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#270 「人的資本指数(世界銀行)」日本3位!・・・なんだけど記事は9面の下の方

2018-10-14 06:23:49 | メディア論
(産経新聞10/13大阪6版より)



上の記事ですが、10/13日付産経新聞(大阪6版)の9面(経済面)の下の方に、ひっそりと載ってました。


 世界銀行は11日、子供の健康状態や教育環境などを国・地域別に評価した新たな指標「人的資本指標」を公表した。最も評価が高かったのはシンガポールで2位が韓国、3位が日本となった。フィンランドやスウェーデンなど北欧を中心とした欧州や香港などアジアの各国が上位を占めた。一方で、最下位はアフリカのチャドとなり、貧困問題や内戦が深刻化するアフリカ各国の苦境が示された。

 新指標は子供が18歳までにどの程度の労働生産性を得ることができるかを数値化して測ったもの。健康状態がよく、質の高い教育を受ける子供が多い国ほど評価値は高くなる。評価が高いほど子供が生涯に得られる潜在的な所得は大きくなるとしている。

 世銀のキム総裁は「この指標は、子供の健康や教育分野の達成度が国の経済成長に密接に関係することを示す」と指摘している。


*Web産経ニュース:子供の成育環境は日本3位、世銀が「人的資本指標」公表
https://www.sankei.com/economy/news/181011/ecn1810110039-n1.html


ほ〜、日本3位、ですか。それにしては扱いが地味ですな、とは思ったものの「人的資本指数」って何じゃらホイ、ではあります。

で、クソ真面目にも世界銀行のサイトに行ってみると、ありました。おそらく記事の元ネタでしょう、11日付のプレスリリーフです。


各国が迅速に取り組めば、次世代はより健康で、より豊かで、より生産的に
国民への過少投資がもたらす経済的生産性の損失-世界銀行が新たにまとめた「人的資本指標」



というものなのですが、一部引用すると・・・


2018年10月11日、バリ(インドネシア)—世界銀行は本日、世界銀行・IMF年次総会において「人的資本指標 (HCI)」を発表した。この分析は、政策担当者に対して、子供の健康状態と学習成果の向上が長期的に国民および国家の所得を大幅に改善し得ることをはっきりと提示している。

人的資本指標は、世界全体で見ると、今日生まれた子供の内56%が、健康、教育、職に就くための能力を備えた人材育成に向けた各国政府の現在の投資が適切でないがゆえに、本来得られるはずの生涯所得の半分以上を失うことになる、と指摘している。



で、ちょっと難しい説明になってますけど・・・


人的資本指標は、不十分な保健サービスや教育の質の低さといった、その国が抱えるリスクを勘案し、今日生まれた子供が18歳までに得られる人的資本の規模を予測している。また、今日生まれた子供について、十分な教育と完璧な健康状態という理想的な状態との隔たりを、以下の指標に基づいて国別に評価している。

o 生存:今日生まれた子供が学齢期まで生きのびる生存率
o 学校:学校教育の達成度と学習成果
o 健康: 進学したり、成人して仕事に就くために十分な卒業時の健康状態

HCIは、今日生まれた子供の将来の労働生産性を、良好な健康状態で、質の高い教育を十分受けた場合と比較して、0から1(最高点)の段階で評価している。 例えば0.5と評価された国では、個人又は国全体として、得られるはずの経済力のうち半分しか実現できないことを意味する。これを50年間で見ると、毎年GDP成長率の1.4%に相当する深刻な経済的損失となる。


*世界銀行:Who We Are/ニュース/プレスリリース 2018年10月11日
http://www.worldbank.org/ja/news/press-release/2018/10/11/if-countries-act-now-children-born-today-could-be-healthier-wealthier-more-productive

と、まあ、そういう指標なんだそうです。


で、具体的なデータを示すページへ行くと、これがけっこう楽しめるものになってまして。

例えば、全体のMAPはこんな感じ。


(→http://www.worldbank.org/en/publication/human-capital


で、東アジア・太平洋地域を指定してやると、こんな感じになります。



世界平均指数0.57に対して、地域平均が0.61だということが分かりますね。


さらに、MAP上で例えば日本をクリックすると、こんな画面になります。日本の指数は、0.84だそうです。




ということで、以下参考までに、記事にあった国々をさらりと。

シンガポール。指数0.88で、記事では「最も評価が高かった」という表現になってますが「Fraction of Children Under 5 Not Stunted」の項目が「no data」ですから、う〜ん、どうなんでしょう?




韓国。総合では日本と同じ0.84ですね。違いは「Learning-Adjusted Years of School」で日本12.3に対して韓国12.2、「Fraction of Children Under 5 Not Stunted」で日本0.93、韓国0.97というところです。ふむふむ、ではあるのだけれど、5歳以下の子供に関する話、シンガポールは「データ無し」だし、韓国のデータも当てになるのかならないのか・・・




香港特別行政区域。総合指数0.82。なんだけど、ここも「データ無し」が含まれてますね。




北欧へいって、フィンランド。0.81。でも、またまた「データ無し」あり。




スウェーデン。0.80ですが、上に同じ。




そして「最下位」チャド。0.29、というんですが、いやいや、むしろ全てデータが揃っているってことを信用して良いのもかどうか。みたいなところがあります。




いずれにせよ、随分と楽しめるサイトです。お時間のある方は遊んでみてください。



ところで、世界銀行自体は、直接ランキング表示をしているわけではりません。そりゃそうです。「データ無し」項目を含んだ総合指標で順位を出したところで意味は無いですから。だいたい、世界各国、全て同じ手法でデータを取ってるとも思えないですし。


ただ、マスメディア的には「世界で◯位」っていうのは分かりやすく記事にしやすい、ということがあるのでしょう。

ついでに言えば、それで「日本は世界143位」とか「日本はランキングを下げた」とか「日本は世界で後ろから2番目」とか、そういうのに限って嬉々として1面にするんですよね。


ちなみに、この「日本3位」という記事、ネットでは11日の夜にアップされてるのですが、14日朝の時点でシェアはゼロ!。なるほど9面扱いになるわけだ。

ま、世の中なんて、そんなものなのかもね。


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