(『女性自身』11月28日号)
→https://www.kobunsha.com/shelf/magazine/past?magazinenumberid=3548
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《私は親として、娘を守ってやる事が出来ませんでした。最後の親のつとめとして、娘をこれ以上、世間のさらし者にしたくはありません。ただ、ただ、出来るだけ静かに見送ってやりたいのです》
えーと、ワタクシ自身ソレなんですが、
ヤフーニュースで初めて知ったという方も多いんじゃないかと思います。
座間の9人殺害死体遺棄事件、
最初に身元が判明した被害者遺族が報道機関向けにしたためた「嘆願」で、
11月9日付け。
さらに、
〈「10日未明に、残り8人の身元が判明したことを警視庁は会見で発表しました。そして遺族たちからの文面を報道各社に配布したのです」〉
〈それは8人の被害者たちの遺族や、遺族が依頼した弁護士たちによる9枚の“要請書”だった。冒頭で紹介した福島県の17歳高校3年生の母親による直筆書面も、そのうちの1枚だ。遺族たちが求めていたのは取材の自粛と、顔写真や実名報道をやめることだった〉
そうです。
*ヤフーニュース:座間事件「実名報道はやめて!」黙殺された遺族たちの嘆願
→https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20171114-00010000-jisin-soci
もうね、それこそ「そうだったのか!」と言うしかありません。
元記事は『女性自身』でして、
(敬意を表し、恥ずかしながら自分で買ったんでございますのよ)
見開き2ページ、こんな感じの真面目な記事でした。
ちなみにワタクシ、いわゆる「被害者情報」はもともと好きじゃないんで、
ほぼスルーしてたわけですが、改めて見直してみて、その見出しだけでもホントうんざりしました。
以下、全て産経新聞大阪6版のものです。
(東京・大阪近郊のモノに対して1日遅れと思ってください。伏せ字はワタクシ)
11月11日 1面トップ
被害者全員の身元特定 15歳から26歳の9人 全容解明急ぐ(9人の顔写真、実名)
同 社会面
「認めたくない」父怒り 断たれた漫画家の夢(顔写真・子供の頃の写真・実名)
家族のために買い物(顔写真・実名)
演劇部で自信つける(顔写真・実名)
物静かで読書好き(顔写真・実名)
アルバイトを頑張る(顔写真・実名)
中学の合唱部で活躍(顔写真・実名)
介護とバンドを両立(顔写真・実名)
穏やか 真面目に勤務(顔写真・実名)
学校や事件現場で悲しみや怒りの声
11月12日 社会面
殺害順「覚えてない」 座間9人遺棄 容疑者供述
座間9遺体被害者の居住地略地図(9人の顔写真・実名)
☓☓さんの高校 集会開き黙祷(実名)
☓☓さん母 江ノ島で懸命の捜索(上半身写真・実名)
11月13日は新聞休刊日
11月14日 社会面
座間9人遺棄「女性だけ呼び殺害計画」 最初の犠牲者 容疑者供述
「文学好きの普通の子が・・・」(顔写真・実名)
☓☓さん通う〇〇女子大(大学の記者会見写真)
11月15日 社会面
座間9遺体「☓☓さんの生存信じてた」バンド仲間、悔しさ語る(顔写真・実名、バンド仲間の記者会見写真)
☓☓さんの通った△△県の高校「悩み抱えず相談を」事件受け全校集会(顔写真・実名)
11月16日 社会面
「被害者携帯 なたで破壊」 座間9遺体 容疑者、証拠隠滅か(被害者2人の実名)
こうして並べてみると、まさに、
〈このように被害者遺族たちが団結して強く要請したにも関わらず、実名・顔写真報道は続けられたのだ〉
と『女性自身』の記事が言うとおりですね。
もとより、
読みたくもない、見たくもない、知らせてほしいわけでもない被害者情報だから、
読まず、見ず、放っておけば良いのだけれども、
新聞・テレビが、遺族の願いを「黙殺」していたという、
そのことを知らずにいたのは、かなり腹立たしいですね。
実名、匿名ということで言えば、
やはり昨年の津久井やまゆり園の事件を思い出すのだけれども、
手前味噌ながらワタクシ、
その時、産経新聞の「なぜ実名発表を求めるか」という主張(社説)について、
つまり、
「(その方が取材もラクだし)とにかく公表しなさいよ。実名を使うかどうかはオレ様が決めるから」
ということですか?
「深く反省すべき点も多々ある」という反省が本物で、
「それでも、取材をやめるわけにはいかない」という使命感が真実なら、
自らの足で施設に赴き、
自らの言葉で取材意図を説明して関係者を説得し、
話を聞く者としての手順を踏んで被害者・遺族に取材し、
直接信頼関係を築いた上で、実名にせよ仮名にせよ、報道すれば良いと思う。
そういう「苦心」を重ねた記事であればこそ、
ただメシのタネとして紙面を埋めるだけの記事にはない「力」が宿るのではないですか?
