角灯と砂時計 

その手に持つのは、角灯(ランタン)か、砂時計か。
第9番アルカナ「隠者」の、その俗世を生きる知恵を、私にも。

#090 「写真一枚」の衝撃

2015-09-09 06:38:39 | メディア論
〈2013年末時点で紛争、迫害や人権侵害のため移動を強いられた人の数は5120万人に上ります〉
〈これはなんと日本の人口の約半数にあたる数です!〉
〈全難民のうち50%が18歳以下の子どもです〉

(国連UNHCR協会公式ブログチャリティ通信【知っとこ!数字で見る難民 】
 →http://www.japanforunhcr.org/charity-blog/?p=713

すごい「数字」です。
極東の島国に住んでいると、全く「質量」を感じません。

でも、それは、
難民の「発生源」に比較的「近い」欧州でも同様だったようで・・・

ところが、
「写真一枚」がそんな雰囲気を変えました。


(産経新聞9/6大阪6版より)

THE WALL STREET JOURNALには、
別アングルの写真と記事も紹介されています。

〈その子の名前はアイラン。内戦で混乱するシリアから家族と一緒に逃れてきた3歳の男の子だった〉
〈トルコの海岸に打ち上げられた、アイランちゃんの遺体の画像は世界中に衝撃をもたらした〉

(THE WALL STREET JOURNAL.:溺死したシリア難民の男児の写真に世界が衝撃
 →http://jp.wsj.com/articles/SB12096842380967064583604581211692551093796

そうして欧州の、
比較的裕福な西欧諸国の世論が激昂した、
ということです。

〈人道危機から目を逸らし手をこまねく政府に業を煮やした市民が難民支援に立ち上がった〉
(NEWSWEEK日本版:ヨーロッパを覆う「難民歓迎」の嵐
 →http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2015/09/post-3898_1.php

そうなると、
世論を無視できない「民主主義国」の政府としては、
これまで以上に難民を受け入れる、と言うしかなくなるわけで、
でも、やっぱり自国だけが突出するのは避けたいわけで、

たとえばドイツは、

〈政府は7日までに、80万人の難民を受け入れる意向を表明した〉
けれど、
〈内務省は6日の声明で、このままのペースで難民を受け入れ続けることは不可能だと指摘。欧州のすべての国が結束して負担を分かち合うよう求め、「それが保証される場合のみ、ドイツは大量の難民支援への役割を果たし続けることができる」と強調〉
もしてます。
(CNNジャパン:ドイツ、難民80万人受け入れへ 負担の分かち合いも求める
 →http://www.cnn.co.jp/world/35070050.html

難民への支援や自国への受け入れは必要です。
けれど、いずれにせよ際限なく救えるわけじゃない。

あえて言えば、

一時の感情で、
他人の一生に責任を持てるかのような勘違いは、
やっぱり危険です。

勇気を持って、
冷徹に突き放そうという動きもあるようです。

〈デンマークの移民・統合・住宅省は今週、難民の流入阻止を狙った広告キャンペーンを開始した。「デンマークは難民に関する規制を全面的に強化する」という内容で、レバノンで発行されている4つの新聞にアラビア語と英語で掲載された〉
(NEWSWEEK日本版:デンマーク「難民にとって魅力のない国」を目指して
 →http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2015/09/post-3903.php

ただ、これについては、
同国の政治情勢がそうさせている面もあるようですが。

英国でも、世論は必ずしも歓迎一色ではないようです。

〈英BBC放送が7日発表した世論調査結果によると、英国民の57%が難民の受け入れ拡大に反対している〉
(Web産経ニュース:英、シリア難民2万人受け入れへ キャメロン首相表明も世論は消極的
 →http://www.sankei.com/world/news/150908/wor1509080014-n1.html

「人道主義者」が、
あまり触れたがらない部分への言及もあります。

〈シリア難民急増に抜本的に対処するには、イスラム国打倒を含むシリア安定化が必要〉
(Web産経ニュース:仏、2.4万人受け入れへ 「抜本解決」シリア空爆検討
 →http://www.sankei.com/world/news/150908/wor1509080024-n1.html

今日の、世界の難民大量発生について、
その理由を問うていくと、
大抵は「ヨーロッパ文明の負の遺産」か、
あるいは「米国による軍事作戦の帰結」だ、
という結論になります。

そういう意味では、
今、欧州が困っていたとしても、
自業自得だという意見も確かに一理あるんです。

ただ、
だから、放っといていいのかと言われれば、
それはやっぱり違うだろう、とも思います。

一方で、今日の「難民」は、
基本、戦禍を逃れて、のことでしょうけれど、
より良い暮らしを求めて移動している、
「経済移民」という側面もあります。

情報が大量に生産されている中で、
多くの人が、見たいもの聞きたいものだけを受け取っています。

目の前の難民を「厚遇」することが、
次なる難民を生んでいるのです。

ちょっと、辛くなる記事です。

(産経新聞9/8大阪6版より)

日本に在って、
私たちは、どうしたら良いのか、

日本国民として、
私たちは、何ができるのか、

少年の写真を撮ったカメラマンの言葉に、
もう、どうにも考えがまとまりません。

〈「この子を生き返らせることができないなら、写真を撮ってこの悲劇を伝えたいと思った。この写真が与える衝撃が解決策をもたらす一助になることを願っている」〉

(Reuters:難民の悲劇「これで最後に」、溺死した男児の父親が胸中語る
 →http://cn.reuters.com/article/2015/09/04/migrant-crisis-father-idJPKCN0R40FM20150904


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