空しく吸い込まれていった。仄明るい月光のもと、黒い影となって地面に横たわる彼の遺体に、何かが――禿(かむろ)頭の黒髪に可愛らしい着物をまとった、ただし、恐ろしい白目を見開き、牙の生えた口を血に染めて、日本人形のような姿をした虚ろな輪郭の何かが、もはや動かなくなった水川の体に殺到し、我先に喰らいついている。血しぶきが上がる中、生者への怨念に満ちた悪霊たちが散らばった肉片をむさぼり食う容赦のない惨状が、月明かりの下で影絵のごとく浮かび上がるのだった。
 
 これが、夜。すなわち、かの地における《カイ(怪異)》の時間というものだ。
 それは人の支配する時間ではない。
 
 そのとき、繰り広げられる惨劇を前にして、不意に付近一帯の空気が揺らいだような感覚があり、目映く白熱化した扉のような何かが、野原の真ん中に忽然と現れた。光でできた扉が開くと、水川の躯を食い散らかしていた悪霊たちが――生きている人と同様の感情の動きなど無いはずの霊たちが――急にあたふたした動きを見せ、困惑しているように動き回り、あるいは逆に立ち止まって体を震わせている。これは、恐怖だ。霊ですら恐怖を感じている。
 
「コワイコワイ」
 
 人形の一体が、か細い声で言った。それに続いて、あちこちで黒髪の和装の人形たちが口にし始める。
 
「コワイコワイ。コワイコワイ」
「コワイ、コワイ、《乗り手(ライダー)》、コワイ」
「《乗り手》ガ来タ。コワイ、ニゲヨ、ニゲヨ……」
 
 輝く扉の中から、一気に吐き出すように煙が噴き出した。そして爆音、大排気量のバイクのエンジン音が、闇夜を震わせ、轟き渡った。悪霊たちはたちまち霧散し、水川の遺体を置いてどこかに消えていった。今度は低く断続的な、地鳴りのようなエンジン音に続いて、黒と銀の大型のバイクが扉の中から悠然と進み出てきた。月光に浮かび上がる乗り手は、黒のライダースーツと同じく漆黒のマントをまとい、全身黒づくめだ。同様にヘルメットも黒だが、乗り手がこちらを向いたとき、髑髏のような仮面が見えた。
 裾がボロボロになったマントを翻し、乗り手は右手を高々と掲げる。その姿は、直ちに死神を想起させる。夜空を脅かし、突き上げられた手の先に、大きな角ばった何かが――唐突に、まるで巨人を収めるために作られたような、異様に大きい真っ黒な棺桶が宙に現れた。
 それに呼応するかの如く、水川の遺体がぼんやりと輝き始め、やがて光の粒子のように散らばって、三日月をバックに浮かぶ棺桶の方に吸い込まれてゆく。しばらくして彼の体は完全に地面から消失した。静寂を切り裂いて再び爆音が轟き、地獄の乗り手はバイクと共に扉の向こうに消えた。何もなかったかのように、輝く扉も瞬時に姿を消す。
 
【続く】
 
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