katydid's blog

ハネナガキリギリスが住んでいるところに生息しています。

おっすん(後編)

2009-11-28 01:28:07 | おっすん後編
8月初旬から我が家で暮らすことになった「おっすん」の鳴き声は

楽しさと癒しの毎日を与えてくれていました。

住宅密集地の中、近所でキリギリスが生息できるところはありません。

鳴き声に立ち止まる方もいて、私にはその方が昔を懐かしんでいるようにも見えました。



10月も中旬を迎えた頃、鳴き音が少し弱くなり始めました。

鳴き方も「ギーッ」ではなく「ギリ、リ、リ」と途切れがちになり

食べ物もブドウの様な水分の多いものしか摂らなくなりました。

他の♂は未だキレの良い鳴き声を響かせていますが

おっすんは歩行も満足に出来なくなり、ケースを掃除してもフンが見当たりません。

やがて鳴かなくなり、私はこれから必ず遭遇する悲しい出来事を覚悟しました。

それから3日後、元気な頃なら起こりえる筈もない事態ですが

おっすんはケースと天井に刺しているニンジンの間に挟まって動けなくなっていました。

最近は何も食べなかったのに何故か口の近くにあるニンジンを食べ続けて

未消化であろう鮮やかな色のニンジンのフンをお尻から沢山出していました。

ケースの下に戻しても苦しそうにして倒れてしまいます。

そっと指で立たせてあげました。

その時です。

何と彼は鳴こうとしたのです!

全身を奮い立たせて身体を絞り上げて羽を擦り合わせました。



でも
音が出なかった



私は3日前から鳴かずにいた彼が渾身の力で羽を動かした瞬間に驚き

音が出なかったことに涙しました。



次の日彼は永遠の眠りに就きました。

私の身体をよじ登り背中で鳴いていた頃を今でも思い出します。

きっと互いに幸せを感じていた時もあったのではと思いたい

悲しくも感動したおっすんの物語です。










コメント
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