なんてことを書きました。
*変言自在/雑句場乱:#157 続・相模原殺傷事件について
→http://blog.goo.ne.jp/kawai_yoshinori/e/99419f1bdfc6ada163ffb8f916ab7642
日本新聞協会が定めた「新聞倫理綱領」は、
自由と責任:表現の自由は人間の基本的権利であり、新聞は報道・論評の完全な自由を有する。それだけに行使にあたっては重い責任を自覚し、公共の利益を害することのないよう、十分に配慮しなければならない。
人権の尊重:新聞は人間の尊厳に最高の敬意を払い、個人の名誉を重んじプライバシーに配慮する。報道を誤ったときはすみやかに訂正し、正当な理由もなく相手の名誉を傷つけたと判断したときは、反論の機会を提供するなど、適切な措置を講じる。
なんて謳ってます。
*日本新聞協会:倫理綱領
→http://www.pressnet.or.jp/outline/ethics/
で今回、
新聞各社は警察発表の時点で遺族の意向を知っていました。
知ったうえで実名報道してきたわけです。
もし、自分達の「倫理感」に自信があるのなら、
「ご遺族から、
《どうか、私達の気持ちを考えていただき、娘の実名・写真掲載による報道は一切ご遠慮ください》(神奈川県の21歳女性の母親)
《今後とも本人及び家族の実名の報道、顔写真の公開、学校や友人、親族の職場等への取材も一切お断り致します》(群馬県の15歳高校1年生の遺族たち)
等の要請をいただいたけれども、それでも報道機関としての責任をもって取材・報道します」
と言わなきゃなんじゃないの?
ソコを隠していたっていうのは、いかにも卑怯だなと思います。
で、座間の被害者報道が一巡した(旬が過ぎ、ネタも付きた)なと思ったら、
今度は、
11月17日 社会面
白骨遺体 28歳男逮捕 元交際相手、殺害容疑認める 長期にわたり隠匿か 大阪府警
「静かな子」何が起きた(顔写真・実名)
ですわ。
やれやれ、(産経といえども)新聞社(殊に社会部)に付ける薬はありませんな。
あ、ちなみに、
『女性自身』の取材に対して朝日新聞社は、
《朝日新聞の事件報道は実名を原則として、記事によって実名か匿名かを判断しています。今回の場合も事件の重大性など様々な要素を考慮して実名で報道すべきだと判断しました》
と答えたそうでして、
コチラも「実名を使うかどうかはオレ様が決めるから」理論なわけですが、
昨日(11月18日)とあるお店で読んだ朝日新聞は、座間の被害者を匿名にしてましたね。
定期購読してるわけではないので判らないのだけれど、
ひょっとして、遺族の嘆願があったという事実が世の知るところとなったもんだから、
ビビって匿名に切り替えたんでしょうか?
もし、そうなら、
どこかに「おことわり」かなんかの(小さな)言い訳記事が出てるんだと思うのだけれど、
どなたかご存知じゃありませんか?
・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・
公益社団法人「全国被害者支援ネットワーク」というものがあるそうで、
そのサイトにこんなのがありました。
〜〜〜しかし、被害者は13歳になったばかりの少女にも関わらず、名前も顔も明かされ、まったく身に覚えの無い事実無根の報道が何度も繰り返されました。
事件報道では、交際相手とされていましたが、少年と交際していたのは別の子です。あるテレビ局の取材で、マイクを向けられた見ず知らずの人が「何回も家出を繰り返していた子で、犯人と一緒に家出したこともあるらしい。」と話していました。
タクシーの運転手が警察署から私と娘を乗せたとき、万引きをした娘を私が叱っていたという記事もありましだ。犯人とどころか娘は家出をしたことなど一度もありません。万引きなどの非行事実で補導されたこともありません。娘と二人でタクシーに乗ったことすらありません。娘は毎日の出来事をブログに書いていました。
事件の10日前のブログに家族や友人とお花見に出掛けたことを書いていました。お花見をしていた公園の中で私の友達が、原付バイクの後ろに娘を乗せて遊んでいました。そのことを「バイクに乗せてもらった。楽しかった~。まあくんありがとう。」と書いていました。それを、深夜に暴走族とバイクを乗り回していた。と報道されました。
被害者である娘は、数日の間にまったく違う人格にされていました。
地元では娘と私たち家族を中傷するひどい噂話ばかりでした。まるで娘の方が悪いことをしたような言われ方で愕然としました。娘はもう、身に覚えの無いことを噂されても、否定することも涙を流すことも出来ません。私は家から一歩も出られなくなり会社も辞めました。なぜ被害者がここまで苦しめられるのでしょうか。
*全国被害者支援ネットワーク:被害者の声しおり〜被害者の声を聴いてください〜
→http://nnvs.org/voice/119.html
この辺りについては『女性自身』の記事でも、中野宏美(NPO法人「しあわせなみだ」理事長)という人の言葉を紹介してました。
〈こういった事件のときに必ず出てくるのが、「被害者にも問題があったのではないか」という意見ですが、責任は加害者にあるという当たり前の事実を、社会が理解しなくてはなりません。
また親の責任を論じるのも間違いです。「子供が悩みを相談しなかったのは、親が信頼されてなかったから」という人もいますが、心配をかけたくないから親には相談しないという子も多いのです。
この2つを徹底しなければ、被害者遺族たちの苦しみをとめることはできません〉
まあ、そうだろうと思います。
*「しあわせなみだ」ウェブサイト
→http://shiawasenamida.org/
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