昔、謡を習っていた先生が自宅裏に仕舞の練習舞台を造られたときの話。
それまで先生の自宅の車庫の上にあった部屋で練習していたが、狭いので裏庭を潰して本格的な舞台を造られた。謡の練習場も車庫の上から自宅裏の練習場に移ることになった。舞台開きがあって、プロの能楽師たちがお祝いに駆けつけてくれた。普段は口をきけない偉い人たちと話をした。先生の先生、大先生が口を開いた。「猩々を謡おう」。猩々はまだ誰も習っていない。勿論、猩々の謡本を持っている人は誰もいない。先生は書斎から何冊かの謡本「猩々」を持って来てくれた。お祝いに駆けつけてくれた能楽師たちも誰も持っていない。これは大変なことになったよ。と思ったが皆さん空で謡うのだ。さすがプロの暗記力は凄い。と感心したものだった。さて、今回はその猩々を写謡してみた。
A4の用紙一枚、それも片面だけに全部収まった。
ページ数は7pしかない。時間にして14分。これなら頑張れば何とか暗記できそう。
謡本には小書きというのがある。その小書きの説明が沢山あった。
小書とは
我が愛用の電子辞書によると。
能または狂言で常と異なる演出の場合、それを番組の曲名の左方下に小文字で書き添えること。またその演出様式名と書いてある。こんなに多く書いてある謡本には初めて出合った。
謡の文句を書いてある本文の上に謡い方を書いてあるが、びっしりと書かれている。相当位の高い謡と見受ける。
巻頭の梗概に切能と書いてある。
これも我が電子辞書に載っていた。
1日の番組で最後に演ずる能。と出ている。
今はそんなことないが昔は謡う場所が決まっていたのだろう。
謡の舞台は国内ばかりではない、たまに中国が舞台になることがある。この猩々も中国が舞台である。
日本の歴史は大体分かるが、中国となるとまるで分らない。
唐土かね金山の麓楊子(ようす)の里に高風(こうふう)と呼ぶ親孝行の若者がいた。この高風を富ませてやろうと現れたのが猩々という妖怪だった。
物語は1pでかたが付いたので、詳細は上のコピーで読んでほしい。
難しい言葉が出てくるが易しい話なので大体の内容が分かると思う。
さて、その瀋陽(しんよう)の江とはどこだろう世界地図を引っ張り出して調べたが何しろ中国は広い。場所を探すの一苦労。揚子江とは世界で3番目に長い川長江の下流にある。あの南京虐殺で有名な南京もこの沿岸にある。その南京から少し遡ったところに九江という昔楊子と呼ばれた場所があるそこが猩々の舞台である。
新型コロナウイルスで今東京が大変、昨日今日は大阪が大変になってきた。
この3連休で我が町金沢は大変な混雑、今年一番の賑わいらしい。ごみごみした都会を離れて静かな金沢を旅しようと新幹線に乗ってやってきたものの東京を上回るような混雑。なんで~って観光客。静かな町を旅しようとやってた旅人は「これって話が違うじゃない。」って戸惑っている。「これから大変になるぞ」と、家内が気にしている。ある日突然感染者が急増したなんてならなければいいけど。今日のところは県内の感染者は無し。しかし油断禁物。